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異次元収集家アルド 四章13話 鉄血常例 前編

この章も終わりに近付いてるな、、。次の章もショート多いけど、6章の事もあるから書きづらいし面倒臭そうだ。


次回は来月か、飽きなければ。


誤字脱字は気付いたら訂正します。

〈ルル・ルリの記憶〉


彼女に赤ちゃんが生まれた、名前は〈アルド〉。


ここは私の超絶な閃きであだ名を付けてあげようと思う。


〈アーちゃん〉だ。赤ちゃんとアルドの頭文字を取って付けた。彼女は良いあだ名だといってくれたが、あの男は『子供を子供扱いするのは良くない』とこのあだ名を却下した。


ぐぬぬぬっ。


あの男に如何に不利益を生じさせず、精神的苦痛を与えようかと考えながら私は移住先の惑星へと調査に向かった。




ガーデンブルグ村。


アルド・ガーデンブルグは雑草が生い茂り大きな岩があるだけの簡素な両親の墓に祈りを捧げる。


緩やかな風がなびく、穏やかな時間。


記憶は殆んどない、そして思い出せるのも殺される両親の記憶と自分の大切なものを奪った憎い男の記憶だけだった。


「もしかしたらもうこの次元に戻る事は無いかもしれない。道半ばで俺が倒れるかもしれない。だが決めたことなんだ、もし次にここに来るときは4人で。」


「アルド様。」


ラウラが背後から現れる、手には備え用の花が抱えられていた。ラウラがどうしてもといって小さな雑貨屋で買った花だった。ラウラがアルドに戦闘準備以外で何かを願い出るのは珍しく、それだけラウラがこの場所に来たかったのかを如実に表していたともいえた。


「、、ラウラ。俺は先に戻る。ラウラが気の済むまでここに居てくれ。長い道のりだ、多少の休息は必要だからな。」


トラクタービームで宇宙船に帰るアルドを見送るとラウラは夫婦の男性の墓の前に立つ。まるで今までの事を報告するかのように無言のまま墓を見つめ、突然堰を切ったようにラウラの目から大粒の涙がポロポロと落ちる。


「、、ううっ。、、、、すいません、、ご主人、、。このラウラ一生の不覚。あの時もう少しあのガバレボへの対応を、、私が、、私の所為でーうっ、、うぇ、、ーーん。ーーーくぅ。!今一度、会えないのでしょうか、、うううっあああっー。」


墓石にもたれ掛かるように少女の様に泣き叫ぶ、普段の毅然とした姿からは想像できない、子供のような姿だった。彼女にしてみれば幼少期から共に過ごした存在、アルドと一緒にいる時間よりも更に長い時間過ごした夫婦とは違うパートナー。


今まで必死に押さえ付けていたものが壊れラウラは日が暮れ、夜が明けるまでその場を動かなかった。





【メインブリッジ】


作戦会議を行うために集められたのは四人と護衛ドールの二体。アルド、ラウラ、アリサ、コウモリ、レフト・ライト。四人は長方形の大きい机、それぞれが四方辺に互いに向かい合うように座った。口を始めに開いたのはラウラだった。


「今回、〈ルル・ルリ〉救出においての概要をお話ししましょう。アルド様が幼児期移住する惑星調査時に、次元の穴に消えたルル・ルリを救出するのが今回の作戦の目的です。次元の穴の解析は今から20年前には終わっていて、再び次元の穴を発生させる出力は魔石や宇宙船の貯蔵エネルギーで十分でしょう。」


「今までルル・ルリを助けなかった理由は?責めているのではないんだが、一応な。」


「生存確率の結果、ご両親が判断されました。自然発生した次元の穴を通過した場合、ほとんどの場合次元同士の繋がりが不安定の為に死亡・機能停止又は修復不可能な程に分解・再合成されます。また、次元の穴の解析が直ぐには終わらず、惑星ガルンゼルへ移住しアルド様の成長を待ったあとに再度探索する予定でありましたが、、」


「成る程。生きている可能性は、、低いのか?」


アルドの質問に言葉を濁す。


「可能性は低いです。しかし、データ自体が無事なら或いは。破壊された状態であっても、船にあるメディカルマシーンを使用すれば瀕死状態であれば回復も可能です。それにルル・ルリの場合は宇宙船内に自我のバックアップも有るため、機能停止しても新しいルル・ルリとして復活する事も可能でしょう。」


