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最適解①

 俺は後悔していた。


 先輩に頼られて探偵気取りで喜び勇んで謎を解いて、得意げにそれを語ってしまった。


 しかし、それはおじいさんの思惑通りで、しかも、その読みは外れていた。というよりも浅かった。


 おじいさんの言葉の端々にヒントがあったのにも関わらず、暗号もその真意も解けたものだと思い込んで気付きもしなかった。


 いや、気付いていたのに自分の都合のいいように脳内処理していたのだろう。


 見当はずれなことを賢面で語ってしまったのは、まあいい。


 なかなかどうして恥ずかしいことだが、それは自業自得だし、暗号を解いて欲しいという依頼には答えられた。


 一番の問題は伝え方を誤ったことだ。


 俺は暗号の解き方、もとい、左脳派の先輩に右脳的な思考回路を説明しただけだった。


 おじいさんの目的は達成されたし、先輩の依頼も達成した。


 それでも、もっと伝えるべきことがあった。


 伝えたいことがあった。


 先輩は人に頼ることが苦手だ。


 暗号以上に苦手だった。


 頼りになる先輩だからこそ、頼ることができなかった。おじいさんによく相談しているのも人生の大先輩だからなのかもしれない。


 俺は後輩で、先輩ほど優秀ではない――という考えが先輩を追い込んでいる原因なのだろう――が、だからこそ、先輩に頼ってもらえて嬉しかった。助けになりたいと思った。


 きっと他の人だってそうだ。相談されれば親身になってくれるだろう。答えを出すことはできなくても、一緒に頭を抱えてくれるはずだ。


 助けを求めれば手を差し伸べてくれるだろう。きっとそれは一人二人ではないはずだ。先輩の周りにはもっとたくさんの人がいる。それは先輩がこれまで作り上げてきた信頼によるものだ。


 俺はこれを伝えるべきだった。


 暗号が解けたと慢心し、目の前にあった事実の欠片を見逃した。その結果がこれだ。


 おじいさんが最初に言っていた。先輩が俺に頼ると思っていたと、もっと先まで分かるんじゃないのかと。


 つまり、先輩に解かせるつもりはなかったのだ。


 いや、正しくは、自力で解かせるつもりはなかったと言うべきか。


 他人の力を利用させることこそが目的だったのだろう。


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