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記憶殺人 ~ 佐久間警部の暗躍 ~  作者: 佐久間 元三
プロローグ
3/31

バレンタイン

 ~ 静岡県浜松市浜北区小林 ~


 原告側が『浜松市浜北区婦女傷害事件』で三谷敏明を即日控訴をしてから、二週間が経過しようとする頃、とある筋から村松泰成宛てに連絡が来ている。


「……そうですか。まあ、想定内と言えば想定内ですが。何か、こう拍子抜けです。…分かりました。では、本決まりの際はもう一度。…ええ、大丈夫です」


 身構えて準備だけはしていたが、早くも原告側が控訴を取り下げるようだと情報筋から風の噂で耳に入ってきた。新証拠など出ないと確信はしていたが、正直、次の展開がどうなるのか予想がつき難いだけに、内心ホッとする。昨年と違い、今年のバレンタインは少しだけ味わえそうだ。


 大きな裁判はしばらくないだろう。年末から休日返上で事務所総員で働いた。もう十五時だし、今日ばかりは早く終業しようと村松泰成は判断し、パソコンの電源を落とす事にした。


「みんな、今日くらい早く上がってくれ。裁判もなくなりそうだし、折角のバレンタインだ。良子ちゃんと智美ちゃんもゆっくりしなさい」


 従業員たちは『待ってました』と言わんばかりに帰り支度をする。電話の内容を盗み聞きされたのか、こちらの挙動を完全に読まれているなと思わず苦笑いしてしまう。


「そうこなくっちゃ。最近忙しかったから、正直嬉しいですわ」


「去年はバレンタインもホワイトデーもなかったですもんね。今年なんか正月返上だったし。村松弁護士(せんせい)も今日くらいは家族サービスしたいですよね?」


 村松泰成は、苦笑いしながら向かいの変則した交差点に目を向ける。下校する小学生を見かけると、無事に渡れるか見届けるのだ。浜松市浜北区の道路管理課や所轄警察署に信号機設置の要望は出しているが、予算措置が厳しいとの理由で一向に設置されない。事故が起きてからでは遅いと訴えても、事故が起きてから対応するのが行政であり、両者の温度感が埋まることはない。


(そろそろ子供たちも帰ってくる頃だな。今日の習い事は…)


村松弁護士(せんせい)…?」


「娘たちは算盤教室だし、終わったら終わったで、続けてスイミングに行くと思うから、普段通り何もしないよ。家族全員が揃うのは二十時頃だしな。…どこかで時間を潰すつもりだよ」


「習わせすぎじゃないですか?今日ばかりは休ませても」


「…そう思うだろう?」


 村松泰成は、両手の人差し指を頭上に掲げ、鬼の角を作りながらほくそ笑む。


「休ませてやりたいんだがね。…妻がこれだ。気にしないで楽しみなさい」


「は---い。では、村松弁護士(せんせい)。お言葉に甘えてお暇します。また明日」


「ああ、お疲れさま」


 戸締まりを買って出た村松泰成は、全員を送り出した後裏口を閉め、シャッターの鍵を掛けるところでふと手を止めた。


(…久しぶりに外観の手入れでもするか)


 時間潰しに事務所周りをじっくりと点検することにした。開設して十年余り。当時では珍しいレンガタイル風の塗装もうっすらと剥がれ、目地のコーキングはひび割れが目立ち始めている。平屋建てだが、遠目からでも目立つように、三角形屋根が特徴の造りに拘った自慢の事務所は、自身の疲労と同じように疲れているようだ。この辺で見直す時期なのかもしれない。


(そういえば、ここまでに来るのに色々あったな。日本中が注目する裁判もした。時には蔑まれ、事務所(ここ)も悪戯された事もあった。…リフォーム時期かもな)


「ブッブッブッ」


 黄昏れる空気を払拭するかのタイミングで着信だ。


(…自宅からだ)


