出会い
Tさんが、ふと、こんなことを言い出した。「自分、小説書き始めたんだよね」、、と。
どうやら、最近流行りの無料で投稿できる小説サイトに投稿し始めたらしい。なんでも、異世界ファンタジー系なんだとか。最近多いな、そういうの。
ほぉ、我々の中からも人気作家が出るというわけか、、、などといつもの男5人グループの中、会話を弾ませながら考える。自分も書いてみようか、と。
なんせ友達にも出来るんだ、同じ人間な訳であって、自分にできない道理はない。
早速、家に帰り自分も登録して書いてみる事にした。なになに、ジャンルか。自分もファンタジー系にしようか、いや、でも、他人と被る可能性が。へぇ、ハイファンタジーとローファンタジー、ここはローだな。
ふむ、どんなのにしようか、スラム街で育ったが、実は王様の息子でした、なんてどうだろう。いや、これはどこかで読んだな。
吸血鬼はどうか。実は日常に溶け込んでいます、的な。いや、ダメだダメだ、これも読んだ気がする。
小説か、いざ書くとなると案外難しいもんだな。自分の知識の中から書こうとするからどうにも他の作品と被ってしまう。
いや、これはもうしょうがないのではないか?作品を消費する側だったから、気づかなかっただけではないのか?
そうか、創り出すというのは存外、才能と努力が必要だのだな。知らなかった。簡単に書けると思っていた自分が恥ずかしくなってくる。
やめだやめだ、僕は昔から頭を使うのが苦手なんだ、こういうのは才能のあるやつに任せよう。短編小説くらいなら出来そうなんだけどな、、、。
そして、そっと投稿ボタンを押した。