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異次元収集家アルド 五章2話

あー、5話欲しいなコレ。


誤字・脱字気が付けば修正します。

バルガサ入港、数時間前ー


アルドは宇宙船ブリッジでラウラからの紙媒体の提案書を読んでいた。


アルドの後にはレフト・ライトが護衛につき。非常時の対応や何かあれば直ぐに報告してもらうように命令してある。


大切な情報を電子メールなどにしないのは紙媒体とは違い、燃やせば使っても情報が残らないためだ。超緊急の場合以外、電子メールはあくまでも知られても良いような情報や偽情報で相手を混乱させる為だけに今後は使うことになっていた。


問題となるであろう、ミューズが甦るためな必要な部品、銀河星系治安当局である軍や警察の動き。侵入者、そして戦わなければいけないかもしれない敵の存在。問題は山積みだった。


〈バルガサ入港前に、惑星バルガサの衛星軌道上に誘導型の小型魚雷をデブリに偽装して撃ち出す事、また遠距離操作型の機雷をバルガサ周辺の各位置に設置する事。その許可について、一時間以内1600時までに許可なら食堂、変更や修正なら格納庫にいるドールへ話し掛けをしてください。〉


アルドは提案書を読み終えると、焼却装置で紙を燃やしレフト・ライトと共に食堂へと向かった。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓




自由交易惑星バルカサ。それをグルリと一周囲む様に宇宙ステーションは建設されていた。宇宙ステーションは商業区画が北側、居住区画が南側に分かれる。居住区画は惑星バルカサの1日サイクルに合わせた時間に照明が灯され、人々の生活に無くてはならないものだ。もうひとつ商業区画は常に明るく、夜のように暗くなる事はない。レジャーランド・映画館・博物館・動物園等の大規模集客施設も商業区画に含まれる。


そしてその中、一番の目玉となるのが賭博場である。


総面積1200平方キロメートル。星系では三番目に大きな賭博場であるが、一番有名なのはこのバルカサ賭博場であった。


人や動物やロボット、はたまた魔物を戦わせて勝敗にお金を掛けるコロッセオ。カジノと呼ばれる、コインを賭けてゲームを行う遊戯施設。出来事を賭博の対象とした多項目選択式賭博ではプールリリースと呼ばれるシステムが導入され提携店であれば、いつでもお金を賭け※配当金を受け取る事が出来た。


※配当はブックメーカー方式やパリミュチュエル方式が殆んど。






「ルル・ルリの言いたいことは分かるさ。テラ銭、、胴元がいる以上結局分配される金額は減るし、勝てる確率だって低くなる。相手だって商売だからな。」


小脇に抱えたルル・ルリは正気を取り戻していてアルドの話に耳を傾けていた。


「単純にルーレットの赤黒二択の倍返しの場合。70から140、280、560、1120になる。この場合二分の一の四乗、16分の1の確率でしか成功しない。それじゃあ確かに駄目だ。なら確率が半々二分の一、それで750万以上の儲けがあるとしたらどうだ?」


「、、まさか!?駄目だよ、不正なんて。リングでコピーして増やしても、管理チップが内蔵されているから機械に通すだけで直ぐにコピー品だってバレちゃう。捕まったら禁固15年は確実だよ。」


うっ、と図星を突かれたらしくアルドはたじろぐ。


「いや、、一度だけなら、、結構良いアイデアだと思うんだけどな。見せ金みたいなもので本当に使う訳じゃないし。」


「そういう悪事はバレるの!あぁ、あの純真だったあの娘の息子がこんなちっぽけな悪事に手を染めそうとするなんて〈あの男〉の悪い遺伝子の所為かしら。」


アルドに小脇に抱えられていている状態、体勢は滑稽だがルル・ルリは真面目な顔で反論していた。彼女の体は子供なのでクスクス笑う周囲には、アルドが歳の離れた姪に説教をされていると思われているのだろう。だが実際にはルル・ルリはアルドの母親と同世代である、アルドとしては複雑な心境であった。


