表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

もしも経営者がダンジョンマスターになったら

もしも経営者がダンジョンマスターになったら②

こんにちは!


調子に乗って続編を書いちゃいました


まだまだ試行錯誤の段階なので、是非批評や感想など頂けたら幸いです!

「アスタロト様、遠路はるばるお越し下さり誠にありがとうございます」


目の前に立つ老紳士を出迎え、私は恭しく頭を下げた

後ろではメイドたちも片膝をついて出迎えている


老紳士とは言え、全身から発する威風堂々たる佇まいに畏怖を抱かない者はいないだろう


それもそのはず


今の姿は人化した仮の姿で、彼は何百年もの長きに渡って難攻不落を誇る世界屈指のダンジョンマスターであり人類から天災と怖れられる最強の魔王の一角、「黒龍王アスタロト」なのだ


人化したその姿も王族かと見間違う荘厳な漆黒の衣装に身を包み、老齢とは思えない隆々とした体躯と額から後頭部にかけた羊角のような二本の立派な角が眩しいほどに威厳を放っている


「久方ぶりよの舅殿、息災であったか?

孫の様子がどうしても気になってのう、突然の訪問となって申し訳ない」


「いえいえ、アスタロト様をお迎えできて光栄です

クロエもさぞ喜ぶことでしょう

どうかご自身の(ダンジョン)と思いおくつろぎ下さい」


メイドに合図を送りアスタロトの外套を預からせ、準備していた紅茶と茶菓子でもてなした


「かたじけない、ワシは菓子に目がなくてな

ところで舅殿、近々訪問すると手紙を送ってはおったが今日この時間にワシが来ることが何ゆえ分かったのだ?」


「それならば、物見の者から連絡を受けていたのです」


「しかし、自慢ではないがワシの飛行速度は音速を超えるのじゃぞ

共の者に合わせていたとはいえ、数キロなどひと飛びじゃ

ワシらの姿が見えてから準備したのではとても間に合わぬであろう」


「それは、この者達のおかげです」


そう言って私は肩の上に乗るゼリー状の魔物を指差した


「む?これはブルースライムか?」


アスタロトは博学だ

魔物の頂点に位置するドラゴンがスライム種に興味を持つなどということはなかなか無いことだろう


「さすがはアスタロト様

このブルースライムの特技は分裂です

私のダンジョンから半径数十キロの範囲の至るところにこのブルースライム達の分裂体を潜ませております」


「なるほど、それでワシらの接近を知ったのじゃな」


「はい、それ以上はご容赦ください」


分裂体の情報はこの城にある情報分析室に送られて隠密部隊が情報処理を行なっているのだが、いくら親戚付き合いに近い相手といえど機密事項に当たるだろう


「よいよい、ただ興味が湧いたものでの

いくら舅殿とは言えこれ以上の詮索はしまいて」


世界最強の一角は引き際もわきまえている

どのダンジョンも防衛策は生命線だ

それを丸裸にされればそれは即ちダンジョンの籠絡を意味する


もともと小さな戦力を策で補ってきた私達にとっては特にその傾向が強い


アスタロトには秘密にしているが、ブルースライムはアスタロトのダンジョンにも潜ませてある

世界中のどこにでもいる魔物なので、どれが私の部下なのか見分けはつかないだろう


また、全てのスライムを排除するなどとてもではないが不可能だ

家屋に巣食う害虫を想像すれば容易い


私達魔物にとって人間が共通の外敵ではあるが、ダンジョン同士の戦争も珍しくない

私もこれまで幾度もそれを経験してきた


騙し合い、時に骨肉を争う弱肉強食の世界なのだ


「ところで舅殿、クロエはどこにおるかの?」


そわそわした様子でアスタロトが尋ねる

単騎で国を滅ぼす力を持つ龍の王も孫娘に早く会いたくて仕方がない様子だ

彼女と会うのは婚礼式以来なのだから無理もないだろう


「はい、クロエと息子は新居でアスタロト様をお迎えしたいと申しております

新居はダンジョンの中にございますので、よろしければ私がご案内致しましょう」


「それはかたじけない

しかし舅殿、部外者のワシが貴殿のダンジョンに招かれて良いのか?」


「構いませんよ、こちらへどうぞ」


確かに黒龍王をダンジョンに招き入れることなど正気の沙汰ではいだろう

万が一彼の気が変わればたちどころにダンジョン内を蹂躙されてしまうかもしれない


しかし世界最強の魔物がわざわざ孫娘のために出向いて来たのだ、無下にすることなどできようはずはない


それに、クロエ達がいるのはダンジョンの浅層部にあたる第2階層でそこまでは見せても良いと判断している


アスタロトも私の誠意を汲み取ってくれたのか、お供の親衛隊を城壁に待機させ私に続いて入城した


「しかし舅殿のダンジョンはいつ見ても面白いのう

このようなものは、何百年生きてきて初めて見る光景じゃわい」


通常ダンジョンは、ポピュラーな洞窟型の他に遺跡型や塔型、城や神殿といった外観を有しておりその中は思考を凝らして戦力や罠をどれだけ配してもその外側に気を配る者はいない


