異次元収集家アルド 五章1話 コロッセオ編
ルル・ルリを救出したアルド達。それによって必要なものが判明し、ルル・ルリの提案によって、惑星バルガサに向かうことになったのだが。
始まりと結末は考えてあるのに、話の持っていきかたに悩む今日この頃。燃えろ俺の創作魂!
誤字・脱字気が付いたら修正します。
2019/07/10 局→結局・証明→照明を修正
2021/08/16脱字を修正 奪えものではない→奪えるものではない
超越者※
次元を統べるシステム神。
それが産み出した存在【超越者】
惑星など彼等にしてみれば吹けば飛ぶ塵に過ぎない。
全てを産まれながらに持った彼等は、同時に何も持っていない存在である。
*
次元の破壊?次元の再生?次元の再構築?児戯には飽きた。
魔王復活?勇者召喚?最終戦争?そんな事は低次元の連中にやらせろ。多次元空間に住まう我等に〈細菌以下の戦いに介入する〉そんな趣味はない。
人がいつでも手に入れる事が出来る、その辺の地面に転がる〈小石〉をわざわざ家に飾るか?その人物にとって価値がある、得難いからこそ〈価値〉があるのだ。そして〈価値〉があるからこそ、自分に所有権があると主張する。
だからこそ超越者は人類というものには興味がない。
故に超越者にとって〈彼等〉は価値のある存在だった。
「いよいよ来るか、、彼等の為に祭典を用意しないとな。」
会うのが待ち遠しい。違う次元の話を聞けたらさぞ楽しいだろう。高次元の波に漂いながら観測を続ける。
彼は思考の渦に身を委ねた。
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宇宙船内
「無理~無理だよぉ~。うぇ~ん。」
ルル・ルリは真っ暗な部屋のなか半泣きになりながらもファクトリーキューブを操作する。
ルル・ルリが頭を悩まされているのは理由があった。勿論それは〈ミューズ〉復活の事である。アンドロイドには直せる限界が存在する。〈瀕死〉状態だったルル・ルリがギリギリで復活する、あれほどまで潰れ〈死亡〉したミューズは流石にメディカルマシーン程度で直すことは出来ない。
更にいえば脳にあたる記憶回路が破壊された場合、体を直せてもバックアップがなければ初期化されてしまう。ルル・ルリは何があっても良いように記憶や人格のデータを船にバックアップとして残してあったがミューズの場合にはそれがない。そもそもバックアップの人格は本人ではない、出来上がるのはコピーでありクローンだ。
「問題は記憶部分だけを正確に移植できるか、、」
アンドロイドはロボット違い修理ではなく修復、どちらかと言えばこれは人間の手術に近いのだ。ルル・ルリのやろうとしていることは脳移植に近かった。
頭から脊椎までの主要部分のコピーを作り、保存されているデータを正常な主要部分に移せれば完全復活の可能性がある。しかし現時点で行うのは危険だった。壊れたまま起動して記憶装置に負荷を掛ければ記憶が飛ぶ可能性もある。
チャンスは一度、そして成功確率は恐ろしく低い。
先ず着手したのはミューズの体の解析である。
「後必要なのは、、完璧な複製機、、ソフトウェア、、アンドロイド製造装置?、、材料も、、。それとも、、それ以外、、。」
魔法とアンドロイドの相性は悪い、科学的な存在のアンドロイドが魔術・魔法の力を阻害してしまい正常に作用しなくなってしまうからだ。
となると残されるのは科学的分野のアプローチか、特殊能力でのアプローチかになる。結局のところ、道は二つだった。
*
「どちらが時間が掛からないか、それに尽きる。」
「だとしたら科学的なアプローチになるかなぁ。ミューズの体を作ってそこに古い記憶装置を移植する。でも実は問題があるの。」
