異世界収集家アルド五章13話
バルロ・クリューニとアルドとの最終戦。圧倒的な実力者であるバルロにアルドは勝てるのか?!
実験体81号。【能力の結晶化という】能力は本来は〈オリジナル能力者の三分の一〉程度の能力を羽根の様な物質に変え限定条件下で使用出来るというものだった。
だが教団はそれには満足しなかった。
度重なる改造や薬物投与により、能力の底上げを行った結果自分は相手の能力をも超えた性能を引き出せるまでになった。
身体は等に健康な所を探す方が難しく、生命活動に必要なものは、身体を覆う紋章によって維持され、自分に残っているものは魂と呼べるものだけだ。
泥水を啜り死を受け入れたあの日、聞いた神の声。
《進め、汝を約束の地へと誘おう》
ただそれだけの言葉は予言までの導となった。
******************
惑星アースを見下ろせる宇宙ステーションの《祭壇》。そこには教団サードアイの上層部達が長方形のテーブルを中心に集まっていた。教祖ブルタークは重々しく口を開いた。
「明日、予言通り儀式を始める。」
「大丈夫なのですか?復活の地には守りが施されていて侵入はおろか、近付く事も困難だと聞きましたが、、」
「太陽を観測していたところ、明日大規模なフレアによって一時的に防御が手薄になる。同時にこちらの妨害電波によって数十秒ほどだが復活の地の外側に張り付く事は可能だ。後は儀式で私が神の身体と【同化】すれば偽神は真の来神となり、必ず我々を彼の地へ導いてくれるだろう」
その場の全員が頷くとその日の配置を説明される。それは我々がこの惑星に来て十年もの月日が過ぎた日、アルドガーデン・ブルグを見失って十五年もの時間が経った日のことだった。
「もし事が起こるとすれば2日以内、その間《復活の地》に敵が現れた場合の対応を任せる」
ラグランジュポイントに浮遊している復活の地をグルリと囲む様に教団員を配置し警備に当たる。最大戦力のバルロ・クリューニには祭壇から復活の地に現れるという強大な力を持った敵対者と戦う任務が教祖から与えられた。
〈現在〉
バルロ・クリューニは【十数年ぶり】に再会した宿敵と対峙した。バルロは地上スレスレを浮遊しながら、相手の金属のロボットを一瞥する。
「宿敵、、か、、個人的には何の怨みも無いのだが、、な。やはり最後は貴様と戦うのか。」
バルロは始めから敵のオーガユニットと呼ばれる戦車を破壊するつもりだった。
しかし、それは失敗に終わる。
敵の左右に配置しておいた罠というべき《アースマイン》は作動する事なく敵の放ったバズーカによって無力化されたからだ。
中規模の光弾を放つと同時に左右に設置した為、相手がこちらの考えを看破しなければこういう行動は難しい、もしかしたら遺物を使用してるのかもしれない。
「どちらにせよ、戦うしかない。この身が砕かれ、チリになろうと。」
※
アルド·ガーデンブルグは朦朧とした頭でガンブルグを操縦していた。そして絶望の只中にいた。
戦ったら負けるということは分かっていた。分かりきっていた。が、数百と戦えば何とかなるだろうと甘い考えのもとに戦いの火蓋が切られた。
だが、数回戦い命を落とせばわかる。バルログリュー二と自分には大きな力の開きがあることを。ガンブルグの最大火力どころか戦艦の大砲でさえ貫通しない自動バリア、一撃必殺の能力の暴風。
産まれたばかりの赤ん坊と大人が戦い赤坊が勝てるのか?
爆発する。もう一度。
足の遅い怠け者の亀が油断しない利口な兎と足の速さを競い勝てるのか?
爆発する。もう一度
イカサマ賭博場に迷い込んだ素人がカードの手札が筒抜けの状態で百戦錬磨のディーラーに勝てるのか?