私のダンジョンは洞窟型だが、その入口のある山全体を二重の堀と城壁が囲い山頂には6階建の城が建てられたいわば城塞のような様相だ


「おぉ、壮観よのう」


外層の城壁を降りると、そこには部隊が整列しアスタロトの来訪を出迎えた

各部隊の整列には寸分の乱れもない


実を言うと、これは万が一の場合アスタロト達を迎撃するための備えでもあった


その先頭には、赤備えの美丈夫と巨体の戦士がいる

アスタロトは二人の前で立ち止まった


「久しいの、ムラマサ」


「はっ」


紅強襲部隊(クレナイ)の隊長ことムラマサは私の最も古くからの部下のひとりで、アスタロトとも面識がある


「ウチの親衛隊長からの言伝じゃ『次は負けぬ』とな」


「望む所にございます」


ムラマサは涼しげに頭を下げた


彼は日々鍛錬を絶やすことがない

そして噂を聞きつけては他のダンジョンへ出稽古に赴き、その地の猛者と模擬戦闘、というかほとんど殺し合いを行うのだ


近頃は戦う相手を探すのにも苦労しているようで黒龍王のダンジョンまで足を延ばしている


「いずれワシが手合わせしてやろうかの?」


悪戯っぽい微笑みを携えてアスタロトが言った


「是非に」


若干食い気味に、ムラマサは気色を孕んだ返事を返す


「お、おぉう、いずれだぞ、いずれ考えてやらんこともない」


予想した返事と違ったのか、アスタロトは僅かにたじろいだ様子だ


「是非いずれ」


ムラマサは何度負けても文字どうり『勝つまで』通い詰め、勝った相手に二度と負ける事はない

その強さとしつこさで魔物達から恐れられている



「この者は?」


次にアスタロトはムラマサの隣で跪く巨体の戦士に目を向け私に訪ねた


「この者は機甲部隊長を務めるコンゴウと申します

アスタロト様にお目見えするのはこれが初めてです」


「ほお、お主が魔導砲を跳ね返すという戦士か!?そなたの噂は聞き及んでいるぞ」


「有難き幸せ」


「しかし、あれにはワシらですら手を焼いておる

部下の中には噂は眉唾ではないかという者もおっての」


「よろしければお見せ致しましょうか?」


口下手のコンゴウに代わって私が提案した


「なんと!?しかし、魔導砲はどうするのだ?」


「あちらに」


私達が今いる場所は部隊の演習場を兼ねていて、その一画には魔導砲が配備されている


「なんと!?そなた魔導砲まで持っておるのか?」


「ええ、先日の戦闘で敵軍が置き去りにしたものを接収致しました」


「ほう、それは楽しみじゃのう」


すぐに魔導砲の発射準備が整い、他の兵達を遠巻きに退避させるとコンゴウはひとり距離を置いて魔導砲に向き合った


「いつでも」


両脚を開き、大楯を構えたコンゴウが合図を送ると魔導砲への魔力充填が始まった

それに伴い櫓程ある台座に取り付けられた寸胴型の砲身が淡く光を纏う


「魔導砲発射5秒前、4、3、2、1、『発射』」


カウントダウンに合わせて魔力の光が砲口に集まり、その放出とともに轟音が鳴り響いた

撃ち出された魔力弾は一直線にコンゴウへと着弾する


その間僅かコンマ3秒


容易く一部隊を吹き飛ばし城壁を砕く凶悪な魔力弾がコンゴウを襲い、着弾と同時に爆発して粉塵が辺りを白く染めた


「凄まじい威力じゃの、あの者は大丈夫か?」


「ええ、問題ございません」


しばらくしてようやく視界が戻ると、そこには微動だにしないコンゴウの姿があった

爆発によって地面が大きく抉れているが、彼の背後は全くの無傷だ