宇宙船のブリッジ。説明を受けるのはゆったりとした服を身に付けた、現在宇宙船の船長のアルド・ガーデンブルグ。人としては完成された戦闘技術を持ち、最近では歩兵戦車など近代兵器の扱いにも馴れてきた戦士。
説明をするのは後方支援型アンドロイドであるルル・ルリ。背丈は150センチ程細身であるが痩せすぎではない細い肢体、スリットが大きく入った白基調のボディスーツを着ていて、頭の両サイドには青色の髪が団子の様に結われていた。
「それは?」
「MUZ-2500のソフトウェアと生体部品が足りない。ソフトウェアは私でもプログラム出来るけど、時間が掛かりすぎるしミューズに使われているものと全く別物になるから。これには多分私達のいた次元でそういった部品を購入、、違う、、入手する必要がある。でも私達の次元は科学水準が高くて、しかも人間と敵対関係にある。同時に私達を提供してくれたマザーに会うためには結局のところ、一人に対してアンドロイド一体という原則に外れるの。」
「、、つまりどうゆう事だ?」
「2つを入手する為に行って欲しい次元があるの。」
「分かった。」
目指すは自由交易惑星バルカサ。
アルド達の目的地はこうして決まったのだった。
*
恒例となった次元移動を行う。
歪む空間をモニターで眺めるアルド。ルル・ルリはブリッジの全システム操縦席に座り不足の事態に備える。
次元と次元の間を移動する宇宙船。
繋がれている先は宇宙空間らしく、アルド達を闇が待ち構えていた。
「こ、、これは?」
直感というものだろうか、後方に控えていたラウラは悪寒に身を震わせた。ラウラの美しい顔もこの時ばかりはこわばり。その戦闘用ボディスーツに納められた肉体も咄嗟に動くことが出来なかった。
ルル・ルリが叫びと共に警告する。
「多数の宇宙船に包囲されてる!アーちゃん、後方の次元の穴に逃げる?!それとも戦う?
っあー!!後方の次元の穴が急速に縮小中!!!」
モニターに表示された船の周りには艦影らしきものは見当たらず。ソナーには出鱈目だがアルドの船を取り囲む敵の赤い点がまるで星のように多数表示された。
次元移動した直後にこうもアッサリと囲まれ襲われる事を考えていなかったアルドは混乱する。
「なっ、なんなんだ!」
ビー、ビー、ビー。
ロックオン時の警告音が鳴り響く。さながらそれは死のカウントダウンだった、考える時間は少なく同時に下手を打てば致命的な失敗となる。
その中の喧騒で一番早く状況を整理したラウラはアルドに言い放った。
「アルド様!動かないで下さい!!敵対行動はしては行けません。待ち伏せ、半包囲、ロックされていて、次元穴を縮小させる装置。まだ攻撃されていないということは、相手には対話する意志があるということです!!」
「次元の穴、完全消失まで後二秒!決めてアーちゃん!」
一度次元の穴が閉じれば再度抉じ開けるには、数分の時間が必要であろう。多数の宇宙船、それも半包囲されロックされている状態から、その時間耐えることは不可能に近い。
「━━!!」
ビビビッ。
アルドの命令より先にモニターが乱れる。
「アーちゃん!艦に向けて無線が入っているよ、多分相手からの通信。ウィルス等トラップはないから安心して。」
「分かった。回線を開いてくれ。ラウラの言う通りなら、いきなり殺される事は無いだろう。」
重圧で崩れ落ちそうになるのを耐える為に片腕で机に寄りかかり、こめかみを押さえるアルド。大量ににじみ出た脂汗を拭きくことも忘れて、行く通りの見えない結末において全員が助かる方法を考える。
ヴィン。
モニターに若い男が表示される。見馴れない民族衣装に身を包んだ有翼人だった。ガルンセルには似たようなヒューマノイドタイプはいないが全身に黒い刺青が施されていて、目の瞳が赤く輝いていた