爆発する。もう一度
だが首を振って考えを否定する。
いや。勝つ方法はある。可能性はあるはずなのだ。遺物を使い、搦め手を考え、バルロを罠に嵌める。
手にあるのは片道切符。ファクトリーキューブ、コピーズリング、、。ワンオブザワールドは使用中で上空にあって回収できない。
片道切符は現状使用している遺物で、万物を調べたり時間を巻き戻せる遺物である。
巻き戻せば巻き戻すほど体調が悪くなってきている。あと数百すれば廃人になるかもしれない、とアルドが混濁しかけた思考を整理しようとしたした直前、バルロの腕から発生させられた光線がガンブルグを刺し貫いたのだった。
※
次の瞬間にはアルドは宇宙船の船内の通路で意識を取り戻した。気持ち悪さと頭痛から冷たい金属製の床に倒れそうになるのを壁に寄りかかることで防いで独り言ちる。
「即死級の攻撃を何とかしないと、、そもそも、あんな攻撃を永久に避け続ける事は不可能に近い。相手は同じ動作や作業をするコンピューターでは無い、様々な経験を積んだ、感情のある人間なんだ、、」
アルドはフと脳裏に掠めたものがあった。前回の持ち主は圧倒的な敵にどう対抗したのかを。
「、、確かグレッグ?、、だったか、、いやそうか、」
実戦を旨とするガンリュウの槍術の勝利条件は少し変わっていた。実は相手に攻撃を当てる事も勝利なのだが、相手に「まいった」と発言させる口術勝利も含まれるのだ。それは相手の棄権での勝利ということである。
だから試合では試合場への入場から戦いとなる。
なら要所となるのは戦いに単純に勝つことではなく、逃げられる状態を作る、もしくは相手の無力化。
1つ、相手の勝利条件を満たす。
2つ、相手の勝利条件そのものを変えさせる。これは交渉による変更も含まれる。
3つ、相手が戦闘継続出来なく状態をつくり出す。(他勢力、命令系統の介入も含まれる)
バルロとの戦いで必要なのは何かを再確認すると、レフト・ライトに宇宙船を守らせ一人バルロのいる場所へと向かった。
※
「何が望みなのか?」
「なぜ戦うのか?だと。」
バルロ・クリューニュは敵となるアルド・ガーデンブルグからその言葉を聞いた。はじめは耳を疑ったがロボットに付いているスピーカーからはそんな言葉が発せられていた。
もう彼と戦うことは「予言の書」で書かれている。戦うことが神の意志なのだ。だから殺す、それ以外に理由はない。いや会話は可能だろう〈油断させるという意味で〉だが。
何故交渉が可能などと思うのだろうか?
敵対する相手に教団がどの様な行動をするのか多少知っていれば、そんな考えさえ起きない。
「罠にしろ対話は無駄だ。他の遺物などを使われる前に、、やるか。」
ギュイン!
バルロは説得を試みるアルドに対して何も答えずに〈黄金の刃〉でガン・ブルグの胸を貫いた。
※
【彼はこう考えている。バルロ・クリューニという男と会話が可能ならば何か糸口が掴めるかも知れないと。闇雲に戦い同胞を使い続けて見えた、閃きや考えの先にこそ最大の希望がある、、と】
復活の地であるラグランジュ・ポイントに浮かぶ基地には、超越者とボーマンが向かい合い、ヴァルがボーマンの隣で臨戦態勢をとっていた。ボーマンには疑問がいくつかあったが初めにした質問はこれだった。
「楽しそうだな。超越者がこんなに饒舌なのは初めてだぞ。いつもは成り行きを見守り、姿さえ見せないのに何だってこの日に、そしてこの場所に現れた。」
ボーマンは答えを知っていたがそれでも尚、答えを必要とした。超越者は嘘はつかない、つく必要が無いからだ、人を遥かに超える仮想演算速度を持つ彼等の思考は宇宙の誕生から消滅までを予想し確定を算出させるだけの力がある。
そうだコイツを倒すには観測させるしか無いのだ。観測は確定の糸口になる、超越者を倒す為に必要なのはそれなのだ。
【私は思想を彼に与え、運び手に逃れられない箱を作った。運び手は死ぬ運命にある、それこそが目的。】
「、、、死ぬ運命にある?〈死ぬ〉ではなく?」
【さぁ宴を始めよう。友よ!!】
※
政府管理厳重保管監視室。
それは些細な事だった。バルガンが凶悪犯から押収し搬送されたとされる遺物が一瞬の歪みを生じさせ。再度元に戻った。
「、、?」
些細な変化は計測されたがそれだけだった。
※
人や人種は様々いる。だが同じ人や人種であっても思考は異なる。最も一般人と思考が乖離する集団を作り上げるのは【素質】と【教育】かも知れない。
ではそれを同時に施されたバルロ・クリューニなる、人物は?
