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異次元収集家アルド 五章5話

、、文字数多い。


これでも削ったんだ、、、アナウンスとか。


誤字脱字は気付けば修正します。


コロッセオ編は次で最後だ、、、出来るか?

凄いボリュームだが、、無理か、、。

バルガサ宇宙港、宇宙船内。


ルル・ルリはモニターを眺めながら鼻唄を歌う。バルガサの株式への変則的な介入、過去のバルガサ周辺の惑星都市計画書や消費電力、特定人材の定期的な移動。それらのノイズからスーパーコンピューターのおおよその位置が分かったからだ。


「場所は三つ、、後は補助みたいなものみたいだね。」


「??」


ルル・ルリが視線を移動させると、宇宙船の外部である桟橋の映像が映し出される。バルガサ宇宙港の係留所は恐ろしく広い。毎年何億という人が移動している場所であるのだから当然といえば当然ではあるが数百という宇宙船が上下左右に騒然と並ぶ姿は科学寄りの次元に相応しいものだった。


蜂の巣のような形状の係留所は宇宙ステーションと根本が一本に繋がっている。これは検疫などをスムーズに行う為のものではあるが、逆にいえば〈宇宙船に入る人や物を監視しやすくする事〉も出来る。


※勿論宇宙ステーションないではなく真空の宇宙から係留所に侵入する事も不可能ではないが、密航者を防ぐために外からの侵入は更に厳しい監視に晒される。


このカメラや感知器を利用したルル・ルリの防犯システムは宇宙ステーション警備隊の存在を宇宙船が完全包囲される前に、その事をルル・ルリに伝えたのだった。


係留所は宇宙船の自重で押し潰されないように無重力が維持されているがその警備隊達は無重力になれているのか動作や船を囲む動作に無駄がなかった。手持ちの武器も隠してはいるが威力の高い火器であることから、何かを伝えに来たというよりは〈占領や破壊〉が目的なのがわかる。


「動きに無駄がないからコレは警備隊を装った〈軍隊か特殊強襲部隊〉かな、、。オマケに動けないように宇宙船を固定しようとしているし。」


特定犯罪者や礼状がない場合、所有者に許可なく宇宙船の出航を阻害することはルル・ルリの記憶では違法だった。犯罪者でもない自分達に罪をデッチあげる行為、それはつまり相手はもう〈敵対する意思を隠さなくても良くなった〉のだ。


ルル・ルリは宇宙船の探知機を利用してバルガサ周辺の情報を収集する。


ピピピ、カチャカチャカチャ。


「予想はしていたけどアーちゃん達が試合中の、このタイミングは狙っていたとしか思えないなぁ。でも宇宙艦隊はまばらで統制が取れてないみたい。」


宇宙艦隊の肩を持つわけではないが、宇宙艦隊はアルド達から遺物を回収した後、宇宙海賊や敵対勢力との戦いに備えて各地にチリジリに移動していた。しかし数日も経たない内に今度は惑星バルガサにいる反政府組織の最新鋭艦の撃破の命が下りトンボ返りしたものも少なくない。


命令に従うよう教育された軍人であっても中にはコロコロと便利に扱われて不満を持つものもいた。しかも獲物はたった一隻で獲物の奪い合い報償などは宝くじを当てるようなものだろう、又最新鋭艦ともなれば相手のラッキーパンチで轟沈・死亡する事もあるだろうからハイリスクローリターンな命令でもあった。


中にはエンジン不調を訴え、整備を理由に戦闘参加を見送ろうとする艦長も少なからず出てくるほどだった。


ルル・ルリはラウラからもらった資料を思い出すとマイクの電源を入れた。


「あーあーテステス。緊急放送緊急放送、プランD発動。ドール達は直ちに持ち場に移動せよ。また緊急出港を行いますので乗務員、客人は体を宇宙船に固定してください。お寝坊さんあなたの事、そう貴女。」


カチャカチャ。


ルル・ルリは宇宙船を繋ぎ止めようとしていたドッキング接続器にシステム介入を行い停止させ、他の船に損害を出さないようにゆっくりとであるが係留所から移動し始める。


驚いたのは包囲しようとしていた者達だ。包囲しようとしていた船がいきなり出航したからだ。彼等の情報では全員が揃っていないのを確認した上の包囲作戦である。


主人に忠実なアンドロイドが仲間を見捨てるという事は想像できない。考えられるのは作戦が何処からか漏れていたか奇襲作戦に備えていた事。反撃の可能性も考えられた為に皆に動揺が走った。だが一度始めた作戦を中止する連絡は入らない。


つまり続行である。


ほとんどの警備隊員が〈止まれ〉という指示を伝えたいのか、両手を大きく広げブンブンと縦横に振った。しかしルル・ルリが操縦する宇宙船は気付かないのか止まることはない。


宇宙服に着替えていた命知らずの数人が宇宙船に飛び乗ると振り落とされないようにしがみついて叫び声をあげる、その映像がルル・ルリのいる中央コントロールルームに流れた。


「止まらないって。邪魔だなぁ。」


シュシュー!


