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異次元収集家アルド 五章11話 祭壇編

年末だ!


伏線回収?そんなの知らん、はじめから分かっている人には分かっていんだ。謎でも何でもない。にしても今回は1万を大きくこえた、本当に文才がない。もっと削れるだろうに、、。


ということで誤字脱字気が付けば訂正します。


ちなみに、この章あと3話予定。いけるかな?無理かな、、飽きちゃうかな、、謎だ。

バルロ・クリューニというのは偽名である。本名は81号。生まれはサードアイという教団の能力者実験により誕生した所謂《実験体》であった。外界を知ることがなく一定の年齢が来るまで彼等の教育を受け、国の中枢機関に配置させられる為に必要なレールを歩んだ。


サードアイの組織の事は分からない、分かることは数百年前に創立され、この次元では考えられない《科学技術》を所有し、次元移動の基礎理論を実用段階まで押し上げ、ついに次元移動を完成させたということだ。次元移動技術の初期とはいえ、これはオーバーテクノロジーいっても過言ではないだろう。


この頃サードアイには二つの目標があった。《能力》を他人に移植出来ないかという事、そして神の顕現に必要な祭壇の準備をする事。只祭壇の完成にはまだ二十年は掛かるらしく、他者に能力を移す研究の最終段階として彼が生まれた経緯がある。




出発直前


全身に黒い脈打つ刺青が施された体の有翼人のバルロ・クリューニはサードアイの白い修行服をまとって、教会本部にひかえる数名いる教祖、中でももっとも高位の教祖ブルタークに謁見していた。


ブルタークの年齢は七十前半だが年齢を感じさせない生命力に溢れ、まだ壮年期始めのようなしっかりとした体型。しかし、それでもヒューマンタイプの人種ということを考えると、機械化や再生治療を受けなければ半世紀程で生涯を終えるであろう。


バルロ・クリューニは前に歩み出ると、優雅な動作で傍らに控えるサードアイ教団の信者から紫色の鉱石を手に取る。


「これが降臨に必要な《融合》の能力か、周囲にあるものそして己自身も任意に融合させる事の出来るという」


「はい。死に至る直前ようやく同意して、《結晶化》させる事が出来ました。死んでしまうと同時に能力も消滅するので、僥倖。いえこれこそ予言書の実現が起こるというという啓示でしょう」


「予言書はあくまでも標であり、もし違えてもその都度修正されより強固な予言書となる。遺物《導》に変更はあっても終息は同じ、神が顕現するということにかわりはあるまい。バルロ、、始めよ。」


ピィィィンン。バルロが片手にもった結晶化した能力?が教祖の体の掌に触れ、同時に肌に触れた部分から風化していく。


ニブイ痛みを伴う筈だが、様々な苦行に堪えた教祖は眉1つ動かさなかった。


「最後に、、もう一度、予言書を見せていただけませんか?」


「、、、予言書に写された文字は教団員が生涯一度のみ読むことが出来る。教会幹部であろうとそれは同じ事だ。仮に読むことが出来たとしても、内容は変わらん、、始めの予言に従えバルロ。」


頭を垂れるバルロ・クリューニ。


そして再度予言書に書かれた事を思い出す。《主は教祖、その時まで祖の命こそ信託である》


バルロ・クリューニは神の存在を感じていた。


だからこそ教祖こそ、現在の神の言葉なのだ。


「教敵アルド・ガーデンブルグを葬り。神を顕現させる為に身を捧げるのだ。」


*********************


ブリッジの中央モニターの前に立ったラウラがアルドに今回の作戦の説明を行う。


「情報によればバルロ・クリューニの表の顔は《元》銀河星系最高司令官ですが、彼の支持母体はある教団であることが知られています。」


「それが《サードアイ》という教団です。この星系での神話では、過去・現在・未来の神がいます。全てを見通す第三の目を持つ未来のサードアイその復活を後押し、またその労により神の国に導いて貰う事を最重要課題としています」


「その《サードアイ本部》のコロニーが作戦の舞台となります。これがコロニーの映像です。」


それはヤドカリのような形であった。元々数十年前に起こった反乱を鎮圧するため軍が特殊な隕石を加工して建設されたものであり、補給基地としてしばらく保持していたが、反乱鎮圧後不必要なものとして民間に売りに出されたものであるという。