アルドはバルロを説得する為に生身で、バルロクリューニに対峙していた。勿論左右にはレフトライトのオーガユニットが待機して、バルロ・クリューニの能力攻撃を警戒をしているがあくまで話し合いが目的だった。
「攻撃を諦め、説得だけとは、、。攻撃以外に何を狙っているのか?何らかの遺物の発動を待っているのか?ならばこちらも少し趣向を変えるか、、」
バルロは先程までとは少し戦い方を変えた、相手がこちらの手を事前に読み回避する事が分かった。またこちらと会話をする必要性がある事も、相手は現在即死級の攻撃を使用出来ないのかもしれない。
〈アッシュドクラウド〉
無色透明の霧がバルロの背中から立ち込める。これは特定の鋼鉄や鋼、元素の鉄(fe)を腐食させる物質を散布する技で、相手を無力化させる際にバルロがよく使用する。効果が遅いのが難点だが視認がしにくい事で隠密性が高く近代兵器戦ではよく使用する能力だった。
強力な合金に守られた現代戦車を破壊するのに全体を攻撃する必要はなかった。複雑な制御系統が破壊すればそれは大きな棺桶に過ぎない。
非常に広範囲でしかも簡単な操作まで可能なそれは護衛に付いていたレフト・ライト戦車の内部に入り電子装置の一部を攻撃した。
プツン。ズザザザー。
砂埃を上げて地面を倒れ込んだオーガユニットは操作が出来なくなる。アルドは話し合いに応じると思われたバルロの突然の奇襲に、驚き動かなくなったオーガユニットに視線を移した。
いや移してしまった。
もとに戻した視線の先には無表情のバルロ・クリューニがアルドがわずか数歩先にまで距離を縮めていた。
「ぐっ!」
バルロ・クリューニは何も持っていない手をアルドに向けていた、アルドは超能力の様な不可視の力で宙に持ち上げられる。
顔をバルロに向けられバルロの瞳に視線を無理矢理向けさせられる。不味いと思い瞼を閉じようとするが身体の自由が効かないため、虹色の光彩を見てしまう。
※
※
※
〈大体わかった。アルド・ガーデンブルグという男の事が、実に身勝手なそれでいて幸せだった記憶だ。復讐?償い?愛?ハッキリとどうでも良い事に拘る男だ。答えはもう出ているのではないのか?まぁいい、事前に遺物によって行動が先読みされて回避されるのならばこれはどうだ、想定内か?どちらにせよ、この貧弱な武装で敵として予言に刻まれたのなら結局のところ、この男の結末は変わらない。〉
〈マインドキャッチ〉によって過去と現在が読み取られ、記憶がグチャグチャに混乱しているアルドにバルロ・クリューニが諭す様に地面に下り立ち両手を広げ語りかける。
「回転時計を解除しろ、そうすれば話し合いに応じよう。何故?武器を持ったまま、構えたままでは話し合いが出来ないだろう?それともこのまま戦いを続けるのか?これが最善の手なのだろう?私も無益な戦いは望まない。我々は少々の誤解によって戦いっていただけなのだ。」
アルドの耳から超音波に似た、声とも音ともいえない何かが情報として脳に入力される。アルドはバルロの言葉は〈真実〉だと確信した。相手も戦いたくないだろう、利益がないし誤解によって戦っていたのだ。
ならバ?ロ・◯✕ー▲の言う通り会話を初め✕✕といけない。ミ&ー@を復活さ◯▲して、、
自由になっている手で片道切符の解除ボタンを押した。
※
その瞬間、すべてが収束した。
可能性がゼロになり。9の並びが100になった。
※
教団の圧倒的な猛攻の中、ラウラは何かを直感し破壊された自身のオーガユニットを背にサブマシンガンが抱え呟く。額から涙の様な人工血液が目頭を通り頬へとたれた。
「坊っちゃん。」
再度強行突撃してくる教団員に気付くと再度銃口を向け。嫌な考えを弾丸と共に放出した。
※
宇宙船の修理や侵入者の対応をしていた。ルル・ルリは特殊な力場をアルドの近くで感知する。立体映像のルル・ルリは全員アルドのいる場所に視線を動かした。その視線の先とさきにあるのは何なのか、ルル・ルリは再度侵入者に妨害を仕掛けた。
