Log.1 患者:ハヅキ
居場所なんてなかった。
出口なんてなかった。
誰もわかってくれない。
誰も助けてくれない。
痛みも、悲しみも、嘆きも。
どうして。
どうして。
どうして。
どうして。
死にたいと願った。
薬をたくさん飲んだ。
手首を切った。
それでも死ねなかった。
病院のベッドの上で無力感を噛み締める。
私の命を助けてはくれても、私の心は誰も助けてはくれないのです。
病院の先生も看護師もカウンセラーもみんな偽善者ばかり。
きらい。
きらい。
きらい。
けど、それ以上に、私自身が大っ嫌い。
もういやなの。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
迷惑ばかりかけて。
何もできない私に価値なんてないのです。
私なんて早く消えちゃえばいいのに。
—
措置入院とかいうので、閉鎖病棟に放り込まれた。
私物はスマホを含めて全部没収された。
スマホもないのに何をすればいいんだろ。
完全に籠の鳥状態。
部屋は個室だった。
相部屋嫌いだからそれは少し嬉しい。
窓を開けようとしてみたけど、ほんの少し隙間ができるぐらいまでしか開かない。
飛び降り防止なのかな。
部屋を一通り見て回っていると、看護師が入ってきて呼ばれた。
「ハヅキさん、診察の時間ですよ」
呼ばれたのでしぶしぶ着いていく。
診察室に入ると若い医者が机越しに座っていたので、向かい側の椅子に座る。
医師はパソコンのモニターで何かを見た後に、私の方に振り返って、話しかけてきた。
「はじめまして、ハヅキさん。私は担当医のヒトセといいます。よろしくお願いします」
それから手首の傷の状態の確認や、最近の状態について聞かれたり、テストのようなものに答えさせられたりした。
木の絵を書かされたり、インクのシミの絵を見せられたり。
ほとんど下を向いて、最低限の受け答えだけしていた。
こんなのどうせ無意味なのにと思いながら、終わるのを待っていたら、1時間ほど経った後に医者から解放された。
病室に帰ろうとして立ち上がったら気持ち悪くなった。
くらくらする。
それでも歩こうとして倒れた。
意識が遠のいていく。
医者や看護師の慌てた声が聞こえてきた。
そして意識が途切れた。