行方不明ですが、死んでいます。
新事件勃発
「行方不明ですか......」
「ええ、娘を見つけてください!」
お腹も空いてちょうど眠たくなってきたところに、
事件が舞い込んできた。
どうやら娘が行方不明になったらしい。
普段なら殺人事件を解決するので手一杯なのだが、
今日はどこの部署も大忙しなので、
暇な俺たちの班が対応することになった。
そして今、彼女の自宅へとやってきていた。
「それで、娘さんが最後に見たのは?」
「夜中家を出るときです。
突然真夜中に支度を始めたのでよく覚えてます。
あの子友達と会いに行く、とかって言ってました」
友達と夜遊びか。
最近の女子高生ならよくある話だ。
遊びに行って帰ってこない。
そのまま友達の家にいて遊んでいるのかもしれない。
普通ならそう考えるだろうが俺はそうは思わなかった。
「私を見つけ出してください。」
彼女のその一言が忘れられなかった。
この家に初めてきたとき、彼女の母親が出迎えてくれたのだが、その後ろに彼女の姿があったのだ。
その一言を言うとそそくさと二階に上がっていった。
「あの、娘さんの部屋はどちらに」
「二階にありますが」
「ミヤビ、話を伺っておいてくれ。
俺は娘の『レイコ』さんの部屋を見てくる」
「あらすんじゃねぇぞ?」
失礼します、と告げて階段に足をかける。
お母さんの涙が脳裏に焼き付いていた。
娘を助けてください。
あの人の言葉が胸に刺さる。
扉を開けると窓の外を眺める1人の少女。
レイコちゃんだった。
「なぁ、タバコ吸っていいか」
そう言って胸ポケットを探すが大切にしていたオイルライターをどこかに無くしてしまったようだ。
「机の中」
「え?」
そう彼女が指を刺したので机の中を調べてみる。
そこには無数の空き箱と高そうなオイルライターが一つ。
「それお父さんの肩身なの。
私にタバコを吸うように勧めたのも父。
死ぬときお母さんに内緒だよってくれたんだ」
お父さんは相当やんちゃだったらしい。
実の娘にはタバコなんて吸って欲しくないと思うが、
共通の話題が何か一つでも欲しかったのだろう。
空き箱はどれも銘柄が違っていた。
深く息を吐いて質問をする。
「あんたどこで死んだ?」
「さーね、真部が私をそこに置き去りにしたの」
「真部?」
「うん、私のことをいじめてた1人よ」
彼女はどうやらいじめられていたらしい。
指を刺した先に転がっていたのはカッターナイフ。
なんとなく、彼女の素性を理解した気がした。
「いじめてたのは何人いた?」
「5人、昔は結構仲良かったんだけどね」
「女子は?」
「全員女子よ」
なるほど。
女子同士のいじめってわけか。
仲良かったのにハブられてしまったと。
よくあるパターンだが、自殺でもないしな。
殺しの可能性も低い。
「ところでなんで死んだんだ?」
「幽霊」
「え?」
「幽霊に殺されたの。
急に声が聞こえてきて。
『ドコナノ、ミツケテ、ワタシノ、カクサナイデ』
って言う声がね』
話は結構単純だったらしい。
どうやら彼女は廃校やら廃墟の類に置き去りにされたんだろう。
そこに取り憑いていた幽霊が彼女を殺したと。
普通ならありえない話だが、俺は死神である。
悪霊の存在は今までいくつも見てきた。
悪霊とは。
生きるものが死ねば死者となり、肉体を失い、魂だけの存在となる。
これは当たり前だが、魂が成仏できず、現世を彷徨い続けることがあれば、悪霊となる。
魂を悪霊としないために俺たちは現世に紛れ、魂を見つけ出して導く仕事をしているのだ。
死神の殆どが、葬儀屋か医者。
魂が最も近くに存在しているからだ。
葬儀屋であれば、死体に嫌でも会うことになるし、
魂にも嫌でも触れ合うことになる。
医者は自分で殺す。
魂を喰らうことしか考えていないクソな死神が務めるところだ。
全員が全員そう言うわけではない。
寿命だとか、不治の病なんてので死んでしまった魂を導くために医者をやっている奴もいる。
「それで?どうやって私を救うの?」
「まずはこの地域の都市伝説だな。
都市伝説って信じるか?」
「死神だのなんだのを見たのよ?信じるわ」
ま、そりゃそーか......。
だいたいの悪霊は都市伝説となっている。
彷徨い続けて悪霊になると言っても何十年と言った期間彷徨い続けなくてはいけない。
だいたいそれぐらい彷徨い続けていては都市伝説にもなるだろう。
「ま、とりあえず調査だな」
「灰皿はそこの缶コーヒーね」
からんと小さく音がなった。