廃棄されたコロニーは宇宙船を所持する企業や団体が買うことはあるが人がいない最果てに近い、こんなコロニーを買うのは余程の物好きか《何かしらの理由》がある場合だけだろう。


「彼等は定期的にコロニー内の物資を輸送船で近くにある次元の穴の中へと送り込んでいます、敵に感知されるため遠距離からの索敵ですので、確認されている次元の穴が何処に繋がっているかは不明。」


「作戦は明快です。相手の基地、、コロニーに我々とボーマン様の宇宙船二隻で継続的に長距離砲・長距離ミサイル等を撃ち込み、バルロ・クリューニをどちらかの宇宙船に引き付け【遺物を奪取する】ことです。」


「バルロ・クリューニがいなかったら、もしくは巣穴から出て来なかったら?」


ラウラは事前の情報収集によってバルロ・クリューニがコロニーにいることを突き止めていた。


「此方の攻撃力が相手のコロニーの防御力を大きく上回っているので、バルロ・クリューニ自身が何かしらの《能力》で防御することになり、能力者の特性上長期戦で疲弊するよりは出撃してくるでしょう。勿論バルロが防御に徹した場合にはコロニーを粉々に破壊する程の飽和攻撃をします。」


「遺物があるのに?」


ラウラは予想通りの質問に胸を撫で下ろす。


「遺物であるからこそ粉々にするのです。そもそも高ランクの遺物は船の砲撃程度では壊れる事がありません、遺物がコロニーから爆風等でバルロ・クリューニから遠ざからればなおのこと、状況は好転するでしょう」


一通りアルドからの質問を終えたところで、ラウラはモニター画面を切り変える。


「問題は先程話した通り、このコロニーの近くに次元の穴が存在している事です。これは彼等が人工的に作り出した次元移動装置です。詳しい話はルル・ルリからあります。」


中央制御室で探索しているのかブリッジにルル・ルリの姿はなく、ラウラの言葉が途切れると中央に日焼けした浅黒いルル・ルリの立体映像が現れて「次元移動装置」の説明をし始めた。


《ここにある次元移動装置は直径約二十メートル、運搬用の宇宙船がギリギリようやく通れる大きさで、距離はコロニーから約60万キロとかなり近距離にあるの。繋がっている次元の穴の先にある場所不明、調査用のミサイルを撃ち込むにしても此方の位置が逆算されるから、放置しているといった感じ。》


「問題はこの次元移動装置が作られた目的でしょう。商業用、教団の創作物か、それとも個人的なものなのか、そもそもよくわからないものです。彼等の目的が神を復活させる事にあるのなら、それに付随する《何か》を行っている可能性があります。そしてコロニーが攻撃を受けた際の避難経路とも考えられるため、早期に《次元移動装置》を破壊するのが良いと考えます。」


ラウラが再度モニターを切り替える。簡単なロードマップだ。


次元移動装置とコロニーの中間辺りに気付かれない様に接近

ミサイルを発射

次元移動装置を破壊すると同時に飽和攻撃をコロニーに行う

バルロ・クリューニを宇宙船に引き付け遺物の奪取

バルロ・クリューニが出撃しない場合はそのままコロニーを攻撃

敵の疲労を待つ


「戦闘が長引けば彼等も強襲の混乱から回復して、思いもかけないを対応してくるかもしれません。遺物が今回の目的である以上、遺物を守るバルロ・クリューニの撃破は奪取の近道とはなりますが、絶対では無いことを念頭に置いておいた方が良いかもしれません。」


