第一話:洋館
オリジナル作品を書くのは初めてですので、生温かい目で見てください。
気持ち悪い。今の状況を一言で表すなら、これ以外の言葉は思いつかない。
目の前が霧に包まれて、視界が悪い。
酒を飲んだ時のように頭がモヤモヤして妙に働かない。
何故か、自分の意思に反して動き続ける両脚。
本当に気色が悪い。それに、俺は部屋で寝てた筈だ。何で外を歩いている? ......考えると頭が痛くなる。このモヤモヤが消えるまでは、歩き続けよう。
自分の足が思うが儘、歩き続ける。
五分程歩き続けたら、フッと頭のモヤモヤが晴れ、霞んでいた意識が覚醒する。
「......何処だ此処?」
辺りを見渡すと何も見えないくらいに真っ暗になっている。星の瞬き具合を見る限り、午前零時は確実に回っているだろう。
段々、暗さに目が慣れていき、辺りにあるものが大雑把に確認できるようになった。
「獣道って感じだな? でも、俺の家の近くに山は無いぞ......」
自分が歩いてきた道を振り返ると、木々が空を塞いでいるせいか、今いる場所より暗くなっている。
引き返して転んで怪我をするより、明るい場所でここが何処なのかを確認した方がよさそうだな。
そのまま、比較的明るい前に歩みを進める。
今更気が付いたのだが、服装と靴が変わっている。パジャマ姿だったのが、何時ものTシャツとジーンズ。靴は革製のブーツに変わっている。
「......まあ、裸足よりは歩きやすいから良いけど」
少し後味が悪いが、裸足で歩くよりはマシだと割り切り、そのまま歩き続ける。
そのまま歩き続けて数分が経った頃、俺の目の前に洋館のような建物が建っていた。
「偉く大きい建物だな。でも、壁に雑草が無造作に生えているし、部屋の明かりは付いていない。無人なのか?」
闇の中でも、ハッキリと見えるくらいに立派に育っている雑草達とほこり塗れで内側が見えない窓。不気味としか言いようがない。
「......引き返すか」
後ろを振り向くと琥珀色に光る何かがユラユラと暗い林に揺れている。
徐々にガルルルと何かに警戒している犬のような声が聞こえはじめる。
野犬か? でも、それにしたら大きいようにも思える......
次の瞬間、ワオーンとまるで狼のような遠吠えが聞こえ、雑草が踏み潰されるシャラシャラという音が聞こえはじめる。
これはヤバイな、俺の直感が殺されると泣き叫んでいる!
全力で館の方に走り、扉が開くかどうかを確認する。
「少し錆びてるけど、カギは掛かってない。本格的に襲われる前に逃げ込みますか」
館の扉を開け、中に入る。
流石の野犬も家の中には侵入できないだろう。
そっと胸を撫で下ろし、外より暗い室内を目を凝らして見渡す。
「暗くて見えない。外みたいに星と月が明るかったから、もう少しマシなんだろうが......贅沢は言ってられんな」
地面を数回トントンと足で叩き、床が腐っていないか確認する。
「地面は木製のようだな。でも、音が籠っている。地下があるのだろうか?」
壁を伝いながら、明かりになりそうなものを探す。
無人の館みたいだし、人が住んでいないなら電気も通っていないだろう。
せめて、ローソクとマッチ棒とかが有れば、多少の火の元は確保できると思うし。
「タバコの臭い?」
鼻に付く煙草の臭いがする。
親父が吸っている煙草に似た臭いだ。あの煙草は臭いがキツイんだよな。年中あの臭いをさせてやがる。税金が上がって煙草代もバカにならないのに......
でも、煙草があるならライターとかが有るかも知れない。行ってみるか。
ギシギシと床の軋む音を感じながら煙草の臭いを辿る。
「此処か......」
自分の目の前に茶色の扉が辛うじて見える。
「鍵は掛かっていないようだな」
ドアノブをゆっくりと回し、中を確認する。
勿論、持っていた通り無人だ。でも、煙草の臭いが強い。
「ビンゴ!」
部屋の真ん中に設置されたテーブルに銀色に鈍く輝く灰皿と、隣に置かれている金色のジッポライターが確認できる。
ドタドタと嬉しさのあまり早足でライターの方に駆け寄り、ライターを拾い上げる。
「問題は火が付くかどうかだ......」
シャリシャリと火打石が磨れる音が部屋中に響き渡り、三回目に点火が成功した。
部屋が薄っすらとだが、明るくなり、鮮明に物が見えるようになった。
此処は喫煙所だったのだろうか? でも......灰の湿り具合を見る限り、全然使われなかったようだな。
左人差し指と親指で灰皿の中の灰を摘まみ、湿り気を確認する。
「やっぱり、あまり使われなかったようだな......」
使える物は借りて行こう。
テーブルをもう一度よく見てみると、大量のマッチの入った箱が置いてある。
親父も煙草はライターじゃなくマッチで吸う派だったからな、灰皿の隣にはマッチ箱が何時も置いてあった。
マッチを一本取り、ヤスリで点火しようとしたが、湿気ているのか火が付かない。
「......ライターのオイルも無限じゃない。使える物は使うか」
マッチの入った箱から一握りのマッチを取り出し、灰皿に置く。
そして、一本のマッチをライターで灯し灰皿のマッチ達に点火させる。
すると、ゆっくりとマッチ達が連鎖反応を起こしたかのように点火していく。
火がちゃんと点火した事を確認して、ライターの火を消す。
「どれだけ持つかわからないからな、マッチは借りて行こう」
マッチの入った箱からマッチをポケットの中に詰められるだけ詰めて、マッチの燃えている灰皿を手に持って館を散策する準備に入る。
光源は手に入れた、少しこの館を散策するか。
暗い部屋の中では、明かりを手に入れるのが一番重要。でも、ライターのオイルは出来る限り消耗させたくない。そんな時に思い付いたのが、マッチと灰皿を利用したものです。
正直、マッチを大量に使っても直ぐに燃え尽きてしまうので、他の光源を模索しています。