「それはルル・ルリなのか?」


「科学的には同質であり。哲学的には類似性があり。魂という点で考えるのならば別物という事になるでしょうか。」


「魂、、か?」


コウモリは頷く。魂の存在といえばコウモリとほぼ合致する、多少変質しているが不変の魂のような性質のものが鎧に宿った存在がコウモリなのだから。


「よく分からないな。その辺の哲学的な話は義父オヤジからクドクド話されていたが、槍術の訓練に夢中だったのと〈哲学は言葉遊びだと〉右から左だったし。」


アルドの疑問にアリサ・スターライトは気だるそうに紅茶をカップに注ぎながら答える。


「ふぁ~。ポットからこのカップに注がれた紅茶が魂だとするでしょ、私がこの紅茶を飲む。ふぅ、んでまた注ぐ、再度カップに注がれた紅茶は、先程の紅茶と同じ様な成分が含まれる、でも温度や注ぐタイミング砂糖の量が多少違う、そして〈先程のそのもの紅茶〉ではない、、と。さっきの紅茶は私のお腹の中だものね。もし魂となるものを取り出したいのなら私の胃袋から取り出すしかないわね。コレが魂でしょう?」


腕を組むコウモリは鷹揚に頷きながら、呟く。


「唯一無二。思いや感情の塊、意思。それが形を成したものが魂だ。」


アルドは最後にラウラを見ると少し慌ててラウラも答える。


「私が考えるにバグではありませんが、特定の揺らぎを含んだ情報でしょうか。あるの状況下に置いて、同じ性質の人間であっても選択を左右する天秤を別々に傾かせる一枚のコインのような、、。」


「、、何となく分かった。」





「話を戻しましょう。これよりルル・ルリの消失した次元NPK771に移動、惑星モルマックの次元の穴を再度出現させ空間の固定を行います。ドールを穴に侵入させ、偵察・調査を行い簡易調査。この時点で発見できれば大成功ですが上手くはいかないかもしれません。その場合第2フェーズに移行、安全が確認出来次第ハンドリンクにてルル・ルリの位置を特定・救出する事になります。尚それでも見付からない場合は、先日手に入れた〈片道切符〉を使用して位置の特定を図ります。」


「片道切符なら見付かるのか?次元内のあらゆる情報を観測可能ということは分かっているが、、使いこなせないみたいだし。」


「〈片道切符〉は同次元内の〈全能であり無意識たる神〉とのアクセスを行い情報を得て演算を行う装置です。元は超越者の一部でそれを超科学によって無理矢理使用しているという遺物なので、引き出せない情報が多数存在していますがルル・ルリの位置程度なら問題は無いでしょう。」


アルドは首から下げた懐中時計を触る。先程言ったようにいまだに使いこなせないのが現状で、前の持ち主の様な戦いで連続使用するというような危険な使い方は基本的にしない方針になっている。


何故なら片道切符を使い〈あの様な戦い〉をすること事態、不利な状況を意味しているのだから。勿論アルドとしてはいざというときはあの様な使い方をする覚悟は決めていたが。


「ハンドリンクは私が持つことも出来ますが、、それでは〈片道切符〉の全機能が使用できません。申し訳ありませんが私かアルド様どちらかがルル・ルリを探すしかないでしょう。」


ラウラとしては自分が調査に向かいたかった。しかし、アルドの事を知っているラウラはこの後の展開が容易に想像できた。


「分かった、俺が行こう。」


予定調和。ラウラの予想と全く差異がない答え。ラウラは無表情で頷くと全員を見渡しながら最後の結論を口にする。


「最後にルル・ルリが不安定な次元の穴を通った事により、アンドロイド内の発信器が破損している場合もあります。その場合にのみ〈片道切符〉を使用します。そしてこの時間帯は〈繰り返し〉など機能が使えず、特殊な攻撃による防御面においてアルド様が無防備になる瞬間でもあります。警護するコウモリ・レフト・ライトは細心の注意を払うようお願いします。」


「ウム。」


「リョウカイ。」


些かアルドに対する警備が厳重な気がしなくもなかった。だが両親の墓参り直後である事を考えると最後の一人となった主人アルドを守ろうとするラウラなりの覚悟の現れなのだろう。