「だとすると残る道は、、」


歓声が轟くコロッセオの方角を向くアルド。


「賭けをしないで稼ぐ方法しかないか。」





「選手登録料は100万クレジットだ。これは負けたときの相手へのファイトマネー、闘いで怪我をした時の保険や死亡した際の葬儀代も含まれる。新人の対戦カードはその日の一時間前に外部との接触を避けて通達される。打ち合わせなどをして不正発覚した場合はそれ以外にも罰金が課せられるので注意してくれ。」


通訳用のイヤホンが言葉を翻訳し、首につけられたチョーカーが言葉を伝える。


「予想より高いな。勉強してくれ。」


「固定料金だ。、、だとしたら大規模戦闘、、週末のイベントの参加なんでどうだ?条件はいくぶん緩和されている。期日は明日まで、巨大魔獣ガルガンス対1チーム8名以下のチーム登録制、装備品は主催者が用意した武器のみ使用可能。参加費は一人につき30万、命知らずなら大歓迎だ。勝てば一応300万のファイトマネーが生存者全員に贈られる。」


10倍ものキャッシュバック、多分これは勝てない事が前提の戦いだろう。


「、、勝ち目は?」


コロッセオ案内係りのストーン人はアルドにイベント参加用のパンフレットを手渡す。パンフレットには巨大魔獣ガルガンスの情報や参加への締め切り日時、登録に当たっての免責事項が記載されているらしい。


「成功率は現在5%以下。全長20メートルで全身が鋼鉄並の毛に覆われ、口からタンパク質や金属を溶かす腐食ガスを吐く生き物だぞ。主催者側が用意した武器もそれなりだが火力が安定しない、どうやってチームプレーで戦局を支配できるかがポイントだろう。それにコロッセオ内部はマナが少ないから大した魔術も使えない、設置されている武器欄に魔石はあるが大魔術を使用するにも量が足りないしな。このイベントのコンセプトは賭けじゃない、観客が残虐なショーを楽しむためのものだ。」


「自殺志願者以外に、参加する奴はいるのか?」


「一年ほど前に倒したチームがある。カルバンとディーガを含む合計8人の構成チーム、銀河星系最高司令官バルロの腹心だな。なんでも引き抜かれる前はコロッセオで日銭を稼ぐ闘士でな。なら我々だって倒せると功名心が騒ぐ連中もいるだろう。倒せば政府に厚待遇で引き抜かれるかも知れないからな。」


「、、武器が制限されているのが辛いな。」


「武器か、、そんなものは〈色々抜け道〉がある。さて他の客もいる、退いて次の人にその席を譲ってくれ。お前さんの足から根が出る前にな。」


受け付けに片手を挙げて礼を現すとパンフレットを持ってメンバーの待つ場所へ移動する。


「イベント用の闘士を募集してる。それが一番実りが良い。それに勝つことが出来れば上手くと一度で目標金額に届く。問題は【現状では勝てない】という事だけだな。」


「アーちゃんには危険な事はあまりしてほしくないなぁ、、うーん。そうだ〈株〉何てどうかな?テクニカル分析での資産運用なら私、得意だよ。前だってあの娘の資産を一年間で百倍に増やしたんだから!このバルカサの株式市場は1日中取引可能だし、証券会社と銀行との連携もスピーディーだからすぐに現金化出来るよ。」


無い胸をドンと叩くルル・ルリ。惑星ガルンセルにも似たようなシステムは合った〈手形〉に近く、額面の金額を記述されている日にちに返却するようなものだったが。


「フム、どうするんだ?」


「パンフレットには明日がイベントの登録最終日になるって書かれているから。それまで情報収集、討伐可能ならイベントへの参加だな。ルル・ルリの資産運用に関しては出来るだけ融通する方向にしよう。資金はいくら必要なんだ?」


