僕に夢を
「夢を持つことは
誇りを持つこと
生きる理由を持つことなんだよ。」
そう笑っていた君の夢を僕は知らない。
夢がなく、ただ流されるままに生きている僕にとって君という存在はとても眩しくて、太陽だった。君がいてくれれば何でもできる気がして、夢を持つ必要も感じられなかった。
そう、君がいてくれれば…
いろんな町に出掛けては君の姿を探した。花屋の前で必ず足を止めて、幸せそうな顔で眺める君が瞼に焼き付いている。
どこかでまた会えるのではないかと、休日になると君との2年を巡った。
知っている真実を嘘という言葉で覆い隠して、気付いてない振りを通していた。
君の代わりになれるなら、その考えに行き着きそうで怖かった。
君がそれだけは望まないことは確かだから。
どうして夢を持った君はいないのに
夢を持たなかった僕は今ここにいるのだろうか。
最後まで聞くことが出来なかった君の夢は何だったのか。
温室の中に咲く一輪の花は一身に光を受けて輝いていた。
君の夢を知っていたら、その夢を追うことでこの満たされない想いに気が付かなかったかもしれない。
僕は今もしっかり生きてる。でも、現実に挫けそうなんだ。
流されて生きてきた自分には君が必要だった。
君の夢は何だったのか。
君の姿が見えない毎日にまだ慣れそうにない。こんな僕を君は温かい笑顔で叱ってくれるだろうか。
「現実は寒いな。」
夢も誇りもないけれど、君を探して生きている。
きっと…いや…必ず前を向いて、背を伸ばして生きていけるようになるから。
夢を必ず見つけて、自分のために生きていけるようになるから。
今だけは
「ありがとう。でも、ごめんね。」
僕には君の声が聞こえるようだ。