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第二部 後編② 俺と彼女の雨模様

  「しゅんちゃん……なの?」


 彼女の一言は俺をさらに困惑させた。


 (俺は彼女に会ったことがある??いつ?どこで?こっちはもう、「初見さんいらっしゃい〜。ゆっくりしていってね!」状態なのに)


 「す、すみません!いきなりビックリしましたよね。私も、動揺してまして。」


  「い、いや別に大丈夫です!それでしゅんちゃん?というのは……」


  「………そうですか。」


 彼女に笑顔はなくなりパタリと下を向いた。


 どういうことなのだろうか。


 「でも、大丈夫です。まさか今日がこんなにも素晴らしい日になるなんて思ってもいませんでした。またいつか会いましょうね。」


 何かを察したのか、彼女はそう言い残しそのままどっかへ行ってしまった。


 (また?)


 その言葉が引っかかっていた。でも、俺はそれよりももっと重要なことに引っかかっていた…


 (なんで俺は連絡先は愚か名前すら聞かなかったんだ!一目惚れの初恋の相手に名前まで聞かなかった…。)


 俺は明らかにショックを隠せずそのまま土下座をした。


 「お、おい…駿、地肌に土下座なんかしてなにやってんだ?」


 神へのお祈りだよ…。


 「え……」


 春は明らかに汚物を見るようにドン引きをしていた。


 「でも……お前、あんな美人さんと知り合いだったのか?小学校でも中学校でも見たことないぞ?」


 俺も1番気になっていた。今回ばっかりは田中も鈍感ではなく、俺らは本当に彼女を見たことがなかった。

 ただ忘れているだけなのかもしれない。しかし今のところ彼女について何も思い出せないのが現状であった。


 「俺も見たことはないかな。」


 「だよな、でも俺らと同じ制服だったよな…?」


 「あぁ、しかもリボンの色も青だったね。」


 俺らの高校は1年生が青色のネクタイとリボン、2年生は赤色、3年生は黄色を着用しなければない。そして彼女は青色のリボンを付けていた。つまり俺らの同じ1年生ということになる。


 だとしたら "また"という意味は同じ学校の同じ学年だから……ということなのだろうか?なにかまだ他に意味があるような…含みのある言い方だった気がするけど…。


 彼女への謎は深まるばかりであった。


 「そういえば、俺らなんか忘れてない?」


 春、どうしたのそんな汗かいて?まさか惚れちゃったの?それは…夏芽に殺されるよ。


  ん?…そういえば、今日って確か…



「…………………………」


 

「「入学式だぁぁぁあああ!!!!!!」」


 このあと急いで高校に向かったけど、乙女 金剛というとても怖そうな(いや、実際怖いってもんじゃない…)担任に記念すべきデコピン1発目と2発目を喰らったのであった…。



---それから数日後------


 入学したばかりの俺らだけど、自己紹介や委員会決めなど新学期あるあるを済ませクラスの皆んなとは着実に馴染み始めていた。(初日から遅刻したことが1年の間で噂になってることは……内緒。)


 全ての授業を終えた幼馴染み3人は俺の机の周りで集まっていた。


 「やっぱり流石幼馴染みって感じだよな!3人ともまた一緒のクラスなんて!」


 子供のようにはしゃぐ春。


 「も〜それ何回目??流石にもういいよ〜。」


 面倒くさがっている夏芽も本当は嬉しそうな顔をしているのは見た瞬間にすぐ分かった。 


 「3年間、ずっとこのままだったら最高だね。」


 このままずっと親友でいたい。気がついたら俺はそんなことを口にしていた。

 「そうだね。」


 「あぁ、間違いねぇ!」


 当たり前だろ?と言わんばかりに笑顔でうなづいてくれていた2人に俺をからかう素振りは一切見えなかった。


   (…親友とは素晴らしいものだ。)


 「そういえば、このあと生徒会の演説じゃなかった?」


 何気なく夏芽が言う。


 「そういえばそうだったな!俺は可愛い子に投票しようかな〜」


 「ちょ、ちょっと!真面目に決めようよ!学校のために動いてくれる真面目な人!!」


 田中の冗談に夏芽は焦ったのか、目をバツにして田中の肩をポカポカ叩いていた。


 「別にそんなにキレなくても、せっかくの可愛い顔が台無しだぞ?」


 「………////」


 (プシューーー)



 この調子で高校もやってくのかなぁ。


 安定の鈍感さにやれやれという感じで俺はため息をついていた。


 「も、もうっ春ちゃんのそういうとこ!!なんで…そんな簡単に言えちゃうの…///」


 夏芽も大変だな。


 「おーい。そろそろ体育館に行くぞ〜館履は忘れんなよー。」



 そんな担任の呼びかけのあと、俺らはぞろぞろと体育館に向かった。


 「ここの体育館、本当に設備いいよなー」


 「そうだね。流石って感じかな」


 体育館の最前列の1番番右側にいるA組は名前の順で座ることになり、俺と春は "たなか"と"たかぎ"

という名前なので前後同士で話していた。

別にこれは小学校の時からのことで偶然ということはなく、むしろこれが普通だと感じている。

 「こりゃー夏芽ももっと強くなるな」


 「このまま全国行っちゃったりして?」


 「いや、それはきびしいんじゃないか?夏芽も相当うまいけど。」


 春の返答にはかなりの重みがあった。


 確かに俺ら初心者から見れば、夏芽は相当上手い。こないだ遊びでやった時なんか、0対21のラブゲームでボコボコにされた。でもそんな夏芽にも上には上がいる。


 俺らの地域は埼玉県南部に属しているけど…この地区はスポーツの強い高校がゴロゴロいる。俺らの学校も弱くはない、でも強くもない。特に夏芽のやっているバドミントンなんかは埼玉咲江や、霊名女子など強い高校だらけだ。

 それがスポーツの世界…その厳しさは俺はもちろん春もサッカーでかなり味わってきてるから相当理解しているだろう。

  

 「え〜、皆さんおはようございます。こんにちは。こんばんは。春から通っている1年生の皆さん凡凡高校には慣れましたでしょうか?