「分かった。」


「続いて、作戦が相手に━━」


アルドはそう答えたが、作戦に1つの要素が足りないことに気が付いていなかった。これは能力者との戦いでは【常識を想定して戦ってはいけない】ということだ。


そしてバルロ・クリューニは【能力者】である。つまりはそういうことなのだ。




〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


バルロ・クリューニの持つ多くの能力の中で《羅針眼》というものがある。それは一度肉眼で見た相手の位置が感覚的に分かるというものだ。


この羅針眼は比較的、使用する《内包する異質な力》と《使用時における能力の劣化》が少なく、結果バルロ・クリューニがもっとも良く使用する能力だった。


アルド・ガーデンブルグがこの次元に再度来た時点から捕捉は完了。カルバンとディーガはバルロの報告を受け、各々高速戦闘艇に乗り込んで出向の準備を終えていた。


「彼等が餌に釣られこちらに向かっている、これより計画の第二段階移行。これを踏まえてお前たちには祭壇へ《神器》を送り届ける役を担ってもらう。」


「分かってるって、にしても誘き寄せるならもっと引き付けてからの方が良いんじゃないか?」


「いや、真っ直ぐにこちらに近付いているという事は完全に《神器》の位置を掴んでいるということだ、計画の要となる《神器》を奪われてしまっては元も子もない。」


ストーン人は基本的に表情を読み取り難いがカルバンとディーガは苦笑する。結果問わず《遺物》を輸送するという事はサードアイの教祖達はバルロ・クリューニの生死にさほど興味が無いということだ。


アルド一向に知恵が多少あるのなら、バルロに勝てる算段を立てるか、いなす力を持った状態で戦いを挑むだろう。それを全て分かっていながら計画を進めるバルロも狂信的といえなくもない。


苦笑は《眼に見えないモノ》に命を掛けようとするバルロを哀れんでの事だ。


「ちなみにだが、遺物の中で一番重要なものは何だ?」


「神器の中でなら間違いなくこの神器だな。」


バルロ・クリューニは次元砲の納められたケースを指差す。カルバンとディーガは頷くと次元砲が入ったケースと片道切符、ワン・オブ・ザ・ワールドのケースとを二人で分けた。


遺物は全て大事ではあるが《次元砲》を死守する意思を感じる挙動を二人から感じた。


「死ぬなよ大将。」


「ああ。」


バルロはカルバンとディーガの二隻が出向したことを確認すると自分も簡単な準備を整える。といっても一般的な宇宙服を装着しただけであり、呼吸に必要な空気循環装置と体温耐圧スーツ・ハンドガンという軍隊でも軽装な武装であった。


バルロ・クリューニに持つ能力に《全ての環境に身体が適応する》という能力があるが、宇宙服に頼る理由は能力の温存と撹乱の為だ。


バルロ・クリューニは通信によってコロニーの制御室にいる教団員に連絡する。


「ダミー人形を五体射出しろ方向はYK42方面、格安の脱出ポット二十機も軌道を若干ずらして打ち出してくれ。」


《承知しました。いつ頃開始しますか?》


「今すぐだ。」



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


ビービービー!作戦を説明し終えた時、ルル・ルリがモニターに現れる。本体が宇宙船の中枢に繋がっているまま状態であることが緊急性の高い報告であるということが伺えた。


《アーちゃん、大変。コロニーから戦闘艇が次元の穴方面に移動!今までと違う行動!これは━━》


ルル・ルリがいわんとしていることを察知して、アルドはハンドリンクを操作、遺物の位置を確認する。思っていた通り、急速に遺物がコロニーから離れている。


「情報が漏れたか、、バルロ・クリューニの能力。」


バルロ・クリューニの本来の能力は知っている。手持ちの能力も《片道切符》で事前に大体は把握していた。しかし、警戒するべき能力は《火力》と倒し方、そして背後関係と考えていた甘さが相手に先手を与えてしまった形だ。


もっとも気が付かれる可能性もラウラは考えていたため、アルドに作戦の修正を提案する。


「申し訳ありません、相手に察知されたようです。当初の計画とは些か違いますが、宇宙船装備の全有効射程到達前の攻撃を提案します。また《グリフィン号》に連絡し、連携しつつ遺物の回収を最優先に行動した方がよろしいかと。」


勿論バルロ・クリューニの能力での盗聴・妨害・撹乱の可能性も考えるが、問題は結局遺物の回収にあり事前に打合せしたバルロ・クリューニの対応を再度打診するだけなので問題はほとんどない。アルドは頷いてラウラの提案を受け入れる。


「ルル・ルリ」


《グリフィン号と回線を繋げるよー。》


モニターにはブリッジに立つボーマンとヴァルがいた。二人とも混乱せず状況は飲み込めているようだ。


「作戦は当初と本筋は変わらない、遺物の回収は出来るだけこちらが行い。バルロ・クリューニを引き付けるのはボーマンに頼みたい。大丈夫か?」


《問題ないがな。相手の戦力が予想を上回れば撤退するし、遺物の回収の目処がたっても此方は撤退する。あくまでも遺物の回収が目的だからな、そのつもりでいてくれ。さて合流するポイントは《例の次元》だ。》


