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「キシャアアァァァァ!!!!!」


ボス名:《世界蛇ヨルムンガルド》

生命力:25,043/2,357,620,681


「はっ、たかが蛇ごときが今ごろになって死を感じるようになったのか?」

「そういうことは言っては駄目ですよ、ギルガメシュ」

「そうか、ならあまり言わないようにしよう、エンキドゥ」

 私とエンキドゥが雑魚(ザコ)のように軽くあしらっているのは、北欧神話に出てくる幻獣でフルレイド級のボスである。

 皆が私達のように出来るわけもなく、フルレイドを組んでも良くて全滅ギリギリで討伐。悪くてボスがピンピンしている状態で全滅。基本的に討伐ギリギリで全滅。

 他の連中はこの蛇に勝つことは中々無いらしい。まあ、私達はこいつの前に《神喰いの神狼フェンリル》、《冥界の女王ヘル》を連続で殺ってきて疲れているので、早く落ちて寝たいしたい気分だ。

 そうするとエンキドゥに会えなくなるのは嫌だが何時までもこの世界に居られる訳も無い。

「さっさと終わらせてお茶でもしましょう」

「ああ、そうだな」

「じゃあ、私が止めを指しますね」

 そう言うとエンキドゥは魔法を(ヨルムンガルド)にはなった。すると、生命力があっという間に0になり、蛇の体はポリゴン体になり消えていった。まるでゲームのように。

「では帰ってお茶でもしましょうか、ギルガメシュ」


 そう、この世界は…‥


「そうだな、エンキドゥ」


 《ミソロジーオンライン》という名のゲームの世界だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 《ミソロジーオンライン》

 20年前にあるベンチャー企業が販売をしたゲームである。

 このゲームは発売前から沢山のメディアに注目され、世界中に発売され、発売と同時に完売し予約も3年先まで埋まっていた。

 なぜこのゲームがここまで人気な理由は、世界初のフルダイブ型VR技術を用いたオンラインゲームであるからだ。

 VR技術を用いたゲームは幾つか存在していたがそれはフルダイブ型では無かったり、オフラインのゲームしかなかったのである。

 そんな中でフルダイブ型VR技術を用いてオンラインゲームを作ったと言うことはゲーム業界の革命となり、沢山のゲーム制作会社の制作意欲に火をつけ、この20年間で多くのVRMMOが発売された。

 だが、この20年間プレイヤー数が一番多かったのはVRMMOの開祖とも言えるゲーム、《ミソロジーオンライン》である。

 発売から20年もたった今でもプレイヤー数が減るよりも増える方が早く、人気オンラインゲームのトップを20年間譲らずにいた。

 《ミソロジーオンライン》は世界中にある神話を元にして作られたゲームで、自由度が高く何処までも広大な世界が人気だ。

 キャラLevlに上限は無く何処までも強くなる。ステータスは生命力と魔力以外は、ランク表示になっておりE-、E、E+、D-、D、D+、C-、C、C+、B-、B、B+、A-、A、A+、S-、S、S+、SS-、SS、SS+、SSS-、SSS、SSS+、EXの25段階に別れており、アルファベットが変わる度に越えられない壁が存在する。C+までは比較的簡単に上がるが、そこからS+まで上がるには簡単ではない。発売当初からプレイしているプレイヤーでも、SSSになっている者は(ほとん)ど存在しない。

 スキルのLevlも上限が高くLevl100まであり、そこまで上げるのは至難の技である。だが全てプレイヤーはスキルLevlを中途半端にすること無く最大Levlを目指している。その理由は最大Levlのスキルを《スキル統合》というシステムで統合すると強力なスキル《特殊(エクストラ)スキル》がてにはいるからだ。だがこれも当然持っているものは殆ど存在しない。

 職業(クラス)も勿論存在しており、その数は数えきれないくらいある。職業は1stと2ndの二つ選べる。職業はある程度のLevlになると転職することが出来る。Levl以外にも特定の条件をクリアすることで強力な職業、通称《特殊職業(エクストラクラス)》に転職することが出来る。この特殊職業の条件は難しいものも在れば、そうでないものもある。強さにピンキリが在るものの、特殊職業の人数は少なくはない。

 種族も職業と同じである程度のLevlになると、種族進化や転生することが出来る。そして職業と同じで特定の条件をクリアすると特殊な種族に進化や転生することが出来る。だが特殊な種族への進化や転生するための条件はとても難しく、進化や転生した者はあまり多くは存在しない。