※
ボーマンとヴァルは超越者を刺激しない様に沈黙していた。しかし二人は気付いていなかった、それは中身の無い残像の存在であった。二人は何か突破口を探しながら、ただの置物に話しかける続ける。中身の場所がいるのはそうー
※
蝙蝠は縦横無尽に教団員達に突撃する。オーガユニットは破壊されたが、肉体のまま構わず。腕が吹き飛ぶが同時に相手の頭を剣で潰す。日が傾き、岩の影が濃くなり自分に重なる。
※
レフト、ライトはー
以下、訳
※【誰も助けないーこの運び手は死ぬ】
※【そもそも傍観者である我々はあくまで許可を与える存在であって、救う存在ではない】
※【面白くないな、、】
※【全ては掌だったとはいえ、運び手が出来そこないの同胞に良いように扱われ、我々も今後何も無い箱庭に閉じ込められるという事実が】
※【我々にとって年数などあってないもの、宇宙の始まりから終わりまでであっても長さはそうかわらん】
※【哀れ】
※【運び手ではなく、駒がな】
※【苦痛にまみれ、汚物にまみれ、毒にまみれた後に、もっとも信仰していた偽りの神に廃棄される】
※【信仰は我々の根源ではない、しかし力の源泉の1つではある。彼等は破片、何かを創りだす起源の破片だ。我々の神もそうであったようにな】
それは苛立ちではなかった。只、この次元の神という構成要素が遺物に影響を与えた結果に過ぎない。今死なせるべきでは無いと、その点でいえばアルド・ガーデンブルグは神に近い超越者に保護されていたのかもしれない。
〈私が行こう。〉
※
※
ガァンン!
バルロのアルドへの攻撃が銀色の棒によって防がれていた。いつの間に現れたのか、そもそもそれは厳重に保管されていた。それが戦闘中、眼前に突然現れれば驚かないものなどいない。
「!」
「ばかな?!」
【次元砲】だった。
アルドの眼前に浮遊している棒は、物理現象を破りユッタリと少し傾きながら、驚くアルドに近付く。
ヒュッ!
銀色の棒が急激に伸びてアルドの胸に刺さる。
「がっ!???」
バルロは状況が急変した動揺を抑え、爆風で全てを吹き飛ばそうと、後方に跳びながら右手に発生した『不安定な爆発物』をアルドと遺物に叩き付ける。
1キログラム以下のそれはビル群が立ち並ぶ都会で投げつけた対象周囲300メートルを荒野に変えるだけの爆発力なある。英雄の類でも、まして人に毛の生えたアルドの体などは原型も留めずに消滅するだろう。
ドココゴ!!
赤から白、そして黒と色を変える世界。熱風がバルロの身体を通り過ぎる。しかし依然胸騒ぎは消えなかった。
パラパラ。
※
黒煙から人影が現れる。間違いなくそれはアルド・ガーデンブルグである。しかし存在感が全く違っていた。それはアルド・ガーデンブルグではなく〈アルド・ガーデンブルグ〉の様な何かであった。
「ナノ・ハートを砕けば異物が除去されて適合率が上がるが、解除後に死なれるにも、、な。」
超越者にとってアルドはペット以下、虫けら以上。だが全ては理〈ことわり〉をもったものであって、対象物、生物以外不可抗力で殺すのは神の下僕である超越者が許さなかった。
〈アルド・ガーデンブルグ〉は銀色の棒【次元砲】をグニャリグニャリと変化させ、ミミズのようだったそれは銀色の棒はいつの間にかレーザーグレイブになっていた。そのレーザーグレイブの切り口からは恐ろしく強大な力が素人目にも確認できる。
「これが現状に適した武器?もともと適合率が低過ぎて性能どころか、もとの形すら保てないとは、、やはり〈私〉の運び手としては不適当か、、」
アルドは人というカテゴリー内で収まる身体能力だ。それを脳を少し弄って依り代として代用しただけの低性能の乗り物。総力戦。
〈アルド・ガーデンブルグ〉は即座に判断を下した。
