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異次元収集家アルド 五章7話

コロッセオ編終了!


もうちょっと削れたかな、、無理か。


次は戦い戦いというよりは〓〓〓みたいな感じ。戦いが好きな人には退屈かも、、。一応3話以内でチャチャっとまとめるつもり。でもこういうのがずっと書きたかった。


誤字脱字気がつけば修正します。


2020 3/14 敵宇宙艦隊が向かってきている事を分かりやすくするために修正。

ショッピングモールの一角、まばらに人や紡錘形の車が行き交う路上。そこには2人の手下を従えたバスクドルクが立っていた。


「はぁはぁ。」


十メートル程の距離をおいて向かい合うライバックの顔は血の気がなく真っ青で絶望に満ちていた。バスクドルクの前にライバックのオートマターの〈キッド〉が寝ぼけた表情でこちらを向いて立っていたからである。


「おっと止まれ、ここが終着だ。俺達はこれ以上アイツ等を進ませる訳にはいかないからな、ここで足止めさせてもらうぞ。」


「、、キッドは俺の家にいたはずだ、、。」


「ああその通りだ。だが駄目だぜ。こんなイベントの時に一人だけでお留守番ってのは《こういう事》になる。しかし、お前もよく踊ってくれた、お陰で色々やり易かったぜ、その点は感謝する。が、どちらにせよお前の運命って奴はここで終わりだ。」


ズリズリズリ。


ライバックの後方で、遅れてやってきたラウラが近付く。その音がライバックの耳に微かに届いた。ラウラにとってキッドは先程の口約束を除けば人質の価値はほとんどない、このままではすぐに銃撃戦になり、射線上にいるライバックの身も危険だと、自身の経験によって想像した。


その予想は全くの的外れではない、アルド達にとって脱出計画が崩れてしまうのは本末転倒である。ラウラは他にも狙撃兵の可能性や敵の時間稼ぎのことを憂慮していたが、ライバックにとってはそれは自分の一部を切り捨てろといわれているようで、とても認められる事ではなかった。


「おおおぉ!!」


ライバックはキッドに手をかざし〈引き寄せの能力を使う〉、アルド達には1日一回と話はしたが、それはライバック自身を守るための創作で実際彼の能力に回数制限は存在しなかった。内包する異質の力が尽きた時に使用不可能になる、それだけだった。


そして引き寄せられる大きさ・生命の有無にも制限はない。


つまりライバックの能力は※【視認していて一度触れたものを引き寄せる能力】だ。


※本人の一部・付属物と認識していれば服などの装飾品も同時に引き寄せる。


「?!」


全ての時が止まる。


モノクロの世界でキッドの体に手を触れると、現実の世界に引き戻される。次の瞬間キッドはバスクドルクから離れた場所、ライバックに抱きしめられた状態で立っていた。


時間の流れが緩やかに感じるほどの濃密な瞬間。


キッドが消えた事に気が付いたバスクドルクがリボルバー式の銃を構え、ライバックがそれを回避しようとキッドを抱えたまま地面に伏せるのはほぼ同時だった。


バンバン!


「ふざけた事をしやがって。」


バンバンガキン!


バスクドルクは数回キッドを庇うライバック向けて銃弾を発射するが、ラウラがプラズマガンを構えると物陰に隠れる。


ズキュン、ズキュン。


ラウラの放ったプラズマガンが手下二人を居抜き、昏倒させる。ラウラは意識レベル・傷の具合を確認するためにライバックに近付いて話し掛けた。


「ライバック様?」


「、、あぁ、。」


うつ伏せの状態のライバックの背中に二発の銃弾が当たっていた。肩甲骨の部分と、脊髄の部分であり。肺を貫通したのか息がもれ、立ち上がれない所を見ると脊髄損傷の疑いがあった。重傷者を動かすのは危険だが、場所が場所なのでライバックを隅まで引き摺ろうとする。


「くっ。」


背中にはアルド、手元にはライバックと負傷者が多く、彼女自身の身体は損傷しているため力が極端に入らない為に断念する。しかし、ライバックの腕の中からキッドが虚ろな目をして這い出てきた。


