太陽は海の底
ずっと夜でも困ります。
太陽が西の海に 赤く燃えながら沈んだとき
さぶんっ て音のあとに
じゅっ て音が聞こえた気がした
ここからはお月様と星空のしたで
フクロウとコウモリのナワバリ
ニワトリだってトサカをはずして
まくらにうずまるし
あたしのくちびるは おやすみのキスのかたちをする
ねぇ 太陽
あんたがいない夜は こんなにも
世界はべつの顔するんだって
海の底に沈んでるあんたには見えないんだよね
いまごろあんたは 深い海の底にもぐって
チョウチンアンコウのさきっぽに
灯をともしなおしてあげてるかもしれないし
もしかしたら
シーラカンスやリュウグウノツカイといっしょに
楽しくどんちゃん やってるかもしれない
ねぇ 太陽
あんたの知らない夜を
あたしがお月様と星空のしたで
すごしてるあいだ
あんたもあたしの知らない海の底で
いつからか いなくなっちゃった
アンモナイトのことを思い出して涙したり
あたしの知らない顔をしてるんだろう
あれあれ?
あたしと太陽ってば
意外と おたがいのことを知らないんだね
だからって 同棲をはじめて
おたがいの知らないそれぞれの時間を
うばいあってなくしちゃうのも なんかちがう気がする
だけどやっぱり こんな夜
あたしはたまんなく不安になる
あしたの朝 太陽がちゃんと
東の海から のぼってきてくれるのかなって
アンモナイトのことを思い出して
いっしょに泣いてもあげられない
あたしのところより
シーラカンスやリュウグウノツカイと
いっしょにいたいんじゃないかって
ねぇ 太陽
あたしたちは同棲していちにちじゅう
ずっといっしょにいることはできないけど
それでも あんたがいなけりゃ困るんだってば
お月様にはいったん おひきとりねがうし
ニワトリをたたきおこして
トサカをちゃんとかぶらせるから
だから 太陽
あたしがあした めをさましたころには
ちゃんとのぼっておいて
もうすっかりいつもどおりの
朝にしといてほしいんだ
そしたら 海の底いがいにも
あんたの友達はちゃんといるんだってこと
思い知らせてやるんだから
そう願って あたしは眠りにつく
いくつかの夢をレイトショウで楽しんで
もう何時間かしたら
めをさまさなきゃって あたしの耳に
東の海から
ざばんっ て音が聞こえた気がした
休みならいいかも!