異次元収集家アルド 五章6話
まとめられなかった、、。
文字数が多いと保存スクロールが疲れるので、ここで一度分割します。
誤字脱字、気が付けば修正します。
2020/0216
惑星バルガサで〈オートマータ〉が武器の所持が出来ないを〈ロボット〉に変更。
括りとしてはロボットの種類の中に〈オートマータやドール等が含まれるため〉
ルル・ルリによる〈ちょうのうりょく〉じゅぎょー。
アーちゃんは超能力って知ってるかな?魔術や魔法ではなく科学をも用いず、万物に特別な影響を与える能力の事だよ。
超能力は基本的に個人保有する力のこと。
今回〈自己完結型〉ではなく〈周囲同調型〉の力を説明するよ。
これは言ってしまえば自分の周り〈パーソナルエリア〉の万物の法則〈神〉に彼らが持つ超能力の内容を【付け足す】事が出来るの。どの次元でも使えるけど万物の法則に自分の超能力を不正に付け足しているだけだから、始めこそ威力が高くても修正力が働いて持続力や本人自身に大きな負担が掛かる。
どんな力も無から有は生まれない。自分の中にある何らかの異質な力を補充・消費してるから当然だよね。
えっじゃあ何で〓〓〓〓は能力を持続させていられるのか?
修正力はより変異した存在を修正しようとする。では長時間効力を発揮し続けるにはどうしたら良いのか。もう分かったよね。
そう神の法則に抵触しないようにする。様は【一部の人にだけ効力を発揮する】とか出力を調整すればいい。
でアーちゃんがいう【全ての人や物を対象にされる可能性】の話は、修正力によって否定されると思う。だってもし私が神なら全ての対象に認識されない人は【いてもいなくても誰にも認識されない】から【存在そのものを消滅】させたほうがより簡単なんじゃないかな。百億の認識の改竄よりよっぽど楽だと思うよ。
ルル・ルリの〈ちょうのうりょく〉じゅぎょーでした。
*
コロッセオ闘技場に沸き上がる歓声。
暫くするとライバックも林から現れてアルドの横に立ってその身に歓声を受ける。
チカチカ。
この時オーガユニットを操縦するラウラはモニターに光が差し込んでくる事に気が付いた。先程のガルガンスとの戦いによって受けたオーガユニットのダメージは通信やメインカメラ、情報処理の部位であった。サブカメラがまだ使えたこともあり、ラウラは闘技場の観客席にいるレフト・ライトの目から発せられる発光信号を読み取る事が出来た。
《緊急連絡》《宇宙船襲撃》《ルル・ルリはプランDを実行》
断片的な情報と彼等のハンドシグナルによって、ラウラはある結論に達する。
同時に複数の場所を攻撃される━━━それは最も簡単に思い付く作戦であるが同時に寡兵であるアルド達の急所でもあった。
今現状最も気を付けなければいけないのはただ一つ。アルドが殺される・拘束される事である。
同時にそれは敵の最終目標であるから、【アルドが今、敵に襲われていない事】は幸運であった。ラウラはレフト・ライトに購入するべきデータの購入・緊急合流地点に移動するように命令を飛ばす。
『アルド様、今すぐに逃げる準備を。』
オーガユニットのスピーカーから発せられた言葉にアルドは若干困惑した。何故ラウラがこんなにも急かすのか分からなかったからだ。
「あぁ、じゃあエレベーターに、、、。」
『いえ、違います。選手用のエレベーターではなく〈ガルガンス〉が昇ってきた大型の搬送用リフトに無理矢理乗りましょう。』
ガシュ。
オーガユニットの大きな掌でアルドを抱えあげる。
『ライバック様、我々の敵対者がもうすぐ我々を襲撃するためにこちらに来ると思われます。このまま残って事情を説明するも良し、我々と一緒に逃げるのも許可します。但し一緒に逃げる場合は命の保証は出来かねますが、、。』
「、、、。」
ライバックの脳裏にある言葉が反芻される。
《━━━━生き残って連絡を待て、それに応答すれば多少お前の口座に金を入れてやる。〈生き残っていれば〉だがな。》
これはアルド達に同行し情報を流せという事ではないだろうか?