「出来るだけ!目一杯!!」


ルル・ルリが笑顔で両手を両足を大きく広げてアピールする。


「賭け事は、、いや、、何でもない。」


先程までと逆になってしまった構図に少し不安を感じるアルド。アルドに言わせれば株も博打も変わらないがルル・ルリの考えは違うらしい。


「決まったらネット接続用のお店に行こう。出来るだけ高性能な端末のあるお店がいいな。」


「分かった。コウモリ、No.2はルル・ルリと一緒に店を探してくれ。俺とレフト・ライトはコロシアムで過去、この巨大魔獣ガルガンスをどうやって倒したのか、そして強さを調べる。どうだ?」


「えっー、アーちゃんも一緒に行こうよぉ。アーち~ゃ~ん。」


ブンブンブン。


アルドの右手を両腕で抑え引っ張り、駄々を捏ねるルル・ルリ。アルドは本当に歳上なのか疑問に思いながらルル・ルリを諭す。


「ルル・ルリの事を信頼しているから離れるんだよ。それになるべく多くの選択肢があった方が失敗した時に慌てなくて良くなる。代案だって必要だろ?」


「えぇー!」


ガシッ。


両脇をコウモリとNo.2に持たれて、文字通りズルズルと足を引き摺られ連行されていくルル・ルリ。アルドは涙目になるルル・ルリを見送るとコロッセオに足を向けた。


「重要なのは主催者に揺さぶりを掛けつつ、攻略の糸口を掴めるか、だな。」


コロッセオの前にある巨大なスクリーンにはコロッセオの試合の映像が投影されていて、今は先ほど終わった戦いのリピート映像が流されていた。その端には何か数字らしい表示があるので、予想では倍率が表示されているのだろう。


近くに端末がありアルドは操作しようと近付いた、、がピタリと動きを止める。


「、、文字が分からないな。」


『ワレワレハ、ジゼンニコノセイケイノゲンゴヲインストールシテアリマス。シラベモノデシタラオマカセクダサイ。』


「ガルガンスのデータはあるか?出来れば試合、そして闘士が勝った試合の映像が見たい。」


ライトは端末からアクセスしてキーボードを操作する。どうやら目的のモノはすぐに見つかったようだ。


『ガルガンスノシアイガ、コノ3シアイゴニアリマス。カコノエイゾウハザンネンナガラ、コノタンマツデハシラベラレマセン。』


「3試合後か、、それを見るとして。さて、、。」


アルドは周囲に目を配る。


アルドとして更に知りたいのは、もし仮に戦うことになったとしてメンバーを誰にするかであった。勝てば300万SCである、なら二人また三人とアルド達の人数が増えるほど今後有利になる。出来れば3人参加して全員で900万が理想である。


「試合に参加して生き残りたいのは俺達だけじゃないはずだ。」


コロッセオには観客や賭博師に混じって別の存在がいた。コロッセオで命そのものを賭けて金稼ぐ〈闘士〉という存在。場内で幾ばくの入場料も払いたくないというそんな人種がたむろする巨大モニターが中央に置かれた酒場。


闘士にとって対戦する相手の情報は肉体を使用する以外の武器となる。そんな毎週開催されるというイベントならばそれだけ情報が集まり〈攻略法〉が闘士達の間で議論されるハズだと考えたアルドの思考はあながち間違ってはいなかった。




「お勧めを一杯くれ。」


バーのデビール人のマスターがカウンターに座るアルドを丸メガネ越しから確認する。無口のようで口からペロペロとトカゲの様に舌を数度出した後、透明な水の入ったボトルを取り出しコップに注いだ。


