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極道生徒は友達が欲しい  作者: はやぶさ
4/11

入学式 4

猛の自己紹介の後瑛実も自己紹介を終え、今日は解散となった。その際猛は東に引き留められ、今日の遅刻について注意を受けた。自己紹介が失敗に終わってしょんぼりしていた猛に東はとても丁寧な言葉で優しく注意をしてくれていた。遅刻をした自分にあんなに丁寧に言葉をかけてくれるなんて、良い先生じゃないかと、気の抜けた先生という感想を持ったことに猛は心の中で謝罪しておいたようだ。


時刻は昼頃、猛は帰宅途中である。今日、いつの間にか机の上にあったプリントを確認しながら今後のプランを模索しつつ歩いている。


(1年生は明日が新体力テストなのか。兄さんはこれでいい成績をとれば人気者になれるって言ってたけど、今までそんなことなかったんだよなぁ)


猛は運藤神経には自信がある。小さい頃から何かスポーツをすれば人気者になれるかも!、と思って始めたボクシングで体を鍛えている猛は、新体力テストでの評価は今までいつもMAXだった。しかし猛が人気者になどなれたことは一度もない。


(家に着いたらみんなにもう一度相談しよう...でもあんだけ協力してもらったのに合わせる顔がないなぁ)


春休み中はほとんど自分に時間を割いてくれた家族に、自己紹介を失敗してしまって申し訳なく思う。


しばらくして猛は自宅に着いた。一週間くらい前は引っ越してきたばかりだったので、段ボールだらけだった家の中はほとんど片付いたようだ。


猛は段ボールを見ると今でも引っ越しが決まった時のことを思い出してしまう。


4月から猛の父が、勤めている会社の東京の本社に栄転することが決まったのが今年の1月だった。単身赴任か家族もついていくか議論の末、満場一致で家族ごとの引っ越しが決定。新城家はとても仲の良い家族なので離れるのはあり得ないということになった。当時中三の猛や高三の猛の兄は受験の問題があったが、父に一人で東京に行かせるわけにはいかないと、東京の学校に何としても合格するため2人とも猛勉強した。(なお猛の父はそんな家族のみんなに大号泣。)


さらに大引っ越し決断には、もう一つの要因として猛のことがある。いじめられてるわけじゃないのに、人見知りのせいでいつまでも地元の学校で友達のできなかった猛のことだ。以前からそれが心配だった猛の父は、これを機に、引っ越しで環境が変われば猛も変われるかもしれない。なので、猛をみんなでサポートしようと、東京への引っ越しを猛の父は提案。猛の母と兄は、少しでも猛の環境が良くなりそうならなおさら東京に一緒に行くと賛成した。(なお猛はそんな家族のみんなに大号泣。)


そんな経緯で東京に越してきた新城ファミリーだが、少なからず自分にも引っ越しの要因がある猛は、地元に仲の良い友達がいたのに猛のためなら構わないと東京に来た母や兄に感謝の気持ちがある。もちろん東京行きを提案してくれた父にもだ。


(何としてでも友達作って、家族を安心させたいな)


すでに何度も固めた決心を猛はもう一度固めた。






夕飯時、新城家のリビングでは一家が揃って食後の談笑をしていた。


「何?猛、お前入学遅刻したのか?ダメじゃないか」


「猛は抜けてることが多いからね~、気をつけなさいよ」


「まあまあ、猛も反省してるしいもういいじゃないか、猛も次は大丈夫さ」


これは順に猛の父、母、兄のことばである。猛は家族に今日何があったのかをすべて話していた。


「へえ!知らない人に話しかけれたのか!大きな進歩だな、猛!」


「しっかり先生にも会釈できたのね、順調じゃない!」


「まだ学校は始まったばかりだからね、今日隣の子に話しかけれなかったり、自己紹介を失敗したくらい、まだまだ挽回できるさ」


猛の今日の行動に対する評価がこれである。一般的な観念に照らし合わせればダダ甘だ。だが猛からすれば、自分のひどい人見知りを焦らずに治そうと協力してくれて、ありがたい限りだ。


「うん、みんなありがとう。もっと頑張るよ。あ、そうだ兄さん明日は新体力テストなんだ」


「そうか、猛は運動神経が良いからいい成績をとれるな、そうなったら人気者への大きな一歩さ」


「ううん、ほんとに今までそんなことなかったんだけど...」


「猛のことだ。ほんとに猛の人見知りはひどいからな。きっと猛に話しかけたい人はいっぱいいたのに、気づかなかっただけさ」


「...うん、兄さんがそう言ってくれるんだ、信じるよ」


「もっと自分に自信を持てよ猛、お前ならきっと大丈夫だから」


「そうだぞ。お前は俺らの自慢の息子なんだからな、なぁ母さん?」


「ええそうよ。猛ならきっと大丈夫よ」


「みんな...ありがとう...」


猛には猛のことを心配してくれているとても良い家族がいる。猛の極度の人見知りを理解してくれて、治すために協力してくれる。家族の存在は友達のいない猛の心の支えだ。


しかしこの一家には致命的な欠点が存在する。それは、一家揃ってどこか馬鹿なことだ。この家族以外に猛の悩みを相談すれば、十中八九こう答えてくれるだろうーーー




ーーーまず見た目から変えていこう、と。


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