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花の国

作者: ことは
掲載日:2026/05/06

紺碧を抱く水葬の国を抜け

紅蓮の息吹に焦がれる 火の嶺を越え

禁忌の蜜を啜り 版図を広げる魔導の影

遍歴の果てに辿り着いたのは 死を待つ花の揺り籠


玉座に座す者の 精神を象り

季節さえ欺いて 咲き乱れる極彩の虚像

かつて富を謳歌した その芳しき沈黙は

今や隣国たちの 食欲をそそる香りでしかない


清冽なる滅びの旋律

戦を知らぬ処女の庭に 鉄の雨が降り注ぐ

大陸の争覇を懸けた 残酷な演劇の幕が上がる

中心に佇むのは 散りゆく運命の供物


十四の春 慈愛の父は謀計の毒に伏し

追うように母の命も 淡雪のごとく消え入る

十六の君が負うのは 一国の亡骸

その眼差しに宿るは 深淵に似た澄明な諦観


純白の薔薇が 天鵞絨の野を埋め

風に舞う花弁は 零れ落ちた君の欠片のよう

守らなければと紡ぐ 震える唇の紅が

余りに鮮烈で 私の魂を射抜いた


フローリア 君は月光に透ける幻か

亡国を看取る 最後の薔薇の化身

世界が君を蹂躙し 地図から消し去ろうとも

その儚き威厳は 誰にも穢せはしない


ただの異邦人に 何が赦される?

歴史の歯車を止める 術など持たぬこの指で

けれど、絶望という名の この甘美な闇のなか

君を抱き締め 奈落へ堕ちる覚悟を求めている


救いなどいらない ただ君の孤独になりたい

劫火に焼かれる この国を最後の揺り籠にして

白薔薇の香りに包まれ 永久の眠りにつくその日まで

私は君の影となり この終わりを愛し抜こう


美しき廃墟に 雪のような花が舞う

君の瞳から 一滴の真珠が毀れた

さらば 愛しき花の国

私の旅は ここで終わる

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