「エネルギーウォーターだ。500SCになる。」


「カードで。」


「カウンターのカードリーダーにそれをかざして暗証番号を入力してくれ。」


目の前のカードリーダーにブロンズカードをかざすと、画面に商品画像が表示され、ルル・ルリから聞いた暗証番号を入力する。


商品画面の色が赤色から緑色になる。


「毎度。」


商品を置いてカウンターから離れようとしたマスターに質問する。


「ガルガンスって強いのか?」


「?ガルガンスね、、お前さん闘士か?だったら止めときな。両手・両足を縛られた状態で怒り狂った象と戦う様なものだ。」


「そうも言ってられなくてな。俺の他に命知らずを知らないか?」


マスターは首を降って手を上げるジェスチャーをするが、何か心当たりがあるのかグラスを磨きながら呟いた。


「老人からの忠告だ。往々にして〈闘士が勝てない〉試合というモノがある。これがそれだ、過去に勝者はいる、、だが数が非常に少ない。疑問に思わんか?」


「不正があると?」


「不正はない。だが、成功者がいる以上、挑戦者は成功例を模倣し、主催者はその対策をする。〈命知らずの仲間を今から集めよう〉とするお前さんの話を聞いて確信した、現在のお前さんでは勝ち目は万にひとつも無いだろう。」


「死にたくなくてね。何かアドバイスしてくれないか?」


「決め手はルールの8番にある。言葉通りにな。」


他の客の注文が入った様でマスターは言葉を残していなくなる。アルドは後ろに控えていたレフト・ライトにパンフレットを渡す。


「ルールを読み上げてくれ。」


「リョウカイ。」


パンフレットに書かれていたルールは以下。


1、武器は持ち込み禁止で主催者が用意した武器を使用する事。

2、1チームは最大8名以下。また報酬は規定額とする事。

3、怪我・死亡について主催者は責任を負わないものとする事。

4、制限時間等は存在せず、双方どちらかが戦闘不能になるまで行うものとする事。

5、試合前に不正がないように薬物検査・身体検査を行う事。

6、試合会場に不適切なものを設置、会場を故意に破壊することを禁止する事。

7、超能力者の参加について、能力の大小に関わらず1チームで一人とする。また、一度イベントに参加した超能力者は参加出来ないものとする事。


以上。それ以外、闘士達の行動に対して主催者側は異議を唱えないものとする。


「、、、それだけか?」


「カカレテアルノハ。」


「、、最後のルールは7番。、、超能力者、、までね。」


アルドにとって超能力は最も縁の無い力だった。記憶では※コウモリが超能力のヒートボディを使えるが、本体に自覚が有るかは分からない。それは過去の戦士の超能力であり、呪われた鎧に刻まれた特殊能力によって発現しているに過ぎないからだ。


※コウモリは乗っ取った戦士の超能力が使用可能になる。またその記憶を鎧に刻むことで超能力を肉体を変えても使用することが出来た。


腕を組んで考えるアルド。マスターの言わんとしていることは分かるがハッキリいって、すぐに直ぐ思い付くはずもない。酸味と甘味の効いたエネルギーウォーターを飲んで頭を冷やす。


「そもそも絶対にコロッセオで戦って稼がないといけないという訳じゃない。ルル・ルリが上手くやってくれればいいし、凝り固まった考えは危険かもしれないな。なんなら始めの作戦でー」


危険な考えに偏ったとき、ハンドリンクに通信が入った。


『アーちゃん、お店見付かったよ!カード使って良いかな?』


「ああ、大丈夫だ。」


もうそろそろガルガンスの試合が始まる。間近で試合を見た方が良いかとアルドの思考はそちらに移っていった。






ドガン!


銀河星系統括経済省長官デビール人のロード・コルディアスは緑に近い顔を赤くして、ドアを思い切り蹴り飛ばして部屋のなかに侵入した。


部屋の奥にはバルロが豪華なテーブルに座り、左右にはストーン人のカルバンとディーガが控えていた。暗殺の類いではないこととその原因を知っている二人はその成り行きを見守る。


「バルロ!どういう事だこの計画書は!?突然辺境で軍事演習を始めたかと思えば、今度は個人を破滅させる為だけに国庫金を使用するとは、気でも狂ったか!!国庫金の金は銀河星系に住んでいる国民の血税だぞ!それを━━ゲホゲホ!!」