「私はバルロ・クリューニ。この次元で【我が神】にこの銀河星系を任されている者だ。一応言っておくが無駄な抵抗はしない方が懸命だ。君達の船は高性能だろう、しかしここに配置してある艦の一部だけでも瞬時に決着がつく。艦隊多く配置した理由としては危機感、いやこちらが本気だという事を知ってもらいたかった。」
同時通訳され彼の言葉が船内に流れる。
「本気とは?」
「君達が保有している遺物が問題なのだ。それは1つでこの次元のバランスを大きく偏らせることが出来る。それを許可なくこの次元に持ち込むことを黙認するわけにはいかない。考えてみたまえ旅行者が兵器を非武装の地域で乗り回し、民間人に銃口を向ける様を、君達が管理者だとしたら見過ごせるか?」
アルドは腰や胸、腕につけられた遺物に目を移す。腰の〈次元砲〉というものは当たれば超越者を倒せる遺物らしい、胸に仕舞われた〈片道切符〉は未来を体験でき、知りたいことを何でも知ることが出来る。最後の〈ワン・オブ・ザ・ワールド〉は魔法を吸収することで効果が増し、またエネルギーに転換することが出来た。
「私が感知して危険だと思われる遺物は三つ。それらをこの次元にいる間、私に預からせてもらう事がこの次元にいるための条件とさせてもらう。拒否するならこの次元より即刻移動してもらい、今後次元に移動してきた場合、敵対行動と見なし予告なしで攻撃する。以上だ。」
アルドは沈黙し、ラウラとルル・ルリに視線を移す。
「今戦うのは愚策ですね、、。彼方にこちらの位置が事前に知られていることを考えるに奇襲も難しいと思われます。戦うのであれば、探知能力を無効化することが前提かと。」
「アーちゃん、この次元以外で生体部品とかを入手するが一番の近道だと思うけど。私はアーちゃんに従うよ。」
「決まったかな?」
淡々とした声が響く。
アルドは条件を受諾した。
*
「4つの生命体反応がこっちに向かってくる。船は小型のクルーズ船、多分さっきの人とそのお供だと思う。乗り込みやすい正面格納庫に繋がる扉を開いても良い?」
「ああ、こっちは降伏した身だ、任せる。序でに応接室に誘導してくれ。」
「りょーかい。」
アルドが気になったのは次元移動直後に奇襲されたという事だ。ということは〈アルド達〉がこの次元に来ることを事前に知っていた可能性が高い。だが別次元の情報を知る、そんな事は〈片道切符〉を使ったとしても分からない。
「次元同士が繋がっている場所は多い、特定しなければ待ち伏せは不可能じゃないのか。別次元を観測できる?まさかな。予知の類いかもしれない。」
「アー、アルドどうしたのさっきの警報!ビックリして飛び起きちゃった。なに宇宙海賊の襲撃にでもあったの?」
頭がボサボサで寝間着姿のアリサ・スターライトがブリッジ付近の廊下を歩いて来る。なんというかかなり場違いでアクビを噛み殺しながら、ヨタヨタ歩く姿はまるでゾンビの様だった。
アリサは魔術関係のスッペシャリストとしてアルド達の手助けをしてもらっている食客だ。現在まだ不安定な召喚魔術の研究に没頭しているらしくルル・ルリと共に召喚魔術用の道具を制作中だと簡単に聞かされていた。
「さっき負けた所だよ。これから相手の条件を飲まなきゃならない。先方はこちらにもうすぐ来る予定だ。」
「こっちにやっくる?来た交渉役を捕まえて人質にすれば?」
「下策だな。何らかの対策をしているだろ、しかも相手を怒らせる禁じ手みたいなものだ。それに言い忘れたが海賊の類いじゃない、この地域の監督者らしい、、貴族や王族、政府組織みたいなものだ。」
「何か違いがあるの?」
「少しだけだがな。」