「わかった。」


《健闘を祈る。》


プツン。


ボーマンとの通信が切れる。続いて報告を止めていたルル・ルリが現状を報告する。


《物体が此方に接近中。緊急脱出用ポットが二十機、人形の戦闘員らしき物体が五体。魚雷・ミサイル各種武器で対応可能。本艦接触まで後118秒。》


「バルロ・クリューニ本人の襲撃と見て良いでしょう。数が多いのでダミーである可能性が高いですがそれでも対応しなければならないと提案いたします。中・近距離でも扱えるミサイル等は残しておき、遠距離での命中率・破壊力の高い光子魚雷と、生命反応を感知するソナービットを打ち出して周囲を索敵した方がよろしいかと。」


「軍事的な事はラウラに一任する。」



アルド達は遺物を追うために先ずバルロ・クリューニをやり過ごし、サードアイ本部を通過、そして高速戦闘艇を破壊又は鹵獲しなければならない。


当面問題となるのが遺物を遮るコロニーとバルロ・クリューニをいかに避けるのかだ。


宇宙船から打ち出された魚雷は次元ワープ装置・高速戦闘機・脱出ポット・人形に狙いを定めて打ち出される。


遺物の回収が主目的であるから、退路?となる次元装置ゲートを破壊し、続いて遺物を輸送している高速戦闘艇の動きを止め遺物を回収するのが理想だ。


通常であれば光の速度に近い魚雷は数秒後に戦闘艇に接触し爆発・破壊するが、今回はバルロ・クリューニやコロニーが目標の前に立ち塞がっていた。アルドは呟く。


「前回よりも状況は悪くない。上手くいってくれよ。」


━━━、━━━、━━━、━━━、放たれた光子魚雷はバルロによって打ち出されたダミー群やコロニーを通過する前に見えざる壁に接触。同時に━━



カッ!!


光が漆黒の闇に飲み込まれる。


アルドはルル・ルリの報告を受ける。



次元装置ゲート健在。敵の能力による防御の可能性95%、ソナービットにより可能性100に上昇。続いて戦闘艇、その他も健在。データを表示するよ。』


それは残り二割となった光子魚雷と、防がれ爆発した画像データだった。爆発した箇所からバリアーの形体と強度を割り出す。


「防御系の能力を使用したか?グリフォン号に主砲の援護を要請して共同でバリアーを粉砕し、逃走までの時間稼ぎを阻止。バリアー消失を確認後はダミー群とコロニーの左に抜けつつ、次元移動装置を攻撃する」


ラウラが指示をとばす。


能力者は《内包する異質な力》を用い能力を使用するが無制限ではない。その為になるべくバルロ・クリューニの能力を《攻撃》ではなく《防御》に使用させることが出来れば、攻撃に回せるエネルギーも減る。それは弱体化を意味する。


問題は何処にバルロ・クリューニが潜んでいるのかだった。時間の問題であるが能力を使われている場合発見が遅れるのは覚悟しなければならない。


「念のため、誘導ミサイルをダミー群とコロニーから外側へと大きく迂回させた形で次元移動装置へと発射しましょう。時間経過や撃ち落とされ無駄玉となってしまうかも知れませんが、相手の意識を割けるという点で有効かも知れません。」


『オッケー。相手の高速戦闘艇のスピードを計算したギリギリ間に合う位の迂回ルートを算出して打ち出すよ。時間差で二発発射ヨーシ。』


宇宙船からミサイルが発射される。見当外れに打ち出されたそれはバルロ達に気付かれない様にひっそりと闇に消えた。



《グリフォン号》から主砲が放たれる。グリフォン号の主砲は正確にはビーム・光学兵器ではない、指向性対エネルギーを用いた必殺兵器である。



通称 《オメガブラスト》別名ブラーシンの槍。


この特殊なエネルギー体に当たった物質は分子結合に綻びが生じ、すぐさま原子・電子に分解される。またこのエネルギー体はそれだけに留まらず、接触したモノの対となる反物質へと変化する。電磁バリアーは勿論魔力、超能力による力場すらその影響を受ける。