アルド達との契約はガルガンスを一緒に倒すまで、契約は終わったと思っても良い。ライバックとしてはこのまま平穏に暮らしたいので彼等を放置しても構わなかったが、、
「同行する。闘技場から出るまで頼む。」
政府関係者との繋がりがあれば多少お目こぼしが今後期待できるかもしれないため、ライバックはアルド達に同行することを決めた。金が多少入っても〈政府に協力的でなければ〉この星系で普通に生きるのは難しい。それがライバックの出した答えだった。
『では!大型リフトに乗ります、急いで!!』
グオオォォン。
北側に設置されていたリフトは徐々に軋みをあげながら下降していく、同時にリフト用の扉も閉まり始める。
『しっかり機体に捕まっていて下さい!フィールドに落下したら回収できなくなります。』
ガッガッガッ。ガン!
アルドとライバックを抱え、観客が疑問符を浮かべる中。ボロボロのオーガユニットは機体を軋ませながら扉に身を滑り込ませ、下降中のリフトに飛び乗った。
ドガシン!
と大きな地響きと共にアルドとライバックの体に落下による凄まじい衝撃を受ける。それでも十数メートルの高さから怪我もなく無傷なのは落下の衝撃をオーガユニットのサスペンションで最大限に吸収出来たためだ。
「どういう事なんだ?」
ラウラがオーガユニットから降りてライバックからファクトリーキューブを受け取ると、中に収納されていたアルド用のハンドリンクやレーザーグレイブ、プラズマガンを取り出してアルドの質問に答える。
「ドール達の情報によると宇宙船が襲撃されたらしいです。それから考えられるにこの闘技場はすでに包囲されているとみて良いかと思います。」
アルドは考える。コロッセオからどうやって逃げるのかと、考えても答えは出ない。設計図等があればそれを利用して脱出方法を導き出せるかもしれないがそれも現時点では難しい。
「そもそも逃げ道があっても相手の位置が把握出来ていないので、敵に遭遇した場合高確率で脱出がより困難になることが予想されます。」
「ハンドリンクでルル・ルリと交信した方がいいか?。宇宙船とのランデブーポイントを変更する、、?」
「緊急時には必要かと、、ハンドリンクの通信はもしかすると敵に傍受される可能性もあるので、必要以上の通信はお奨め出来ません。」
アルドはこの次元に初めて来た時の強襲を思い出す。
「ファクトリーキューブにはハンドリンクや最低限の装備は収納してありますが、大多数となると些か。」
「そればっかりは出たとこ勝負、、。目的地まで極力戦闘を避けつつ移動するしかないか。」
ガコン。
リフトが下降し終えて、リフトの外に出ようとするアルド達を出迎えたのは予想外の人物だった。
青銅色の皮膚を持つストーン人のハーフ、このコロッセオのオーナーであるフューリトンである。その彼を護衛するかのように強面のヒューマンやストーン人が二十人程がリフトに向かって火器をパーティークラッカーの様にアルド達に向けて出迎えた。
距離は十五メートル。
息を飲むアルド。遮蔽物がない広い薄暗い通路、ラウラから先程渡されたレーザーグレイブでは近付いた瞬間蜂の巣にされる距離だった。
「本名かは知らないがアルド・ガーデンブルグか、、まだ若いな、俺はこのコロッセオのオーナーのフューリトンだ。つまりだ、お前らを政府の命令で殺すことになっている。、、まぁそんな建前はどうでも良い、世の中で俺が重要視していることがある、、ボウズ、何だか分かるか?」
「さて、長いものには巻かれろって事か?」
「違うな。〈直感〉と〈タイミング〉そして運だ。」
カチャ、シュボ。
タバコに火を付けて煙草を吸う。
カチン。
「俺は今回、政府に全面的に協力しているわけじゃない。だからお前たちのオートマータがコロッセオに入っても奴等には報告しなかった。そして奴等と別のこの場所でお前達を待っていた。お前達があのまま選手用のエレベーターに乗れば、待ち構えていた政府の奴等に皆殺しにされていただろう。」
フゥ。
「お前達の〈直感〉と〈タイミング〉は合格だ。後は運だ。お前達の運を知りたい、運の無い奴と組むと俺達まで奈落に道連れにされる、それは御免だ。」
フューリトンはズボンのポケットから二つの六面サイコロを取り出すとサイコロの1つ床に向かって放り投げた。
コンコンコン。
「互いにサイコロを振るう。俺が出した目より大きい目をアルド・ガーデンブルグが出せば、お前らをここから逃がしてやる。小さい目ならこのまま蜂の巣だ。賭博場らしい全うな賭けだろう?」
独楽の様に回っていたサイコロは最後ゆっくりと床に着地する。
出目は【5】
ラウラは腰を落として戦闘体勢を取る。先程の条件で試されるのなら確率は六分の一、しかもそれがイカサマや時間稼ぎのブラフの可能性すらあった。
ラウラの視線を無視しフューリトンは飄々と話を続ける。
「ついてるな。俺は〈5〉だ。つまりお前達が勝つためには〈6〉を出せば良いわけだ。アルド・ガーデンブルグ、こっちに来てサイコロを受け取れ、妙な真似はするなよ。」
アルドは動かない。只俯いてレーザーグレイブを握り締めた。
「運か、、ルール、、コロッセオ、、。」
「なんだ、ビビって足が動かないか?それもそうか確率としては低い方だ、手伝ってやる。ホラよ。」
フューリトンはアルドが受け取れる様に高い軌道でサイコロが投げられる、完璧なコントロールだった。
ブォン!