海賊も政府組織も本質は変わらない。一般人から金品を搾取し、組織に歯向かう者を弾圧する。だが一応政府組織は公正公平を掲げ名目上外敵から一般人の身を守ってくれる、勿論政府組織が守りたいものは一般人ではなく国や自分達そして自分達の権利だ。
「船内で戦いになる可能性も無くはない、警戒はしてくれ。」
「んっ。」
気の無い返事をしながら流すように片手を上げられる、廊下の壁にもたれ掛かり始めたので、多分此処で寝るつもりなのだろう。アルドは何処かズレた思考を引き締める。
「警戒か、、。」
結局後々考えてみれば、〈片道切符〉を次元移動直後に使用しなかった自分の警戒心の低さも問題だと気付いた。装備や出来ることが多くなったところで所詮は人間が弱点をさらけ出しながら行動しているのだ。警戒して警戒しすぎるということはない。
アルドは〈片道切符〉を起動するとレフト・ライトに会うために食堂へ向かった。
*
ラウラに連れられた司令官の有翼人とそのお供と思われる2人の護衛を迎え入れる。護衛は武器などを携帯してはいなかったが物腰から隙がなく、かなりの手練れの印象を受けた。
バルロ・クリューニを応接室に案内したラウラはアルドの後方に立ち相手の出方を伺いながら、辺りを警戒する。この場にいるのはアルド、ラウラ、コウモリ。相手は有翼人のバルロ、体格が大きい短髪の浅黒い肌をした、ゴーレムの様な人間二人だった。
ゴーレムの様な人間は目の白色と黒色が逆転したような配色をしていて、それ自体に特殊な力は無さそうではあったが両腕に付けられた大きな枷の様な腕輪に特殊なの力があると思われる。
「狭いところですまない。遺物の回収に来たということで良いんだよな。」
「その通りだ。次元内の安定のため必要であることを分かってもらいたい。勿論、無理矢理奪うことも出来るが、蛮族の様なやり方は我々としては行いたくないのでな。」
「どちらの選択肢も不利益になる、ダブルバインドなら初めから俺達に選ばせる意味などない、だろ。」
「、、若いな。もう少し感情を殺し強かさを身に付けるべきだ。特に自分より手練れだと考える相手にはな。」
アルドは無言のまま、アルドとバルロの間にあるテーブルに遺物を置いていく。〈次元砲〉〈ワン・オブ・ザ・ワールド〉〈片道切符〉、バルロはそれぞれを眺めると手に取る。
バルロの腕の入れ墨が脈打ち、赤い目が細められる。
「、、、フム、、。」
本物だと〈理解〉したのかバルロはそれをゴーレムに渡し、懐から金のカードを取り出した。
「一応、これを渡しておこう。この正系ではこれが現金の変わりとなる。コンピューター管理されたSC〈スペース・クレジット〉がカードに納められていてゴールドSCは上限無制限の無利息で商品を購入できる。勿論使った金額は後で〈返済〉してもらうがね。」
「、、成る程、遺物を担保に金を貸してくれるわけか。返済できなかったら〈遺物〉は返さないと、、。」
「〈遺物〉は1つでも国宝の価値があると私個人は考える、ひとつ売れば個人的な借金程度なら返済できるだろう。それに嫌ならば使わなければ良い。渡したのは惑星への船の入港にも金が必要だという、こちらからの配慮でもあるのだがな。」
ルル・ルリの話では以前母親とこの次元に来た時のお金がブロンズカードに多少残されているらしいが、船の港湾料金で無くなってしまうと話していた。確かにアルド達にお金を使わせて返済不能・回収する考えも少なからずあるだろうが、こちらが警戒しているので成功率は相手側も低いと考えるはずだった。
「このカードを不正使用することは可能か?例えば〈奪われて〉他人にカードを使われた場合、その費用は誰の負担なんだ?」
