表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極道生徒は友達が欲しい  作者: はやぶさ
5/11

香川瑛実の入学式 1

瑛実ちゃん視点の入学式です!


この次で入学式は完結です。

ずっとこの日を待ち望んでいた少女は、入学式の集合時間10分前に1年2組の教室に着いてしまっていた。しかし、教室の中にはすでにちらほらとこれから1年は少女と共に過ごすクラスメイトの姿がある。少女と同じように、今日が楽しみ過ぎて、早くに教室に到着してしまっているのだろう。


少女は自分の座席が6席×6列の1列目最後方なのを座席表で確認すると、そのすぐ前の席に座っている女子生徒も見つけたので声をかけに行った。


「おはよう!私、後ろの席の香川瑛実かがわえいみ、って言うんだ!よろしく!」


この少女、瑛実は美少女だ。小さな顔にクリクリした大きい目が瑛実自身はチャームポイントだと思っていてる。最近の悩みは、小柄な自分には似合わないと思っている成長し続ける胸である。そのせいか瑛実が街を歩いているといつも男性になめるような視線を向けられている。そのため瑛実は本当はこの都立T高校ではなく、ここの近くにある男性と関わりの少ない私立A女子高校に通いたかった。しかし、A女は進学校でレベルの高い高校だったので、瑛実は合格できなかった。瑛実はA女に落ちた時はT高に通うことに落胆したが、入学式が近づいてくるにつれてなんだかんだで新生活にウキウキしていた。友達100人できるかな?これが瑛実の心境を正しく表した表現だろう。そんなこんなで瑛実は早速自分の席の前に座る小田さんに挨拶をして、幸先の良いスタートを切った。


瑛実はそれから少しして登校してきた、小田さんの隣に座る佐藤さんにも声をかけて3人で中学時代の部活動についてお喋りをしていた時、教室にスーツを着た中年の男がやってきた。


「うーーい、お前ら席につけーい」


男はなんとも間延びした声で生徒らに着席を促した。席を立ってまだぎこちなさの残る会話をしていた生徒たちが一斉に席に着き始めた。今から高校生活が始まるのだ。みんな少し固い顔になってすぐにお喋りをやめている。そんなことを思った瑛実の表情も似たようなものだ。


「みんなおはよう、そして入学おめでとう。このクラスの担任になったあずまだ。1年2組36人よ、これから1年よろしくなー、って言いたかったんだが、全員はそろってねえな。欠席の連絡はねえし、しよっぱなから遅刻かぁ?ったく」


瑛実は朝から少し緊張して隣の席にくる予定の生徒、座席表には新城猛しんじょうたけるを待っていた。瑛実は男性がここ最近苦手になっていたので、隣の男子生徒がやらしい感じでないこと、あわよくばとても紳士な生徒だったらいいなと思って待ち構えていた。ところがどっこい寝坊をしたのだろうか?新城くんは遅刻のようだ。


「遅れたのは新城か、式には間に合えよな~」


そこで新城くんについての話は終わり、東は式についての諸注意をする。入場のタイミングや、校歌斉唱ではリズムがわからんだろうから口だけ開けとけなどなどもろもろ連絡が済んであっという間に式の入場時間だ。


「瑛実はの隣の人来ないね」


「うん、こんな大事な式来ないなんてどうしたのかな?」


「寝坊とかじゃないの?まさかサボりはないでしょー」


「とうとう新城のやつ間に合わなかったかあー!まあちょっとしまらん入学式になるけど、しっかりしようなー」


まだ見ぬ新城くんについて瑛実が小田さん、佐藤さんと話していると、ついにタイムアップが来てしまった。入場前最後に東はクラスに声をかけ、入学式は始まった。






ただ今、校歌斉唱が終わって校長先生からの祝辞が始まった。新入生一同は真面目な顔をして校長先生の話に聞き入っている。これが高校2年、3年と成長するにつれてまったく耳を貸さなくなるのだから、新生活のはじめは全国の校長先生が祝辞にもっともやりがいを感じているだろう。瑛実も今は真剣な顔をして話を聞いている。ところが、少しして眠気が瑛実を襲ってきた。前日の夜瑛実は新生活への期待で、よく眠れなかったからだろう。


(やばい...寝そう)


校長先生の子守歌が流れる静寂の空間、瑛実の首が睡魔に瞬殺されて落ちそうになったその時、扉が開く音が体育館に響いた。


静けさが漂っていた空間にその音はやけに響いて瑛実の耳に響いた。体育館にいる全ての人が音源の方へ顔を向けている。瑛実ももちろん、なんだろう?、と出入り口のほうへ振り返った。そんな瑛実の目に飛び込んできたのは




   極道の男だった。




何かとんでもない髪型をした鋭い目つきの男が瑛実には見えている。瑛実はその男の風貌に、驚き、硬直した。さらにいえば、館内すべての人が硬直していた。何を大げさなリアクションをとってるんだとは、この男を見た後では誰も言えまい。その姿を形容するのに、不良という言葉では生ぬるい。それほどの格好を、体育館に入ってきた男、新城猛はしていた。


まず最初に男の髪型についてだろう。顎を覆うほどの前髪をポマードでオールバックにして、頭頂部で束ねている。加えて頭部の両サイドをツーブロックに刈り上げていて、束ねた先の髪を、後ろ髪の毛先と同様に少し遊ばせている。その髪型に、金を混ぜたような暗い銅色の髪色がマッチして、鈍い輝きを放っている。端的に言えば、某不良漫画を実写化した時の小〇旬の色違いの髪型だ。


その顔もとても厳つく見える。顔の造形の特徴は、切れ長で尖った印象を与える大きめの目くらいだが、髪の色と揃っている切れ長の眉毛と、左の目元と右顎の辺りにはっきりと見える切り傷の跡が恐ろしく、猛の無表情と相まって猛とは目を合わせるのが怖いくらいだ。


そして、最も猛の風貌を恐ろしく仕立て上げているのは、その巨体だろう。身長193cmの体に、制服を押し上げているのが見える筋肉が、猛からもはや不良を通り越して、極道のような風格を醸し出させる。


そんな目を合わせただけで人を殺せそうにも見える男は今、学校に極道の男が現れたと勘違いして啞然とする瑛実の前を横切って、今日は遅刻している新城くんの席に座った。


ここで瑛実は意識を取り戻し、今瑛実の隣に座って無表情でどっしりと構える極道の男が、新城くんなのだと理解した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