コン。
アルドのレーザーグレイブはフューリトンの投げたサイコロを弾き返す。あまりに無礼な行動にフューリトンの部下達は顔色を変えて銃を持ち直すが、フューリトンはそれを片手で制す。
「待て、結果が出てからだ。」
出目は【1】━━━
*
オートマータ【バスクドルク】は己の認識の甘さを痛感した。コロッセオ大規模戦闘後アルド達が選手用エレベーターに乗ってくると思っていたが、それが空振りに終わったことを中央モニター室に配置していた部下から通信で聞かされたからだ。
「ちっ強行突破を考えて人数を選手用のエレベーター前に置き過ぎたか、どちらにせよコロッセオは半分閉鎖されているようなものだ。逃げられないが余計な時間を与えれば、武器を用意して反撃してくるかも知れねぇ。」
バスクドルクはこの時気が付いていないが、〈ファクトリーキューブ〉の機能を召喚装置と勘違いしていた。なので過剰な戦力を選手用エレベーターに投入したのは彼にしてみれば間違ってはいないのだが、もっと根本的な所でミスを犯していたのだった。
選手用の控え室と猛獣や巨大兵器運搬用の大型リフトのある運営側の直線距離でも250メートル以上あり、移動にはかなりの時間を要する。しかも人数が多ければ尚更移動速度は遅くなる。
バスクドルクがリフトに到着する直前の事だ。
ドゴン。
と大きな爆発音の後、銃声が遠くから聞こえ始める。
パララバラバラ、バンバン!!
「何だ!どうした!!」
廊下の先にある巨大リフトの前には、コロッセオ関係者と思われる服装人が穴の空いた壁に銃弾をお見舞いしていた。指揮をしているのはフューリトンというコロッセオのオーナーだ。
「何があった。」
フゥゥゥ。
煙草の煙を吐き出すフューリトン。
「アルド・ガーデンブルグがリフトから降りてきてな、交戦になった。そして穴から逃げたらしい、それだけだ。」
「、、その穴から逃げたのか?」
「分からん爆風で見えなかった。おまけに奴等ここの猛獣の檻のロックをどさくさで解除してな、これから大量の猛獣共がここに来る。」
「なん、、だと。奴等のアンドロイドにハッキングに長けた奴がいたな、、ちっ。第一と第二部隊は穴に入って奴等を追え。残りは周辺の捜索だ。コロッセオの出口は塞いでいるんだ。隈無く探せ!」
指示をだすバスクドルグ。オートマータである彼には本来焦りという感情はない。だがプログラムされた処理速度が上がると不機嫌になる性格が彼の焦りという感情を表していた。
何かを蹴りあげようとした時、近くに小石を見付ける。
「?」
鉄の床に落ちているそれは小石ではなくサイコロだった。
出目は〈6〉不思議なことに横から何かで切ったのか下半分が無かった。
「??」
持ち上げたそれをフューリトンも確認する。
「部下の持ち物が爆風で飛んだんだろう。それか掃除をしてなかったか、、おおい!誰かこのサイコロの持ち主はいねぇか?!」
結局一人の部下がそれの持ち主だと申告しバスクドルグはそのまま穴を進んだのだった。
*
当然ではあるがアルド達は穴から出てはいない。倉庫の天井についている通気孔から移動していた。
向かっているのはコロッセオ観客席。
しかしそれは通常の観客席とは若干異なるものだ。
VIP専用観客席。
このバルガサでも地位と権力を持った人間しか入れない特別な場所である。
ズリズリ。
「サイコロを切るなんて、、ルール違反だと言われた可能性もあった、、運が良かったなアルド?まぁ俺はそれに助けられたが。」
「、、多分、見逃すと思っていた。コロッセオのオーナーは闘技場のルールを決めているって小耳に挟んでな。ガルガンスの時と同じさ〈ルール範囲内での改変なら黙認する〉多分これは、あのフューリトンの信念みたいなものじゃないか?」
「信念か、、。確かにサイコロの和は7で一番勝ちの高い方法であったけどさ。」