「生体認証と暗証番号で使えるようになっている。暗証番号は最大20桁18文字ありパターンは天文学的数字となる、二度入力を失敗すると口座が凍結される仕組みなので比較的安全だといえるだろう。偽造やカード情報の抜き取りは中に埋め込まれた特別な認識マイクロチップで事実上不可能だし、紛失場合も機関に連絡すれば数秒ほどで口座を凍結できる。それに万が一不正利用されたとしても、中央銀行が損失の補填をする事になるので安心して欲しい。だがこちらも費用が掛かるのでゴールドの再発行はしない、無くした場合は町の機関に頼んで通常のブロンズのカードを再発行してもらってくれ。」
「、、。」
アルドは金のカードを手にとって少し弄る。
そして誘惑を打ち払ってバルロに返した。
「借は作りたくない性分でな。確かに急ぎの用事だが、お金を工面しなければならないのはゴールドだろうとブロンズだろうと変わらないからな。」
バルロはアルドの返答に驚くことなく、無表情で金のカードを懐に戻した。そこに落胆等はなく、もしかしたら本当にアルド達を思ってカードを用意したのかもしれない。
「この次元を離れるときにvuc8473の回線に連絡をしてくれ、遺物はその時に返却しよう。何か質問は?」
「どうやってここに俺達が来ることを知った?別の次元から来たとしても予知なら分かるのか?」
「、、中身を見なくても中身を知る方法はある。次元は大きな隔離された卵のような存在だ、だが内部に存在するエネルギー総量や存在し得る現象を外側からある程度予測する事は不可能ではない。孵化の時を知る者は神だけではなく、熟知した〈人〉であっても出来るという事だ。」
隠し通すと考えていたがバルロの言葉に偽りがないと感じたアルド。出会いは最悪であったが意外とマトモな人物であると再評価する。結局立場が人と人を衝突させることはよくある。それに今回本当の敵と呼べるものは〈バルロ・クリューニ〉ではない事をアルドは知っていた。
「では失礼する。」
バルロと護衛は立ち上がり部屋を退出する、ラウラも監視のために彼等の見送りに行った。残されたのはアルドとコウモリ。アルドは言葉を発せず、直立不動だったコウモリに言葉を掛けた。
「意外と冷静だな。暴れると思っていた。」
「私も猪という訳ではない。戦わないと決めている二者を無視して戦う愚行は犯さない。だが戦う相手としては非常に魅力がある相手であるのは確かだ。」
「勝てそうか?」
「フム、、私は常に相手に〈勝ちたい〉と思っている、それが存在理由だからだ。だがお前が言った言葉の本質は違うだろう、〈勝てそう〉と質問して私自身に運命を委ねさせるよりも、命を掛けて戦ってくれといえば良い。私に下らない優しさは不要だ、私もお前を利用しているのだからな。」
アルドは肩をすくめ、相手〈バルロ〉の行為を邪険にした事を少し後悔していた。バルロとの友好路線の道が先程の件で更に細くなってしまった事、そして自ら選択肢を少し狭めてしまった事が原因だった。
「、、だが。バルロから与えられたものを使えば、返却拒否の理由付けにもなりそうだ。少なくとも、スマートにやった方が近道という場合があるはず。」
アルドは自分にそう言い聞かせた。
*
「遺物にロックが掛かっている為に使用できませんがよろしいので?」
カルバンとディーガはクルーズ船に乗り込むとクルーズ船を操縦しながら同時に口を開いた。
「問題はない。たしかに彼のハンドリンクがなければこれ等は使えないが、本来の目的は別だ。」
能面の様な顔、バルロの感情は常に平坦だった。ただ唯一〈主〉に会うときにだけ感情が〈喜〉に変わるだけだ。
「あの船ごと、撃沈させた方が後腐れが無かったのでは?すぐに返品を求められ他の次元に逃げられたらどうするので?」