 ここまでは他のゲームと似たり寄ったりの所があるが、このゲームだけの特徴がある。それはNPCを連れ歩く事が出来ることだ。

 だがこのシステムはプレイヤー達から「要らねぇ」と言われるくらい不人気なシステムである。その理由は、一緒に連れ歩こうにもNPCの成長率が低く、一度死ねば戻って来ることは無いからだ。故にNPCを連れているプレイヤーは皆無に等しい。

 そんなゲームの世界の中で最強と呼ばれるプレイヤーがいる。

 そのプレイヤーのステータスランクはオールEX、キャラLevlは3万超え、所持スキルは全て特殊(エクストラ)スキル、職業も2つともとてつもなく転職条件が厳しく強力な特殊職業(エクストラクラス)、種族も特殊中の特殊で強力な種族、さらにはNPCを連れており、ステータスにLevlやスキル、職業、種族もそのプレイヤーと同じ状態で、以前他のプレイヤーがそのNPCにちょっかいをかけて、そのプレイヤーごと辺り一帯の地形を変えたことがある。

 それからそのプレイヤーの二つ名は職業からとって、最強で最凶のプレイヤー『英雄王』と呼ばれて幾億ものプレイヤーの頂点に立ち続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私の名前は高月依子(こうづきよりこ)。30を超えた結婚なし、恋人なしのアラフォーOL。

 会社では化粧などせずそのままで出社し、外では本屋か純喫茶にでも行くぐらいしかやることがない。

 唯一の取り柄はあるオンラインゲームではとてつもない位強いということだ。

 そのゲームとは《ミソロジーオンライン》というVRMMOだ。私がこのゲームに出会ったのは20年前の発売当初、13歳頃のことだ。

 当時私は学校で虐められていた。理由は私が同性愛者だからだ。

 同性愛とは男性が男性を、女性が女性を恋愛的、性的に好意を持つ事、私はそれに当てはまる。

 私がそれを自覚したのは小学校5年生位の時で、悩みの種になっていた。当時の私は親や友達に嫌われるのが恐くて周りに言うことが出来なかった。

 この事が周りにバレたのは、当時流行っていたおまじないで紙に自分の悩みと名前を書いて数日間はだ見放さず持っていると、悩みが解決するというおまじないだ。

 私はそれを信じ、紙に『自分が同性愛者だと周りに言うことが出来ない 高月依子』と書き、その書いた紙を落とし、クラスの男子に見つかり学校中に広まったからだ。

 その日から私は虐められていた。

 そんな時に《ミソロジーオンライン》と出会い、その世界にのめり込んでいった。

 そのゲームを初めての9年たった頃に運命の出会いを果たした。

 その相手は敵の女NPCだ。腰まで伸びた金髪で赤眼に173cmの長身の私と違い、肩までの白い髪に青い眼をした150cm前後しかない小柄な女NPC。このゲームNPCを連れ歩く事が出来るので全力で仲間にしようとして格闘すること三時間、ようやく結婚という名目で仲間が出来たから。ついでにお嫁さんも出来た。

 その()には名前が無かったので、私はその娘に『エンキドゥ』という名前をつけた。

 理由は私のプレイヤーネームにある。私のプレイヤーネームは『ギルガメシュ』。メソポタミア神話に登場するギルガメシュ叙事詩の主人公のような人物で、ギルガメシュの唯一の友の名前がエンキドゥだからだ。だから私は彼女にエンキドゥと名付けた。

 彼女はNPCなので一度死ねばもう戻って来ることは無い。

 私はそれがとてつもなく嫌なので死なないように、彼女を物凄いくらい鍛えに鍛えた。

 そのおかげて今は私と同じくらい強くなった。たった今も、フルレイド級のボス《世界蛇ヨルムンガルド》を倒したらばっかりだ。

「どうかしましたか?ギルガメシュ」

「いや、何でもない。近くの町にでも行こうか」

「はい」

 エンキドゥが笑顔で答えた。うむ、やはりエンキドゥの笑顔は美の神(アフロディーテ)すらも霞む美しさだ。

「さっきから私の顔を見ていますけど何か付いてますか?」

「いや、今日もエンキドゥは愛らしく、可愛らしく、美しいと思っただけだ」

「っ///!もうっ、誉めても何も出ませんよ///」

 やはり拗ねた顔も可愛い。


 ザーザー  ザーザー


「ん?何だ、あれは」

「何ですか、あれ」

 私達の目の前にはいつも間にか黒い球体が浮かんでいた。

 すると突然強烈な光を放ち私達の視界を奪っていった。

「キャアァァ!」

「エンキドゥ!!」

 そして私の意識はそこで途切れた。




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