「ああ。」
実際アルドはサイコロの和などの計算はしていない、6が出やすいように横に切り、それが表になるように払った、それだけだがー
「結果オーライだな。」
通気孔の先はフューリトンの部屋であった。そこには彼の部下らしき人間が床から現れたアルド達に挨拶をした。
「これはアルド・ガーデンブルグ様の持ち物でございます。どうぞ、お返しいたします。」
アルドにとってさほど重要なものではなかったが、ライバックは喜んでいた。確かに財布や携帯端末がないとこの惑星では不便だろう。
「VIP様のモノレールは後数分後に発車いたします。それまでこちらのお召し物に着替えて待機していてください。」
「本当に政府の奴等は来ないのか?」
「VIP用の扉はこの下の通気孔を除いて全て一般の出入り口から隔絶されていますので、、。」
何故でという疑問もあったが、フューリトンの遊び心の様なものだろうとアルドは考えた。実際、床の通気孔は通常ロックされていてこれは緊急脱出用の通路なのだが結局のところアルド達にその事を知る術はなかった。
ただ今現在、フューリトンの話を信じるなら下は猛獣で埋め尽くされていて、全ての猛獣を捕らえなければアルド達を追跡することは不可能だろう。
数分後、資産家のように着飾ったアルド達は部屋を出てステーションの一番高い場所に存在するモノレールに乗車する。
タタンタタン。
運転手や他に乗客の姿はない。アルドは一息つこうと、モノレールのフカフカの高級座席に座る。
ライバックは一度アルドの顔を確認して意を決したように話し掛けた。今までの疑問を全て吐き出したいそんな表情だった。
「お前達は何者だ?何故政府に追われてる?目的は何だ?」
「、、、。俺達はこの次元にある品を求めてやってきた旅行者だ。だが身に付けていた装備がヤバイものだったらしく目の敵された。それだけだ。」
「その割には戦い馴れてる。目的はなんだ?旅行ならこんな状態で長期滞在する理由がない。」
その質問でアルドは目を閉じて観念したように話す。
「時間も時間だから話すが、俺達の目的はこの次元にあるアンドロイド用のプログラムだ。俺のヘマで死んでしまったアンドロイドを生き返らせる、そのためにここに来た。」
修理などの言葉を使わず〈生き返らせる〉と表現したのはミューズを人間だと考えているからだ。だが生き返らせるという言葉にライバックは反応した。当然ライバックも生き返らせたい両親などがいたのだろう。
「生き返らせる、生き返らせると来たか!いや流石だ。」
アルドは溜め息を吐く、相手の当然の反応は理解していたがそれを言われると流石に言い訳は出来ない。そう〈自分勝手〉だと。
「世の中皆、大切な大事な人間がごまんといる。死んじまったら〈生き返らせたい〉と思うことは当然の事だ。だが、、。」
アルドを指差してよく分からない感情をぶつける。
「それを行動に移しちゃならない。それが世の中だ。理から外れた行いってのはより大きな代価を支払わなきゃならない。川が逆流しないように、何もないカラッカラの砂漠に植物が咲かないように━━だ。」
「理解している。」
「してないな。」
ライバックは髪をかきむしると、諦めたようにアルドから視線を外す。
「俺は次の駅で降りるぜ。せいぜいこれから気を付けな。」
「あぁ、ライバックもな、、。」
ウウウゥ。ガタン。
突然モノレールの動きが止まる。
「なんだ?」
「、、どうやら気付かれた様ですね。多分ライバック様の携帯端末の位置情報を傍受されたのかと。この手のタイプの端末は分解可能で本体が数分あれば簡単にハッキングされますので、、多分ですが闘技場か何処かで改造されたのでしょう。申し訳ありません、もっと早く気が付いていれば。」
「、、くっ、そういうことかよ。」