「、、あいつ、、わざと外した、、のか。」


ラウラはライバックは掠れた声を聞く。


ロボットには正確な射撃プログラムが組み込まれている場合が多い。ライバックの負傷は確実にアルド達の動きを鈍らせる。足手まといにさせることが目的なのだろう。事実アルドに加えライバックを背負って移動するのはかなり骨がおれる。


「ここは?!えっ!!」


キッドの意識が戻ったのか、周りをキョロキョロと見渡す。ラウラはこのままバスクドルクの所へ突撃しようとした矢先に出鼻を挫かれた感じだった。


「くっ。」


ラウラはそれに気が付くと、状況が飲み込めていないキッドの服を掴んで物陰に移動した。


「あっあっ、あのライバックさんは、、。」


ラウラは無言で人差し指を路地に倒れているライバックにむけた。慌ててキッドが路地に飛び出そうとするのを服の襟を掴むことで制止させる。


「今、敵がこちらに銃を構えています。今飛び出せばその瞬間、戦闘用のロボットではないあなたは彼と同じ状態になるでしょう。これ以上、負傷者を増やすのは得策ではありません。」


「じゃ、じゃあ。」


どうすればいいのか?という問いにラウラは答えを示さない。先程の状態から重要な情報はキッドを経由してバスクドルクに流れる可能性があることをラウラは気が付いていた。この場合ラウラが出来ることは3つだ。


1つは負傷し機動力の落ちている自分でも対応しやすいように、バスクドルクが物陰出てこちらを攻撃してきたとき、反撃する事。


だがラウラの周囲ソナーによってバスクドルクが今も物陰から時間稼ぎのためか亀のように身を固め動かず、こちらを狙っている事を知っているためこの可能性は低い。


2つ目はルル・ルリに連絡してバルガサ住民の生命を無視し、緊急脱出プランを実行する事。


そして最後は信じる事だった。


ドスドスドス。


〈ドール〉達が敵を倒しこちらに向かうことを、仲間というものを━━。


「オオォォオ!」


ビビビビビィ~。ズリリリリ~。


レフト・ライトは二人で路地の反対側に駐車させてあった高級車を押しながら、バスクドルクへ突進する。盗難防止の警報が鳴るなか車は壁に激突。


ドクワシャン!!


「うお!この!!」


バンバン!キュイン!


タッタッタッ。


バスクドルクはその場に留まるのは危険だと判断して、後退しながら銃を撃つが高級車がその弾の威力を軽減させレフト・ライトに届かない。弾切れ・弾の種類を変えるためか、薬莢を取り出して弾を再装填する。


タッタッタッ。ガコン、ベコン。


その隙を見逃さず、高級車の死角から飛び出す二体。


スピードは我武者羅がむしゃらに追い付こうとするレフト・ライトの方が若干速く、人等を避けつつ弾を込めるバスクドルクが遅い。問題は距離だった、おおよそ七メートル。


バスクドルクが装填したのが貫通に特化した徹甲弾だとして、次の瞬間レフト・ライトのどちらかがバスクドルクに辿り着いて相手を倒せば問題はない。


足を強化してあったライトの方が半歩、バスクドルクに近かった。


それだけで二体の役割は決定した。


【ライトが盾になり、レフトがトドメを刺す】


情報をやり取りする必要もなかった。


そこには敵を排除するために存在する人形がいるだけだった、知識や育ちつつある感情を捨てた捨て身の突撃。


バスクドルクは戦闘用オートマータで感情というものはない。感情がないからこそ、知識・ルールを頼り最善の選択をする。この弾は無駄撃ち出来ないものだとプログラムされている、だからこそ狙うのは一点、ドールたちの急所だと思われる眉間。


ロボット二体では分が悪いが一対一であれば引き分けることは容易であると自身の知識が告げていた。


バン!