「おお、素晴らしいではないか!聞きしに勝る膂力よのお」


アスタロトもすっかり感心した様子だ


「次」


コンゴウは短く次弾発射を促した


「もうよいぞ、お主の力は十分見せてもらった」


「アスタロト様、コンゴウは魔導砲の出力を上げて撃つよう申しております」


「ん?今のは力を抑えて撃っていたのか?」


「いえ、逆です

我々は魔導砲を改造して、人間が配備している最新式の3倍まで出力を上げることに成功しておりますので

ただ、重量がやや重くなってしまいましたが、、、」


「さ、3倍だと?」


「はい、今の砲撃も2倍まで出力を上げたものです」


「どうりでワシがこれまで見たものより威力があったはずじゃわい

しかし、なぜわざわざ出力を上げておるのじゃ?人間どもの魔導砲はそれほどではないのじゃろ?」


「はい、ですが人間は技術を進化させることに長けております

次戦ではおそらく魔導砲の出力を増幅させてくるでしょう

我らはそれに先んじた対策を行っておるのです」


「3倍の出力向上などしばらくは心配いらぬじゃろうに、、、まことに恐ろしい男よ」


「はい?」


「なんでもないわい、そなたの軍隊の力は十分見せてもらった

感謝するぞ

皆の者もう出迎えは十分じゃ、楽にしてよいぞ」


「「?」」


ムラマサとコンゴウが同時に首を傾げた


「なんじゃ、おかしなことを言ったか?さあ、解散せよ」


「アスタロト様、この者達はこれより戦闘訓練なのです」


「なるほど、それは失礼した

せっかくじゃから少し見せてもらってもよいか?」


「もちろんです」


ムラマサとコンゴウは会釈した後部隊に指示を送り、しばらくすると独立混成旅団での野戦を想定しそれぞれが旅団長を務める模擬戦闘が始まった


「、、、」


「、、、、、」


「、、、なあ、舅殿よ、、、」


「はい、何か」


「これは訓練よな?」


「はい、その通りです」


「めちゃくちゃ怪我人が出とるようじゃが?」


「いつもの事です」


「あの者など足が千切れかけておるぞ?」


「回復の泉がありますので」


「でも、めっちゃ痛そうだぞ?」


「なぜそのような事になったのか、後でレポートの提出が必要ですね」


「そういうことぢゃなくて、、、」


紅強襲部隊(クレナイ)黄機甲部隊(キイロ)の模擬戦は、いつも死すれすれのところまでの激烈な訓練をする


特にムラマサとコンゴウは何度死線を彷徨った事だろうか


しかし、実戦では驚くほど死者を出さない


何をしくじれば致命傷となるのか、戦さ場では僅かな綻びが命を奪いときに自分だけでなく部隊全員を危険に晒す


そうならないための訓練だ


兵達はそれをよく分かってくれている


「あら、クロエのお爺ちゃまじゃない?いらっしゃい」


私達の背後からおよそこの修羅場と化した訓練場に相応しくないゆったりとした声がした

振り返ると白と赤の巫女装束に身を包み、一纏めに結われた紫色の髪に黄金色の髪飾りをした次女が嬉しそうに微笑んでいる


「おおう、モミジかしばらく会わぬうちに大きくなったのう

お主にも後で会いたいと思っておったのじゃ」


「それは嬉しいわぁ、でも私もこれから訓練に参加しなきゃだからまた後でねえ」


「ぬ?まさかお主この訓練に参加するのか?危なくないか」


アスタロトは幼い頃のモミジを自分の孫のように可愛がっていたことを思い出しているのだろう


「まさかぁ、それは専門外よ

そろそろ出番だから、しっかり私の活躍を見ててよぉ?」