拳を握り締めて怒りを顕にするライバック。
相手がライバックを全面的には信用していないのは初めから分かってはいた、裏切ることが前提であのベッティング専門店での接触だったのだろう。アルドは居場所を知らせてしまった原因が自分自身を責めているかと勘違いしてライバックを慰める。
「こうなったら仕方がない。強度が高いロープをファクトリーキューブで作って窓から外に出よう。駅で待ち伏せせずこんなところで緊急停止させたということは、相手もこれが予想外で包囲を縮めるための苦肉の策だろう。」
モノレールから下の町までの高さはビル五階のほどだ。真下はショッピングモールで降りる先は巨大な観葉植物が植えられた自然豊か?な広場だ。ちらほらとカップルや家族連れが寛いでいる。
ラウラ・アルド・ライバックという順番で座席等に括り付けたロープで降りる。
スリリリュー。
ラウラは股にロープを挟み流れるように下降していき、あっという間に広場にたどり着く。周囲を見渡して敵がいないことを確認。アルドが落下したときの事を考えて補助に回る。
ズリリ、ズリリ。
少し遅れてアルドが広場に到着した。この時には周囲も異変に気が付いて異質なアルド達に目を向け始める。
「このショッピングモールには多数の買い物客がいます。交戦となり、買い物客が我先にと出入り口に殺到すれば脱出経路が限定されてしまうかと。周囲がパニック状態になる前に素早く行動しましょう。」
「逃げるのは正面玄関からか?」
「降りる際に周囲を確認したところ。このまま建物の出口に向かうか、屋上から屋上へと移動する方法があると考えます。建物の出口から逃げる場合、民間人を隠れ蓑や盾にして逃げられるメリットもありますが、相手もそこまで愚かでは無いでしょうし、倫理的にもお勧めは出来ません。」
こういう時は基本的に止めて欲しいときのラウラの言い回しであるが、アルドも同意した。勿論民間人を巻き込みたくないという事もあるが人が多い事で予想外の出来事が発生する可能性が高まるからだ。
「屋上から逃げよう。そろそろ宇宙船と連絡をとるか?」
「もう相手側に位置もバレていますし、それが宜しいかと。」
アルドはハンドリンクの通信の電源を入れる。
《ルル・ルリ聞こえるか?》
《ハイハーイ。》
《これから目的地に向かう、そっちも準備を頼む。位置変更はなしだ。あとハンドリンクに警察や追っ手の情報を表示させることが出来るならしてほしいが、、。》
《一般的な携帯端末の場所なら表示させる事は出来るけど、、何も持っていない人は無理だからね。あーん、数が多いから特殊な端末の人は除外するよー。》
ピッピッピッ、ピピピピー。
200を越える程のマーカーが3D立体映像にハンドリンクで表示される。
《後、レフト・ライトが追っ手を振り切って街の※公衆用宅配ロッカーにたどり着いたんだけど、口座が凍結されているみたいでカードが使えないって。そっちもゴタゴタしてるから私の方に連絡があったんだけど、ロックの解除はここからじゃ何日か時間が掛かっちゃう。》
※バルガサには無店舗の店もあり、購入後に街中に設置してある宅配ロッカーで商品と現金を交換するシステムが確立されている。
口座に入っているお金を引き落とす事で〈商品〉を受け取る事が出来るシステムなので。支払う口座がないアルドは商品の購入が出来ないことを意味していた。
「あの形のロッカーは盗難を防ぐために通常兵器でも耐えられるよう設計されています。レフト・ライトは丸腰の状態で無理矢理入手するのは難しいかと。それにー。」
時間がない。アルド達とレフト・ライトの距離は近いがお金が問題だ。
「レーザーグレイブなら破壊できるか?」
「、、我々アンドロイドは原則、主人の生命の危機以外での不法行為は禁止されています。命令であれば従いますが。」
ドスン!