瞬間片道切符を使用し、世界の全てを理解する。バルロクリューニの能力、貯め貯蔵された数々の能力。そして能力によって縮む寿命と残り時間。
情報収集を個人に限定しかつ、連結時間を瞬〈まばた〉き以下にすることで膨大な情報は適合率の低い肉体でも十分に戦闘継続を可能する。読み取ったのは勝利結果から逆算した行動予測のトレース内容だ。
運が良い事に〈観測〉されている。これは先程までの身体能力ではなく、アルドの肉体を限界以上に引き上げた場合のみ到達出来ると確信。脳内の肉体制御に関する情報を上書きし、その負担分をナノ・ハートに負わせる。
瞬間。
高速で光の刃がアルドの目前に迫る。それを予め知っていた〈アルド・ガーデンブルグ〉は光をレーザーグレイブの先端を擦り付けることで消滅させた。
コピーズリング。
内部には魔石が保管されている。魔力が少ない土地において魔術を使う為に必要な鉱石を左手に出現させ、魔力構成図を脳内で描く。
〈礫〉
無数の小石が魔術によって空中に生成され、撃ち出される。バルロ・クリューニは光の刃を無効化するのを見越して追撃をしようとしていた、バルロが能力者だとしても反応速度は予知を除けば常人と変わらない。
それ故にオートガードの〈イージス〉絶対防御を戦闘中に常時展開している。礫は無数に飛来する為に避ける事は難しい、自動でイージスが防御をしてしまい視界が遮られ反撃の警戒して減速する。
それは隙である。
ハンドリンク。
電子人形にガンブルグを宇宙船から射出するように命令する。意思疎通に時間が掛かる電波による情報交換ではなく、生体電子信号により言語によるラグを解消し瞬時にそれは相手に伝わった。問題は〈あまりに完璧に伝える〉とアルド本人の命令かを電子人形が疑問に思ってしまう。だからこそ電子言語に若干の間違いを入力し、あたかも片道切符でアルドが繰り返し〈誰か〉からソレを教えてもらったと電子人形が誤認するかが重要だった。
それは成功し、恐らく28秒後にコチラにガンブルグが到着する事を予測。さてと、と〈アルド・ガーデンブルグ〉は時間稼ぎをすることに決める。コチラの勝ち筋は全ての確率において僅か17パターンだった。そのパターンで今現在実現可能な勝利方法は僅か3パターン。どれもがガンブルグに乗った状態で勝利するパターンだった。
つまりアルドが戦車から降りて相手と話し合いを行おうとした時点で負けは確定していたのだ。同時に〈アルド・ガーデンブルグ〉の勝利はガンブルグと共に戦うことが前提でもあった。コレで前提条件は整ったのだ。
「完璧」
完璧は魔術で最も硬く完璧でこの〈アルド・ガーデンブルグ〉が好んだ。この魔術を考えたものは多分【@&:&】かもしれない。それ程まで、身体に精神に馴染んだ。瞬時に、瞬間に、超展開する【完璧】はまるで絶対防御の様に攻撃を弾く。
しかし人類が不幸なのはこの魔術を解除する〈対〉の技術を消失した事だろう。アレンジの対でも問題は無いが完璧程の【極微量の魔力量で発動するものはそうは無い】更に解除するタイミングも事前に打ち込みが必要かつ、神業でなければならいので使いこなせるかは微妙であるが。
脳内にあった魔術構成図から、簡素な対を使用前に用意しそれを脳内に描くことで魔石の消費は抑えられている。更に魔術消費を抑える方法は次元砲を変化させて作り出したレーザーグレイブでこそぎ落とす。 身体の各所が限界を迎えつつある事を実感しながら〈アルド・ガーデンブルグ〉はバルロ・クリューニの猛攻を凌いだ。
※
異変があってから、優劣は逆転した。攻めてはいるがまるで、ダメージが無いのだ。先程アルド・ガーデンブルグは何らかの行為を行った。遺物の影響かもしれない。このままではジリ貧で全てが終わるだろう。
ある攻撃はレーザーグレイブで弾かれ、アルド・ガーデンブルグに能力が当たっても何かしらの能力を使って無傷になる。
「しかたあるまい。」