そう言ってモミジは予め組まれていた神楽台へと歩いていく

本来なら、訓練開始からいなくてはならないのだが彼女は少しおっとりとしたところがある

しかし、肝心な時に遅れた事は一度たりともない

今日も丁度出番に合わせて訓練場に姿を現した


「舅殿、モミジは何をしようというのだ?」


「はい、モミジは支援部隊の長を務めております」


「なるほど、モミジは支援魔術に長けておったのか

優しいあの子らしいのお」


「はい、ですが少し印象は違うかもしれません」


舞台の中央でモミジが舞の準備を整えると、神楽台の横に控えていた雅楽隊が演奏を始めた

私の世界で世界最古のオーケストラ呼ばれている神に捧げる音楽だ


雅楽の演奏に合わせてモミジの舞も始まる


「何とも不思議な、それでいて神々しさを感じる舞いよのお

慈愛、荒々しさ、そして哀悼、まるでこの世の摂理を表現したような舞じゃ」


アスタロトも彼女の舞にすっかり見惚れている


ー 我、汝を欲する者なり

汝は形が無く、無限の、そして超越的な、不変絶対の宇宙の根理なり

同時に汝は世界の根源的な魂なり

汝、応えよ、汝、我に加護を与えよ ー


モミジの舞と唄に共鳴するかのように快晴だった空に暗雲が立ち込め、やがてその雲は彼女の上空で渦を巻き、その中心から光が射し込んだ


「いでよ、破壊神(シヴァ)


「ほげっ!?」


アスタロトは何とも言えない声を発したが、轟々と渦巻く大気の振動にかき消され聞き取ることができなかった


光はやがて一筋の束となり、モミジの頭上に降り注いだ


ーブラフマン・ルドアー


光を集めたモミジが扇を振るうと、そこから放たれた柔らかな煌きが訓練中の兵士達に降り注いだ

攻撃力2倍、防御力2倍、そしてクリティカル率5倍の付与魔術だ


付与魔術を受けた兵士たちの訓練場はいよいよ激烈な修羅場と化したのだが、皆一様に笑みを浮かべている


まるで初めて玩具を与えられた悪餓鬼のようだ


「し、舅殿、、、」


「はい」


「あの子、今、神を呼んだよな?」


「そうですね」


「いやいや、そうですねぢゃなくて、、、そんな簡単に出していいもんぢゃないよ?

分かってる?神じゃよ?あの子今神様呼んだよ?」


「はい、あれは昔から動物でも魔物でも、それに精霊でも、何にでも好かれる子でして」


「いや、全然答えになってないわ!動物と神様全然違うわ!」


モミジはあと107柱の神と契約しており、最大4柱まで同時に呼び寄せることができるのだが、流石にそれは機密事項にあたる


「なあ、舅殿よ、、、」


「はい、アスタロト様」


「すまんがワシはもう疲れ、いや急用を思い出した、、、今日のところは帰るとする

クロエと婿殿に詫びておいてくれ」


「それは残念ですが、急用なら致し方ございません

またのご来訪をお待ちしております」


「うむ、、、いずれまたの」


アスタロトは親衛隊を引き連れ急ぎ帰っていった


翌日、、、


「お主ら死ぬ気で特訓じゃ!

このままでは、すぐに世界最強などといっておられなくなるぞ!」


スライム達の報告によると、アスタロトのダンジョンで地獄の猛特訓が行われ世界侵攻(スタンピート)の始まりかと世界中を震撼させたらしい




最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


また、筆が進んだら続きを上げたいと思います

今後とも、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