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第一話 終焉のホーム
降りしきる雨は、無惨にもすべてを洗い流してはくれなかった。
「……なんで、俺なんだよ…」
三十五歳の誕生日、馬場 武尊が手にしていたのは、ケーキではなく離婚届と解雇通知だった。
同僚の横領をなすりつけられ、弁解の余地もなく会社を追われた。信じていた妻は「娘に悪影響だ」と、一度も目を合わせぬまま家を去った。
「パパ、泥棒なの?」
最後に聞いた娘の怯えた声が、脳内でリフレインする。
視界が歪む。ホームに入ってきた電車のライトが、やけに眩しい。
「次は……誰も裏切らない世界がいいな」
武尊の体は、吸い込まれるように闇の中へ落ちていく。