この主砲を《まともに受ければ》遺物といえども破損または消滅するだろう━━━しかしながら使う者は物好きだけだ。


一つは射程距離の短さ。砲身が船の前面の固定式であること、それは宇宙船を人に例えるなら腕が届く範囲にしか届かない事を意味する。更に膨大なエネルギーを必要とする事、3秒の放射で船の全エネルギーを《全て消費する》という燃費の悪さ。最後に兵器としての大きさ、砲身を含め大型船の半分程を占める大きさなのだから※邪魔でしかない。


※宇宙船には居住スペースや食べ物・物資を積みこむ場所も必要不可欠であるから、一つの武器に船の大部分を割り当てるのは異常。


宇宙船同士の戦いは長距離からステルス性能を駆使しミサイル・魚雷や大型ビーム兵器で超遠距離から撃ち合う事が基本であるのに対して《オメガブラスト》を使用する船は高性能ステルスを駆使し高速で近付いて、消滅させる戦術に固執しなければならないため戦略の幅は狭い。しかし奇襲・超短期戦においてコレ以上の兵器は存在しないともいわれている、それが《ブラスト》銘々された所以である。


その主砲はいとも容易く、バルロ・クリューニの絶対障壁を消滅させた。バルロ・クリューニ自身もこれには驚いた。


何故なら絶対障壁はバルロ・クリューニが持つ能力の中で最も防御性能に特化したものであり、絶対障壁を維持しつつ、宇宙船にダミー群と近付く事が出来なくなるからだ。


バルロ・クリューニは主砲を撃ったグリフォン号を脅威と判断すると共に、一番間近だということでグリフォン号に狙いを定める事となった。



ビービービー。


オメガブラスト発射によるオーバーヒートでグリフォン号は一時的行動不能時間に入っていた。予備電源はほぼバリアーまた生命維持装置に回され、辺りは赤く小さなランプ以外はついていない。


「プニ、プニニ二ニィ~。」


緑色の半透明生物は何処からか現れてヴァルの前に現れる。発音気管が未発達なので会話は独特であるが、発音の間隔や呼吸音などで会話に似たコミュニケーションができた。


「《アルド号》からの情報を使用し、バリアー完全消滅を確認、エネルギー再充電まで後二十秒。再稼働までは約3分です。プニンは手動で副砲を使用、ダミー群を攻撃してバルロ・クリューニの位置を割り出して下さい。私は手動で主砲の切り替え及び、ボーマン様が船を出る準備をします。」


プニンと呼ばれたスライム状の液状生物はグリフォン号を宿主として共生している知的生命体である。寄生した生物や無生物に張り付いて、大きくなる身体の自重と外敵から身を守り子孫を遠くへ運ぶために寄生している。


外敵からグリフォン号を守る事・繁殖・食事に関してだけ《知的生命体》として機能して、現在はこうして共に戦える。


ガコン、ウィーン。


「ボーマン様。」


宇宙船のハッチに一人いるのはボーマン。ヴァルは手動でハッチを開放していく。


ガコン、ゴコン。


船が揺れる。バルロ・クリューニの攻撃を受けているのだ。プニンはビームや実弾攻撃をある程度軽減してくれるが、それでも主砲を撃った後のグリフォン号は防御が脆弱で、修復すらまともに出来ない。


ならどうすれば、いいのか?


「俺が行くしか無いだろ。」


紫色の珠の首飾りから光が漏れ、薄暗い部屋を灯す。


「ユグドラー・シオーン!!」


━━━━


バカリ。


ハッチから物体が射出される。




動きが止まっている宇宙船にバルロ・クリューニは雷撃やレーザーを放つ。ある程度のダメージを与えたとは感じるが、やはり決定打に欠けていた。


罠の可能性や近付くと発見される恐れがあるために隠れているが、もう少しダミー群と共に宇宙船に近付けば肉薄して、《黄金の刃》を放ち撃沈することが出来るだろうと考えた。


ミサイルや副砲で攻撃されるダミー群の半分に簡易的なバリアーを張り、敵の攻撃凌ごうとした時にそれは現れる。


ソードフィッシュ。


固い外骨格と宇宙に適応した巨大生物。動きは宇宙船と比べれば鈍足だが、旋回性能や加速力等は戦闘艇にも引けをとらない速度のソレがダミー群の脱出ポットに己のクチバシを突き刺した。