リボルバーから放たれた特別製の徹甲弾は至近距離であるなら、戦車の装甲をも貫通し、バスクドルクの遠隔操作によって任意の位置で爆発する強力なものだ。


ギュルルン。


それはライトの装甲を易々と貫いた。


「?!」


だが貫いたのはライトが〈クロスしていた左腕〉、右腕も貫通するが突き抜ける直前に勢いが止まる。


〈ロボットは効率を重視する〉と考えたライトに読まれていた一撃は不発に終わる。もしもバスクドルクに遊び心や嗜虐心、ロボットには必要ない感情というバグの様なものがあれば、彼の自慢の足を狙い、また違う結果が待っていただろう。


ボスン!


爆発!


ライトの右手が吹き飛ぶ。


━━がレフトどころか撃たれたライトすら止まらない。


「「オオオ!」」


ガガガ!


爆発の余波で倒れそうになるのをライトは踏ん張って堪える。逃げようとするバスクドルクの腰に抱き付く形で掴み掛かった。


「イカセン!」


ライトの必死のタックルをバスクドルクは身を屈めて受け止める。同時にレフトの剛腕がバスクドルクに迫る。それを回避しようとするもライトが腰にしがみついて離れない。


ゴガン!


「ぐっ!」


人であれば一撃で即死の一撃をまともに頭に喰らい、戦闘用オートマータのモニターが酩酊する、流石に一撃では倒れないが何発も受ければ首がもぎ取れ戦闘不能になるか、重大なシステムエラーが発生すると、バスクドルクのシステムが警鐘を鳴らす。ライトは更に拳を振りかぶる。


「離しやがれ!!」


ババババッ!


バスクドルクの左の掌から電気が僅に迸る。彼には対ロボット必殺のコンピューターハック装置※〈エレクトリック・ウォシュ〉があった。それは機械類の動作に高圧電流の負荷を掛けて内部をショートさせ破壊する装置で、今最大の障害物であるライトの頭に触れると強力な電流の一撃を頭に加えた。


※電流の威力を操作可能。機械類の安全機能をショートさせ、コンピューターウイルスを送信し操作することも出来る。


バババ。


「ガガガッ!」


バババ。


「離せぇ!」


バババ。


「ハナサナイ、コワレテモ、、、ダ!!」


強い感情の吐露。


バスクドルクに恐怖という感情はない、だが彼は確かに何かを感じた。人ならば悪寒が走るような恐怖を━━。


それは機能停止の直感だった。


ブォン!


「━━━?!」


ブゴチ。


パリン!


バスクドルクの頭がレフトの拳でもぎ取れ、太い首の千切れた導線がバチバチと火花を散らす。彼の頭は回転しながらショッピングモールの店の硝子を突き破り店内へと消えていった。


ズズズ。ドスン。


全機能が停止したのかバスクドルクの身体は力なく、地面に崩れ落ちた。レフトは足元に倒れているライトにしんみりと言う。


「ライト。オマエノブンマデ、アルドサマヲマモッテヤル。ジョウブツシロ。ナムナム。」


「、、マダキノウテイシシテイナイ。カッテニコロスナ。」


ドールというロボットは外部からの電流に対して幾ばくの耐性があった。戦争地帯で製造される彼等はどんな過酷な状況下であっても安定したパフォーマンスが発揮出来る様に絶えずバージョンアップされ続けたからだ。


海底や焼け落ちる建物、妨害電波、中には電気が流れる柵や壁をぶち破る等々、弱点と呼べるものがあまりない事がドールの特徴だともいえた。


レフトは相棒のライトの身体を起き上がらせると、任務完了の報告をする為に来た道を引き返したのだった。





レフト・ライトがバスクドルクを追いかけていった直後。ラウラはファクトリーキューブを取り出す。


「我々は安全の観点から人をファクトリーキューブに取り入れる場合、本人の許可か特殊な過程を必要とします。ライバック様聞こえていますか?もし貴方が望むならファクトリーキューブに取り込み、宇宙船まで移動させます。しかし中は夜よりも暗い暗闇でキューブが破壊されるリスクがあることを承知してください。」


何もない無音・暗闇で数時間も放置されるというのはそれ相応の精神的な負担が伴う、もともと中に生物を入れる事を前提に造られていないファクトリーキューブ内であるから、何らかの体の変調もあるかもしれない。こういった言質は必要だった。