コルディアスが言いたいのは無意味に大規模な軍を動かしたことだろう、あれだけの艦隊を動かすには一度に数兆もの費用が掛かる。


「、、落ち着けコルディアス。水でも飲むか?」


「要らんわ馬鹿者め!!あーヤダ、おーヤダ、もーヤダ。胃が痛い。辞めたいわこんな長官職!お前馬鹿だろ、いや馬鹿だな!!!」


腕を机の前に組んで話を聞くバルロ。何故秘密裏に進めていた計画が表に出たのかを考える。


「疑問に思ったのは国の歳出入の額と〈正確な見積り額〉が合わないのを疑問に思ったからだが、内部保留金を見て驚愕したぞ。620兆もの金を良くもまぁ貯めたものだ。この過剰な資金を国民に使わず何に使うつもりだと聞いている。」


「部下の報告では相手は今しがた〈株式市場〉に目を付けたようだ。つまり、やり方は色々あるということだ。」


「、、お前はそれで何を得る。」


鋭い眼光を受けてもバルロの表情は変わらない。


「この信仰の真実を。」


「フン!下らん。真の信仰とは心の内に留めるもので、周りに対して誇示するものではない。信仰は自らを利するものではなく、自らを制するものでなくてはならん。」


「今さらで悪いが建前もこちらにはある。作戦の内容を見たのなら相手の危険性も分かるだろう?」


「危険な連中なのは分かる。只でさえオーバーテクノロジーとなる次元移動装置を持っていて、圧倒的優位な立場だ。自尊心が肥大化した頭の悪い連中なら、遺物を引き渡せと言われて素直に渡すとも思えん。だがもう少しやり方というものがあるだろう。」


バルロとしてはこれが一番スマートなやり方であった。最高司令官は現在、軍事と内政のトップを兼任しているが軍事はともかく内政に関しての発言権はかなり弱い。しかも色々な既得権益が絡み合っていて、それらを気遣いながら〈遺物〉を回収するには資金と身軽さにおいて後れをとり、作戦失敗の可能性すらあったからだ。


「現在彼等は幸運にも沈黙している。自由交易惑星バルカサで何かを購入するために資金繰りを〈賭博場〉で行っているらしい。」


「、、、それはアノ、全てを見通せるという司教の〈神託〉か?」


「いやこれは部下と都市に設置された防犯システムの情報だ。」


「どちらでもいい。相手が暴走しないかぎり派手な行動はするな、特に都市や国を大規模に破壊するような行為はな。その心配はあまりせんが、、」


「当然だ。しかし本当に思い通りに動いてくれる。それとも私こそが彼の掌で踊らされているのかな?彼に初めて会ったときアレの存在は無かった。」


執務室にあるバルロの机の左側にあるのモニターにはアルド達が映っていた。うっぷんをぶちまけて溜飲を下げたコルディアスが、舌ペロペロと出して執務室を去ったのだった。




ガルガンス。


それは漆黒の虎だった。額からは大きな白い角一本が天に向かって生えている巨大な一角獣。鋭利な剣のような牙に強靭な筋肉、爪。そして知性の宿るその目から優秀なハンターであることも感じ取れる。時折見舞う腐食ガスのブレスは強烈な酸であり、生物や金属であっても直撃すれば体を溶かし、それを吸い込んだだけでも死に至る強力な猛毒である。


対するはアースドラゴン。


陸上で到達しうる最大級の身体を持ち、同時に強固な鱗で全身を覆われた重戦車と呼ぶべき生物、その姿はは爬虫類に類似しているが体の構造は別物である。ブレスを吐く種族もいるようだが一般的なドラゴンはブレスを使えず、その圧倒的な体格差と防御力によって相手を圧倒する事が多い。


