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5.街へご訪問

「……久しぶりに家から出た気がする」


 だって食料とか最低限度 必要なものは近所の方がくれたり、あの方たち(察してください)が持ってきてくれたりしたので外に出なくてもよかったというか。


 そんな私がでてきた理由はただ1つ。明日――桜梨様と黒斗様の結婚式にいくための服を買いに行くため。動きやすく、汚れてもいい安物、それでもって結婚式にふさわしいもの。念のために武器を持っていってもバレないような感じの服。

 ハードルが高いのは分かってます。けど明日の結婚式はきっと悲惨なものになるはず。いや、きっとなる。

 だからこそ逃げやすい服装、捨ててもいいと思える安物、桜梨様と黒斗様の友人として呼んで貰っているのでお二人の顔に泥を塗らないよう、できるだけマシな服装――。これが最低条件。


 あるかなー、なんて思いつつ服屋がある方に足を進める。

 私が外にでたのが久々だから、けっこうな方々が挨拶をしてくれた。そのため両手がもう塞がってしまった。何故かというと「おすそわけよ」とか「サービスだ、もってけ!」という有難いお言葉とともに食料やら何やらを大量に貰ってしまったからである。正直いうと重い。

 断ればよかったものの、素敵な笑顔で言われてしまっては私は断れない。という訳で目的地に着くまでに手荷物いっぱいなのだ。


「やっぱり断ってればなぁ……」


 馬鹿なことをしたなぁ、と思ってももう遅い。手遅れなのだ。

 小さく溜息をつきながら足は休めない。とりあえず早く買って早く帰りたい。そして武器の整備やら何やらをしたい。


 すると大通りに近づくにつれて、賑やかな声が聞こえた。大通りだから当たり前か、なんて思っていると、凄い聞きなれた声だった。


「と・い・う・わ・け・で・明日を取りやめにしなさい?」


「やだなぁ、ヒュウリ。そんなことできる訳ないじゃない。もう招待状は知り合いにたくさん配っちゃったもの♪」


「死ね、黒斗!」


「ハハハ、そんなんじゃ俺は斬れないよ」


「黒斗様……」



「………………。」


 大通りって、喧嘩するためにあるものだったっけ?

 野次馬であまり見えないが、少しだけ見えただけで何がおきているのか分かってしまった。そんな自分がちょっと悲しい。


 ヒュウリ様は敵意を桜梨様に完全にぶつけて言い合いをしている。そしてフェック様はたくさんの人がいるというのに剣を大きく振るっている。黒斗様は何か小言を言いながらそれを悠々と避けているが、フェック様の怒りを買っているだけである。そんな主人に呆れているのが龍炎様。

 街中だろうがなんだろうが、あの方たちには全く持って関係ないらしい。あ、ヒュウリ様と桜梨様も戦闘を始めだした。


 ……ここは見てみぬふりをして通り過ぎるべきだろうか。だって私には何もできないし。

 でも見るからに困っている方もいらっしゃる。とくに子連れの人は怖いだろう。一方で戦闘を観戦して楽しんでいる方もしらっしゃいますが。


 どうしよう……。これは、どうしたらいいんでしょう?


「あっ……!?」


 思わず声をあげる。何故って、ヒュウリ様が放った炎の魔法を桜梨様がはじき、そのはじいたもの少女にあたろうとしているから。龍炎様だけが気付いたようだが、あそこからでは間に合わない。

 私は両手に持っていた荷物を放り出し、腰についている短剣を抜く。そしてようやく気付いたのか、自分にあたると思って目を瞑っている少女の前にでて――


「いっ……!」


 短剣に魔力を注ぎ、短剣で炎を全てはじいた。

 ヒュウリ様の魔法は強力なので短剣程度で防ぎきれず、短剣を持っていた右手に鋭い痛みがはしったが、どうやら少女にはあたっていないようだ。

 私は後ろにいる少女に向き合う。


「大丈夫? 怪我はない?」


「う、うん。お姉ちゃん、ありがと……」


「気にしないで」


 上手く微笑めたかはしらないけど、安心したような少女の顔を見ると上手く笑えていたようだ。

 少女にここから離れるように促すと、少女はまたお礼を言ってここから去った。うん、とりあえずは大丈夫だろう。

 右手を見ると無残にも火傷をしている。……あの少女に当たっていたら本当に危なかっただろう。


 今回のは少々やりすぎだと思う。私の堪忍袋の緒が少しばかり切れそうなんですけれど。

 ズボンにつけているホルダーから8本の針をとりだし、それぞれ片手に4本ずつ持って構える。そして――暴れている方々に向かって投げた。


「きゃっ!?」

「えっ!?」

「チッ!」

「うわぉ」


 それぞれ声をあげて避けてくださった。……1本くらい当たればよかったのに。


「そこまでです。身内で喧嘩をなさるのは別に構いませんが、ここは一般人もいる場所。戦闘する場所ではございません。ましてや人々を危険に晒すなんて、やりすぎなのでは?」