埃等を取り払うエアを船体表面に吹き掛けると、宇宙船にしがみ付いていた警備隊員は次々と吹き飛ばされて勢いそのままに壁や床にぶつかっていく。宇宙服には衝撃を吸収する素材が使われているがかなりの衝撃だった為、飛ばされた警備隊の隊員は気絶し係留所を漂い始めた。


業を煮やした警備隊の隊長が第二作戦開始の指示を飛ばす。相手に気が付かれた時点で作戦は失敗していた、だが引き上げの時期を逃した隊長はまだ諦めていないのか宇宙船を逃がすまいと、船に向けてランチャーを構える。


係留所内で宇宙船が爆発すれば大惨事は免れない為、彼が撃ったのは貫通力の高いランチャーだ。打ち出された弾はドリル型をしており船の外壁を削り貫通し船内に侵入、破壊するというよりは穴を開けて味方を敵の船に潜入させるためのものだ。


ガン!


グイイィィン!!


壁面にぶつかり掘削機の様に突き進む細長い紡錘形状をした弾、それは宇宙船の表面を火花をちらし削り船体に穴を開ける━━かに思えた。


が。


グイィゥゥーー。


その弾はその細長い針のような体を半分ほど宇宙船に埋め込んだ時点で全く進まなくなり、船体に刺さった弾が逆再生されるかの様に徐々に外に押し出されていく。


「なんだ、船体が再生しているのか?!」


最新鋭艦には自動修復する機能が備わっているものも少なくない。だがそれは修復する作業ロボットが船体を補修するもので生き物の様に〈壁自体が修復される〉ものではない。


強硬な外壁を維持しつつ、再生能力を持たせるには現在この次元の技術を越えたものだろう。


グィィン、、。


完全に動きが止まった弾は警備隊員と同じ様に係留所に排出され宙に漂う。さっきまで弾が突き刺さっていた場所にはそれらしき痕跡はなく、新品同様の凹凸のない表面があるだけだった。それを見ていた警備隊の隊長は唖然とした、そんな状態の彼に宇宙船のエアノズルが向きを合わせる。


プシュ。


「うぐっ!」


宇宙船から放出されたエアは隊長を直撃、彼は広い係留所の天井に叩き付けられ脳震盪を起こして気絶した。


ワーワー、トマレー、ワー。


ルル・ルリの操縦する宇宙船はそれらを無視し出港、不可視化して追っての巡視船との戦いを器用に避けながら惑星バルガサの衛生軌道に乗り、微弱な電波を残しつつその時を待つことになった。





ガルガンス戦が始まり、アルド・ライバックは中央に向かったラウラと別れ、アルド達からみた右側〈東側〉客席に移動していた。


「ハァハァ!」


「、、、。」


ザザッ、ガサザ。


アルドは木々の間を駆ける。


スタート時点ではほぼ並んでいたが、日頃の運動不足からかライバックのスピードが徐々に落ちてくる。最短距離の雑木林の様なフィールドは整備されているとはいえず、足場も膝ほどの草が生い茂り不安定で明らかに時間が掛かるものだ。


「、、。」


アルドは後ろに付いてくるライバックの様子をちらりと確認する。場所移動に一分を見積もってはいるが正味の距離は120~150メートル程でハッキリいって、平地であればそこまで時間が掛かる距離では無い。


アルドは森を抜ける、ここまで30秒程。ガルガンス遭遇に備えて武器が欲しいの所である。草原のようなフィールドを簡単に見渡す。


「、、、?!」


少し先にオートオープン式のコンテナが設置されている場所を発見する。一瞬だけライバックの事を気にするが、どちらにせよ素手でガルガンスに敵う訳ではない、自分は護衛だと言い聞かせコンテナに向かった。


コンテナは胸あたりまである正方形の青色の箱で蓋の部分には手形のマークが付いていた。そこに手を翳す。


ピピピ。


〈〓〓〓〓〓〓〓〓〓〉


プシー!