空からライバックが落ちて床に尻餅をつく。
お尻を撫でながら話を聞いていたのか話に割り込む。
「いつっ。」
「大丈夫か?」
「あぁ、、話は聞いた。支払いなら俺にさせろ。」
「俺達に協力すれば犯罪者になるぞ。」
「携帯端末に無断で発信器とか取り付けている時点で確信した。アイツ等は俺を犯罪者の仲間だと思っているし、お前達を始末したら俺も次いでに処分する連中だろ。その方が後腐れがないしな。」
アルドはライバックの打算を理解した、その結論もである。
「俺とキッドをこの惑星から、、追っ手が来ない所まで逃がしてくれ。それが、金を渡す条件だ。」
「、、分かった、、だが金はどうするんだ?文無しの筈だろ。」
「俺には博打の才能があるんでな、金ならある。キッドに惑星を出る準備をさせるから━━」
パシュ!!
〈分かった〉という言葉を聞く前にアルドの額に穴があく。
ドッ。
そして後方に倒れるアルド。
「なっ?!」
ライバックとラウラは周りを確認するが何もない広場が広がっているだけだ。ラウラの目視でも狙撃した人物は分からない。
ただ額に空いた弾痕から、狙撃で間違いはない。
「狙撃?!逃げます、早くテラスへ!」
昏睡状態のアルドの心臓が動いている事を確認しながら、ラウラはアルドを抱える。心臓が破壊されなければアルドは死なないがそれでもこの一撃はアルドを行動不能にし、ラウラにアルドを運ばせるという足枷の役割を果たした。
スタタタッ。
バンバンバン。パリンパリン。
近くのものが次々に破壊される。
破壊される瞬間からラウラは銃の種類や発射位置を特定する。
しかし。
〈おかしい〉
それがラウラの結論である。
銃は口径の大きなライフル、火薬式の旧タイプ。ライフル銃はプラズマガンより射的距離が長い。しかしアルドの額に穴を開けようとした場合アルドから見て前方5メートルから60メートル以上ある壁際まで、おおよその方向に人らしい生物はいない。
つまり。
《何もない空間から弾が発射されていることになる》
「なるほど、なら━━」
テラスにいる買い物客を避けながら片手で何もない空間にプラズマガンで狙いを定めるラウラ。
【そんな空間に〓〓〓〓などいない】、、首を振って今まで正しいと考えていた結論をラウラ自身によって否定する。
「いるはずがないか。」
プラズマガンを撃たずにホルダーに戻す。
アルドのハンドリンクを見たので逃走経路は分かっている。そして周りにいる追っ手の数もまだ問題という程ではない。
だが問題はもうひとつある。
「はぁはぁはぁ。」
ライバックの圧倒的な体力の低さ。
見捨てる事は考えてないが、このままでは追い付かれる。
カンカンカン。ドタドタドタ。
屋上から屋上へ。そして屋上から階段で一階へと進む。ショッピングモールの通路で我慢できないと立ち止まるライバック。
「ちょ、、ちょ、、タイム。」
「あとすぐです。ライバック様!」
「はぁはぁはぁ、、。」
ラウラは速度を落として、ライバックを待とうとした。
ドゴッ!
突然横に吹き飛ぶラウラ。
「がっ!」
ズサッ、ズサササッ。
ラウラは寸前のところで踏ん張り、何とか堪える。車と衝突したような衝撃とダメージが体の内部に発生する。
「どうした?!」
「何かの攻撃です!早く逃げてください、ライバック様がこれを受ければ即死しますよ。」
「くそっ!」
脇腹を抑え必死に走るライバック。ラウラもそれを追うが体のダメージが予想以上に深刻だった。もともと生体部品を使用しているとはいえ、強度それ自体は人間とほぼ変わらないのだから。
軋む重い体を必死に動かすが。
ガクン。
膝が折れる。足を支える人工骨格の一部が損傷し、アルドを抱え逃げられる状態ではなくなる。
プァン。
何かのライトがラウラの目に飛び込む。
〓〓〓〓が投げた車だ。
回避は不可能だろう。
ドゴン!!
