第6話 初めての潜行
ダンジョン二層目。
葛城亮は、
静かに
息を整えていた。
前回は、
一層で
引き返した。
だが、
今日は違う。
生活費を
安定させるため、
もう少し
踏み込む。
そう、
決めた。
入口を
越えた瞬間、
空気が
重くなる。
壁の色が、
わずかに
濃い。
魔力濃度が
上がっている。
「……問題ない」
小声で
呟く。
ステータスは、
意図的に
抑えている。
それでも、
一般の
Dランクよりは
余裕がある。
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通路は、
緩やかに
曲がっていた。
足音を
消す。
異世界で
身につけた
基本動作。
先に、
気配。
二体。
スライム型。
反応は
鈍い。
亮は、
角度を計算し、
一体ずつ
処理した。
過剰な
動きは
しない。
剣を
振るう回数も、
最小限。
「よし……」
倒した魔物が、
魔石を
落とす。
小粒だが、
確実に
金になる。
拾いながら、
周囲を
確認。
油断は、
しない。
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二層目は、
地形が
複雑だ。
枝道。
段差。
死角。
初心者が
迷いやすい。
壁に
古い
マーキング。
過去の
探索者が
残した目印。
信用は、
半分。
ダンジョンは、
少しずつ
形を変える。
古い情報は、
命取りになる。
亮は、
音を聞く。
遠くで、
戦闘音。
金属音。
叫び声。
「……パーティか」
単独では
なさそうだ。
関わらない。
それが、
基本方針。
だが――
通路の先で、
崩落。
土煙が
上がる。
直後に、
悲鳴。
「助けて――!」
声が、
若い。
亮は、
一瞬だけ
迷った。
弱くやる。
目立たない。
だが、
身体は
既に
動いていた。
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現場に
駆けつけると、
二人組の
探索者。
片方が、
足を
挟まれている。
魔物が、
近づいていた。
イレギュラー。
通常より
大きい。
動きも
速い。
亮は、
剣を
抜いた。
力を、
使いすぎない。
だが、
失敗すれば
死ぬ。
一歩。
踏み込み。
剣閃。
最短距離で
急所を
断つ。
魔物は、
抵抗する間もなく
消えた。
速すぎた。
「……え?」
探索者が、
呆然と
見ている。
亮は、
息を
整えた。
「早く、
退避を」
声を
低く抑える。
救助信号を
発信させ、
その場を
離れた。
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転移結晶前。
亮は、
胸の
鼓動を
感じていた。
危なかった。
少し、
踏み込みすぎた。
だが、
後悔は
していない。
助けた。
それだけだ。
地上に
戻ると、
ギルド職員が
慌ただしく
動いている。
どうやら、
事故として
処理されたようだ。
誰も、
亮に
注目していない。
「……よし」
小さく
安堵する。
弱くやる。
だが、
見殺しには
できない。
その矛盾を、
抱えたまま。
葛城亮の
探索者としての
日常は、
静かに
続いていく。
この先に、
配信カメラが
あるとも
知らずに。




