「結局ぼくたち置いてきぼりだね…欄ちゃん」「そうですね…」
結局西田さんは帰ってこなかった……
それから二週間が過ぎた……
「クイズ・サプライズ〜ヒットパレード〜」
いつもと変わらず収録が始まる。
「早速行きましょう順位発表」
「第17位」
「8点獲得……
山上太一さん」
「しゃあ!」
太一は階段を上ってく。
「雪また最下位やで」
吉伸さんが雪に言う。
「………」
「……雪?」
「あっ…はい」
「そんだけボーッとしてるから最下位なんや
席に行け」
雪は最近おかしい……
今日は……一時半には仕事が終わる予定……
今日は大事な日だけど……
ケンカしてるままだし……
このままだと別れるパターンかな……
別れたく無いけど……
お互い気を使って……
一緒にいても楽しくない……
みんなにバレないように……
誰にもバレないように……
それはもう疲れた……
「はいオケーです
お疲れ様でした」
「お疲れ様で〜す」
みんな口々に言ってスタジオから出る。
邪魔にならないような所で話している人もいる。
「今日の雪は完璧に変だったな〜」
「うん元気ないカンジ」
「そう思うでしょ亀兄?」
やっぱ変だよな…
悩み事とかあんのかな……
「亀兄?」
「あっ…そうだね」
「亀谷さんもボーッとしてるんだな」
太一が笑いながら言う。
「疲れてるんですか?」
気を使ってくれる直行。
「まぁ亀兄はいつものことでしょ」
欄ちゃんはスラッと言う。
オレ普段そんな風に見えてんだ。
「西田〜ネタ作りもかねて飯食いにいかんか…」
井本が誘って来る。
「ん〜今日はあかんねん…悪いけど…」
「そうなん……でもいずれかは行くぞ」
「わかってるわ」
「そうか……」
オレは井本から離れ楽屋に戻った。
「西田さ〜ん
今日飯食いに行きません?」
「悪いけど用事あんねん…」
「あっそうですか…
また今度にでも」
悪いな…
今日はめっちゃ大事な日やねん。
「ねぇ雪〜
今日ご飯行かない?」
欄ちゃんに初めて直接誘われた。
「うん行こう」
私は嬉しくて直ぐに了解した……
「じゃ〜今日の七時にいつもの所ね」
私は上機嫌になっていた。
仕事が終わって今は二時……
よし次の仕事って雨か……
外に出たら土砂降りで風邪も強い。
「傘壊れそうだな〜」
マネージャーの車で行こう……
そう思った時ちょうどよくマネージャーが来た。
「直行さん乗ってください」
「あ〜どうも」
仕事場に向かうまでの窓から見た外は東京とは思えないほど人はいなかった……
午後七時……
あ〜こない……
やっぱ来ないんかな…
雨ドンドン強なって来るな…
「ハクション
チクショー」
寒い……
時間は戻って六時半…
「ゴメンね〜亀兄」
「いいけど〜風邪強いな〜」
今は欄ちゃんと一緒に亀兄の車に乗っていつもの居酒屋に向かっていた。
「あれニシモンじゃない」
欄ちゃんが窓の外を指差す。
「何してんだろう…
傘壊れてるし…」
まぁ…アイツは…勝手にしてることだし…
雪は…行かないって言ったから……
「よしついたぞ…」
ニシモン……
たぶん大丈夫だよね…
「「「カンパ〜イ!!」」」
あ〜つかれた〜
今はマネージャーさんに送ってもらってる。
「直行さんお疲れですね」
「そんなことないですよ」
実際つかれてるけど…
あれって……ニシモンさんだ……
何してんだろう?
(プルル)
電話だ。
「はいもしもし」
「なんですか亀谷?」
「仕事終わった?」
「終わりましたけど…」
「一緒に飯くわない?」
「いいですよ」
「じゃ〜いつもんとこで」
そう言うと電話が切れた。
亀谷さんと飯久しぶりだな〜
七時半……
「おまたせしました」
「直行おそいよ〜」
「いや〜すいません」
直行が遅れてやって来た。
直行も座り話しながら食べている。
「あれ直行飲まんの?」
「あっ車で来ましたから」
あれ亀兄も車じゃなかったっけ……
「亀兄も車だよね…」
欄ちゃんが小さい声で聞く。
「………」
亀兄が固まってる。
「どうしよう…飲んじゃった…雪」
「なんで雪に聞くの?」
いきなり聴かれてビックリした…
「いや帰りはボクが乗せて来ますよ」
亀兄はホッとしたみたいでまた食べ始めた。
「そう言えばボクさっきニシモンさん見ましたよ」
「あっ私も〜」
「誰か待ってるみたいでした」
待ってる……
……
バカだ……
「直行そこまで連れてって!」
「えっ?」
直行はキョトンしていた。
「早く!!」
「はい!」
雪は直行の車に乗り込む。
あ〜あかんぞ…
寒い…
雨やめへんかな……
(行かないから…)
やっぱ来ないんやな…
……もうちょっと待とう……
来るかもしれない……
「ありがと直行」
「うん気をつけて」
直行には全部話した…
付き合ってることも…
急がなきゃ…
ウチは全力で走った。
雨、風が強い…
こんな中待ってんの…
あともうちょっと……
……!
(ベチャ)
足がもつれた。
「あ〜もう!」
ウチは痛めた足を引きずりながら歩いた。
あのバカの姿が見え始めた。
あっちはウチに気付いていない……
「ニシモン!」
ニシモンは周りを探し始めた。
「こっちだよ!」
「雪!!」
大きな声で叫ぶ。
周りに人はいない。
「遅いわアホ!!」
「来ないって言ったでしょ!!」
「結局来たやんけ!!」
「きたけど……」
「まぁ来たからいいわ」
「ゴメン…」
「オレも悪かったわ…
……雨でぬれたけどこれ……」
アイツの手にはびしょ濡れの紙袋があった。
「ありがと……」
「びしょ濡れじゃ嬉しくないよな……」
鼻をかきながら言う。
「いや…嬉しいよ」
正直ウチは照れた。
「ところで…なんでそんな泥だらけなん?」
「来る途中でこけちゃった…」
「ドジやな〜」
この一言にカチンときた。
「ニシモンのせいでしょ!」
「なんでやねん!」
「なんでも!」
「意味わからんわ!」
「もう!」
その場からいなくなろうとした。
「雪…足どうした?」
「なんでもない…」
「何でもないことないやろ」
そう言いながらウチの前に来る。
「のれや」
「……えっ」
背中を差し出すニシモン。
「いいから乗れ」
「いいよ…歩くから」
断って歩き出そうとすると…
「ほなお姫様抱っこやな」
と言いながらウチを持ち上げた。
「わかった!わかったから降ろしてよ」
結局はウチはオンブされることになった。
「背中びしょ濡れじゃん」
「当たりまえやろ」
そんな会話をしながら行くあてもなく歩いて行った。
空には満月が見えていた。