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第四部 中編  マジシャンガールとフェイクボーイ

 月曜日の朝、学校に着くとすぐに俺はある人に頼み事をしていた。


 

 彼は教室の一番廊下側の席でイヤホンをしながらアニメを見てニヤニヤしていた。


 周りの目にはどう映っているのだろうか…。彼の顔はもしかしたらセクハラ扱いされてもおかしくない。そんな顔をしていた。


 「おはようおたりん!」


 「ん?駿殿!おはようでござる!」


 そんな彼のスマホの画面を見てみる。


 「何見てんの?」


 おっそれは今期もっとも注目されている。「異世界はガラパゴス携帯と一緒に」じゃなですか。


 「それめっちゃ面白いよね!主人公がチートの癖に本当に困った時以外は実力を隠しててさ!」


 「うむうむ。誠にそうでござりますな!仲間が本当に困った時に裏でこっそりと問題を解決し、終わった後は何もなかったように手柄を誰かに渡す。まさに脳ある鷹は爪を隠す!主人公最強とはこのことでこざる!」


 おたりんが女以外に夢中になるとは…まぁ確かに内容はとても面白いものだったので意外という訳ではなかった。


 「あぁ俺もなんか起こらないからぁ……朝起きたら日本人が大好きな異世界に迷い込んじゃって、出会う女の子と朝から晩までブヒブヒなことを……」


 「しゅ、駿殿!よ、よだれが……」


 「あ……」


 俺は瞬間に腕で口から垂れたよだれを拭いた。


 やばいやばい。いくら田中に憧れてるからってこんな想像…でもうらやましぃ!!


 「と、ところで…どのような用事でこざりますか?」


 そわな汚物を見るような目で見ないで!さっきまで君もこっち側だったよ!!


 「う、うん。実は…今日のお昼休みに行って欲しい場所があるんだよ」


 「ほう。どこでござろうか?購買で買ってきて欲しいものとか?」


 「いや、学校の駐輪場で昼休み中ちょっと張り込みをして欲しいんだよ……ね。」


 「!?なぜに急にそんなことを?好きな女子が急に駐輪場から出現するでござるか!?」


 「いや、そんなポケ◯ンみたいな感じで飛び出してこないから…」



 「うーん。それにしても…わたくしのお昼ご飯が…流石に駿殿の頼みであっても……」


 明らかに残念そうに下を向いていた。


 しかしこんなものは想定済み。これを見込んで俺はあるものを用意しておいた。まぁ流石にいきなりお昼休みを削って見張ってくれなんてただのクソ野郎だからね。


 「ふっふっふっおたりん…これを見ろ!!」


 「ん?なんです………こ、これは!!!超激レアなほとんど手に入らない雨宮空さんの声優ライブのチケットじゃん!!どこでそれをゲットしたんだよ!!」


 あれ??キャラ崩壊してるよ??


 「実は裏で色々と…ね。」


 「なかなかやるじゃねーか高木!!昼飯なんて食ってる場合じゃねぇ!駐輪場が俺を呼んでるぜ!」


 えぇぇ……


 そう叫んだ途端おたりんは全速力で教室を出て行った。周りのクラスメイトは明らかにビビっおり、クラスの視線が俺に向く。


 おい!この状況どうするのよ!皆んなこっち見てるんですけど…しかももうゴミを見るような目で…。

 

 「あはっあははは。それにしても今日も天気いいね!」


 取り残された俺はなんとも言えない表情でピンチを脱出し、もう一つ用事がある所へ向かった。


 (それにしても今じゃないんだけどなぁ…。)


 彼はこのあとの午前の授業にフル欠席だった。



 今いるのはは西校舎の2階。そこには2年生のA組からC組までの教室と3年生の教室がある。



 「うわぁ…先輩って感じだぁ…。早く用を済ませないと」


 辺り一面に居るのは俺よりも全然大人びている先輩達ばっかりでかなり萎縮していた。サッカー部の先輩も勿論居るわけで…時間がないのに絡まれるのだけは絶対に嫌だ!


 恐る恐る廊下を少し歩くと2年B組の札が目に入った。


 「ここかな…」


 見慣れない教室の中を見る前に少し深呼吸をしてからお邪魔することにした俺は


 (ふうぅぅー)


