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1.側近様のご訪問

 わたし、テルーア・アヴィリスは今 真剣に悩んでいることがあります。

 何かって? まぁ、ここは簡潔に分かりやすくお話するとしましょう。とりあえず、紅茶の準備はできましたか? ……え、いらない?


 私は数ヶ月前まで勇者パーティーにおりました。

 因みに私は戦闘要員です。剣やら銃やら鎌やらetc……武器なら何でも使えるのですよ。そして強化系の魔法を少々。あ、体術も使えます。

 そこそこ実力がありましたので勇者パーティーにいられたのですよ。


 パーティーの目的はひとつ、魔王を倒すこと。

 実は魔族や魔物が村や町などを荒らし、とても困っていたのです。そんな中、ある魔術師が手違いで勇者を召喚しました。手違いです。別によびたかった訳じゃないんです。

 でも折角きて頂いたのだから魔王退治をしてもらおう。そんな軽いノリで勇者パーティは結成されました。私が選ばれた理由は後日「面白いから」だと勇者様が言っておりました。何の為にパーティーにいるのか全くわからない。


 とりあえずパーティーのメンバーの紹介をしましょうか。


 先ほどから話がでている勇者、風浪かぜなみ桜梨おうり様。とても綺麗でお強いのですが、残念ながら頭が弱いのです。えぇ、残念なことに。

 はい次。剣士のフェック・アイロ様。彼はとても凄い剣士で私は剣で彼に勝ったことがありません。因みに彼は桜梨様に恋をしています。報われはしませんが。

 最後……といっても3人目ですが。勇者様を手違いで召喚した魔術師、ヒュウリ・キュレット。治癒役で魔法の扱いがとても上手いです。彼女も女の子、旅の途中で殿方に恋しちゃったりするんです。報われはしませんが。


 こんな面子で旅をしてたのです。魔王退治とか言いながら観光名所いったり、村や町の祭りを堪能したり。……全て桜梨様が決行しようと仰られたのですが。

 もちろん魔物や魔族も倒しましたとも。ですが桜梨様が強すぎて相手にならなかったというか。どうして私どもはあんなのに困らされていたのでしょうか。旅をしていると疑問に感じてしまいました。

 と、まぁ楽しく旅をしていたのでございます。


 そして魔王の元まで辿り着きました。え、展開が早い? 簡潔に話すと申し上げたではないですか。

 それで「魔王を倒すぞー」ってところで問題が発生してしまったのですよ、有り得ない問題が。私は唖然としましたがね。


 何と! 桜梨様が魔王に一目惚れをしてしまったのですよ!!

 その方は倒すべき方ですよ! そんな言葉も届きません。あぁ、恋って恐ろしい。

 そしてまたまた驚くべき展開が待ち受けていたわけでございますよ。魔王も桜梨様に一目惚れをしたという展開が! お馬鹿ですか、貴方達は!

 それで桜梨様が「戦うことなんてできないわ!」なんて言いだすし、魔王も魔王で戦意消失しちゃうし。もうめちゃくちゃですよね。どうすればいいのか私は全く分かりませんでした。ただ馬鹿なカップルができたことは理解できましたよ。


 そして色々と考えた結果。戦わないことに決定いたしました。

 というか魔物や魔族が暴れてるのに魔王は干渉していないようで。というか魔王がほったらかしにしてるから魔物や魔族が暴れてただけで。魔王を退治しても無駄なことが分かったんです。


 だから魔王にお願いして魔物や魔族の暴走を止めていただきました。というかお願いせずとも魔王がそうしました。

 はい、これで終了。今までの旅は何だったのでしょうね。


 そしてついでに桜梨様と魔王――黒斗様のバカップルとやらが成立しました。もう何もいいません。

 またまたついでに言うとヒュウリ様は黒斗様に恋をしてしまったのであり。ヒュウリ様とフェック様はお2人を別れさせるために奮闘するそうです。グルになって。もうあのお二方で付き合えばいいと思うのでが。


 そんなこんなでパーティーの意味はもうないので解散。

 私は家に帰りました。とりあえずは家でゆっくりしようかと思いまして。

 あのお馬鹿な4人のドロ沼関係に私は首を突っ込みたくないので、できるだけ距離をとりました。家に引きこもるという作戦で。

 桜梨様と魔王の黒斗こくと様はただいま桜梨様がよばれた街、つまり私の住んでいる街に家を建てて一緒に暮らしているそうです。あと黒斗様の側近の龍炎りゅうえん様も。え、一緒じゃなくて近くに家を建ててるだけ? ……そうでしたっけ。

 それはおいといて他2人も同じ街に住んでいるのだから会ってしまうのは明確。


 あまり近づきすぎず、会ったら挨拶を交わす程度――完璧ですね。

 これで普通の暮らしに戻れると思ったのですよ、私は。そう思っていたのですよ、えぇ。


「なのに何であの方たちは毎度毎度 私の家に押しかけてくるのですか!」


「知らん。俺に聞くな」


 ここは私の家。そしてさっきからずっと私のお話を聞いてくださっているのが魔王の側近――龍炎様。


 私の悩みはたった1つ。あの方たちが私の家に週3回のペースで押しかけてくること。

 更にときどきお一人で来て私に相談してくるのですよ。私は恋沙汰は苦手だというのにこの仕打ち! 私にどうしろというのですか!


「龍炎様は黒斗様に言ってやってください! 「もうあの家に行くのは止めましょう」って!」


「却下だ。それに黒斗様が仰っているのではなく、あの煩い勇者が言っているんだ。俺が言っても無駄だろう」


「えぇぇぇ……」


 それでも言ってみてくださいよ。可愛い部下のためなら黒斗様だって桜梨様に言ってくれるはず……!

 ……ないですね。黒斗様の場合は「行きたい」と言っている桜梨様の意見を尊重するのは分かりきったことですし。あぁ、もう憂鬱で仕方ないです……。


「そういえば武器使い。あのクソ剣士がここに来ると言っていたぞ」


「……ハァ。もう寝ましょう、いっそのこと昼寝しちゃえばいいんです」


 もう嫌です。現実逃避をしたいがために机に突っ伏す。

 ……でもフェック様のことだから叩き起こすのでしょうね、容赦なく。


「あー……もう、此処を離れるのは嫌ですけどいっそのこと遠くの街に引っ越しちゃったほうがいいのかもしれませんね……」


「やめとけ。どうせすぐ見つかる。金の無駄遣いだ。したいのなら勝手だがな」


「………………。」


 最強の勇者と魔王が揃ってますもんね。それに優秀な魔術師さんもいらっしゃいますもんね。そりゃ見つかりますよね。

 というか何で集まってくるのか分からないんですけど。どれだけ私に嫌がらせがしたいんでしょうか。


 もう眠くなってきました。眠い。眠すぎます。

 瞼がだんだん下がってきて、抗うことなく私の意識は落ちていった。


「……普通、客人の前で寝るか?」


 溜息をつきながらも龍炎様は家のブランケットを私にかけて、そのまま帰っていかれた。



(魔王様の側近はとても優しい方です)

(いつも私の悩みと愚痴を聞いてくださる、いい友人です)

はじめましての方ははじめまして。アクアと申します。

基本はこんな感じで1話完結です。シリーズ物として書き始めたものなので。

おそらく更新は遅めになりますので、気長に待っていただけると有難いです。

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