青年は愛を知りたかった。
幼い頃、母に連れられて見た景色が忘れられなかった。紺碧の海の中で降り積もる雪。その一つ一つは幼かった僕の童心を刺激した。喋る事のできない僕はただぽけっとしてその景色に見惚れていた。母は言った。
「××。辛くなった時はいつでもここにきなさい。そしてーーー。」
ああ。この続きはなんだっけ。
知らないうちにこの続きを僕は忘れてしまった。
今日もいつも通りの日だった。
ただ、僕と周りだけがちょっぴりおかしかった。
でも何も気にとめなかった。
父のせいで肌に傷が入っても、“ともだち”のせいで机が汚れてても、いつもと何も変わらなかった。
それを世間はおかしいと叫ぶだろう。
それでもやっぱり、僕にとってはなんの変哲もない日だった。