一
時間がすぎていき、現在カクラはこうして淡々と魔物狩りを続ける日々だった。
冒険者にはランクというものがあり、ランクによってこなせる依頼の質も変わってくる。大まかにランクはA~Gで分かれている。Aランクの冒険者のなかでも特に際立って強かったり、前例もないような華々しい戦果をあげたものにはギルドの本部の集合会議で強さが認められたものはSランクに昇級する。Sランクの中にも序列が存在し、上位になるほど国やギルドからの待遇がどんどん良くなっていく。Sランクになるときは大量の報酬が出されるため人々は憧れることも冒険者を目指す者が増える理由の一環だ。
カクラのランクはBランクでほとんどの依頼を受けることが出来る。ほとんどの依頼というため多くの報酬も一回で獲得が可能であり、一週間で数回の活動でも生活することが可能になる。
しかし、カクラは毎日のように依頼を受け冒険者の活動を行っている。別に本人も一週間で数回でいいというのも理解しているが、休んでいると怠けてしまうし、休んだところですることもないので依頼を受けているようだ。
今回の依頼はこのダンジョン・エルモ迷宮の深部の探索というものだ。これはギルドから直接報酬を貰い、晄の受け取りはなく、そのまま売ることガ出来る、中々においしい依頼だ。
だが、探索の場所は深部。もちろん上位ランクの魔物が数多にいるだろうし、どんな魔物がでるかも確認されていない。そのため高難度で平均的なCランクぐらいだと太刀打ちできないだろう。だがカクラはBランク。CランクとBランクでは雲泥の差があるとも言われている。そしてカクラはこの依頼を達成することは苦ではないと考え受けたのだろう。
ーキィンー
剣が金属にあたる甲高い音がなる。普通の魔物に刃を入れるだけでこんな音がなることなないだろう。
それでもなぜ鳴ったのか。それは相対している魔物が高ランクの翼竜・アルエルフォンだからである。
正確にはBランクに位置する。この魔物の特徴はとにかく皮膚が皮膚でないようにコンクリートのように硬い。
攻撃としては近接攻撃より風を操っての距離をとってのものが多い。風攻撃は範囲が広く回避しようとしても確実に飛ばされてしまうものだ。
飛ばされるだけならまだましなのだが、周りの岩石を削られ破片も混じり放たれるため厄介な相手である。
だが、このアルエルフォンとはエルモ迷宮の低層部ではよく現れる。そのためカクラも何度も対峙して完全に弱点も理解して戦うことができる。
まず、この弱点は翼竜系の特徴のくちばしの内だ。どんなに皮膚が硬いところで体の内部はやわらかいことが想像つく。
そこでただ口を狙い魔導を発動するだけでは、アルエルフォンの風攻撃で返されてしまう。
上位の冒険者であれば威力も速度もはやい魔導を放ち突風をも突き抜けることが可能だが、カクラは魔導専門の冒険者でなく、剣を主軸にダンジョンに挑むもので、そこまで強力なものを放つのは実力上いまでは不可能だ。
そこでカクラは風を切って近接戦へ持ち込む。
が、初手の攻撃は翼竜の機動力で回避されてしまう。
すかさず幻影幻影を使用して混乱させアルエルフォンの口元に飛び込む。
そのまま魔導発動【魔弾】≪派生・暴仡≫を至近距離で発動させ、アルエルフォンの体内へ。
カクラは後ろに早々に飛び去り、直後アルエルフォンが爆散した。
爆発が収まったあとは手を抜かずに晄晄を回収してさらに深部を歩んでいく
【魔弾】
闇属性初級魔法。黒紫色。命中した場合精神面に干渉するがほとんど感じない程度薄ら。
≪派生・暴仡≫
エンチャントと呼ばれる魔導に付与できる魔導の類似ものの一種
着弾した場合、魔導に与えられていた魔力が爆発する