「もしもし、どうした?」


「事務所の電話が通じないから、こっちだと思って。今、浜松中央警察署の榎田さんって方から電話があったわよ」


(浜松中央警察署?…今、この所轄事件は担当してないが)


「事務所の電話切り替えているって事は、今日早く帰って来られるの?」


「ああ、子供たちが帰る頃には間に合うよ。じゃあ、電話切るぞ」



「はい、浜松中央警察署総務課です」


「浜北区の村松という者です。榎田さんって方が連絡欲しいそうで…」


「榎田ですね。刑事課に回しますので、少々お待ちください」


(…)


「はい、刑事課」


「すみません、榎田さんって方から連絡を貰ったんですが」


「榎田ですか、少々お待ちください」


(……)


「はい、もしもし」


「あっ、榎田さんですか?電話頂いた弁護士の村松です」


「はい?あっ、ちょっと待ってください。榎田に代わります」


(………)


 予想通りの展開だ。総務課が刑事課に取り次ぎ、刑事課窓口は担当者の榎田に回す。榎田かと思い話始めると、別の担当者だったようで、再び榎田に回す。警察も行政機関だから仕方がないが、たらい回し感が半端ない。


(こういう体質だから、行政は嫌われるんだよ。親身になって、電話くらい一発で回せよ)


「お電話変わりました」


「もしもし。村松弁護士事務所の村松ですが、電話頂いたようで」


「どうも申し訳ない。実は、昨夜管内で殺人事件(コロシ)がありましてね。調べてくうちに村松弁護士が担当した被害者(ガイシャ)であることが判明したので、ご多忙とは思いますが一度ご足労願えませんか?」


(何を言い出すのかと思えば。…大丈夫かこの男?)


 いきなり、突拍子もない発言だ。ご多忙と言いつつ、こちらのスケジュールは関係なく依頼してくる。『用があるなら、お前らが来い』と言いたいところだが、所轄警察署に噛みついても大人げない。ここは話を前に進めよう。


「被害者というのは?」


「松本剛、三十二歳。覚えあるでしょう?」


(松本…剛、三十二歳?……あの男か?…だが、よりによって浜松中央警察署(そこ)とは)


「…ええ知っていますよ。伺いましょう。浜松中央警察署(そちら)へ?」


「助かります。被害者(ガイシャ)は今、司法解剖中なんで、とりあえず刑事課に来て貰えますか?」


 電話を切ると今度は自宅へ連絡し、『遅くなりそうだ』と連絡を入れた。…腕時計を見ると既に十六時を回っている。


(多分、車では渋滞に巻き込まれるな。…赤電で向かうか。子供たちは算盤教室に向かっている時間だ。運がよければ駅前で会えるかもしれない)


 弁護士事務所に車を置いたまま、時計を気にしながら早足で小林駅に向かう。裏通りから駅に進むと算盤教室の前で、案の定、子供たちが自分たちと同じ背丈の塀を触りながら、ダラダラと歩いている。長女は小四で三段、次女は小二で一級の腕前。親ばかであるが、自慢の娘たちだ。


「父さん、急用で遅くなるかもしれない。夕ご飯は待たなくて良いから、母さんと一緒に食べるんだぞ」


「分かった。あのね、帰ったら相談したい事があるんだけど」


「…?母さんに聞きなさい」


「お母さんじゃ分からないよ。DSのログイン設定したのお父さんじゃん?」


(ゲームの事か。なら仕方ないか)


「帰ったらな。宿題とか終わってなかったら見ないからな」


「はぁ---い」


「返事は『はい』だ。いちいち伸ばすな」


(全く、今時の子供は。俺の時代だったらビンタが飛んだぞ)