文字がなんだか分からないがコンテナの蓋が開いて左右に広がったところを見るとそれで正しかったのだろう。


「かなりの数だな、、全部は持てそうにないぞ。」


コンテナ内の武器はバズーカが二本、大小様々な自動小銃七挺、特殊な設置型兵器が三つ、手榴弾が8個、そしてー


「おっ!」


アルドはレーザーソードの隣に並べられた長い杖━━━レーザーグレイブを見付けて躊躇わず手に取る。多少旧式で切れ味は劣るが使い馴れた武器を使うに越したことはない。


「銃は下手くそで当たるか分からないが、置くだけで使えるこの設置型の兵器を持っていくか。あと手榴弾も、、」


設置型の兵器には丁寧にもイラストの封印がされていて、ボタンを押して一定時間後に〈破片を飛び散らせながら爆発する〉事が見るだけで理解できた。


アルドは危険極まりないが手榴弾を服のポケットに二個無理矢理ねじ込み、大きめの救急箱の様な設置型の兵器の手に持った。



━━━━ビビビィ!ガチャコン!


警報音が聞こえガルガンスが檻から解放される。ガルガンスは小高い丘からこちらに向かって一直線に走って来る。


「おいおい、マジか!ライバック!!急げ!!」


「ゼエ、、はぁはぁ、、おうぅ、、。」


ライバックもようやく森から抜け出し、息絶え絶えに客席の場所へ向う。ハッキリ言ってこのままでは召喚どころか準備中に決着がついてしまいそうだ。


ドゴン!


爆音が闘技場内に響く。


「、、、。」


ラウラが乗る戦車の砲撃なのだろう。ガルガンスのいるすぐ近くの丘に砲弾が命中する。


「グルゥー!」


ガルガンスはラウラの砲撃の方が危険だと判断したのか、向きを変えて闘技場の中央へと向かった。時間を稼いでくれたラウラに感謝すると共にアルドは予想以上に時間がないことを感じた。


「時間がないっ。」


アルドは戦いの最中なのを思い出し、重さ十キロ程はある兵器を片手に林へと逆走する。


ラウラが乗るのは旧戦車である。流石にアルドでもラウラが単機でガルガンスに勝てるとは思っていない。もしラウラがガルガンスにこれで勝てるのなら〈今までの闘士達〉があまりにも弱すぎる。アルドがモニターで彼等の試合を見るにどの闘士もなかなかの強さを持っていた。


初めから開催者コロッセオ側の用意した武器や兵器での勝利は難しい、この大規模戦で勝利を掴むために必要なのは何よりコロッセオ側が予想していない倒し方が必要になるのだ。


「ラウラが時間稼ぎしている間に、これを設置するか。なるべく俺も死なないように時間稼ぎしなければ、、」


場所は東観客席近くの林の木と木の真ん中、ここならもし歩兵戦車を使えることになっても邪魔になりにくいし、見晴らしの良い平地だとガルガンスが発見して警戒し、近付かない事も考えられるからだ。


膝ほどの草を上手く利用して隠しボタンを剥き出しにすることで、直ぐに起動できるようにする。


「頼むぜライバック。」


アルドはガルガンスがもうすぐ来ることを確信していた。





ライバックが息を切らして客席が見える場所まで移動する。


「はぁはぁ、、前列の柱、、E-7、、。近くに、、。」


ライバックの視力は2.0でかなり目が良い。視線の先の席に座っているのは焦げ茶色をしたロボット二体、距離は20メートル程その手には白銀に輝くファクトリーキューブが見えた。


最前席はVIP席の為少し離れているがロボットが手にもったファクトリーキューブを目視出来れば問題はない。能力を発動させる。


前に能力を持たない人からどうやったら〈能力〉を使えるのかを尋ねられたことがある。だが能力はその人物にとって手や足を動かす同様にいつの間にか使えているもので教えられるものではないと話したことがある。


ライバックがこの能力を使うとき、先ず目の奥が熱くなった。


目標を固定すると〈引き寄せる物以外〉の視界の全てが灰色にそまる。すると何故か自分の体が蛇のように伸びて目標物に近付き、いつの間にか掴める距離に存在すると直感する。