「、、分かった、、。」


振り絞って出した言葉を聞くとラウラはライバックの出血箇所に自分の服の一部を千切って乗せ、ファクトリーキューブのトラクタービームを発生させ。ライバックをファクトリーキューブの中に移動させた。


「さて、、問題は、、。」


ラウラの視線の先には宅配ロッカーがあった。ラウラはキッドに向かって質問する。


「キッド、貴方の所有者のライバック様がロッカーの代金を立て替えてくれると先程言っていました。もし可能ならばカードを使用して代金を清算して欲しいのですが。駄目であればボックスごと、という強引な手法になりますので。」


キッドは少しだけ思考する。ライバックは多分ベッティング専門店のブックメーカーの払い戻しの事を言っているのだろうとの結論に達っした。アルド達にはその話は通していないので、ラウラの話は真実の可能性が高い。


キッドは小刻みに顔を縦に振ると、ラウラが番号を入力している隣に移動して清算をする。バルガサでは主人の命令でオートマータが買い物を頼まれることも珍しくはない、当然主人のクレジットカードを使用できた。


ピピピ。ガチャ。


中にあったのは極小のマイクロチップで保護するための小さなケースにはMUZ-2500Sというシールが張られていた。


「、、ふぅ。」


ラウラは自分の腕の部分にそれを差し込むとをバックアップのためにそのデータの内部コピーを行う。ウイルスや罠の可能性も考慮してデータを隔離するが、それでも安全とはいえない行為。ルル・ルリなら咎めただろうが今回の目的を破壊されるというリスクとの天秤に掛けた場合、また無茶をするかもしれない主人の事を考えるとラウラにとってその程度は些末事であった。


コピー中も敵は集まってくる。


ラウラは脱出するためにキッドと共に目的地へ向かったのだった。





惑星バルガサには約38億人もの知的生命体が存在し、宇宙ステーションにはその6分の1となる6億人弱が住んでいる。食料や空気、住居、職場などを踏まえるとこれが限界ギリギリの数値であり、密入国や不法滞在を合わせるとそれを大幅に越えるものと思われる。


そして膨大な人口が密集した場所に住むことで一番の問題になってくるのが廃棄物であろう。リサイクル出来る資源は再利用し、出来ないものであっても超高温で燃やして燃料とする。


しかしそれですら分解できない、毒素の強い科学薬品・物質や鉄屑等は厳重に容器に密封されて宇宙ステーションから遠い宇宙の彼方へ射出される。


だからこそアルド達が向かうのはゴミ処理場である。


スラムを更に抜けた郊外、宇宙ステーションの駆動部分に近い場所にゴミ処理場はあった。


宇宙ステーションは長期間住めるように疑似重力が必要である。それを宇宙ステーションで発生させるものが安価な遠心力・向心力を利用した巨体な回転装置であるが、回転軸付近の重力は若干安定し難く、大きな建物を建てる余白スペースの不足や回転することで発生する特殊なノイズのために住む住民は少ない。


「相手側も我々が脱出するに当たって、宇宙港やこの場所を考えるのは至極当然でしょう。宇宙ステーションからの脱出で必要なのは壁を抜けることで、比較的容易であるのが宇宙港とこの外壁が定期的に開閉する、ゴミ処理場だからです。」


ゴミ処理場に向かう途中でアルド達はレフト・ライトと合流。レフトに抱えられて目を覚まさないアルドを心配そうに見つめラウラは続ける。


かつて犯罪者やマフィアが脱出や裏取引でこの方法を頻繁に行っていた事により、ゴミ処理場の脱出ポイントは宇宙港と並んで宇宙船・不審物の監視が厳しい。


そのためこの場所を航行する場合、一般船はおろか緊急脱出用のポットでさえも、迎撃システムによって打ち落とされ宇宙の塵となる事はバルガサの船乗り達の間では知らないものはいない。


「しかし逆にそれは民間人がいない事を意味します。我々にとって重要な事は壁の厚さ等ではなく、善悪を含めた《それをすることによって》巻き込まれる〈人数〉だからです。」