 村松泰成は厳格な家庭に育ったため、礼儀作法や一般的な常識には苦労した覚えはない。父親をお手本に、娘たちも厳格に育てようと思った。だが、時代の流れなのか、今の世代は骨が弱ければ考え方も緩い。和式トイレでは踏ん張って用が足せないし、テーマパークでは何時間も立ったまま待てず、すぐに座り込むし、箸の持ち方やテーブルマナーなど、どんなに口酸っぱく言って聞かせてもビシッとしない。特に長女は箸が苦手だ。何とか中指を箸の間に入れさせても、数秒後にはどこかにいってしまう。傍から見ると、そんな仕草が過保護と思われるか心配になってくる。だが、これ以上キツく教えても嫌われるだけだろう。


 父親は所詮こんなものなのかと半ば諦めムードで小林駅のホームに立っていると、定刻通り新浜松駅行きの遠州鉄道、通称『赤電』が到着する。


 浜松中央警察署は、遠州鉄道の小林駅から九つ目の駅、曳馬駅が最寄り駅である。時間にすると二十分もかからない。赤電は、天竜区・浜北区・浜松市内をほぼ直線に結んだ交通としては要の役割を担っている。それ故に、車通勤よりも断然、人気も高い。


(この街も昔からすると風景が様変わりしたな。…中途半端だが)


 村松泰成は、赤電に揺られながら、極力『あの男』を意識しないよう心掛けた。あの男とは、佐久間に相談した例の男であり、毎晩と言って良いくらい夢に出てきていた者だ。横柄な態度で接するであろう浜松中央警察署の榎田の事を考えると不快で、嫌な予感しかしない。だからこそ、事情を詳しく知るまでは別の事を考え、自分を落ち着かせることに専念するのである。



 ~ 浜松中央警察署 刑事課 ~


「どうぞ、村松弁護士(せんせい)


「…どうも」


 刑事課内の空気が重たい。


 挨拶もそこそこに簡易応接ソファーに案内されると、既にテーブル上に事件写真が並んでいる。横には榎田以外にもう一人真田という刑事が無愛想に同席し、周りも冷ややかな空気だ。この浜松中央警察署で苦労して送検した人間を、逆転勝訴で無罪にしたせいか自分に対して、組織ぐるみで否定的な空気を醸し出しているのが分かる。仕事とはいえ、脚が重かったのはこの事が要因である。


(急に呼び出しておいて、お茶もなしか。…とことん、嫌われているねぇ)


被害者(ガイシャ)は、松本剛、三十二歳。現住所は、浜松市浜北区西美薗。中日経済新聞社の販売員。昔から酒癖が悪く、周囲とトラブルになったこともある。五年前…」


 横柄な態度で話し始める真田刑事に、村松はわざと話を遮った。


「五年前、三方原で起きた婦女暴行事件で、浜松中央警察署が自信を持って犯人を送検。だが、被告人となった松本剛を私が弁護し勝訴しました。この男について何を話せと?」


(…この野郎)


 榎田と真田は感情を押し殺し、説明を続ける。


被害者(ガイシャ)は、昨夜遠州鉄道『八幡駅』付近で遺棄されていました。司法解剖結果待ちですが、死亡推定時刻は昨夜の二十三時~明け方三時。死因は絞殺。写真のとおり、この位置に絞められた痕があります」


「死因と状況は理解しました。…それで、用件とは?松本剛の詳しい住所とか判決後の行動について説明を求めているのですか?それとも何か恨まれる要素があったかを問われるのか?何を聞きたいのか明確にお願い出来ますか?」


「…村松弁護士(あなた)現場不在証明(アリバイ)をお尋ねしたい」


(------!)