目標物を掴むと空間がグニャリと歪む━━そして。



ライバックの手にはファクトリーキューブが握られていた。


〈〓〓〓〓〓〓〓〓〉


ファクトリーキューブを起動させ、内部の収納物を平地のフィールドに配置していく。


中身は一部を除いて全て召喚に関係するものだ。


1つ目は召喚に必要な魔術回路を瞬時に描くための機材〈ラインボール〉


2つ目はラインボールを正常に作動させるために必要な土台を作るためのキャンバス。


3つ目は土台を固定させ、外部からの変化を軽減させるマジックストーン。


4つ目は魔術輸送の法則を発現させるために必要な疑似妖生命体と召喚石〈高位光石〉である。


召喚に重要なのは魔術回路である。正確に誤差なく描かなければ正常に作動しない為で、工程に一番時間を掛けてこれを描く。なので描く場所は凹凸のない石畳や鉄板が好ましいのだが、コロッセオ内の闘技場は岩場や草原が主な地形であるために完璧に平らな場所は存在しない。


アリサの注文にルル・ルリが出した結論はこうだった。


凹凸の無い場所が無ければ〈描きやすい場所〉を作れば良い。


用意されたのは巨大なトランポリンの様なものである。これは簡易住宅を作る際の土台となる装置で巨大であるのだが、ある程度の大きさと一から作らなくて良いという点から採用された。ファクトリーキューブの収納スペースの大半を占めていたものだ。


ライバックはキャンバスの上に移動すると中央部分に細長い寸胴鍋のような装置を向きを気にしながら設置する。


召喚の法則にはもうひとつ問題がある、召喚に際し〈生物×無生物〉〈無生物×生物〉にしなければ正常に魔術が作動しないことである。生物同士であると仮想領域が混線し、無生物同士であると仮想領域が無いために発動しない。


ファクトリーキューブ内にアリサ入る事も検討されたがコロッセオのルールに抵触するかもしれない事と〈暗闇に数時間も閉じ込める行為〉が若干人権問題に発展しかけたので却下された。


そこでアリサとルル・ルリが共同開発した。〈擬似妖生命体〉である。見た目は白いラグビーボールで卵よりも若干大きく少し温かく表面がツルツルしている先端に穴が空いた生物?だ。


魔術のホムンクルス・妖精と科学の遺伝子操作・人工生命の技術を組み合わせ誕生させた新しい生き物で植物と動物と妖精・精霊を三角の頂点に見立てた場合に、中央に位置する存在となっている。意識や生命活動はほぼないが魔術に必要な仮想領域は人よりも遥かに大きい存在と話されたがライバックには良くわからなかった。


〈擬似妖生命体〉をキャンバス中央の寸胴鍋の中央の窪みに差し込んで、寸胴鍋の蓋の部分にあるラインボールの電源を入れる。


そしてラインボール装置の横についている拡大鏡で、ミクロ単位の修正を小さなハンドルノブでカチカチと修正する。このラインボールの微調整に時間が掛かり、また誤差があると召喚を失敗する大きな原因となる。


完了のボタンを押すと同時にその場から急いで離れ様子を伺った。


ギュイィィィン!パパパパパッ!!


ラインボールが回転し辺りのキャンバスに黒い液体を勢い良く飛ばす。スプリンクラーか噴水のように無造作に液体を飛ばしているように見えるが、実際は徐々に召喚用の魔方陣が出来上がってきているのだ。


魔術回路用のインクが乾き、魔方陣が出来上がれば後は自動で召喚が行われるはず。


召喚を成功させたことで緊張が途切れ、ライバックの心に徐々に死にたくないという恐怖心が膨らんでくる。


こんな目立つ場所にいれば簡単にガルガンスに見付かり殺されてしまうだろう。あとはこの場から逃げるなり、隠れるなりをして時間を稼げばアルド達がガルガンスを倒してくれる筈だなのだ。


だがライバックは首を振る。まだライバックには役目が残っているオーガユニットをアルドやラウラに届けるという重要な役割が。




シュシュシュ、サササッ。


ガルガンスは音もなく林を駆ける。


体の大きなガルガンスだとこの地形は不利ではあるが、正面に向かって走るだけならばそこまで問題ではない。問題なのは緊急回避や方向転換だ、体が枝などに引っ掛かり動きを妨げられた。


ガルガンスは林の出口付近に人間の臭いを感じ若干スピードを緩める。人間の声や音はほとんどしない〈隠れている〉と感じるが何処かは分からなかった。


こういった時は罠が高確率で仕掛けられているのをガルガンスは知っていた。そして謎の機械音が森の先から聞こえる事で隠れている人間は奥に行かせたくないのだろうという結論に至る。ならどうすれば良いのか?