寿命の減少に恐ろしく響くが能力【虚空】を使用する事に決める。虚空はあらゆる物体を別空間に封じ込め消滅される技だ。只調整が難しい、穴が大きければ全てを飲み込む穴は空気はおろか周囲全てを飲み込み消滅させるため、地上で使うのはそれなりのリスクがあるからだ。
脳内演算をする時間。
「?!」
僅かな時間をぬって〈アルド・ガーデンブルグ〉は空中に舞っていた。
バルロが記憶を読み取って知った「風陣」、確か手に空気を圧縮させ高速の斬撃を見舞う技。その一部を流用し、足裏に直接圧縮した空気を出現させた。
10メートル以上あった距離はほぼ一瞬で消える。
近過ぎるが故に〈虚空〉を撃てない事を悟り、同時に驚きによって硬直した身体と思考で回避が遅れる。
レーザーグレイブの縦斬りを身を攀じって躱したと同時にバルロは失敗を確信する。
レーザーグレイブは空を切るかと思われたがー
ブオオォン。絶対防御がまるで霧のように霧散する。
「ぐっ!」
片翼がバルロクリューニから切り離され、空中を舞った。同時に〈アルド・ガーデンブルグ〉は翼を掴みとると砂埃を上げつつ転げながら着地して、翼を十字に斬りつけて消滅させる。
傍から見れば状況は楽になったように思える。しかし全身の負傷、魔石はすでになく、脳へのダメージは傍から見れば考えられないほど〈アルド・ガーデンブルグ〉はダメージを負っている。だがそれを表情や動作に出さない圧倒的な余裕をソレは演出していた。
「、、、」
バルロ・クリューニは悟った表情で〈アルド・ガーデンブルグ〉を見据える。命はとうに捨てている為に恐怖心は無い、勝敗は分からない。だがここで勝てないと匙を投げることはバルロには出来なかった。
「神よ、身元へ参ります」
バルロは呟き、態勢を低くして臨戦態勢をとった。アルド・ガーデンブルグが動いた瞬間、能力による攻撃を加え致命傷を負わせれば勝負は分からない。
行動の間があった。
何かの理には十分な間。
解が降り注ぎ。
バルロ・クリューニはそれを感じた。
実験室での囁き、光、そして声。
《81号。汝を約束の地へと誘おう》
「約束、、の地、、」
歪な超越者がバルロ・クリューニを依り代として、この次元に誕生。降臨した。
周りが光に包まれる。
※
〈アルド・ガーデンブルグ〉は疾走する。目的はあくまでガンブルグに乗ることだ。この現象は〈片道切符〉の観測されなかった現実だ。
つまりアルドとバルロの戦いにあちらも【超越者】が介入した。事に他ならない。
「偽りの神が、、いや、だからこそ、、か、、」
ブオオォン、ブシュ!
上空から飛来したオーガユニットと呼ばれる戦車は、弾頭のような外装を自動的に切り離し、コックピットへの進入を誘導していた。
手慣れた操作で〈アルド・ガーデンブルグ〉はガンブルグの起動を開始する。そして、フと周りを見渡す。
「まだ残っているか、、未練はあるだろうが存分に働いてもらうぞ。」
ガンブルグから伸びたケーブルをハンドリンクと繋げる。
再度、片道切符を使用して相手の戦力や状況を探る。
神々のいや、超越者同士の戦いとは【始まる前から勝敗が見えている】、全知だからこそ超越者であり、超越者だからこそ神とも呼ばれるのだ。始めから決まっていた、我々は偽神に読み負けていたのだ。
「所詮はどちらも今は紛い物よ!なぁ!!」
ぎこち無い笑顔の底には圧倒的な自信が満ちていた。圧倒的不利、相手の気分次第では即消滅するかもしれないプレッシャー、それらを跳ね返す笑み。アサルトガンの銃身をバックパックから取り出すとガンブルグは雷光の間をぬって移動する。
恐ろしい重力が身体を押し潰すが、それを無視して更に速度を上昇させる。
「アハハハ!どうだ、偽神よ!宴だ!!!狂乱の宴ぞ!!楽しいか?!」
※
※
何もいない虚無、仲間はいない。
神のプログラムによって出来た〈何か〉は超越者に近い能力を有していた。いやそうなるようにプログラムされていたと言うべきか。