ゴウゥゥン、ゴウゥゥゥン。


それは微細な振動であったが宇宙ステーションの外ではルル・ルリが迎撃システムを破壊し始めた兆候である。


「もうルル・ルリが隠れていて相手を誘導する必要もなくなりました。今発見されることは全体として、マイナスではなくプラスに働きます。」


ドグワシャン、ゴゴゴゴ。


破壊される宇宙ステーションの壁。巨大な瓦礫や銃弾のスピードに近い破片がアルド達一向を掠めるが当たるものはない、ラウラが宇宙船に送った位置情報をルル・ルリが計算し爆発時の軌道を計算しているからだった。勿論これを町中で行えば被害は人的な被害だけではなく建造物にも相応の被害がもたらされただろう。


ステーションの壁に穴を開け、その穴からひょっこりと大きなノズルの様なものが顔を出す。


ピピピピー。


トラクタービームを受けるとラウラとアルドは一瞬にして格納庫へと移動した。続いてレフト・ライトが、最後にキッドがそれぞれ格納庫へとやってくる。


ラウラのもとにやって来たキッドの意思を汲んでラウラはファクトリーキューブからライバックを再び出現させるが。


「、、、ライバックさん?」


「、、、。」


横たわるライバック、しかしキッドが声を掛けても全く反応がない。ラウラもライバックの元に行くがそれはライバックを助けるためではなく、キッドの意思を聞くためだった。


もともと助かる可能性は少なかったが死ぬ間際の言葉を聞けなかったのは、ラウラ責任だと責められても仕方がないと覚悟はしていた。しかしキッドは視線を外す事なく、ライバックの顔を見るだけたった。


ラウラの気のせいかも知れないが、彼の顔は苦しみの中は息絶えたというよりは、スッキリとし何かをやりとけた男の顔をしていた。


「出血多量によるショックで、心臓が止まっています。彼をキューブに取り入れたという叱責は受けいれます。しかしここには傷を塞ぐ手立てがあっても、血液を補充できる様な装置はありません。それでも〈死んでしまった彼〉に治療を行いますか?」


ラウラとしてはこの状態から蘇生する可能性は低いと考えてはいたが、キッドの意思を尊重したのはキッドに墓参りの時の自分と重ねたからであった。


キッドは静かに首を横に振る、彼自身も助かる可能性があるのなら心臓マッサージを行っていただろう。


「後で宗教などにあわせて遺体を処理すると思います。防腐処理だけは行うので後の事は貴方の意思を最大限に尊重しましょう。本当に申し訳ありませんでした。」


主人の遺体をどうするかなどはラウラにとっては考えたくもない話であるが、このままライバックを放置するわけにもいかなかった。それにまだ全てが終わって訳ではない。


「ライトはドールたちと情報共有後に腕の修理。レフトはこのままアルド様をブリッジに一緒に運んでください。ライバック様はドールに頼んで医務室に運んでもらいましょう。あそこの方が処理がしやすいので。」


「リョウカイ。」


格納庫に残ったライバックとキッドを置いて、ラウラとレフトに抱えられたアルドはブリッジに向かう。


アルドが目を覚ましたのはそれから10分程後になる。




惑星バルガサ・宇宙ステーション付近。


ブリッジのモニターを前にラウラは目覚めたばかりのアルドに簡単な現状を説明していた。頭を撃たれたアルドの記憶は多少混乱した部分があってもギリギリ現状を飲み込む事は出来た。


「つまり、今多くの敵宇宙艦隊が俺達を倒しにこちらに向かってきている危機的状況だってことか?」


「はい。しかし向かってきているということは正しいですが《危機的》というのは些か語弊があります。この状況は我々が作り出したものだからです。」


アルドが記憶の整理をしている、その前で構わずラウラは話を続ける。今逃げることは容易いが、今後このようなチャンスが回ってくることはあまりないからこそ、彼女は続けた。


「人の戦いの戦場は技術の発展と共に広がっていきます。地上・海上・空中・海中、、そして今回の宇宙。手持ちの兵の数や装備・敵の状態によって様々な戦術が生み出され、変化していくのが戦術です。戦術に強弱はあれど、完璧はなく。相手や状況によって最も適した戦術を選択することが勝利の要だと私は考えます。」