ガルガンスは大きく跳躍し途中の林から東の観客席の前まで一気に飛び越えた、そして目的地に到達する。


待ち伏せをしていた人間は今慌ててこちらに向かってくる筈である。その前に守りたかったものを殺し壊せばいい。


「ウウウゥゥ、、」


その場所には撫でただけで死んでしまう、小さくて無力な人間がいた。だが例え小さくても侮ってはいけないことをガルガンスは知っている。でなければガルガンス本人をこんな場所に閉じ込め続けることなど不可能だろう。


その人間が動かず呆然としていることは、攻撃する為の武器を持っていないということだ。


すぐに終わらせようとした瞬間である。


ピーピーピー!


カッ


━━と人間の後方に装置が光り、次の瞬間に先程とは違う光景が広がった。


オーガユニット2体と各種装備の召喚が成功したのだ。


「?!」


後方でトンっと何かが地面に落ちる音。


ドゴン!!


爆発音。


「うぉぉぉおお!」


スタタタタァ!


林から人影があわてて飛び出してきた。


そして手にもった石を投げる。


だが距離が足りずに途中で落下、そして。


ドゴン!!


石が爆発する。流石に直撃すればダメージを負いそうな攻撃にガルガンスは警戒する。━━先ず林から出てきた武器を持った人間を倒す事を決め、ガルガンスは体の向きを変えて林から出てきた人間と対峙した。




「くそっ!」


アルドは悪態をついた。ガルガンスの注意を引くために手榴弾二個全てを使いきり、あるのは右手に握っているレーザーグレイブだけである。


問題は二つある、一つはオーガユニットまでの距離。時間稼ぎのためガルガンスに一太刀浴びせてからオーガユニットに乗り込む予定だったのだがガルガンスが無視してしまったため、搭乗するにはガルガンスの攻撃を掻い潜らなければならない点だ。


そしてもうひとつはラウラの生死が不明な点だった。ハッキリとは分からなかったがガルガンスが林に来る前に砲撃とは異なる爆発音がしたことが気にかかった。


ラウラは無事だと自分自身に言い聞かせライバックに指示をとばす。


「ライバック!オーガユニットを操縦するんだ!!」


ライバックも若干であるがオーガユニットの操縦を練習していた。それは前衛となるアルド・ラウラにオーガユニットを届けるという役目の為である。


ライバックは頷いてオーガユニットに乗り込んだ。


ライバックの技術でガルガンスに勝てるとは思えないがひとまず戦力にはなる。


ガルガンスはアルドに飛び掛かる寸前。


逃げても足の早さですぐさま追い付かれ、中途半端な体勢から回避できず噛み殺される。なら結論は一つだった。


アルドはレーザーグレイブを構えるとガルガンスに突撃した。


「ガァァァ!!」


ガルガンスの戦闘を見ると〈前足で押し潰す〉〈噛み付き〉〈腐食ブレス〉自分と同じ大きさや少し巨大な生物との戦いは比較的得意であるが、小さすぎる相手だと少し攻撃を当てずらい印象がある。勿論当たれば即死の危険をはらんでいるが、それでも回避不可能という訳ではない。息を止めて集中する。


ガルガンスは吠える。


右前足━━。


肉眼ではとらえられない死角からの攻撃、それはアルドの戦士としての只の直感だった。


地面スレスレにしゃがみながらレーザーグレイブを左に振るう。


ブィン!


ゴロ!ズタタ!


回避に重点を置いたため踏み込みがあまかったのかガルガンスの皮膚に軽い切り傷を付けただけにとどまるがアルドは無傷、前転しそのままガルガンスの右前足をすり抜ける。


そのまま左から周り込んでガルガンス後方へ抜けるか?


━━いや!


ガルガンスの上半身が跳ねる。


押し潰し━━。


ガルガンスの体重は150t並みの生物ならそれだけで圧殺させられてしまうだろう。


「うぉぉぉぉ!!」


1秒にも満たない時間。アルドの足は通り抜けようとした左ではなく右側に向いていた。レーザーグレイブをつっかえ棒にすることで0.1秒でも時間を稼ぐ。


パキャ。


レーザーグレイブが縦に割れる音が聞こえる。


ドズン。


ズザザ。


不恰好なヘッドスライディングの様な姿でアルドはギリギリ、ガルガンスの攻撃を回避したが、体勢が崩れ寝転んだ状態になってしまう。これではもう攻撃はおろか回避すら不可能だろう。


「くっ。」


ガルガンスの心境としては舌舐めずりをしてどう料理しようか考えているに違いない。


アルドが立つ瞬間を狙って拳を振り上げようとした時。


バララララ。


パチュン!