 「やっほー!!!高木くん!どうしたの??」


 「うわぁぁぁああ!!」


 後ろからの唐突な声に叫んでしまった俺は明らかに注目の的になった。


 「そ、そんなにビックリしなくてもいいじゃない〜それともこんなに可愛い先輩に呼んでもらってビックリしちゃった??」


 うっ…それは否めない。


 御門先輩は今日もとてつもなく可愛く。普段と違うふわふわした桃色のポニーテールと赤色の丸メガネははいつも以上に童貞に対して殺傷能力が高そうだ。


 「いや、実は先輩を探してて…」


 先輩と少し距離を取り事情を説明する。それにしても柑橘系のいい香りが鼻をくすぐる。


 「まぁまぁ〜私にどんな用事かなぁ〜?遊びのお誘い?それとも…告白とか?」


 ち、ちかい…。


 「そのワンチャンあるよ?みたいな顔でこっち見ないでくださいよ!」


 彼女はワザとらしく顔を赤くし、モジモジしながらこちらを上目遣いでこちらに近づいてくる。目の前にある大きな胸が目をそらそうとしても視界に入り込んでくる。


 「で……どうなの…かな?」


 「ち、違いますよ!」


 こんな明ら様な茶化しに動揺してしまっている自分が相当恥ずかしかった。もっとイケメンに生まれてくれば……


「なーんだつまんなーい!で、何しにきたのかな?この感じだと私に用があって来たんでしょ?」


 本当につまらなそうな顔をするから怖いんだよねこの人…何を考えているのかさっぱりわからない。

それしにても流石小悪魔先輩…こういうところは本当に鋭い。


 「あ、はい。実はですね………」


 「うんうん………」



 1日の学校を終えて、放課後に俺はいつも通り校門の前で待っていた。


 今日の空はいつも以上に雲が少なく日が沈みそうなのがよく分かる。紅く染まった空は直接見るには少し眩しかった。


 「あれ?駿ちゃん?」


 帰宅途中の生徒の中から女バド集団の姿が見え、俺に気づいた夏芽が声をかけて来た。


 「夏芽〜相変わらずらぶらぶだねぇ〜」


 「だから!違うよ!ただの幼馴染み!」


 「でも最近結構一緒に帰ってるじゃ〜ん?ワンチャン?」


  「もう!私は春!!って花音達は先に帰って!!」


 自ら墓穴を掘りそうになった彼女は頭から湯気を沸かしながら手をぶんぶんさせていた。


 「はぁ〜い。言われなくてもお邪魔ものはさっさと帰りますよぉ〜。」


 そんな感じで冗談紛いに他の女子とニヤニヤしながら一緒に帰っていった。


 「ふぅ〜。どうしたの?なんかあった?」


 部活とは違う汗をかきながら彼女は手でパタパタ顔を仰いでいた。


 「う、うん。夏芽今日一緒に帰れる?」


 「え?今日って確かサッカー部で一緒に帰れないからバラバラで帰ろうって…」



 「そうなんだけど…実は色々予定が狂っちゃって…」


 「どうしたの?元気ないよ?」


 不思議そうに俺の顔を見つめてくる。


 「もう1人…一緒に帰ってもいい?」


 「ん?もう1人って…」


 俺たちの後ろから聴き慣れた声がした。


 「よ、よう!夏芽!部活お疲れ様!」

 

 木の影から少し動揺しながら現れたのは夏芽が今1番来て欲しくなかった相手だった。



 「は、春ちゃん!?なんでこ、ここに?」


 夏芽は明らかに動揺した様子を見せており、目をバツにしながらアタフタしていた。


 しかし、彼は真剣な眼差しでこう言った…


 「夏芽……駿から聞いたんだよ。お前がストーカーに遭ってるって…」


 「………え?」


 「俺、ずっと心配してだんだよ。最近夏芽の様子がおかしいから気になっててさそしたら駿が教えてくれて…幼馴染みなんだから隠しごとはなし…だろ?」


 彼女は硬直し、明らかに白い顔をしていた。


 俺はこんな彼女の顔を見たくはなかった…夏芽を裏切ってこんなことはしたくなかった。でも泣いてる顔はもっと見たくなかった。



 「しゅん…ちゃん?」


 呆然とした顔で俺の方を見る。


 「ごめん…夏芽…俺を信用してくれたのに…。でもどうしても春の力がないと無理なんだ。」


 3人の間に沈黙が流れる…。学校から帰宅する生徒はチラチラと俺たちを見ていた。修羅場だと思われているのだろう。


 「……信じてた。私駿ちゃんのこと信じてたの。あの相談した日、なんでも相談できるのは駿ちゃんだと思って相談したの。」


 「本当にごめん…で、でも!」


 「大丈夫だよ…大丈夫。分かってる。考えがるんだよね??」


 「駿ちゃんがなんもなしにこんなことする筈ないじゃん!それに1人で抱え込むのは大変だったもんね…ごめんね私のわがままで」


 彼女は笑顔だった。でも手は震えていた。

好きな田中にバレてしまったことに対して怒っているのでない。信用していた俺がバラしてしまったことに怒っているんだろう…。


 「あの……お二人さん?なんか俺邪魔でした??」


 隅でなんとも言えない感じでたたずんでいた田中は場が悪そうに言う。


 「ううん!春ちゃんがいてダメなんてことあるわけないじゃん!皆んなで一緒に帰ろ?」


 彼女はそう言って田中の手を取り歩き始めた。


 俺はただ枯れた地面を見たまま動かなかった。

         




 




 


お久しぶりです。謹慎期間が終わり忙しくなってしまいなかなか執筆することができず悔しい限りです。これからもゆっくり書いていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。

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