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海賊王の娘と森の国の王子  作者: 権田 浩


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51.追う者と追われる者(2)

「捉えられた。このまま行けば追いつかれるのは明日の昼過ぎというところか」


 フィニからドルイド討伐軍の位置を聞いてエリアスはそう判断した。アウラを含めた三人はブナ林の中、ドルイドたちから少し離れた場所でひそひそ話し合っている。


 自分の荷物は自分で持つのが当たり前のドルイドたちは、ブナの木々の合間に適当な居場所を定めてそれぞれに夕食の準備をしていた。周囲をうろうろしているドルイドは、魔獣除けの結界を張っているか、野草やキノコなどの食材を探しているか、どちらかだろう。近くでキノコ採りをしていたドルイドが離れるのを待ってアウラが口を開く。


「キアン老は河までたどり着ければ逃げられるって言うけど、ぎりぎり間に合わないと思う。もう一度戦って足止めしないと」


 その意見はもっともだが、エリアスは別の方法が無いものかと頭を悩ませていた。ドルイドに人間との戦いは無理だ。それは戦士として訓練されたアウラが想像するよりもずっと難しいことなのだ。戦いに慣れていない人間は迫る刃を前に硬直してしまう。傷つくのを恐れながらも、避けるのか防ぐのか、逃げるのか戦うのか、殺すのか殺されるのか、恐怖と迷いに圧倒される。一度は防げたとしても次の回避行動にはつながらず、対する戦士は次の攻撃動作に入っている。


 ならば先制攻撃はどうか。戦いは常に先手有利だが、相手を殺すつもりでためらいなく攻撃できなければ敵に反撃の機会を与えてしまう。そうなれば、戦士でない者に勝ち目はない。相手を殺そうと意識しなくても殺せるような攻撃方法があればいいのに、とエリアスは考えた。


(例えば、剣や槍じゃなく、それを使えばどうなるか想像できる形状をしていない道具で、指先一つ動かせば相手を殺してしまえるような……いやもっと単純に致死性の罠とか?)


 そんな魔法のような道具は持っていないし、作れもしない。広い森の中に罠を仕掛けても、誘い込めなければ無駄になる。駄目か、いや、ここに何か手がかりがあるような――考え込むエリアスの前で、フィニとアウラは話を続けた。


「風の魔法が使えるドルイドには、いざって時の事を話しておいたほうがいいかな?」


「うん。できればもっと訓練したいけど……」


 戦いに役立ちそうな魔法はあるのかとアウラが尋ねた時、フィニは風の力で矢の威力を増し、軌道を操る魔法があると答えた。それでアウラは戦いに備えて訓練しようと提案したのだが、ドルイドたちの士気は低く、ほとんど無意味に終わってしまったのだった。しかしエリアスは、そんなものなど比較にならないほど戦いに役立つ魔法があると知っている。〈動物共感〉はかなり広範囲の状況を知ることができるし、そして何より、〈風の声〉だ。ドルイドたちは離れた相手に言葉を届けるだけの魔法と思っている。敵の位置を知り、離れた味方と風の速さで意思の疎通ができる。これを戦いに利用したら――想像しただけで、エリアスは衝撃を受けたのだった。かつてソールヴが、〝王子は戦い方(ルール)を変えたのです〟と言ったが、それ以上に戦いのルールを変えてしまえる。


(そうか、これは神の見下ろす戦場で行う(いくさ)じゃない。常識にとらわれず、使える手は何でも使っていいんだ。相手の姿が見えなければ、罪悪感も少ない……それなら)


 エリアスは顔を上げた。「風の魔法が使える人、〈動物共感〉の魔法が使える人、それに弓が得意な人を集めて欲しい」


「何か思いついたの?」と、アウラが目を輝かせる。エリアスはうなずいた。


「こちらから……先制攻撃するんだ」


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