「ウォウ!」


オーガユニットのアサルトライフルが火を吹いた。


バララララ。


只の乱射であるが、ガルガンスの背中に一発だけ被弾させる事に成功する。その一撃は至近距離も相まって肉を抉り、ガルガンスがその場にいるのは危険だとアルドを無視し、無意識に大きく距離を取るほどだった。


バチュン。


「味方のアサルトライフルの暴発で死ぬんじゃ死に切れないな。」


アルドは身を低くして若干痛めた足を庇いながら、オーガユニットへと向かう。


カチカチ。


ガァァァ!


アサルトライフルの弾が切れるとライバックの操縦するオーガユニットはガルガンスを引き連れて林に移動していった。アルドは搭乗する時間をライバックが稼いでくれた事を感謝しつつオーガユニットに乗り込んだ。


ウィーン。


オーガユニットの大きさは3メートル弱。ガルガンスの半分にも満たない。だがルル・ルリが改造してパワーアップしたオーガユニットのパワーは小型ながらもガルガンスにある程度対抗できるものであるし、同時に装甲も強化されて防御力も高くなっている。


※正面から力比べをした場合、体重差があるためガルガンスに対抗するには3台のオーガユニットが必要。


オーガユニット用のBレーザーグレイブ、ショットガン、アサルトライフル、ロケットランチャーなども同様にルル・ルリの手が加えられガルガンスの急所〈頭〉〈腹〉に【命中】すれば一撃で命を奪える程の物になっていた。


アルドはBレーザーグレイブを背中に装着すると、比較的アルドが使いやすいと思っているショットガンを装備する。弾数は6+1、口径が大きいのが特徴で、近~中距離に威力を発揮する銃である。


ギュオオオォン。ガチャン、ガチョン。


アルドはレーダーを確認。ライバックが林の中で今だ交戦中であることを知る。その方向に向かいながら無線を入れる。


《ライバック!聞こえるか!こっちに戻ってきてくれ!!俺の位置の方へ誘導しろ。いつまでも逃げ切れないぞ!》


《━━━━━━。》


混乱しているのか返事は無い、だが徐々にライバックの機体がこちらに近付いてくる。


「ふー、、俺の腕で勝てるか微妙だが、、」


ラウラがいれば確実に倒せたと思うが、現状ではこのままライバックと組んで倒さなければならない。


不器用に走るライバックのオーガユニットを確認する。


「━━━ー焦るな、、引き付けてから〈撃つ〉大切なのは距離、間合いだ。この銃なら外れることはほとんどない!」


カチャ。


狙いを定める。


距離60ー45━30。


《ライバック!伏せろ!!》


倒れるライバック。


ドゴン。


ふわぁ。


上空を飛んで回避するガルガンス。ライバックが倒れてから撃ったことで回避する猶予をあたえてしまったのかも知れない。


ガッガッガッ。ガチャコン。コロコロ。


飛びかがってくるガルガンスを横移動でギリギリかわすと、ショットガンのハンドグリップを前後させる。このショットガンはポンプアクション式といわれるものらしく、グリップを前後させるだけで弾が再装填させる※仕組みだ。


※その分弾倉は交換出来ず弾込めにはかなりの時間が掛かる。


「━━頭、、頭を狙う!」


ここは林だ、自由にガルガンスが動き回れる訳ではない回避に制限が掛かる筈なのだ。


「ガァァァ!!」


息をつかせずガルガンスがアルドとの距離をつめる。


━━照準が間に合━━


ドウン!


ズガガ。ガキャン。


「うぉ!」


ドスン。


ガルガンスに突進され吹き飛ばされ転がるオーガユニット、途中の木にぶつかりようやく止まる。


「ガルルル。」


アルドは揺れる視界のなか故障箇所を瞬間的に把握、幸い動けなくなるほどの致命傷を負った訳ではなかった。問題といえばブツかった衝撃でショットガンを何処かに落とした事だろう。


ボタボタ。


対するガルガンスは突進でブツかる直前にアルドが出鱈目に撃った弾が左前足を負傷させていた。


Bレーザーグレイブを背中から外し構える。


ガルガンスは警戒しているのか、ゆっくりと左右に移動して牽制するだけである。


「時間稼ぎか、、だがこのままいけば勝てるぞ。」


と思った瞬間だった。ガルガンスがいきなり真横にジャンプする。


ボスン!バキャ!


