第17話 勇者である責任
夜明け前。
葛城亮は、
静かな
公園の
ベンチに
腰を下ろしていた。
人影は
ない。
聞こえるのは、
風に
揺れる
木の葉の
音だけ。
それでも、
心は
休まらない。
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異世界の
影。
あの感覚が、
まだ
消えない。
夢では
ない。
確信が、
胸に
残っている。
「……終わった
はず
なんだ」
亮は、
小さく
呟く。
魔王は
倒した。
世界は
救われた。
それなのに、
なぜ
今さら。
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「兄さん」
背後から、
声。
妹の
あみだった。
ジャケットを
羽織り、
眠そうな
目を
こすっている。
「また、
眠れなかった?」
亮は、
苦笑した。
「起こしたか」
「勝手に
出ていく
方が
悪い」
あみは、
隣に
座る。
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しばらく、
二人は
黙って
朝焼けを
見ていた。
やがて、
あみが
口を
開く。
「……まだ、
引きずってる
んでしょ」
亮は、
答えない。
だが、
否定も
しない。
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「勇者の
責任、とか?」
あみの
言葉は、
鋭い。
亮は、
視線を
落とす。
「俺は、
もう
終わった
人間だ」
そう
思って
生きてきた。
異世界から
帰って、
力を
隠し、
普通を
演じる。
それが、
自分なりの
責任の
取り方だと。
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「でもさ」
あみは、
前を
見たまま
言う。
「影が
出てきた
なら、
話は
別じゃない?」
亮は、
眉を
ひそめる。
「巻き込まれる」
「もう
巻き込まれてる」
即答だった。
「裕子さんも。
他の
探索者も」
あみは、
亮を
見る。
「兄さんが
知らない
ふりを
しても、
世界は
待ってくれない」
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胸に、
重い
ものが
落ちる。
正論だ。
だが、
怖い。
また、
剣を
取る
ことが。
勇者として
生きる
重さを、
亮は
知っている。
守れなかった
命。
選ばなければ
ならなかった
犠牲。
それらが、
一気に
蘇る。
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「……俺は」
言葉が、
詰まる。
あみは、
静かに
待つ。
「また、
失敗
するかも
しれない」
亮の
本音。
あみは、
小さく
息を
吐いた。
「それでも」
そして、
はっきり
言う。
「やらない
後悔の
方が、
兄さんを
壊す」
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太陽が、
顔を
出す。
街が、
目を
覚ます。
いつもの
朝。
だが、
亮の
中で、
何かが
変わった。
責任とは、
罰では
ない。
選ぶ
覚悟だ。
そう、
異世界で
学んだ
はずだった。
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「……あみ」
亮は、
立ち上がる。
「俺は、
勇者を
名乗らない」
あみは、
頷く。
「知ってる」
「でも」
拳を
握る。
「守るために
剣を
取る」
それが、
勇者で
ある前に、
一人の
人間としての
選択だ。
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遠くで、
サイレン。
ダンジョン方面。
何かが、
始まっている。
亮は、
一歩
踏み出す。
もう、
逃げない。
勇者である
責任を、
再び
背負う
覚悟を
決めた
その背中は、
静かだが、
確かに
強かった。
物語は、
終盤へと
向かっていく。
勇者が
選んだ
責任の
先に、
何が
待っているのか。
それを
知るのは、
これから
だ。