「私が知る歴史なか、宇宙空間の戦いで最も戦果を挙げた戦いがあります。〈イグスト星系戦〉、人が宇宙に進出しまだ大規模な戦闘を経験していないときに始まった、千以上の宇宙船を投入した戦いです。」


ラウラの話の話は今回の件と良く似た戦いだった。


アルドはその話を聞くだけだ。ラウラが今さしつまった状況でこういった話をするのは何か意味がある筈だと考えたからだ。


「防衛側の戦力は駆逐艦7隻と軽巡洋艦一隻の8隻。侵略側の戦力は駆逐艦300等を含めた総勢1200隻。一見侵略側が圧倒的優位な状況で、防衛側は弾薬の不足と戦力差を埋めるためにある戦術を使いました。」


アルドはようやくラウラの言いたかったことが分かった。


「これは無重力下において相手が目標につられ戦力を集中させ、特定の位置に着いたときに、〈敵の船体・弾薬を利用して誘爆破壊〉させる戦術でピンボール戦法と呼ばれています。」


「、、カッコ悪いな、、。」


「初めて使用した提督の好きだった卓上遊戯から引用してブレイク・ショットという呼び名もあるようですが、、呼び名はアルド様にお任せします。」


丁度良いタイミングだったのかルル・ルリの立体映像がブリッジに現れてアルド達に報告をする。長い時間演算の処理をしていたからか船に入ってから、ルル・ルリを見ていなかった。


《敵の配置と弾道の計算が完了したよ。指示があれば、いつでも発射可能。》


「魚雷を数発程発射し、紡錘型敵配置の先頭付近にいる巡洋艦数隻を破壊、爆破の余波で他の船を攻撃します。六面展開している各方面へ全てに攻撃するので魚雷の残弾は無くなり再生産が必要になります。」


「、、敵側の被害は?」


「ほぼ壊滅させる事が可能です。人的被害を少なく設定することも可能ですが、それに比例して敵宇宙船が残り、反撃される可能性も跳ね上がります。それで宜しければ設定を変えても問題はないかと。」


アルドはそれで良いと頷いた。


「なるべく相手に死者が出ない様にしてくれ。あと攻撃の前に警告のメッセージも頼む。」


「、、はい。」


ものが詰まった返答からラウラの言いたいことは分かったが、アルドに譲るつもりはなかった。数分後警告を無視し、射程圏内に入った敵宇宙船を確認してアルドは命令を下した。


「魚雷発射準備━━━撃て。」




巡洋艦ペスカトーレは惑星バルガサの宇宙ステーションの防衛施設が破壊されたとの報告を受けてそちらに向かう途中、あるメッセージを受け取った。


《警告する。この星系から即刻退去せよ。実行しなかった場合、そちらの生命の保証は出来ない。》


「こちらが送られてきたメッセージになります。いかがいたしますか艦長?」


ペスカトーレ艦長ストーン人のラルバ・シンガは部下からの質問には答えない。メッセージを送ってきた相手は軍人の事をあまり理解していないらしい、軍人は〈上官の命令〉以外には従わないのだ。勿論中には自分自身の命令に従うものもいるがそれは少数だ。


「メッセージからの逆探知は?」


「報告にあった通り、宇宙ステーションの近くからです。ステーションにいる人間を人質にしているつもりなのでしょう。」


「減速し着かず離れず一定の距離をとれ、なにも我々だけで最新鋭艦と戦う事をしなくてもいい。味方の距離は近い、全軍揃った時に集中砲火を浴びせてやれ。」


仮に相手がこちらを攻撃してきたとしても、後続がまだ500以上残っている、その全てを破壊するには圧倒的に弾薬が足りないだろうと、ラルバ・シンガは顎を撫でる。質を量で上回ることはザラにあるのだ。