衝突音がショッピングモールに響く。
コンコンコン、コロコロ。
車のタイヤか転がる。
「ダイジョウブデスカ?ラウラサマ。」
「ココハキケンデス、サガッテクダサイ。」
レフトとライトの二体が何もない空間を支えながらラウラに話し掛けてくる。
「ええっ。敵を、、敵の排除を命令します。」
「「リョウカイ。」」
レフト・ライトの言葉が戦闘開始の合図だった。
*
レフト・ライトがアルドを背負うラウラの元に来たのは偶然ではなかった。カードが使えなかった時点でレフト・ライトの任務は終了しており。その場に立ち尽くすか、アルドと合流する道があるだけだった。
通常のナンバーズなら只人形のように次の命令を待つだけであっただろう、しかしアルドを護衛する為だけに産み出された存在のレフト・ライトは違った、唯一の存在意義の為に動いたのだった。
〈アルド・ガーデンブルグ〉という主人を護らなければならない。
アルド達の発信源を追って両者が近付いた、その結果間一髪のタイミングでアルドとラウラを守ることができたのだ。
現在━━
レフト・ライトにはハッキリと見えた。
今までアルド達を監視していた人物の一人だ。
パワードスーツを着込んだその姿は街中では異質な存在であったが〈主人〉の説明だと〈ロボットにしか見えない存在〉であるらしい。
この事は〈片道切符〉の記憶が完全に消える前に主人の口から直接聞いたことだったが、言葉通りその事をアルドが忘れドール達は秘密裏に、認識を阻害させる能力者からアルド達を影から護っていた。
レフト・ライトに身に付けている装備はない。特別な許可がないロボットが武器を携帯することは惑星バルガサにおいて違法行為である。だがアルドが装置で作ったドールの腕は鋼鉄製であり、その重さと振り下ろされる衝撃は人間をいとも容易く破壊する。
ガゴン!ガコン!
レフトの攻撃はパワードスーツに身をつつんだ能力者に受け止められる。だがそれが功を奏し、手に持っていたライフルを能力者は落としてしまう。
能力者のパワードスーツは一見してオートマータの様な姿形をしているが、軽量化のため口元を除いて甲冑の様に必要な部分を保護している印象が強い。
つまり弱点はそれ以外の剥き出しの部分である。
体重をかけて押さえ込もうとするレフト。能力者がパワードスーツの力で押し返そうと試みるが、力は拮抗し両者の動きが止まるがレフトには好都合だった。
両者には共通点があり相違点があった。
〈相棒〉の存在である。
ガガゴン!
ライトが真横から放った蹴りを能力者のパワードスーツはまともに食らう。
「ぐっ、邪魔するな!このポンコツ共がぁ!!」
余程頭に来たのだろう能力者は怒りをレフト・ライトにぶつける
為に腕を持ち上げ大振りの攻撃を繰り出すが、当たらない。
ガンガン!ガンガン!
逆にそれを狙われてレフト・ライトの反撃が激しさを増した。
本来〈認識を阻害させる能力〉のアドバンテージは認識出来ないことにある。相手を一方的に攻撃し、攻撃されず。故に戦いの専門家になることがない、いやなる必要がなかった。
強力な能力の盲点。
オートマータは人を攻撃できない。そして相棒のバスクドルクのコンピュータハック装置があればそのオートマータ・ロボット・コンピュータでさえ忠実な手駒にすることが出来た。
能力者自身の戦闘能力が高いわけでもない。だが相手を倒し続けてしまった結果の〈傲慢さ〉が勝敗を分けた。
レフトが叫ぶ。
「キュウリョウサンカゲツブン、ルル・ルリサマトクセイノチョウゴウキンアーム!」
ガキン!
ライトも叫ぶ。
「キュウリョウサンカゲツブン、ルル・ルリサマトクセイノチョウゴウキンレッグ!」
ゴキン!
「「ワレワレハポンコツデハナイ!!」」
ドガキン!
「「アルドサマノゴエイ!」」
ドゥ!
「「レフト・ライトダ!!!」」
ドパキャ!バラバラ。
「ぐぁ!!」
吹き飛んだ能力者のパワードスーツがバラバラになり、能力者は空中を舞い地面に落下し血を吐き出した。
「くくっ、、お前たちはもう間に合わねぇぜ、アッチには相棒が向かった。〈人質〉もいる、、いやこの場合は〈ロボ質〉か、、後は頼んだぜバスクドルグ、、俺の、、俺を知る最後のダチ、、、、よ。」
〈認識阻害の能力者〉は仰向けのまま、何処か悲しそうな表情でそう呟いたのだった。