また太く長い尻尾の一撃は同じ大きさのハンマー以上の威力があり、同種族のドラゴンであったとしても直撃すれば絶命させる程だ。


倍率

ガルガンス:1.33

アースドラゴン :1.41

引き分け〈両者死亡〉:12.5


尚勝利条件は相手の死亡、または戦闘不能。



熱気が立ち込めるすり鉢状のコロシアム観戦場に足を踏み入れるアルド。戦場の舞台となるコロッセオの中央の広さは直径380メートルの円形をしており、客席と中央の間には透過率の高い強硬で特別な分厚い※ガラスで遮られていた。中の戦場となる地形は平野で所々に木が植えられているが、遮蔽物がなく見晴らしが良いと感じた。


※このガラスはミルフィーユ構造をしており、硬度の高い超ダイアモンドと温度変化等に強い素材等を幾層にも重ねてある。ちなみに透過率は99.9%以上。


他にも試合が分かりやすくなるように、超高性能カメラが無数に設置され、死角の無い映像がコロッセオの天井付近に存在する立体映像装置によって映し出される。


観客席への入場は立ち見・自由席が1000SC、指定座席は3000SCからとかなりリーズナブルになっている。アルドは満席に近い自由席の空きスペースを探し、丁度試合開始直前に皮製の座席にようやく座ることが出来た。


アルドの隣には同じ種族の人間の男性〈三十代半〉がひじ掛け〈アームレスト〉から伸びている端末を操作していた。設置されたモニターを眺めて、最後の瞬間まで賭けの対象をどちらにしようかと迷っている金髪の男は、気合いを込めてアースドラゴンのパネルをタッチする。


「へへっ!やっぱりよ、勝負は体格で決まると思わないか?ガルガンスは20メートルの150トン。比べてアースドラゴンは25メートルの240トン。アースドラゴンの尾撃の一発でガルガンスは地面の味を知ることになるって寸法だ、、なぁ闘士さん。」


「、、。」


全く面識のないアルドに同意を求める金髪の男。確かに動物の世界において体重差や体の大きさは勝敗を左右する重要な要素だ。


「何で分かったのか?って顔だが、ブレストアーマーを着た奴なんて。お気に入りの闘士のコスプレか、闘士ぐらいしかいないからな。」


当たらずしも遠からずだが、アルドは苦笑して同意した。


「アースドラゴンに入れ込んでいる様だが、ガルガンスも強いと聞いた。大丈夫なのか?」


「倍率なんて当てにならないさ。何より二体ともこれだけ巨体となると、一撃で勝負が決まってしまうことも珍しくない、要は運だ。んで俺は倍率が高く、よりクリティカルをたたき出すアースドラゴンにした訳だ。」


ファーン。ファーン。ファーン。


試合開始前の開幕音が鳴り響く。


二人の意識は当然そちらに向かい、続くかと思われた彼の話はそれで終わった。


巨大モニターにカウントが表示される。


ガコン、ガコン。


コロッセオの端、東側と西側の地下から2台の巨大エレベーターが闘技場に到着し、円形のエレベーターの檻から虎とドラゴンがほぼ同時に解き放たれた。


「ガルルゥ。」


「ブモーブモ!」


互いに対戦相手を確認して、強敵だと悟ったのか全く微動だにしない二者。


動物にも知恵がある。格下の動物ならともかく、得たいの知れない相手や巨大な獣の様な場合は反撃での怪我を避ける為に相手を観察する。しかしここはコロッセオだ、攻撃性を高めるために薬物や相手を倒す様に調教されているだろう。


「遠距離ならアースドラゴンが有利だ。」


拳を固めて男が興奮する。


「ガルガンスにはブレスがあるんだろ。」


「ブレスっていっても身体で生成した化学物質みたいなもの連射出来る訳じゃない。1日一回多くても二回位だし効果範囲も息を吐き出しているだけだから遅い、至近距離じゃないと拡散してダメージは少くなるからな。」


「ブオッフ!」


アースドラゴンはガンガンスが自分よりも小さく体格の面で劣ると結論付けたのか、大胆に近付いていく。


ブオンブオン。尻尾を大きく左右に振ったと思った瞬間、体を横に回転、同時に勢いに乗った横凪ぎの尾撃を放つ。


ブン。


それをガルガンスは体ごと後方に低くジャンプしてかわす。そして同時に反撃に移った。身体を1回転させる前の無防備になったアースドラゴンの体目掛けて跳躍、鋭い爪を比較的柔らかそうな首筋部分へと撃ち込もうとした瞬間。死角となっているはずのアースドラゴンの体が横にズレる。


ガス!


