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4.魔術師様のご訪問

 コンコン


「はーい。何方です、か……」


「こんにちは、テルア」


「……こんにちは、ヒュウリ様」


 きました、魔術師様が。因みにテルアはもう1つの私の愛称です。

 ヒュウリ様は笑顔なように見えて、全く目が笑っていらっしゃらない。これは相当 ご立腹のようです……。フェック様でさえ大変でしたのに……。


 とりあえずヒュウリ様に座るよう促し、また安物の紅茶を入れることに。皆さんにこうやって安物の紅茶をさし出してることに関しては、少しだけ悪いなぁって思ってます。安物でごめんなさい。高いのは買えないんです。

 紅茶を入れたカップをヒュウリ様が座っている前の机におく。私もいつものように向かい側の椅子に座った。


 すると当然といった風に、ヒュウリ様が喋りだした。


「ねぇ、結婚というのについては聞いた?」


「はい、聞きました。確か3日後ですよね」


 それを言った瞬間、何故か温度が2,3度くらい下がった気がしました。あれ、地雷ふみました? まさかこれは自爆スイッチだったりしました?

 すると怒りオーラを隠そうともしないヒュウリ様が低い声で言う。


「そう、それよ……。桜梨……許せない……!」


 怖いです、ヒュウリ様。今ならきっと魔族だって一撃で倒せますよ。保証いたします。

 それにしてもヒュウリ様にしろ、フェック様にしろ、何でこんなに執着心が凄まじいのでしょうか。ていうか好きな人の恋路を応援するっていう選択肢はないんですか。

 そんな私の思いに気付かずヒュウリ様は文句をぶちまけていく。目が血走ってます……!


「私が呼んだから桜梨はこっちに来れたのよ?」


 別に頼んでませんよね、桜梨様。貴女様が勝手に呼んだだけですよね、手違いで。


「それに黒斗だって、どうして桜梨を選んだのかしら!?」


 旅の途中「魔王をボコボコにする」って言ってたのはヒュウリ様でしたよね。


「フェックは桜梨を好いてるのよ? 普通、ずっと一緒にいた人間を好くでしょ?」


 貴女様もいた時間は全くもって同じですけど……。


「更にいつもヘラヘラ笑いながら鬱陶しいのよ、桜梨は!」


 桜梨様に「いつも笑っているほうがいい」って言ったのは紛れもないヒュウリ様ですよ……。


「なのになのに、どうして黒斗と結婚に至ってるわけ!?」


 ……あの、いきなり超高速の変化球の球を投げられましても返せないのですが…………。

 フェック様もヒュウリ様も本当に怖いのですけれど……。というか何で貴女方は私に相談をしにくるのですか?


「それで、ヒュウリ様はどうするおつもりで」


「もちろん決まってるじゃない。邪魔するわよ」


「左様でございますか……」


 フェック様と思考は同じなのですね。やっぱお似合いですよ、お二人。認めないと思いますが……。


「とりあえず結婚式を取りやめにさせることも頑張るわ。でももし結婚式まで至ってしまったらその結婚式を邪魔しなければならないわ」


 ……貴女もいつか黒斗様に嫌われますよ。

 にしてもこれだけやられて別れないバカップル様には尊敬です。……もしかしたら、あのお二方はこの2人の意図に気付いて……? いや、それはないでしょう。

 あのバカップル様は単にラブラブで周りが見えてないだけですね、きっと。


「ところでテルア。龍炎とはうまくいっているの?」


「はっ?」


「は、じゃないわよ。貴女達、相思相愛の仲なんでしょう?」


「待って、待ってください。何でそんな話になってるんですか?」


 初耳なんですけど。そう言えばヒュウリ様が不思議そうに首を傾げた。いや、傾げたいのはこちらなのですが。

 何で私と龍炎様が相思相愛の仲になっているのですか。おかしいですよね、誰ですか、そんな話ながしたのは。……バカップル様じゃないですよね…………?


「フェックも知っていたし、何かここらの街では有名よ?」


「ま、街で!? な、何故ですか!?」


「さぁ? というか知らなかったのね。テルア、貴女きちんと外出したほうがいいわよ」


 本当に誰ですか、そんな作り話を流したのは!?

 それにしてもどうしましょう……。これは龍炎様にもご迷惑をかけているに違いないですよね、完全に迷惑をかけてますよね。

 その話を否定したいのは山々ですが、有名になっているということは、かなりの人にその話が流れているという事ですし……。でもやっぱり誤解を解かなければならないのは確かなのですよね……。


「なーんだ、付き合ってるわけじゃないのね。楽しくない」


「こちらとしては楽しい楽しくないの問題じゃないのですよ……」


 ヒュウリ様は心底つまらなそうに紅茶をお飲みになった。まぁ、関係ないので仕方ない態度だとは思いますがね……。

 それにしても、本当にこれはどうにかしなくては。


「でも、龍炎とテルアってお似合いだと私は思うのよ。龍炎に至っては脈アリな気もするし」


「はい?」


「貴方達、よく2人で話してるでしょ? テルアは知らないけど、龍炎は何だか楽しそうだもの」


「……目の錯覚では?」


「あら、テルアは私の目がおかしいとでも言いたいのかしら?」


「イエイエ、トンデモアリマセン」


 逆らったら何かされそうなので黙っておくことにしておきます。でもヒュウリ様の目が狂ってるんだと思います。

 だって私と話しているとき、龍炎様は1回も笑いませんが。呆れている顔の方が多いと思うんですけど。あれ、私って龍炎様に迷惑かけてばっかりな気がするのですけれど……?


「……まぁいいわ。とりあえず、紅茶ごちそうさま。3日後の結婚式とやらで会わないことを祈っているわ」


「ハハ……どうあっても諦めないのですね……」


「当たり前よ。諦めたらそこで終了だもの。私は最後の最後までやってやるわ」


「そ、そうですか」


 黒斗様と桜梨様が付き合ってしまった時点で終了だと思うんですけど。そこで諦めるべきだと思うんですけど。

 それにしても……3日後の結婚式で会うにしても悲惨な結果の結婚式になりそうです……。いえ、なるんでしょうね。汚れてもいいマシな服装で行きましょう。


「じゃあね、テルア。たまには外に出なさいよ」


「はい……。それでは」


 ……ホント、ちょっとは外に出なきゃ駄目ですね。



(魔術師様はお姉さん)

(ただ、恋愛になると暴走してしまいます)

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