━━、━━━━。


脱出ポットが爆発して、爆風と共に更にソードフィッシュの形状が変化する。


デビルヴィップ。


高金属の網の様な触手をバラバラに動かしポットを絡み取り、尖った偽手で人形を切り裂く。初めは偶然に乱入してきたものだと思ったバルロ・クリューニだったがここまで来ると敵の攻撃だと確信する。


《アルド・ガーデンブルグの仲間、敵の能力━━━いや、、これは》


ダミーとなる脱出ポットは次々に宇宙船二隻と生物に破壊され、残りのダミーは三つ。一つのポットに出来るだけ強力なバリアーを張り、最後の攻撃を凌ぎきる。


《敵の遺物か!?》


身を宇宙空間に溶け込ませているバルロは【周囲同化】の能力を保持したまま片手からプラズマを放出してグリフォン号の副砲を破壊すると、生物に《高速移動》で近付いて手刀を軸に《黄金の刃》で突き刺す。


バルロ・クリューニの後方で最後の脱出ポットが破壊される。


━━━━。


宇宙空間に音はないがズパリと刃がデビルヴィップを空間ごと真っ二つに切り裂くと同時に、これ自体が相手の罠であることに気が付いた。


遅い。


何もない空間がグニャリと捻れ、バルロ・クリューニの身体がピンクの肉壁に呑み込まれるのはほぼ同時だった。


肥大化する肉の塊は宇宙船のグリフォン号の大きさを超え更に大きく成長する。


《惑星喰い》


生物として一番強い生物とはなにかと色々議論される事がある。膂力か?鋭い牙か爪か?猛毒を持つものか?空を飛ぶものか?それは最も単純で且つ分かりやすかった。


【大きさ】


大きい事。それが、それこそが生物として一番強いのだと主張するように誕生した生物。それは小惑星を呑み込む程の大きさで宇宙船等とは比較にならなかった。


惑星の半径に相当する生物の胃袋に収まったバルロ・クリューニは沈黙したのだった。




その横を宇宙船が横切る。


「ボーマン様の遺物によりバルロ・クリューニ消失。」


「やったのか?」


「通常なら脱出手段は無いでしょう、、しかし、、確実に倒したという保証もありません。」


「今は遺物回収を最優先にした方がいいか。」


無言で頷くラウラに同意してモニターを確認する。第一の関門突破し、第二関門のコロニーが見えてきた。



『ソナービットの情報により、機雷等の罠多数。直進はリスク大。迂回ルート算出。』


アルドは安全な迂回ルートを確認するが時間が直進の倍は掛かる計算だった。


「、、これは、、どうすりゃ。」


「罠の少ない左上前方三十度より侵入してレーザー砲を使用し、機雷や網、デブリ防壁を破壊して、バリアーを展開、強行突破できるかもしれません。」


「被害は?」


「こちらの速度を考えると無傷とはいきませんが。航行自体は可能かと。ルル・ルリ、コロニーの固定砲の数と入手した食料比率から動員される戦闘艇等を割り出して下さい。」


《解析中》と表示されたのは一瞬だった。


『戦闘艇最大三機。コロニー内を構造を望遠で解析、固定砲や移動砲台は最大7門。バリアーの配分を前方に多めに割けばギリギリ可能かな。』


「、、よし。直進ルートで行こう。」


「レーザーを進行方向に照射開始。機雷を遠隔爆破されないように一応ジャミングもお願いします。」


ブオオ。ピィーピィー。ボンボンボン。


レーザーの割れ目に突入同時にバリアーを展開すると、コロニーからの砲撃が始まった。


『予想より砲撃が弱いね。いい兆候。』


ゴゴゴ。それでも船内は揺れていた。


「結構揺れるな。」


「はい、しかし耐衝撃機能が働いていなければ我々はペシャンコになりますので、これでも緩和されているほうかと。」


バシュ!グラグラ。


更に揺れて、アルドは机にしがみつく。


ビービービー。


「どうしましたか?!」


『機雷の一部がエンジンに接触。損傷軽微、誘爆防止のためエンジンを1基停止するからね。』


「おいおい。本当に大丈夫か?」


「自動修復機能が働きますが、航行には問題ないです。しかし、、先程の衝撃で宇宙船の態勢が若干崩れて予想進路から少しずれた様です。これを修正するために減速しなければなりません。」