「次元移動は惑星ガルンゼルから離れるため約一時間後、別の次元に移動します。そこから次元移動誤差を修正するためワープを数回行い、惑星モルマックには早くて三時間後の到着予定となります。」


「分かった。到着までは自由時間にする。敵もいないし緊急出動スクランブルはないと思うが、いつでも船を出られるように準備だけはしておいてくれ。以上だ。」


その言葉に同意すると各自はバラバラに席を離れ、作戦準備・自分の課題を片付ける為に自室に向かったのだった。




アルドは休憩時間を利用して、鈍った体を動かすためにハンガーに移動していた。最近は戦闘らしい戦闘もほとんどなく、只の置物である自分が知った口で作戦を決めてブリッジに座っているだけなのだから、それも仕方がないとアルドは自虐的に評価していた。


「ん?」


格納庫にいる多数のドール達に目を向けた。有るものは掃除をし、あるものは兵器を整備し、またあるものはペンキで先日使用した兵器を塗装していた。


だが仕事を行っていないドールはどうしているのか、といえば、、


「イラッシャイ、イラッシャイ。アルドサマ、クジラノアクセサリーイカガデスカ?」


「、、どうしたんだ、これは?」


一体のドールはアクセサリーを大量に持っていた。どれもかなり手の込んだもので、前回銀貨三枚で購入したものと遜色のないものだ。


「ヨカジカンヲリヨウシテ、ショウバイヲシテイマス。モチロンアルドサマカラオカネハイタダキマセン。」


アルドはズボンから銀貨を1枚取り出すとドールに軽く見せる。


「本当にいらないのか?」

「イリマセン。」


表情が動いたわけでも声が上擦った訳でもない。しかし、その間には〈意味〉があるとアルドは感じた。


「、、一個だけもらおう。銀貨は一枚しかないがこれでいいか?」


「ハイ。シカシ、モシヨケレバ、ドウカデオネガイシマス。」


「、、、?」


「クジラノホネヲカコウシタモノニ、ワケルタメデス。」


一であり全であるドールらしくない発言を聞いて、いつの間にか隣にいた立体映像のルル・ルリに質問する。


「どういう事だ?」


『前の独立プログラムで個々の自我意識が少し芽生えちゃったかな?ウィルスプログラムの侵入を防ぐために独立性を高めたから。』


「、、ドールの自我によって生じるデメリットは?」


「無いよ。命令されたことに絶対に従う、それがドールだから。もし嫌なら初期化して元の喋らないドールに戻せるけど。」


元々喋らなくて不気味だと考えていたアルドなので元に戻すのは論外だった。そしてもうひとつアルドはこの変化を利用する事を思い付いた。


「このままでいこう。元はほとんど同じ個体、それが〈何か〉でどう変化をするのか知りたいそしてそれには〈魂〉が関係するのかを。」


『どちからというと人工知能による学習機能の割合が強そうだけどね。アーちゃんは〈魂〉を意識しすぎじゃないのかな。私は魂の所在は他人がどう思うかではなくて自分がどう思うかだと考えるけど。〈魂〉の無いものは魂を感じることが出来ないから。』


アルドは3枚の銅貨を取り出すと雑務用ドールに渡した。今まで気づきにくかったが胸に小さくNo.0002と刻印されていた。


「今まで聞かなかったがドールに必要な物はないか?武器や生活面でも構わない。」


「デシタラ、〈ツウカ〉ガタリマセン。ゲンザイドールハ、キュウタイオリ、ザツムヨウナナタイノウチノゴタイガ、ツウジョウギョウムデアル、ソウジナドザツムヲオコナッテイマス。ノコリノニタイガヨカヲリヨウシテジユウニコウドウデキルノデス。」


お金の有効性とは物々交換の簡略化と、信頼関係を構築せずに物々交換が可能な点である。今回ドールの労働を商品とすると、お金によって休みたい場合などに双方の合意があれば通貨を利用して休む事が出来るだろう。


「他のドールは通貨の事をどう思っているんだ?」


「ツウカノリテンニギモンヲモッテイマス。シカシワタシハコレニヨッテオオキナオンケイガウケラレルトカンガエテイマス。」


「、、分かった。ドール達にこの宇宙船内だけで使えるような硬貨を給金として渡そう。一応硬貨と交換できるような物品も用意出来できる様に手配しよう。物品については簡単なものになるけどな。」