 もし針をなげて避けられ止まってなかった場合に用意していた4本のナイフを持って、やっと止まった4人と頭を抱えている龍炎様の方に近づく。


「それとも今すぐ私が串刺しにしてあげましょうか?」


 ギラリと光るナイフを見せながらニッコリと笑って4人を見る。もし肯定の返事がきたら容赦なく投げるつもりだ。

 すると桜梨様は気まずそうな顔をしながら私の方に近づいてきた。


「わ、私が悪かったわ、テル。だからその物騒なものをしまっていただける?」


「喧嘩をやめるとあと残り3人が誓ってくれるのならしまいます」


 すると黒斗様は困ったような笑みを浮かべ、ヒュウリ様は苦々しい顔をした。フェック様に至っては舌打ち。なのでフェック様限定でナイフを一本頂戴した。


「分かった、分かった。こーさん」


「……分かったわよ」


 黒斗様とヒュウリ様はやめるようだ。すると龍炎様が黒斗様に近づいて何やら言っていらっしゃる。おそらくお説教だろう。

 私は未だ返事をしないフェック様を見ながら、ナイフを構えた。


「さて、フェック様。お返事は?」


「…………。」


「お・へ・ん・じ・は?」


「チッ、わかったよ」


 そう言うとフェック様は剣をしまった。

 私も約束どおりナイフをポーチにしまう。けれどまたも喧嘩をされるようだったら容赦なく投げる気だ。だって危ないもの。


「悪いね、テル」


「そう思うのなら元からやらないでいただけますか。貴方方が怪我しようが死のうが共倒れしようが知りませんが、一般人に怪我をさせることは断じて許しません。やるのであれば何もない荒地でサバイバルでもやってきたらいかがでしょう。骨くらいは拾っといてあげますよ」


「あれ、テルってこんなに毒舌だったっけ? 一言一言グサグサくるんだけど」


 知りません。私は今怒ってるんです。あれ、今なら何か誰にでも勝てる気がする。

 すると桜梨様が黒斗様と腕を組んだ。まぁ勿論それを見て目を鋭くさせて鬼のような形相になる方々が2人いらっしゃるんですけど。


「テル! 黒斗を傷つけていいのは私だけよ! 私を傷つけていいのは黒斗だけど!」


「黙りなさい、桜梨! 貴女がそんなんだからテルアがこんなに毒舌家になっていくのよ! 自重なさい、自重!」


「黒斗テメー、傷ついたふりしてんじぇねよ。気色悪ィ」


「ハハハ、嫌だな。これでも本気で傷ついてるんだよ?」


 するとまた喧嘩しそうな雰囲気になる。馬鹿なのか、この人たち全員馬鹿なのか。

 小さく呪文を唱えて金棒をだす。そして思いきり4人の輪の丁度中心くらいにドスンッという音をたてて地面においた。……めり込んでしまった、申し訳ない。


「次やったら殺すっつってんだろ」


「「「「……すみませんでした…………」」」」


 あ、いけない。口調が。どうしてもキレるとなってしまうんですよ、これ。直らないんです、こればっかりは。

 すると龍炎様が私の右手をとった。あ、火傷のことすっかり忘れてた。よくお気づきになられましたね、龍炎様。うわぉ、治癒の魔法を唱えた上に包帯まで巻いてくれてる。伊達に魔王側近していないわけですか。


「放っておくと痕が残るぞ」


「すみません、忘れていました。でも大丈夫です。もし痕が残ったらそこで大暴れした4人が慰謝料を払ってくださるはずですから」


「「「「ホントにすみませんでした」」」」


 謝らなくていいんで全員 即刻帰ってください。今 機嫌悪いんで鬱陶しく感じられるんで。

 とにかく私は(少し)安くて動きやすい武器を隠し持っておける洋服ドレスを手に入れたのだった。



(一般人を巻き込むことだけは許せません)

(次やったら本当にどうしましょうか)

いつもこんなカオスな感じなんですよーっていうのを書きたかっただけです。

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