だが味方の艦が一隻、二隻と到着した時に粒子測量官が叫ぶ。


「宇宙ステーション付近から異状反応!」


「むっ!」


ここから宇宙ステーションまでの距離は遠い、こちらの宇宙船では観測も出来ない距離からの攻撃などラルバ・シンガは考えていなかった。


この巡洋艦に搭載されている粒子バリアの防御力は艦装甲の二倍であるが、その魚雷は粒子バリアを易々と突き破り装甲を破壊、多数の怪我人を出して宇宙の闇へと消えたのだった。




駆逐艦ポルコトーンにて。


「このメッセージはブラフだ。」


「メッセージはブラフですか?艦長。」


「頭の悪い奴が考えそうな事だ。あたかも自分達に奥の手があるように見せて、我々の動揺を誘っているのだ。もし奴等に本当に反撃の手段・必勝の方法があるのなら警告などしないでとっとと実行するだろう。だからこそこれは奴等の作戦なのだ、持ち場を離れれば我々は良い笑い者だぞ。」


「なる、、ほど。」


一見ストーン人の様な容姿の人間であるクルーザー艦長は巨大な体躯に付いている腕をブンブンと振り回す。


「奴等の真下から魚雷をたらふく喰らわせてやれぃ!早く接近しろ!馬鹿者め!ステーションに向かって前進だ前進!!前傾30度!」


次の瞬間駆逐艦ポルコトーンは閃光と共に倉庫が炎上・爆発する。原因は巡洋艦ペスカトーレの一個のボルトが魚雷に突き刺さったことが原因だった。幸いにも艦長含め死者は出なかった。




巡洋艦ペスカトーレの装甲は大半は虚空の空に消えたが、一部が後方に位置する駆逐艦エオグランにも激突し船体を震わせた。


「エンジンに被弾!出力安定しません!!」


「全員脱出しろ!!脱出!」


艦長の鶴の一声で数分後乗組員全員が脱出したあと駆逐艦エオグランは爆発した。




バリア出力や装甲が薄い駆逐艦はペスカトーレの破片によっていとも容易く破壊されていく。同時に破壊された駆逐艦そのものが武器となり破壊が伝播していった。


粒子バリアは質量のある粒子を船体に飛来する物体に照射することで効力を※発揮する。粒子バリアが防ぐ事の出来る限界以上の破片が駆逐艦と更には巡洋艦に降り注ぐ。


※単純に説明すると一枚のハンカチを粒子バリアだとして、対象物を軽く包み込む事で威力を軽減するのだが、包むことで使用できる表面積が減少する。そのため保護箇所が増える・威力の高い攻撃の場合粒子バリアの効果は著しく減少する。


ペスカトーレの破壊を皮切りに、雪山の雪崩の様な破壊の波が銀河宇宙艦隊に押し寄せる。


後の報告ではこの時一度に失われた宇宙艦隊の総数は今後数百年の間撃沈された数よりも多く、歴史的敗北を喫することになる。


もしこの戦いの勝因をあげるとするのならば、運などを味方に付ける以前にルル・ルリが行った※撒き餌の効果と言わざるをえないだろう。確かにアルド達の宇宙船は科学技術の粋を集めて造られたものであっても物資は消費する。泥沼の状態で敵のバルコ・クリューニが出てきたらハッキリ言えば前回の二の舞であった。


※微弱な電波を残す事で、その場所を捜索させる。またそれによって艦隊を適切な位置へと誘導。通常誘爆の可能性がある距離に艦同士を接近させ過ぎないようにするが、捜索や包囲網の関係で密集体型をとらざるを得なくなった。


破壊されていく艦隊を見ながらアルドにルル・ルリは遅れた提案をする。


《アーちゃん、※特殊誘導ミサイルで施設を破壊してほしいのだけど駄目かな?》


※魚雷と宇宙用特殊誘導ミサイルの使い分けとしては魚雷は射程が短いが加速重視で素早く威力が高い、ミサイルはかなり遠くまで正確に攻撃できるどちらかといえば魚雷の迎撃や施設などの動かない拠点を攻撃する時に使用する。只ミサイルの場合色々な弾頭があるのでそれによって運用は異なる。


「、、施設?」


《次元移動の瞬間を察知するのが能力者じゃなければ、スーパーコンピューターを使った演算予想の可能性が高いから。これが上手くいけば今後、出会い頭に攻撃される事は少なくなると思うよ。》