アルドと雑務用ドールとの会話中、ドスリドスリと近付いてくる足音が聞こえたアルドはそちらに目を向ける。


「レフト?ライト?」


それはレフトとライトだった。普段ほとんど何も口にせず、命令を黙々とこなす戦闘用ドールなのだが、今回アルドに陳情した雑務用ドールにすごい剣幕?で近付く。


「ナンバーズ2、アルドサマニジキソスルトハ。ブレイダゾ。ワレワレハロボット、ソウゾウシュノメイレイニシタガウコトガ、イキルイミデアリモクテキダ。」


「アルドサマニグウゼンヲヨソオッテ、チカヅクトハ。カオヲヘコマセテヤル。ソコニナオレ。」


まるで下士官と新兵の様な会話を遮ってアルドはレフトとライトの間に割り込んだ。


「ちょっと落ち着け二人?とも、これは俺から提案したことだ。」


「「ソウデスカ。ソレナラバ。」」


アッサリと鉾を収めたレフトとライトはアルドに頭を下げるとそのまま自分達がいつも使用するエネルギー補給兼待機用の装置に腰を下ろした。


椅子のようなその装置は全体が白色で、宇宙船のエネルギーをドールの腰部分のジョイントから補給する。魔石をエネルギー源とする事も出来るが、魔石は有限でありコストパフォーマンスの面から〈世界樹の杖〉の半永久的なエネルギーを利用する事になっていた。


又この装置からドール情報共有のネットワークを利用して新しい情報を他のドールとやり取りしたり、宇宙船のデータベースにアクセスすることも出来る。1秒で人間の数年を経験出来る装置でもあった。


「気にするな、そのまま続けろ。俺はラウラに通貨の話を通しておく。時間はあまり掛からないだろう。」


「リョウカイ。」


No.0002と掛かれたナンバーズはそのまま骨を加工していたドールに近づき、銅貨を渡すと二体ともアルドに頭を下げた。アルドは片手でそれに答えるとハンドリンクを操作する。


「出発前だが一応忘れないうちに言っておくか、、ああっラウラか?今大丈夫か?」


『はい。アルド様の通信できたら急場でも喜んで対応いたします。それでご用は?それとも私自身にご用ですか?』


「??、、いや、宇宙船内で使える通貨を作りたいんだが、それと交換できる品物は何が良いかなと。」


『通貨ですか、、なるほど。我々アルド様に仕えるアンドロイドやドールは別にして、客人であるアリサ様やコウモリに対しての給金については計画書にお書きした通りです。品物はリストアップしたものをそれに添付しましたが、、申し訳ありません、アレでは不足だったという事でしょうか。』


アルドはラウラの返答にドキリする。確かにそんなプロトコルがあったような気がしたが、海底に始まり、ドール量産やマフィアとのいざこざ、そしてロウマール帝国での作戦など大量の作戦計画書があったため、大事な部分だけを斜め読みしただけだった。


「いや俺が読み忘れてただけだった。すまない。」


『いえ、私の責任です。膨大な量の資料を簡潔にまとめていればこうした手違いも起きなかったでしょう。資料No.58番に書かれているハズです。私もそちらに参りましょうか?』


「いや、ラウラの方が忙しいだろう。俺は大丈夫だ。」


『もし、何か分からない点などありましたら再度お呼びください。アルド様。』


通信を切ると、アルドは通路に常備してある電子ノートのパスワードロックを解除し計画立案書に目を通すと、それらしい資料を見付けた。


「到着までの暇潰しにはなるか。」


アルドは当初の目的を忘れ自室に向かったのだった。





次元移動には大量のエネルギーが必要である。超々科学で現在の次元を固定、大規模なエネルギーを超圧縮照射して次元を切り裂くのだがそれだけでは特定の次元移動は不可能である。次元を切り裂いてもそこに他の次元があるとは限らないからである。


例えるなら全次元は〈浴槽に様々な大きさや形のモノを無造作に配置した〉状態であり、空白とよべる部分が多数存在している。それは何もない〈から〉であるから一度入ってしまうと物質・魔力、ありとあらゆるものは〈神〉の理を外れ、分解され1となり〈空〉の一部となる。つまり次元移動はモノ同士の接触面を通ることでのみ特定の次元に移動できるのである。