「彼等にその選択肢はない。この次元には目的があってやって来ているのだ。彼等の目的が彼等を縛る、〈自由な選択〉〈無意識の選択〉などは所詮は幻想に過ぎない。人は自分にとって最良だと思う行為を行う、故にその進む道筋も自ずと見えるものだ。」
確かに彼の言うとおり、アルドを殺しても良かったがそれでは遺物を持っているだけに過ぎず、完全掌握したことにはならない。遺物は継承されるもので奪えるものではないのだ。
「面倒なものだ、、。」
バルロは日課となっている日記を付けるために手帳を取り出す。そして何かに気が付いて周りを見渡し納得する。
「、、、そうだったな。」
「??どうしたので?」
「いや、、改めて【凄い能力】だと思っただけだ。」
ディーガは眉を上げ、その意味を考えた。
「、、ああ?!そういえば。しかし大丈夫ですかね。あの能力も完璧じゃない、戦闘能力もどちらかと言えば低いですし。」
「戦うことが今回の目的ではない。彼等を生きたまま破滅させるのが我々の目的である事を忘れるな。それにより我々はこの全ての遺物を手に入れられるのだ。そしてこれは〈神託〉である。」
バルロは〈次元砲〉に目を落とす。得たいの知れない圧力を感じ、説明するかのように呟く。
「手放したのは彼等の意思であり、流れ。〈不干渉〉が鉄則ならばそれを受け入れて頂きたいものだ。それとも〈彼〉に呼ばれましたか?」
〈次元砲〉は最上位ともいえる遺物である。ハッキリといえばアルドが心の底から求めれば〈次元砲〉はアルドの手元に瞬時に戻る。今回面倒な手順を踏んだのは、アルドに〈返却〉しなければ遺物は戻らないと錯覚させることにあった。
〈次元砲〉に変化はない。それで良いと、バルロは目線を船を操縦する二人の護衛に戻す。
「本部に戻ったらただちに作戦を開始しろ。」
「「はっ。」」
*
自由交易惑星バルカサは一見、自転車の車輪の様な外見をしている惑星だ。惑星を取り囲む様に二重の輪が存在し、そこから伸びた柱が地上へと伸びている。
二重の輪の正体は宇宙ステーションである。その内部は宇宙港と居住区画と別れていて、バルカサの首都は惑星そのものではなく宇宙ステーションの一区画となっている。食料は基本的に惑星バルカサの作物や家畜を搬送用巨大エレベーターで輸送したものと、他の惑星から輸入された食料があるため、食料が足りなくなるということはない。
今回バルカサに向かうメンバーはアルド、ルル・ルリ、コウモリ、レフト・ライト、そしてドールNo.2の6人?である。ラウラは宇宙船など不足の事態に対応するために居残りであるが、他にも惑星に降りるためのパスポート等やステーション使用料〈※生命管理システム使用料〉料金が高いのが原因で、とても全員が滞在できる金額を捻出出来なかったことが大きい。
※重力・コンピュータ端末・空調〈呼吸に必要な空気や温度〉・ 照明など。
約10時間検疫検査・予防注射、酸素供給ナノマシンの吸入を終えたアルドは他のメンバーが待つ宇宙港巨体ロビーへと足を踏み入れる。
アルドとしては宇宙船以外で初めて科学を経験できる次元であり、珍しい物ばかりで目を奪われた。そして多種多様な知的生命体〈イトアシ・ストーン人・デビール・ゲジゲジ・ウェット等〉を眺めながらアルドは手をブンブンと振っているルル・ルリの元へと歩く。
「結構時間が掛かった、すまない。」
「ヒューマンはこの位時間が掛かるよ、呼吸器系統が弱いし病原菌を持ち込みやすいから。アンドロイドは大体一時間で終わっちゃうから暇だったよ。」
「ドウヨウデス。」
レフト・ライト・No.2もルル・ルリと同じであるが更に早く20分ほどだ。これは生命体として扱われるアンドロイドに対して、部品や機械類など生命体の道具・荷物として扱われるためである。コウモリも先程入国が完了したらしく、男でも頬を赤くしてしまう顔は少しゲッソリとしていた。
