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極道生徒は友達が欲しい  作者: はやぶさ
6/11

香川瑛実の入学式 2

この話を出す前に、タイトル、あらすじ、今まで掲載させていただいた話を何度も何度も改稿しました。

一度読んでくださった方には申し訳ないですが、もう一度物語の最初から読んで頂きたいです。きっとさらに面白くなったと、作者自身は思っております。始まったばかりの作品ですが、よろしくお願いします。

瑛実たち1年2組の生徒たちは、入学式を終えてホームルームに帰っている。道中、全員がもっぱら気になっているのは、怖い顔で黙り込んでいる猛のことである。皆、露骨に視線を向けるのは怖いのか、チラチラと窺うような視線を向けている。


「なんで何も喋らないのかな?ていうかなんであんな怖い顔してるの?」


「そんなのわかんないよ、怒ってるのかも?」


「ねえ、やっぱりあのヤバそうな人がクラスメイトの新城くんなんだよね?やくざの血筋なのかな?」


「うん...そうとしか思えないよね」


猛の耳に入らないようにボソボソと話す小田さんと佐藤さんに、小声で答えているのは瑛実だ。


入学式に姿を現してから、怖い顔をして今だに一言も喋らずに黙っている猛に、小田さんは少し怯えている様子。


佐藤さんは瑛実へ、クラスメイトになる極道のような男は、やくざの跡取りではないのかと疑いながら怯えている。


そして、佐藤さんの問いを肯定した瑛実は、この2人よりも猛に怯えている。


(どうしよう...あんな男性ひとが隣の席だなんて)


瑛実は男性が苦手だ。いやらしい視線を向けてくる男性と、瑛実は関わりたくなくてA女を受験したほどだ。それだというのに瑛実の隣人は極道の男になってしまった。きっと猛は、どこかのやくざの跡取りなのだから、女性経験も豊富なスケベな男だと瑛実は思っている(瑛実の父が昔観ていたVシネマではそうだった)。万が一に女子生徒が猛に隙を見せてしまったら、きっとその子の純潔は散らされるのだろう。というかやくざの力で迫られてしまっては誰も断れないではないか。そんな最悪の想像を瑛実はしてしまっている。


3人以外のクラスメイトらも、おおよそ3人と同じようなことを考えながら、猛に怯え、1年は猛と共に過ごさなければいけないことに憂鬱になっている。


教室に着いてからもみんながヒソヒソ話してるのは、依然一言も話さず鋭い顔つきで座る猛のことだ。


そんな時、教室に担任の東が入室してきた。お喋りを辞めて静かに座り直した生徒たちに、先ほどはいなかった猛のためにもう一度自己紹介をした。


そんな東の2度目の自己紹介を何気なく聞いていた瑛実は、目の端に映る猛の行動を見てしまった。瑛実は思わず震え上がった。なぜなら




   猛が獰猛な笑みを浮かべて、東を睨みつけていた




今の、顔の傷跡が光ったようにも見えた気迫のこもった猛の威嚇行動に、どういう意図があったのか瑛実はすぐに思いついた。今の東の自己紹介は、遠まわしに猛の遅刻をイジッたようなものだ。その東の言動にきっと猛は、今後俺が遅刻しようが何しようが黙っとけぶっ飛ばすぞと、釘を刺したのだ。先生を脅すなんてなんて恐ろしい人なんだろうか。と瑛実は考えた。


しかし瑛実はまだまだ猛の本性を知ることになる。


佐藤さんが渡そうとしてくれたプリントを、猛はがっつり無視。やはりやくざの跡取り説は濃厚だと思う。初対面のクラスメイトに対し、プリントを俺に渡すのは当然だといわんばかりの態度。なんて尊大な態度なのか、きっと甘やかされて育てられたに違いないと瑛実はほとんど確信した。


そして今日もっとも恐ろしかったのは猛の自己紹介だ。


ほとんどのものが猛に怯えているのか、猛がどんな反応をするのかに少し怯えつつ、無難な自己紹介を済ましている。そんな中ウケを狙ったみんなを笑わせてみせた谷口くんと、ウケを狙いにいってどんズベリした安田くんの勇気と度胸は本当にすごいと、瑛実は心の中で賞賛を送った。


そしていよいよ猛の順番が回ってきた。クラス一同、息をのんで、未だ一言も話していなかった猛を見る。猛はゆっくりと立ち上がり、少しの間をおいて、




   「...新城猛...夜露死苦...」


   


と、東に見せたような凶悪な笑みを浮かべ、ドスの効いた声で、夜露死苦と言ってのけた。


そのセリフを耳にした1年2組一同は、悟った。


ーーーあぁ、これから1年、猛の下僕として、夜露死苦されなければいけないんだーーーと。


猛の後自己紹介をした瑛実は、恐怖のあまり何を話したのかほとんど覚えていない。その後東が猛を呼び出して今日は解散となった。東先生はあの恐怖の権化、新城くんに何を話すのだろうか?怒らせて翌日横浜の海辺りに浮かんでいないことを、瑛実は切に願った。


東と猛が出ていった後の教室、新城くんのいる前で、笑いを取ったクラスの英雄谷口くんが呼びかけをして、緊急のクラス会議が開催された。


協議時間およそ1分、満場一致で、絶対に猛を怒らせないようにしよう法案が可決された。


瑛実はこの法に、猛と同じクラスになった自らの不運を呪いながら、1も2もなく賛成した。




猛の友人獲得への道のりは依然長く、険しい道のりだ。


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