「ちょっと、待ちたまえ。どこの世界に唐突に弁護士に現場不在証明(アリバイ)を聞く刑事がいる?私が関与したのは五年前だ、依頼人を弁護しただけだぞ?弁護した相手が殺されたからって、何故任意聴取に発展するんだ?出方によっては、名誉毀損で浜松中央警察署(あんたら)を訴えるが?」


「何だと!」


 一触即発の事態に、見かねた刑事課の上役が仲裁に入る。


「おい、榎田。いくら何でも村松弁護士(せんせい)に失礼だろう。何故、きちんと説明しない?村松弁護士(せんせい)、言葉足らずで申し訳ない。…言いたい事を要約すると『殺人事件が起きた。交友関係から調べているが、繋がりがあるのは職場同僚、親族、そして弁護士だけ。だから全員から現場不在証明(アリバイ)を聞いて関与がないかを問う必要がある』のそれだけなんです。いえね、浜松中央警察署(うちの署)村松弁護士(せんせい)に何度か痛い目に遭っていますからね。つい、若い刑事()は感情に出てしまうんですわ」


 一見、きちんとフォローをした低姿勢のようだが、愛想笑いを浮かべても、目は笑っていない。


(…所詮、あんたも同じ穴の(むじな)じゃないか)


「面白くない感情は誰にだってある。だが、敗訴したからといって個人にあたるのは筋違いだ。建設的に話し合うなら、相応な態度で村松弁護士事務所(こちら)も接しましょう。だが、こんな程度の悪い対応では浜松中央警察署(所轄)全体の質を疑いますよ」


「面目ない。だが、浜松中央警察署(こちら)も商売だ。失礼ですが現場不在証明(アリバイ)だけは伺いますよ」


(どうしても弁護士ではなく参考人として聴取がしたい様だな。浜松中央警察署(所轄)はどの役職まで俺の力量を知っている?本部も俺を疑っている、もしくは嵌めようと画策しているのか?それとも副所長以下の雑魚が浅はかに喧嘩を売っているのか?…少し、揺さぶって様子見するか)


「…良いでしょう。村松弁護士事務所の村松泰成ではなく、個人の村松泰成として、現場不在証明(アリバイ)の証言をしましょう。昨夜の二十三時から本日朝まで私は自宅で就寝中でした。裏を取るなら、今すぐ妻に電話して聞けば宜しい。私はここから動きません、好きに聞きたまえ」


(このレベルなら、噛みつきやすいだろう。ほれ、噛みついてみろ)


村松弁護士(せんせい)。家族の証言は当てにならないんですよ。だって、夫婦で画策してたら、どうしようも無いじゃないですか?…それくらい分かりますよね?」


(思った通り馬鹿ばっかりだ。三下が絵図を描いただけか。…それならこの手法で)


「…困りました。では、現場不在証明(アリバイ)に信憑性を説明出来ませんな。浜松中央警察署は、村松泰成()と妻、いや、この分では同居している家族全員まで疑っている。この条件下で、逆に伺いたい」


「…どうぞ」


村松泰成()は今、嫌疑をかけられている。現場不在証明(アリバイ)を話しても信じて貰えない。それは、『就寝中である』を証明する証拠がないからだ。当然、証明するためにモニター録画をしている訳でもない。飲み屋でそれを第三者が見ている訳でもない。誰も村松泰成本人を見ていないし、家族の証言は信じて貰えない。…つまり八方塞がりという訳だ」


 榎田たちはほくそ笑む。


「まあ、そういう事です。何の証拠もない。非常に厳しい状況です」


「では、この場合、答えとして『何が出ないと嫌疑が晴れない』のか、何をもって誤解が解けるのか、法的根拠の何に基づいて嫌疑を掛けるのか『開示請求』をしますので、書面でご回答ください。これは刑事法に抵触する事項ですよ。任意聴取とは言っていない中で、浜松中央警察署(あなた方)は半ば強制的な姿勢で現場不在証明(アリバイ)を問う姿勢を見せた。被害者の写真と殺害時間を情報提示しただけで、それ以上の聞き込み結果を悪意的に話さない」


