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おまけです。本当は閑話に入れ損ねたっていうあの人の過去話。
本日、3話更新しております。こちら更新分3話目です。読む順番にご注意ください。
※今更かもしれませんが、かなりの胸糞回です。
読まなくても大丈夫ですが、お読みになる場合は心してお読みください。
王族の血を引きながら、彼に名前は与えられなかった。
その国には後宮にたくさんの美姫が集められており、沢山の子が生まれていく。
王妃や国内で力のある貴族から迎えられた側室の産んだ子は生まれた瞬間から王位継承権が認められ、王族として育てられるが、中にはそうでない愛妾の産んだ子も多い。
愛妾の多くは、異国から強引な手段を以て攫われてきた美姫だ。
彼女たちは、怨嗟を込めて夜伽を勤め、呪詛を撒き散らしながら子を孕み、産んだり流産死産したりしていく。
そうして運悪く、五体満足に生まれた子は、美しい姫の血を引くだけあって、どの子も見目麗しかった。
「どれでも好きなモノを選ぶがいい」
少し前までは戦争の褒賞として、現在は拡大していく経済を発展させたり、構想のみの都市計画を実現する技術の開発に成功したり、その資金を献上した事による褒賞として。
彼女彼等は、与えられるのだ。
成人を迎える前に下賜されていく彼女彼等は、愛玩用だ。ペットとして下賜された相手に侍り、心と身体を慰める。
勿論、王族の血を継がせるようなことはないように処理が施されている。
そんな、名前すら与えられなかった下賜品である彼等のひとりが、主人を喜ばせる見世物として敵国との国境付近で彷徨い迷っていたとその土地の領主に捕まった女性を犯すことになった。
美しい下賜品である少年が、平民の、どちらかといえば醜い女性を犯すというかなり趣味の悪いその演目は領主のお気に入りとなる。
延々と何度も開演されることとなった。
飽くことなく繰り返されたその演目の果てに、哀れな女性はひとりの子を産む。
美しい王族の血を引く下賜品の少年。本来ならば子を作る機能がない筈にも関わらずそれを乗り越えて生まれた奇跡の子は、残念ながら領主の期待とは外れ、美しいとは言い難かった。
顔のパーツの幾つかは少年に似ていた。
すっとした眉や薄い唇の形はそっくりだ。だが、それだけだった。
瞳は形も色も母親そっくりで小さく、瞼も一重、鼻梁は低く頬骨ものっぺりして、全体的に如何にもゲイルの農民だ。
だが、実際のところアズノルの領主をガッカリさせた理由は、それだけではなかった。それ以上に子供の瞳と髪の色に問題があった。
アズノルの血を引いているならば赤い髪と瞳、そして浅黒い肌をしている筈だ。
なのに、子供の髪も瞳も赤ではなく母親と同じ灰色で、肌の色は白かった。
つまりは母親の血統が色濃く出てしまったのだ。
新しい下賜品が追加で手に入ると思っていた領主はガッカリしたが、ただでは転ばない性格のようだ。
国境付近を治める領主であったことも大きいのだろうが、敵国ゲイル王国へ潜入させるアズノルの工作員として育てることを思いついたのだった。
ゲイルの平民の血が濃く出たからであろうか。
おおよそ運動などと縁の無かったアズノルの王と異国の高貴な姫の血を引きながらも、その子供の運動能力は高かった。
剣を揮う才覚にも恵まれていたらしい。
知能についても物覚えがよく、一度教えれば間違えることもない。
まだ幼い頃からゲイル王国へ潜入させては、美しい女性に関する情報を探らせたりするだけでなく、高価な美術品を贋作と交換してこさせるなど、嫌がらせのようなくだらない行為を重ねさせては嗤っていた。
だが、ある日。
「は? あのゲイルの子をですか?」
国からの招集で、その子供は召し上げられてしまった。
使い道も何も、元々王からの下賜品といえば伽を申し付ける為の愛玩品だ。
多分、子を為せない筈の下賜品の少年から生まれた子に興味を持ち、戯れに食指が動いたのだろうと吹っ掛ければ、素直に言い値の金子が支払われた。
父親である美しい下賜品も薹が立ち、気に入りの愉快な余興であった、醜いその子供に犯させる行為も面白味が半減していたところであったし、なにより領主にはわからないが子供のゲイル語にはアズノル訛りが残っているようで、何度かあちらで捕まりかけたようだ。
たとえそうなったとしても領主としては痛くも痒くもないが、売れるならば是非もないと送り出した。
「そういえば、その子の名は?」
「ゲイルの子、と呼んでおりました。それで用途は済みますので」
使者から問われて、名を付けようなどと誰も思わなかったことに気が付いて領主が嗤う。
勿論その後の、その子の往く末などに興味はなかった。
これにて、今度こそこのお話も終わりです(何度目w
最後の最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
次回作でもお会い出来たら嬉しいですv