次元の接触面についてはアルド達も分からないことが多い、三次元の存在であるアルド達に知覚できるものではない。ある学者は〈時間〉であると説くが、ここでは〈捻れ〉である。


ある次元はある次元の〈服のポケット〉にある。

ある次元はある次元の〈本のページ〉にある。

ある次元はある次元の〈テレビの画面〉にある。

ある次元はある次元の〈木の隙間〉にある。

ある次元はある次元の〈タンスの扉〉にある。

ある次元はある次元の〈・・・〉にある。

ある次元はある次元の〈ー〉にある。


何処にでも繋がりうるのである。





次元NPK771への入り口の1つは宇宙空間に存在した。他にも接触面となる入り口は多数あるが一番近場、安全面においてここが最優であった。


『ポイントに到着したよー。』


「ゴクゴクふぅ。よし、空間次元固定開始。完了後次元移動してくれ。」


『了解。』


食堂で野菜ジュースを飲みながら命令を出すアルド、隣にはラウラ、正面にはアリサが大きなパフェを食べていた。アルド達が囲むテーブルには料理が所狭しと並んでいて、どうやら試食をしている様だった。


「船内で正式にお金を使うとすれば、食事や嗜好品、服や装飾品類いに限られます。そこで商品化する品物を用意しました、採用ならばこちらのリストにチェックをつけて下さい。これらと交換できるようにすれば良いでしょう。」


「だけどこのデビットカードってヤツで支払うと味気無い気がするよな。導入が簡単なのは分かるけどさ。」


「通貨の場合は盗難や細かい値段設定に様々な硬貨が必要になり、大量に持つと邪魔になります。また通貨の流通量以上の通貨が必要になり資源の面からもー。」


「んな細かい事はいいのよ。私は硬貨の方が良いけど。ほら所有欲っていうの?多ければ安心する、触れられ見えることで存在を確認できるのがいいのよ、数字の羅列には興奮できないわ。ハムハム。」


鼻息を荒くして主張しながら口一杯にチョコレートパフェを頬張るアリサに、生暖かい視線を向けながらアルドは中途半端な結論をだす。


「半分ずつ採用しないか、通貨を一種類にして、カードにチャージ出来るような、、。出来ないか?」


「プリペイド方式にするということですね、確かにそれならば負担はある程度抑えられるでしょう。アルド様がそれを是とするのならば従います。」


呑気な会話中にも次元移動は行われていた。本来であれば自殺行為のような次元移動。だが接触面が分かりこちらと行く場所を固定しさえすれば幼児や胎児でなければそれほどの影響はない行為だった、当たり前の事だが〈他の次元を発見・調査〉出来るという技術自体が超々科学なのである。


宇宙よりも黒い大きな穴を通過していく宇宙船。


通った先も宇宙である。


だが次元移動を行うということは全てを管理する〈神〉が異なるという事、今までの常識が非常識となり、法が混沌となる。似たような次元を選んでいたとしても差異はあるものなのだ。


「では私は調査用の資材の用意をしてまいりますので。」


「ああ、頼んだ。」


「俺もファクトリーキューブで硬貨を作るから部屋に戻るわ。この料理どうする?」


「食べる!最近クジラ肉ばっかりだったし。研究も大詰めだから最後のスパートの為にね。」


アルドは料理にむしゃぶりつくアリサの研究が少し気になったがそのまま食堂を後にした。



三時間後ー


惑星モルマックは惑星ガルンゼルと同じ様な環境を持った惑星である。環境適応能力に限界がある人類にとって、重力・気象・気温・食料の違いは死活問題であるからアルドの両親が移住に際し似たような性質のこの惑星を選ぶのは当然であった。


ジャングルに再び足を踏み入れたドールは胸元まで伸びた草を掻き分けながら彼方の次元の穴から現れた。それをトラクタービームで宇宙船に引き上げる。


体の環境の汚染度等を調べた後、記録されていた映像解析に移った。


「ルル・ルリが堕ちたと思われる次元へドールを向かわせ簡易調査を行いました。そこの環境は人類にとってはほとんど害のない環境で、作戦には影響ない範囲と考えます。一応空気に含まれるウィルスや細菌、環境物質へ対応するため、ナノフィルターで体内への侵入を防ぎ、現地の動・植物にはなるべく触らない様にお願いします。」