運び手によって宇宙は生まれ、生命体は出来た、そして栄え、《次元》の消滅直前にある遺物を己の身体を2つに切り分けて作り出し放出する。
自分の次の身体の設計図の元となる《予言の書》は次元の穴を通り、別の世界を渡る。きっと新たに作られたこの次元へと戻るだろう。重要なのはこの次元のプログラムである〈神〉の存在を作り上げる運び手の存在。《種》はこの次元消滅と同時に人や運び手に渡るように細心の注意を払う。
こうして超越者は誕生し次元の消滅と共に、身体と内包したエネルギーと共に外部の次元へと移動した。
こうして次元を越えることが出来ない超越者は別の物に形を変え、また意味を持ち拡散した。
〈何か〉には何もなかった。生物はいたが同じカテゴリーの同種である〈超越者〉はいなかった。同種と何かを共に楽しみたかった、何かを共にしたかった。
《宴》。話し合いでも良かった。いや、これは原始的なものであるほうが良いだろうという気持ちから互いの力をぶつけ合う《原始的な話し合い》に決定するのは当然の流れなのかもしれない。
つまりはこれは〈神々の遊び〉の範囲。
※
※
地面が隆起した割れ目からガンブルグがスレスレを飛行し、雷をガンブルグの先読み能力から自動回避する。
「このプログラムの先読み、、出来るか、、」
ガンブルグ操縦席近くの中核部に回転時計の一部を括り付け、内部にいる一部にコンタクトをとる。この土壇場の状況を切り抜けるには全力で最善手を打ち続けるしかない。
超越者がその気になればこの次元の存在する惑星を一瞬で消滅されることが出来るし、力を使わずに逆算し息を吹きかけるだけで、時間と位置などのあらゆるエネルギーを収束させドミノ倒しの様にこの惑星を破壊できるだろう。
唯一それをさせない方法が〈偽神〉を楽しみ続けさせるということ。力を抑えているであろう、この状況で遥かな格上に勝つ方法は、今の状況を継続させ続ける事なのだ。
〈アルド・ガーデンブルグ〉はやる気のない遺物を自らの次元砲で無理矢理、ガンブルグのコンピューターと結合させる。
ErrorーErrorーError
ガンブルグのメイン画面に大きな文字が点滅する。
問題ない、コレは片道切符で分かっていた未来で〈ガンブルグ〉と片道切符の結合は不可能だが―――
ピロン。
normalcyと表示される訳でもなく。ただごく自然にError表示が消え視界が開ける。
「魂か、、行くぞ!!」
〈アルド・ガーデンブルグ〉は最早制御すら要らなくなりつつあるガンブルグにしがみついて、残された最後の機会を伺った。
※
※
※
バルロ・クリューニは考える。
もともと勝つ為の戦いではない。代理戦闘?いやテレビゲームで友と戯れるだけが目的の自分を慰める為だけの行動《勝敗は分かっている》のだ。
残りは、、
地上から二十メートル程浮いた場所から地面スレスレを滑るように飛行する戦車に狙いをつける。
バルロの指先から凄まじい衝撃波が放たれ、その衝撃波の間を掻い潜りながら、機体の限界を超えた戦車がコチラに向かって突進してくる。
戦車は氷柱の雨を射撃で防ぎ、超能力を躱し、レーザーを避ける。
『時間だ。』
バルロ・クリュー二は両手を広げ戦車に向かって周囲を飲み込む程の〈光の刃〉で作った極太のエネルギーを放出する。その光は触れたものを消滅させる。そして対象周囲からエネルギーを徐々に絞ることによって回避を不可能にしていた。
ガコン!プシュ!!
戦車の緊急脱出装置によってさらに加速してコチラに向かってくる人影が一つ。
ビュウウ!!
〈アルド・ガーデンブルグ〉が光の刃が当たる前に攻撃をしようと、次元砲が変化した槍を身体にピッタリと固定し突き出したまま、ミサイルのように突き進む。
空気抵抗による減速を最小にしても。
だが、それでも。
それでもほんの数瞬光の刃の方が早い。目が見開かれる!