「うおっ!」


若干の衝撃と共にアルドの乗るオーガユニットの右足の端が吹きとんだ。思わず片足をつく。


「なっ、、攻撃いや。」


目の前にはライバックの乗るオーガユニットがショットガンを構えていた。この攻撃の原因は単純だ〈ガルガンスを撃とうとした弾が対角線上のアルドに当たった〉という事だけだ。


問題なのはライバックのバックアタックを、ガルガンスがタイミングを合わせて回避した点。今回はガルガンスが上手くライバックを誘導して撃たせたと見ていい。これでは共闘というよりも足手まといだった。


ライバックがショットガンの弾を再充填しようとした時に横に移動していたガルガンスはライバックのオーガユニットに飛び掛かった。


ドスン!グワシャグシャ!


オーガユニットの装甲は戦車は違う。体は強硬、手足の部分に関していえば衝撃にはある程度耐えうる構造をしているがー


ガチチチィ!


ブチブチブチ!


引き千切る。


そういった力は想定外だった。


前足で押さえつけられたライバックのオーガユニットは、ガルガンスの強靭な顎に耐えられず頭と腕を強引に螺切られた。


残るは両足と装甲の剥がれた右手のみ。


これでは素人のライバックではかなり荷が重い。


アルドは急いでもうヒト噛みしそうなガルガンスの元へ移動してBレーザーグレイブを振るう。それを完全に予期していたガルガンスはBレーザーグレイブをバックステップしてかわす。


ウィーンウィーン。。


外側の無惨な姿とは違いライバック自身は無事なようだ。しかしライバックの乗る機体はボロボロで戦えそうになかった。


《ライバック動けるか?もし逃げられるなら、林を抜けた中央付近に移動してくれ。ラウラを探して合流すれば闘技場の武器を集めて態勢を立て直せるかもしれない。勝率は出来るだけ高い方がいいだろう?》


無線が使えないのかライバックは残った右手を上げるとヨロヨロと立ち上がりアルドの指示にしたがって闘技場中央に向かった。ガルガンスはただそれを眺めていただけだ。


個別に倒すつもりなのか、それとも他に何か考えがあるのか。


案外、別の理由かもしれない。


「嫌々かも知れないがお前はお前で、戦士、、いや闘士なのかも知れないな。」




アルドはガルガンスと改めて向き合い名乗りを上げる。


『惑星ガルンセル、白銀の断槍アルド・ガーデンブルグ!押して参る!』


ドゥ!


先に動いたのはアルドだった。Bレーザーグレイブを生身のように縦横無尽に回転させて攻撃を仕掛ける。


流石のガルガンスも地形・足の怪我が有利に働いている事もあり、徐々にアルドに押されぎみになる。


ズパリ!


「ぅウォン!!」


ガルガンスの予期せぬ方向からレーザーグレイブが舞い、ガルガンスの右目から鼻の部分に深い傷を付ける。しかし右側の視界を奪ったアルドは全く攻撃の手を緩めない。


「まだまだ!!」


勝負は分からない。ガルガンスには腐食ブレスがまだ残っているのだ、どうなるか分からない状況下で気を抜いてしまわないように、更に攻撃を加速させる。


この戦いにおいてアルドが更に有利にであるといえる事は、アルドがオーガユニットを操縦して戦っていることがあげられる。つまり例え攻撃を受けたとしても痛みは感じないし、衝撃は内部のクッションによって軽減される。一方、ガルガンスは傷付けられればそれ相応の痛みを伴うのだ。


レーザーグレイブによって傷付けられた部分に痛みがはしり、ガルガンスの思考を鈍化させる。


「ガァァァ!!」


ブンブン!


ガルガンスは巧みにオーガユニットに近付くと、もう我慢が出来ないと必殺の一撃を見舞うため一気に距離をつめてきた。


今までと違う動きにアルドはすぐさま対応する。


ガルガンスの腐食ブレスをまともに食らえばオーガユニットといえども無事ではすまない。もし防ぐのならば肉食動物なら当然こうするしかなかった。


姿勢を低くし肩に乗せる様な体勢で、ガルガンスの下顎を掌で固定し押し上げる事だ。


下顎に掌低を放つ。


そうすることで腐食ブレスの勢いを抑制すると同時に上へと腐食ブレスをそらす事ができる。肉食動物の顎の構造上これは有効である。


ブンブン!