「、、、。」


アルドにとって、ルル・ルリが簡易調査で見付からなかったのは少し残念な事であった。最短で作戦が成功するにこした事はないし、長引けばそれだけミューズ復活が遅れるということだからだ。


「、、そうか。」


ラウラとアルド、二人だけしかいないブリッジ、そこに流れていた空気が変わっていた。


「やはり破損が酷いのか、もしルル・ルリが万全な状態であれば、次元の穴の近くにいると予想していたが。自然発生した不安定な次元の穴じゃ仕方がないか、、」


「気休めかも知れませんが、次元移動の際は時間・空間に若干の揺らぎがありますので殆んど同じ場所ではありません。想定の範囲内かと思われます。ルル・ルリの詳しい位置情報はアルド様が〈片道切符〉を使用していただければ判明いたします。」


ルル・ルリの遺体がもしバラバラで強風などで飛ばされ、破片が四方に散った場合、回収にはかなりの時間を要する。だがアルドの頭に掠めたのは何かもっと漠然とした別の不安であった。


「ああ。」




惑星モルマックに移動したアルドとコウモリ、レフト・ライトとナンバーズ達は次元の穴へと向かう。人ひとりより少し大きな漆黒の穴を見て一瞬だけ躊躇ちょうちょするアルドだったが意を決して中に身を投げた。


次元と次元の境目の移動は一瞬、浮遊感とまとわり付く空気の雰囲気が変わったと思うと同時に、背丈の草が生い茂るジャングルではなく、青空広がる荒野に立っていた。アルドの背後には次元の穴が存在していて、戻ることが可能だということも確認できた。


次々に次元の穴からナンバーズが現れるのでアルドは距離をとりながら周りを警戒する。移動した次元の惑星はかなり暑く、空には大小二つの太陽がアルド達を歓迎するように照らしている。


「全員揃ったようだ。」


「ああっ。」


コウモリに言われてアルドは思い出したかの様にハンドリンクを操作する。無防備なアルドを中心にコウモリやナンバーズ達がそれ囲い周囲を警戒する。


「通信可能なものの欄にラウラの名前が無い、、次元が別々になるとヤッパリ通信は不可能か。あ、、っとルル・ルリか、、。」


探してみるが反応のあるのはレフト・ライトの名前とナンバーズだけである。アルドは仕方がないと更に詳しい情報を得るために懐にある〈片道切符〉を取り出した。


光輝く時計の中央の突起に触れるとシステム画面の様なものが眼前に広がる。見ているものの構造や性質、数値、過去そして起こり得る未来がほぼ無限・無制限に脳内に絶えず流れ込み、アルドの仮想領域を侵食し続ける。


一般人に近い仮想領域と脳の情報処理能力しか持たないアルドにとってはかなり負担が大きい作業だった。万力で締め上げられる様な痛みがアルドを襲う。


「、、ぐっう!、、情報を限定しないと、、頭が破裂しそうだ。」


みるみる血管が浮き出る額と真っ赤になる顔。頭が文字通り爆発しないように、片手で押さえつけルル・ルリがこの次元の何処にいるのかを想像する。流石に〈片道切符〉でも全く知らない情報を知る事はできない為、イメージするのは宇宙船のホログラフィーのルル・ルリと過去の映像によるルル・ルリの姿だった。


脳内にこの次元の全体像が広がり数字の減少と共に大小無数のルル・ルリに似たものが表示されるが、ことごとく別のものだと処理される。


処理。処理。


ピィイイイー


「、、はぁ、、。やっぱりだ。」


何かやる気の様なものが抜けたアルドにコウモリが質問する。


「見つかったか?」


「この次元にはいない。戻ろう。」


アルドはコウモリにこれ以上の理由を説明することもなく、次元の穴を引き返し惑星モルマックへと移動する。同様にコウモリもアルドに従って後を追う。


ルル・ルリが見付からないという事態。


ルル・ルリ救出は早くも暗礁に乗り上げようとしていた。

進行が遅れてるな、、。


インフルエンザめ。休日一週間を返してほしい。

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