第二話「ゴブリン」
儂は興奮が抑えられなかったーーー。
二度目の人生ーーー前世では遂に味わう事ができなかった"退屈"を......渇きを......満たせる!
『ーーーーーー!!!!!!』
儂はこの貧相な身体で大いに笑った。
それは心からの歓喜だったーーー。
『よろしいのでしょうか?』
かまわん。
『本当にーーー』
しつこい、愚か者っ!
『......分かりました。それでは二度目の人生に幸があらん事を』
その言葉を最後に、脳に声が響く事は無かった。
儂は改めて、己の手を見る。
実に貧相で脆弱。
これではあの程度の男に斬られても仕方ない。
(クク......愉しい、愉しいぞっ!!)
儂の心にある、野心が業火の如く燃え上がる。
こんなに満たされた事は前世では無い......!!
これが"刺激"と云うモノかっ!!
◆
興奮が落ち着き、冷静さを取り戻すと腹が減った事に気づく。
儂は食料を探し森を探索する事とした。
しかし、辺りにある植物は見た事がない物ばかりで食えるかどうかも分からん始末......そもそもこの小鬼ーーーゴブリンは草食なのか肉食なのかも分からん。
願わくば......肉食であって欲しいものだが......
暫く当てもなく森を彷徨っていると、背後から物音がした。
振り向くと、茂みからゴブリンが現れ襲いかかって来たのだ。
体躯は同程度ーーーだが、こちらは手負だ。
儂は呆気なく押し倒されてしまう。
襲いかかってきたゴブリンは狂ったように牙を剥き、涎を垂らしながらのしかかってくる。
左腕は捥げ、右手でゴブリンの攻撃を抑え込むのがやっと......
ーーー気を抜けば、死。
脆弱な小鬼相手でも、今の儂では殺されてしまう。
ーーー愉しい......愉しいぞっ!!
ーーーもっと......もっとだっ!!
儂はのしかかって来たゴブリンの鳩尾にどうにか蹴りを入れる。
ゴブリンはその衝撃で後ろに仰け反り、一瞬だが怯む。
だが、その隙を逃しはしない。
儂は皮一枚で繋がっていた左腕を引きちぎる。
捥げた左腕を振り上げ、剥き出しになった骨をゴブリンの右眼に刺す。
その後は左眼、頭部、頬、口内、喉ーーー兎に角、滅多刺しにしてやった。
刺す度に血が噴水のように噴き出る。
初めは抵抗していたゴブリンも、いつしか動きが鈍くなり身体が痙攣しーーー絶命した。
殺したーーー殺したぞッ......!!
前世であれば、幾多の命を塵芥の様に屠ってきた。
だが、どのくらい殺そうとも何の感情も抱かなかった......
前世の儂にとって"殺し"はただの"作業"でしかなかった。
しかし、今は違う......
命のやり取りと云うものがこんなにも胸を熱く焦がし......脳からありとあらゆる分泌液を溢れさせる。
ーーああ、なんという幸福だ。
儂はこの幸福を祝い、目の前のゴブリンの喉元に噛み付く。
同胞の血を啜り、肉を喰らう。
ーーーなんという背徳感。
我を忘れ儂はゴブリンを貪り尽くした。
興奮が冷めないーーー今ならば、女を十人は抱ける。
そのくらいに滾っていたのだーーー。
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