「うまくは行かなかったってことか?」


「いいえ。コロニーは抜けました、後は残った光子魚雷を打ち出すだけです。」




バルガンとディーガは高速戦闘艇で通信をしていた。これからどうするかを、次元移動装置は目前だった。


「本部の管制レーダーによる情報だと、次元転移装置にミサイルが二発向かっている。これは本当にギリギリの差で間に合わねえ。ミサイルを全弾発射して誘爆できないか?」


「無茶だ。台風の日に千メートルの距離からライフルでターゲットを撃ち抜くよりも難しいぜ。」


「ならどうすんだよ。このまま転移装置を破壊され、《破壊されたから帰艦します》って本部におめおめトンボ返りか?ガキのお使いじゃねぇんだぞ。」


「、、、爆発の余波を使えば、、あるいは、、。」


遺物は頑丈だ、なら爆発の衝撃で再加速させれば移動装置の破壊前に間に合うかもしれない。


「かー、命懸けとは思ったが本当に命をかけるとはな、、んで、どうする?」


「バルロがより重要といった、こっちの《次元砲》を届けよう。なーに全部奪われた訳じゃねぇんだ。任務的には失敗じゃねえ、それに敵さんにもメリットあるだろうよ。」


「んじゃまぁ、ディーガ、後は任せるわ。」


ストーン人の兄弟はハハハと笑い合う。


バルガンは自爆ボタンを押すと共に脱出。凄まじい爆風によってミサイルよりも一瞬早く、遺物とバルガンの遺体が次元移動装置に飲み込まれる。


ディーガの高速戦闘艇は次元移動出来ずに次元移動装置の残骸を通過、同じ次元の宇宙空間を前進し続ける。


そして。


「あーあー、こちらディーガ。敵の宇宙船の艦長のアルド・ガーデンブルグと話をしたい。降伏する、遺物はあんたの物だ、但し命の保証をしてもらいたい。」






オカシイ。


ボーマンは巨大になった身体の内部にバルロの小さな小さな生命を今だに感じていた。普通ならユグドラシオンを解除してグリフォン号に戻るが、バルロ・クリューニが生きていた場合戦闘が継続することになる。


《星喰い》の胃袋で圧死した筈だと思う心と、確実にそうだ言い切れぬ不安がボーマンを長考させた。また星喰いに変化したことで考える速度が落ちたのかも知れない。


ボン。


腹が痛い、精神的にではない。


ボン。


腹が痛い、これは肉体的なものだ。


ボン。


腹が痛い、異物が、、、。


アバレーグオー。カー。


《星喰い》の肉体の一部が内部から破裂した。


破裂した所からバルロが飛び出してくる。格好はボロボロで宇宙服すら無くなっていたが、ほぼ無傷だった。


「はぁはぁ、、力を温存して、アルド・ガーデンブルグと戦おうと考えていた、、しかし甘かった。ここで私が死ねばアルド・ガーデンブルグにすら辿り着けない、、ならば!」


バルロの全身の数十ヵ所から虚空が出現しその穴からレーザーに似た光線が放たれる。


「全身全霊、全力で戦おう!!」



ビビビー、クリンクリン。


瞬間、《星喰い》の身体はきれいに六つに分断される。


マジか!と考えると同時にボーマンはストックの無くなった星喰いを解除して《イトアシ》に変化する。


ガシィ。


ムズリと逃げようとしたイトアシを恐い表情で掴むバルロ。片手には黒い塊となった拳があった。当たれば即死だろう。


ビリリリ!


「無駄だ!!」


グシャ!拳がイトアシを叩き潰す━━


とはならなかった。イトアシの身体は半透明になり、幽霊のように闇に消えたのだ。三・五次元に住む彼等、四次元へと移動したのだろう。


「仲間を見捨てるか?いや、、船内に逃げているな、、ならば悔いはあるまい。」


バルロの胸の前にエネルギーが収束していく、目標は動けないグリフォン号だった。


「━━━━?!」


そこでバルロが見たのはグリフォン号の船首にある紋章だった。


「まさか!いや、、これは!!三大神の紋章!いったいどういうことだ。」


強烈な拒絶反応に襲われ、バルロ・クリューニは放つのを躊躇した。数秒だろう、その時間でグリフォン号は高速短距離ワープを成功させたのか、目の前からいなくなった。


いなくなったことに安心したのかそれともアルドとの戦いのためなのか、バルロはアルドのいると思われるコロニー方面に無言で向かうのだった。

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