地面を削る爪。


瞬間、アースドラゴンが体を引き戻し、体重を乗せたタックルを仕掛ける。


スズン。


ズスササ~。


攻撃を受けてガルガンスが転がる。クリティカルヒットではないがかなりの衝撃だったのか若干フラついていた。


「おっ!あのドラゴン、攻撃を誘ったのか?」


「多分な、どちらも知能は高いハズだから、あれぐらいのフェイントはするだろう。」


「ムオオゥ!」


ガンガンガン。


興奮しているのか尾ブンブンと振り回し興奮するアースドラゴン。ガルガンスを追い込むチャンスだと思ったのか、突進して距離を詰める。


ザッザッザッ。


「むっ。」


「急ぎすぎだ。」


怪我を装って獲物を誘き寄せたり、油断させたりする動物がいるが観戦していた二人も同じ様な印象をガルガンスに感じた。


ガルガンスがアースドラゴンの体当たりを最小限の動作で回避すると、目標を見失ったアースドラゴンは突進を中断、敵を探そうと一瞬だけ動きが止まる。


その一瞬を見逃さずガルガンスはアースドラゴンの背中に飛び掛かり、首の後ろ側に噛みついた。


「ブオオォォ!!」


アースドラゴンは身体をふさぶり、ガンガンスを振り落とそうとする。流石に掴まってられなかったガルガンスはアースドラゴンの背から飛び降りる。


がー。


バコン!


偶然アースドラゴンのハンマーの様な尻尾が脇腹に命中。ガルガンスは吹き飛ばされて、地面に倒れ込んだ。


「グルゥゥゥ!!」


「、、、。」


倒れたままのガルガンスと怒り狂ったアースドラゴン。


そしてアースドラゴンにお金を賭けた客の歓声。


勝負が決まったと思われた瞬間。アースドラゴンは沫を吐きながらゆっくりと地面に倒れる。何が起こったのかと観客も混乱していた。


「、、さっきアースドラゴンの首筋に噛み付いたと同時に腐食ブレスを吐き出したんだ。牙によって出来た深い傷口、頚椎に近い部分だ戦闘不能になってもおかしくはない。」


「なるほど、しかし大丈夫なのか、アースドラゴンに大金を賭けたんだろう?」


「あっ!しまったぁ!!今月の生活費がぁ。」


頭を抱える男性。


「ライバックさん!」


「うぇ、キッド!」


レフト・ライトは近付いてくる少年のような人物を止めようとするが、ライバックと呼ばれた男性の知り合いのようなのでアルドは制止した。


「探しましたよ!!さぁ、事務所から持ち出した運営資金と家賃を今すぐに転送してください。これを滞納したら惑星バルガサに強制送還らしいですからね。」


「イヤだぁ~、あんな畑と無骨なロボットとオッサンしかいない惑星なんかで労働なんてごめんだぁ!!」


正面にまでやって来た少年の体をユサユサ揺らすライバック、少年はされるがままだったがガチャリと何かが少年から落ちる。


「、、腕?」


「ああ、すいません。」


少年は当然のように自分の取れた腕を拾うと、もとにあった位置に腕をつけ直す。


「最近はメンテナンス代すらありませんからね。エライ人物に購入されたものですよ僕は。」


「兄ちゃん、オートマータは初めてか?コイツは俺の助手のキッドといって俺の〈何でも屋〉を手伝ってもらっている。あっそうだ、名刺を渡しておこう、現在名刺を〈御持ちのお客様30%割引キャンペーン中〉だからな。」


何でも屋ライバック。


クチャクチャの名刺にはそう書かれてあった。


彼との出会いは幸運からかそれともー。


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