ジュッ。
アルド・ガーデンブルグの服に光が当たり。蒸発する。
※
※
〈次元砲〉に決まった形はない、威力も同様だ。決まりすら存在しない。それは狙いをつけたものを確実に破壊する、物質を、魔法を、能力を、概念を、倫理を、神が創るルールすら相性によっては破壊するだろう。
アルド・ガーデンブルグに次元砲を扱う素養はほぼ無い。出来ることは斬りつけたものを消滅させる事だけだ。〈アルド・ガーデンブルグ〉のままでは知識や知恵に介入できても同調率は低いために、それが限界なのだ。
だがほんの少し。
ほんの少しだけならば。
槍の形を数瞬先に届くように変化させる事と威力を限定させる刃先を数mm伸ばす事。
次元砲もアルド・ガーデンブルグに合わせる必要がある。
互いに歩み寄る、そして。
※
アルドの思いや願望によって、届くはずのない攻撃の速度を素早くした。アルドの持つ次元砲の周囲、空間を消滅させ消滅した空間をつなぎ合わせるコンマ数秒分加速させる。
凄まじい程のエネルギーを消費する槍が数瞬速くバルロ・クリュー二を貫いた。
「!!」
その槍は必中では無かった、だが全ての現象を少しずつズラす事で、それは必死、そして必至を回避した。
両手に力を入れて握る槍を捻る。【次元砲】
それは確実にバルロ・クリューニを、いや中に存在していたそれにダメージを与えた。それは強大な消滅の力だ。
※
※【いい宴だった】
※【偽神よ。遊びなど我々には必要ない。ただあるように、使われる。全ては決まっているのだ。その翼人は、、】
※【いや、、これで良い。全ては決まっていた。そうだろう?】
※【そうか、そういうことか全ては流れの中、その中の《宴》。ならばそうだろうな、始まりがあり終わりがあり、そして全ては戻る。、、螺旋か。】
※【私が消えればこの次元が消滅する。身体を媒体にし、全ての業を箱に詰めそれを託そう。運び手に。】
※【これは宴を用意した運び手への礼か、さらばだ――】
※【、、、翼人よ。約束の地へ行け共に私の一部と共に―。】
※
光が満ちた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
エピローグ
ボーマンはラグランジュポイントから脱出していた。巨大な大鷲になったボーマンはヴァルを背に乗せたまま、大空を滑空しつつ下界を見渡す。40メートルを超える巨体でも人一人はかなりの荷重が掛かり滑空するのがやっとだ。
「これは?!」
目下に光が収束していた。それは渦を巻き、徐々にではあるが収束していく。
「ガァーガァー。」
ボーマンが超高度から大鷲の目で地上を確認する。アルド・ガーデンブルグの宇宙船の周りには教団がアリのように群がり、所々煙が上がっている。しかし何とか戦線は維持している。
『シュタインから連絡、巨大なクレーター、、中央には巨大な次元の穴を観測。クレーター内に生命体は1つ。高エネルギーを保持した何かです』
ボーマンはゆっくりと確実に次元の穴の近くにいる生命体の方向に向かった。フワリと地上で人の形に戻る。
翼人では無い、今まで話していた超越者でも無い。だが消えそうな金髪の残像が揺らめいている。
「、、超越者、、か?」
『お前が新しい運び手か、契約の件もある暫く待て』
話が読み込めないボーマンはヴァルと顔を見合わせる。
「待てとは?何を?」
『ここには居ないがこの世界にいる男を―な』
次元の穴は塞がり周囲には抉れたクレーターと数人の生命体がいるだけだった。
※
最終6章に続く。
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読みたい人用
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銀河司令長官バルロ・クリューニの特番が放送されていた。サードアイという教団の影。教団の後押しで政治家から銀河司令長官へと駆け上がり。大規模な〈海賊〉との戦闘によって大敗、責任をとって辞職。その後政界や世間から消えた謎多き翼人。
次々に明かされる使途不明な資金の流れ。経済を立て直した面は多少評価されたが、海賊との戦いで戦死した遺族が次々と批判する。
世間では悪徳政治家だとの評価が多数を占める。
数々のコメントが流れていた。中の一部を抜粋する。
『アイツはとんでもない男じゃったよ。だが世間で言われているような、悪辣な男でもなかった。そう只の男、、教団との関係がなければそこら辺にいる一般人とかわり無い。だが根が深すぎた、信仰と言う名の根が。』
『そういえば、そんな雇い主がいたっけな兄弟?あっ体がバラバラになって復活の能力で復活できたあの翼人の長官だよな。まあ金払いは良かったぜ、無茶は多かった。だが変な奴を相手にしたのが運のつき、、いや、ありゃ運命だったのかもな、何回もチャンスはあったのにやらないなんてな。』
『最後の予言では彼は神の一部となり永遠を旅する。たどり着くその先こそ永遠の地、約束の地だ。』
バルロ・クリューニがどうなったのか、それは分からない、しかし彼はまだ生きている。そう実感させられる内容で締め括らされた。
END
次でラストの章です。全伏線回収できるかな、いや星さんとかね。何年掛かるのか分からないし、書ききれる自身が無いけど、気が向いたら更新します。
あと誤字脱字気が付けば修正します。