「フム、では〈アンドロイドの生体部品とプログラムデータ〉を探しに向かおう。」
「ルル・ルリ。場所は何処なんだ?」
「場所?うーんと、、無料端末から調べた方が良いかな。」
宇宙ステーションに備え付けられたモニターの高さを自分に合わせて調節しつつルル・ルリは素早く文字を入力する。観光用のこの端末は宇宙ステーションに存在する施設を網羅しており、そこから施設や商品の情報を調べたり、予約・購入する事が可能だった。
トトト。トロット。
心地よくモニターを叩くと、目当ての情報が表示される。
「一件あった。中古のショップにMUZ-2500のソフトウェア。生体部品は流石にないかぁ。よくあっちの次元からソフトウェアを持ってこれたなぁ。価格は725万SC、格安だよ。」
「格安??725万?今の手持ちは?」
「タダイマ、ミナトノシヨウリョウヲジョガイシテ。ノコリノオカネハ、71マントンデ19SCニナリマス。」
大体10倍の価格だ。何処が格安なのかアルドには分からなかった。
「こちらのSCと交換出来そうな物は?」
「魔石は港の使用料と換金でほとんど無くなっちゃったし、鉄は二束三文。希少金属も量が足りないから、、。」
そして科学が進むと貴金属の値打ちが下がる。これは人工的に作り出せてしまうからだ。ダイヤはいうに及ばず金塊であっても鉄に毛が生えた価格、魔石の方がまだ高く売れた。
「俺達の手持ちの手札は、遺物とSCか。」
「フム、、あと我々自身だな。」
「??」
コウモリの視線の先には観光用の施設が建ち並んでいた。
結局人は科学が進んでも社会構造は大して変わらない。人の欲望はつまるところ〈楽をして生きる〉に行き当たる。ストレスを吐き出し、興奮を与えてくれる存在を生きていく上で、手放すことは出来ないのだ。
自由交易惑星バルカサの観光の目玉その一つ。巨大な〈賭博場〉アルドは成る程と納得し、首をほぐし腕を回す。レフト・ライトはアルドに付き従うことを決めたようだ。
「ちょっアーちゃん!」
「キケン!キケン!」
「アーちゃん!こういうギャンブルはね、勝てないようになってるのぉ。駄目駄目、市場調査をしてファクトリーキューブで此処で売れる機械類を製造して販売した方が絶対確実!!」
だがそれも欠点がある。地道にやるにしても時間が掛かる、滞在費も馬鹿にならない。それに大規模な無許可販売をすれば後ろに手が回る可能性もあった。
両手を広げアルドの行き先を遮るルル・ルリ。その目には行かせまいとする強い意志が感じられた。だがアルドとしても賭博場に光明を見出だしたのだ、これはルル・ルリにも譲れなかった。
だがルル・ルリの手伝いは絶対に必要である。ならばー
「、、信用無いんだな、、俺、、。」
「えっ?!」
「俺はルル・ルリを信頼している、だけどルル・ルリは俺を信頼してくれないのか、、。」
「えぇっ!!アーちゃんが私を信頼!!!」
動揺するルル・ルリ。アルドにとって軽いジャブのつもりであったが、ルル・ルリはもしかしたらこの手の泣き落としに弱いかも知れない。
「でも、、ね。あの、、ね。やっぱり、、ね。」
「ルル・ルリ!!」
ガシ。
ルル・ルリの肩を掴む。
「ひゃい!」
ルル・ルリの顔が真っ赤になり、目が潤む。
「俺を信頼してくれないか!だって俺達は今回【パートナー】だろ。」
「パ!パパ、、パートナーァ!!」
ゴーン、ガラン、ゴーン。
何処からか鐘の音が聞こえた。
「パートナー。私とアーちゃんがぁ、、ぁぅぅんっ。あわわっ。」
目が完全に明後日の方向を見つめ、涎を少し垂らしつつ妄想の世界に入ったルル・ルリ。それを小脇に抱えるとアルド達はせっせっと賭博場へと向かうのだった。
次はいつだろう、、せめて休みがあればなぁ。