この次元に着いた直後の強襲を思い出す。確かに次元移動した直後の無防備な状態で攻撃されたら堪らない。


「これについては発見し次第破壊した方がよろしいと私も考えます。相手の攻撃能力を奪うことは結果として、我々が反撃し相手が傷付く回数を減らすことができますので、、それに今後返却しないだろう〈遺物〉を取り返す時に役立つかもしれません。」


アルドは腕を組んで考えたが、スーパーコンピューターがなんなのかが分からなかったので彼女達の提案を受け入れることにする。


バシュ、バシュ、バシュ。


モニターで宇宙船から離れていくミサイルを眺めながら長椅子の背もたれに体重を乗せるアルド。


「ふう、やれやれ。」


ミューズのソフトウェアは入手したが、バルロ・クリューニに遺物を奪われ敵対することになってしまった事を考えて、アルドは今後を危惧した。


だが間もなくアルド・ガーデンブルグ達に転機が訪れる事になる。それはアルド達同様の次元移動装置を持った集団との始めての出合いであった。




**************************






ここから下は本編とはあまり関係ありません。読みたい人用。






**************************



惑星バルガサは水源が多数存在している水の惑星といってもよい惑星である。ある湖の畔にはある男女の墓が綺麗に整理された状態で存在していた。


ザーザーというノイズ。


プッ。


《、、キッド、、やく、、そく、、頼んだ、、》


オートマータが持った端末から録音されたと思われる声が、再生される。


《、、いま、、、、、あり、、が、、、な、、》


聞き取れるかギリギリの声。しかしそのオートマータにはハッキリと聞こえた〈今までありがとう〉と。彼女が死んでから彼はずっと何かに悩み続け生きていた。死にたくないと口では言っていたが多分、この場所にもう一度どうしても行きたかったからだろう。


貧乏暮らし一度だけの旅行の時、パートナーと見て一緒に決めた死に場所に。


死んでその願いが叶ったのは幸運だったのか、それとも不幸なのか。彼等の宇宙船で運んでもらわなければ、オートマータである自分一人ではここに来る事は出来なかっただろう。


《、、さ、、まって、、。》


プッ。


そこで再生は終わる。オートマータの彼はロボットに魂が有るのかという命題を考える。


分かるのは二年か三年後か。いずれ分かるだろうとオートマータの彼は端末をポケットに入れて墓の掃除を続けるのだった。





それぞれ撃ち出されたミサイルはスーパーコンピュータのある施設を直撃破壊する。それによってもたらされた被害は日常生活上ではあまり表面化されなかったが、研究者や科学者や宇宙航空関係者に多大な影響を一時的に与えた。


破壊された中には別次元の観測に必要なスーパーコンピューター〈ウォッチャー〉〈ビットツー〉も含まれており、別次元の事を観測する事が難しくなったのである。


【サードアイ本部】


「バルロ・クリューニが失敗したそうだな。」


サードアイ、松明が燃える薄暗い部屋の中でカーテンで区切られた奥に見える複数の人影はユラユラと揺らめきまるで亡霊のようだった。対応したパーク・トイマンは頭を垂れる。


「はっ。」


「奴を銀河星系統括総長の座から下ろせ。宇宙艦隊壊滅の情報を流し、、体調が悪化したという事で辞めさせるのだ。それなら民衆も納得するだろう。次の御輿にはお前が乗るが良い。」


「ははっ。」


命令を受けたパーク・トイマンは深く頭を下げたあとに部屋を退出する。


「、、奴を総統の座に据えたのは失敗だったか。」


「奴の本領は能力にある。艦隊を指揮するのは奴で無くとも出来るだろう。そして今回の祭典には奴を護り手として側に置く方が我々としても安心。祭典を無事に終えられるというものだ。」


「奴が裏切るという可能性は?」


「無い。奴の目的と我々の目的は合致している。だからこそ我々の命令には逆らえん。」


部屋の明かりが消える。


「「我等が神の顕現は近い。」」


部屋には残ったのは暗闇だけだった。



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