ガルガンスが抵抗しないという前提であれば。


もともと体重が違う為に暴れたガルガンスを押さえ付けることは出来ない。同時に先程のライバックのショットガンの弾の影響でアルドのオーガユニットの足が悲鳴を上げ逆方向に折れ曲がる。


「ぐおおぉ!」


吹き飛ばされる直前片手に持ったレーザーグレイブを無理矢理振るう。今後の事など考えない捨て身の一撃だった。


ズリリリリュー。


「━ァオン!!」


それはガルガンスの腹部を大きく切り裂く。同時にガルガンスから噴き出された腐食ブレスが倒れかかったオーガユニットに浴びせられる。


ジュオオオォー。


アルドは急いで緊急脱出装置を作動させる。


ガコン!


装甲に大きな穴が出来ると同時にアルドの乗る座席は地面スレスレに打ち出される。


ズサザザサ。


あまりにも乱暴な脱出に全身がギチギチと痛むが、アルドは座席のベルトを外すとガルガンスを見据えながら立ち上がる。武器はもうないので決着がついたと思いたかった。


「ヴヴヴヴオォォ。」


「そりゃそうだわな、、。」


ガルガンスはボロボロであるがまだ生きていた。全身に裂傷、片目は潰れ、大きく腹を切り裂かれてもまだ戦う意思を捨てていなかった。


アルドが生きている事を知って足を引き摺りながらこちらに向かってくる。動きが遅いのは遊んでいるのか、それとも死にかけだからだろうか。


「くそっ!!」


アルドはヨロヨロとおぼつかない足どりで移動する。


「逆転の目があるとすれば、、アレしかない、、」


そこはアルドとガルガンスとの戦闘地点に近い、距離にして20メートル程先だろうか。


足音が近付いてくる。


アルドは必死に移動する。


そして設置型兵器の手前までやってきてガルガンスの足音が聞こえないことに気が付く。


後ろを振り向くとガルガンスが十メートル先で立ち止まり、アルドをただ見つめていた。


「こい!ガルガンス!!こっちだ!!掛かってこい、、?」


「、、、ゥヴ。」


「??」


ガシーン、ガシーン、ガシーン。


オーガユニットの足音が聞こえる。ライバックが戻ってきたのだろうか?とアルドは考えたが足音が違う、速い、そして何より凄まじい威圧感を放っていた。


「ラウラ、、。」


歩兵戦車を扱うようになって、アルドが分かったことがある。ラウラの操縦技術は神業の部類に入るという事だ。


「、、いやでもなぁ。」


流石に片手、頭が取れている状態でマトモに戦えるのか疑問が残る。


『ぼっちゃ、、アルド様、やりたいことは理解しましたので合図をした時にスイッチを押してください!』


スピーカーからラウラの声が聞こえ了解の合図を送る。


ラウラのオーガユニットが完全に見えたと同時にガルガンスとの戦いが始まる。ラウラは武器を持っていなかった。


いや、武器はあった。


オーガユニットの手が足が動作全てが武器になるのだ。




ズン!


オーガユニットの掌低によって顎を砕かれ。


ズン!


オーガユニットの蹴りにより足にヒビが入り。


ズバン!


のし掛かろうとしたガルガンスの攻撃をかわすと同時に林の木にぶち当てる。


足りないのは決め手だった。


『アルド様!!』


カチャ。


『はぁぁぁぁ!』


ガスン!


「キャイン。」


横腹に飛び蹴りを食らったガルガンスの体が横倒しになる。


ドゴゴン!!


「━━━っ。」


アルドは爆風を屈んで軽減させる。


カルガンスは黒焦げになりピクリとも動かなくなった。


ワァァァァァ!!


歓声が聞こえる、それは勝者を称える声であり。また戦いが終わったという合図でもあった。


こうしてアルド達対ガルガンスとの大規模戦闘はアルド達の勝利によって幕を閉じたのだった。





闘技場の裏手。


銀河星系情報局諜報科オートマータ【バスクドルク】は相棒と共に最後の作戦の指示を出す。


「ああ、奴のアルド・ガーデンブルグの口座を凍結しろ。何、好き勝手に凍結など出来ない?奴は国家反逆者だぞ。ああわかった、それでいい。今後こういう強引な事はしないオーケーだ。」


「〓〓〓〓〓〓〓〓」


「ふう。ようやく終わったか、勝ったのはやっぱり奴等か。全く面倒な事だ。観客の前から見えなくなった時に作戦通りに行くぞ相棒。」


「〓〓〓〓〓〓〓」


「ああっ勝利の余韻に浸ったまま、地獄に直行させてやるさ。」


バタン。


そして彼等は持ち場についたのだった。

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