 突然の法的解釈が早口でどんどん展開していく。一瞬、榎田たちの表情が曇ると、その刹那を弁護士特有の目が追いかける。


「捜査事項につき、詳細は教えられないとか個人情報保護法に抵触するからと言って弁護士相手に逃げられないぞ。このやり方は、村松泰成()のみならず、関係ない者に対しても共通だ。現場不在証明(アリバイ)の整合性をどう取るのか、逆に不審がる理由を明確にして貰おう。浜松中央警察署(あんたら)が今自分に行った行為は、関係のない第三者に死体の写真を見せて、現場不在証明(アリバイ)を求め、『信じられないよ』と一方的に拒否している迷惑極まりないやり方で、一種の脅迫行為だ。幸い、この署内の多くの職員がこの状況を把握している。揉み消すことなど出来きないぞ」


 苦笑いした榎田の上司が、周囲を伺いながら制止にかかる。


「いやいや、村松弁護士(せんせい)。何もそこまでは言っていませんよ。そう熱くならなくても」


 周囲の目が自分に集まるのを察し、時計の針を読む。


(そろそろ頃合いだ)



 村松泰成は立ち上ると、これ見よがしに打って出る。身振り手振りを交え、演じ始めた。


「熱くなる?馬鹿を言うな。誰が見ても、自分は被疑者まがいの目で接せられている。今まで品行方正に司法に尽くしてきた男をだ。被害者を過去に弁護しただけで、即容疑が掛けられるなど前代未聞だ。これは司法に対する挑戦だぞ。事柄と経緯を整理して、きちんと()()()にも書簡を提出し、事を最大限大きくして騒がせて頂く。…当然、あなた達、警察が一番嫌う行政的な方法でね。マスコミにも今夜中に情報を流しておくから、明朝から全国ネットで騒がれる。この浜松中央警察署(所轄)も一瞬で全国区だ、楽しみに待っていろ」


 不適な笑いを見せる中、騒ぎを聞きつけた副所長が慌ててやってくる。三人に否応無しに頭を下げさせ、自らも深々と頭を垂れる。


「……村松弁護士。この辺で勘弁してやってください。村松弁護士(せんせい)現場不在証明(アリバイ)を問うなど馬鹿な事をした部下は徹底的に再教育します。私のクビをかけて対応しますので、どうか」


(やはり、三下が絵図を描いただけか)


「副所長さん。今日はあなたに免じて、顔を立てましょう。正直、弁護した人間が殺されるなど個人的にも事務所としても心外だし、犯人を捕まえて頂きたい。その為の協力要請であれば、誠意をもって接しましょう。だが、このやり方では自分はおろか、犯人検挙までには至らないと思います。…失礼を承知で苦言を申しますが、勝てない喧嘩はしない方が良いし、部下のレベルが低すぎる」


 副所長は出口まで丁寧に村松泰成を見送った。


 きっと自分が去った後、こっぴどく部下を説教するのだろう。だが、それは組織として必要な事だし、相手の力量を見極めて接し方を知らない人間なら、尚更お灸が必要だと感じ、言及は避け、そっと胸の内を明かす。


「…自分が言うのは変ですが、この事件、単発で終わらないかもしれませんよ」


「それはどういう意味ですか?」


「根拠はありませんがね、胸騒ぎがすると言うか。弁護士失格なんですが。…まだ犯人の目星もついていないんですよね?…それだけに何か引っかかる。自分もこれ以上、疑われないよう配慮しますが。…早く犯人検挙をお願いします。正直、良い気はしません」


「…分かりました、何かあればご協力を」


「勿論です」


 曳馬駅から再び赤電で小林駅を目指す。


 本来なら、家族と一家団欒を楽しむ時間だが、馬鹿な行政のせいで最低な気分となってしまった。…ここに佐久間がいたら、どのような捜査をするのだろう。きっと、自分では思いつかない方向で捜査を開始しているはずだ。ひょっとしたら犯人の目星までつけているかもしれない。


(…佐久間。お前ならどう捜査する?憂慮した人間が死んでしまった。俺にも少し嫌疑がかかった。…知っている人間が殺されるって、やはり嫌なもんだな。…お前に捜査を依頼したいよ)


 寂しさと空しさが支配するバレンタインだ。

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