そして、2年生の皆さんは先輩としての自覚を持ち始めたでしょうか?さらに3年生……」


 (校長…あいさつがなんでYouTuber?しかも、これ絶対に長いやつやん…)


 俺の予想は的中し、その後校長先生の話は30分も続いた…。


「くぅ〜やっと終わったぁ〜、もう尻がいてぇーよー。」


 後ろに座っていた春は、あくびをしながら座る体制を直していた。


 「はあ〜しかもこのあと、演説かよ…。」


 そうだった…このあと生徒会の演説だった…。


 この後まだ人の話を聞くと思うとかなりキツイ…。なにより、生徒会など俺にとってどうでも良かった。



 早く帰りたい。


 「えーそれでは次に生徒会役員選挙の演説を始めます。」


 この学校では、このように体育館で生徒会選挙活動の始まりを告げる生徒会役員選挙の演説を行う。この演説でどんな人がいるのか、どんなマニフェストを掲げてるのかをまず全校生徒に知ってもらう。そしてその翌日、つまり明日から2週間選挙運動が始まり、最終的に投票が行われ票数が多い順に会長、副会長など決まってゆく。

ちなみに1年生はどんなに投票数が多くても

会長と副会長にはなれないって夏芽が教えてくれた。


 にしても…


「パッとしないのが多いなぁ〜」


 退屈そうな春も同じことを思っていた。別に生徒会を否定してるわけではないが…今のところ1年生はみんな言うこともおんなじで特に目立った人はおらず、

周りの雰囲気も皆んな飽き始めていた。



 「続きまして、ひいらぎ ひふみ さんよろしくお願いします。」


 やっと1年生最後か。


 「はい。」


 ん?この声どっかで聞いたことあるような…


体育館の表彰台の階段を登り、マイクの前に立つ黒髪ストレートで、真紅の瞳を持つ彼女は…


 え、嘘でしょ?あの人ってまさか…


「朝のぶつかったやつじゃねーか!?」


 びっくりした様子で春が叫んだ。


 まじかよ……あの女神は紛れもなく今朝の女の子…まさか生徒会志望の子だったのか。


 そんな中驚いてるのは俺らだけではなかった。周りの生徒たちの空気も一気に変わり、「なんだ!?あの可愛い子!?」、「え?めっちゃ可愛くない?」そんな声がどこぞかしこと聞こえてくる。


 やっぱり超可愛いんだ、あの女神。


 「皆さん、こんにちは。私はこの春から高校に通わせてもらっている、柊 ひふみ と申します。」


 彼女の綺麗な声は体育館を圧倒した。


 柊 ひふみって言うのか。よし!神様に土下座した甲斐があった。


その後、自己紹介が終わった後の彼女言ってることは何一つ耳に入って来なく、


 彼女の綺麗な横顔…ただひたすらにそればかり見ていた。


 「最後に皆さんに伝えたいことがあります。」


 ん?なんだ??


 会場もどよめき出した。


 「私がこの高校に来た理由は1つ……」



   (ゴクリッ


  

  『将来の婚約者を見つけに参りました。』


 そう言った彼女は何事もなかったように壇上を降りた…。


  (うぉおおおおお!!!!)


  (よっしゃぁあああ!!!!)


 餌の時間かな?体育館の猿たちは暴れまくり、まるで大恋愛時代の幕開け宣言されたように熱狂の渦が辺りを包み込んだ。


 「春…なんかすごいことになってない?」


 「………………」



  後ろを振り向くと彼はどこかを見つめながら、なにかを考え込んでいる様だった。


  「ん?」



 あれから二週間後、生徒会選挙活動が無事に終わり

体育館中に響き渡ったあの衝撃的な宣言とその美貌により柊 ひふみは生徒会の会計委員として抜擢され、余裕で選挙を勝利した。もちろん俺も入れた。

 噂によると他の1年を圧倒しての1位だったとか…。 流石女神…末恐ろしい…。


****************


 って!ぶつかったの田中だ!!またあいつなのか…。


 俺の純粋無垢な妄想さえ全て田中の手の内だった。


 どうやら俺の妄想は嫉妬のせいで一部内容が改変されていたらしい…。相変わらず切ない。


 しかし、あれからというのも俺は一度たりとも柊を見たことはなった。別校舎というのもあるけど、こんなに合わないものなのだろうか。本庄は毎日のように見てるのに…。


 はぁ〜次は絶対に俺がぶつかる!


そう言いつつ学校の時計が目に入る。


 え……デコピンタイムじゃん。



(俺はのちに彼女が大きな事件に関わってるということをまだ知る由もなかった。)


 





 


 


 

 

 


 




こんばんは、ゼンサイです。

やっっと第二部が終了しました!

長くなってしまい申し訳ありませんm(_ _)m

次回からいよいよ、本編の第三部の始まりです!


ストーカーは誰なのか?目的はなんなのか?

そして、田中の過去とは?


拙い文章ですが、次回以降も楽しみにしていただけると幸いです!

それではまた次回も宜しくお願いします(^^)


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