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異次元収集家アルド 四章12話

修正箇所あれば訂正します。

グレッグは走っていた、兎に角走る戦わずに逃げる。


セルツェ・スターリをそれこそ隈無く逃げ回り、今までで一番起点時間から長生き?をしたと確信する。ここまで来るのに何度繰り返したか分からない、だが〈逃げ延びる時間〉を長くすることに成功した。


「はぁはぁ、、どうだ、、これなら、、」


ーが。


空から光が輝き真下のセルツェ・スターリを輝かせる。


「、、まさか、、首都ごと吹き飛ばすのか?!」


音も聞こえないままグレッグの体といわず。セルツェ・スターリ全体が光の柱の中に消えた。




立ち眩みがする。朝ベットで廻点時計を持った状態で覚醒する。


「くそっ、くそぉ!!」


ドガシャン。ガシャガシャン。


ありったけの怒気を家具にぶつける。だが問題が解決する訳ではなかった。


「ハァハァ、やはり戦うしかないのか、、。黒騎士、、ゴーレム、大きな鳥、戦車、謎の光、、レイア、メビウス、研究所を守って、、くそっ整理するには一人じゃ駄目だ!」


頭をかきむしるグレッグ、メビウスに整理してもらい巻き込む形で戦ってもらうしかない。


「こちらは何度でも繰り返せるんだ。相手がどんなに巨大な敵であろうとも勝てる、勝てるはずだ!」





セルツェ・スターリの市街地。


象のような大型ゴーレムに大砲を撃ち込むが衝撃を受けるだけで機体に破壊された形跡はない。


反撃でグレッグの体に大きな銃弾が撃ち込まれる。


廻点時計が宙を舞った。




急襲が成功したと確信していたが罠だった。


どうやら何かマジックセンスのような魔術を使っているらしくグレッグの正確な位置は確実にバレていると思って間違いなさそうだ。


大勢いる小型ゴーレムの銃弾がグレッグの体を貫通する。


血飛沫と共にグレッグの廻点時計が血に染まった。




それは偶然の産物だった。奇襲により、黒騎士がゴーレムに乗り込む前に包囲、攻撃することが可能となった。黒騎士に巨大な砲弾が次々と撃ち込まれる。


流石に生きてはいないだろうと攻撃を中止させる。


「ハァハァやったか?」


グレッグは黒騎士がいたと思われる瓦礫に近付く。


ーーー。


黒い何かが自分の中に侵入してくるのが分かった。


〈フム、ワザと殺される演技も疲れる、、しかし、、どうやら無理なようだ。流石に魔法と言えど****の中ではー引き剥がされるかー。〉


ブツン。


廻点時計が時を巻き戻す。




何百回何千回戦ったのだろう。目覚めては戦い、戦う準備をして敗北する。グレッグにも分かり始めていた。これは相手を〈戦いの舞台から降ろす〉戦いだった。


相手の考えは単純だ。ただ勝ち、勝ち勝続け、心を削り、相手が廻点時計を差し出すまで延々にそれ繰り返せばいい。いや、実際に〈敵〉が戦ったと感じるのは【一回】だけなのだ。


何万回の勝利の後にはエネルギー切れという確実な勝利すら存在する。現にメモリが少しずつ、しかし確実に減っているのだ。


グレッグの精神は限界に来ていた。


そこで行動に変化を持たせることにした。


サウザウトタワーとガリアス宮殿の途中の道で黒騎士に会ったときに提案する。まず確認として廻点時計を見せ使用していることを教える。


「取引がしたいだと?良いだろう。こちらはもとよりそのつもりだ。」


「ああ。取引といっても何もいらない。時間いっぱいまで待ってほしいだけだ。何時までなら可能だ。」


「、、フム。今日中なら構わない、だが時刻を過ぎた時は〈相応の対応〉をする事になるだろう。」


グレッグは光の柱の存在を思いだし、それでもその提案を飲んだ。この約束によって相手の出方を見たかったという事もある。そして取引が可能かどうかも知りたかった。


勿論約束を守るつもりなど毛頭ない。しかし収穫はあった。


グレッグは〈相手が取引に応じる存在〉であることを知り、自由な時間を手に入れることに成功した。


「1日という時間を使い魔法を完成させてやる。」


グレッグはその日セルツェ・スターリに光の柱が立つまで研究に没頭した。




研究の成果とは日々の積み重ねである。


それは積み木を高く積み上げる行為に似ていた。


確かに研究は出来る、しかし魔術の実験や研究は一日で成し遂げられるものではない。


理論や考察で得られる成果は実際に検証してみて初めて成果となるものだ。グレッグはその事を知ってはいたが気付かない振りをしていた。実際なんの成果も得られないまま1日という時間を繰返し続けた。




酒瓶が転がる部屋。酒に酔ったグレッグがソファーにうな垂れる。部屋を無言で片付けるレイアを茫然と眺める。


グレッグが見たレイアは何処か悲しげな表情を浮かべていた。


「、、何故、、お前は俺を好きになった。、、メビウスもこんな俺を友という、、俺に、、俺を庇う価値などあるのか、、。」


自分を浄化するかのように酒を浴びるほど飲むグレッグ。


コンコン。


自室ドアをノックする音が聞こえた。


この時間に部屋を訪れる訪問者の正体は分かっていた。グレッグはヨロヨロと立ち上がるとドアを開ける。やはりというべきか黒騎士がそこに立っていた。


「、、フム。突然の訪問すまない、お前が持っている時計を私に見せてくれないか?何、【使用しているのか】を知りたいだけなのだ。意味が分からないのなら良い。勝手に見るだけだ。」


「殺すなら殺せよ、、黒騎士。何度殺されても俺はコレを渡さんぞ!」


酒に酔っているグレッグを見る。会話の内容から廻点時計の使用している可能性がかなり高いと判断したようだ。宣戦布告ととったのか言葉通り剣を抜く。しかし酒に酔った男に哀れみの表情を向けた。


「、、下らない人間を殺すのは主義に反するな、、。フム、、〈片道切符〉は可能性を広げる道具にすぎない。〈倒せる可能性の無いもの〉に勝つことは出来ない。」


確率が0のものは0のままだ。廻点時計は0000、1パーセントの可能性でもあればそれを実現する力がある。


「、、つまり、お前らに勝てる可能性は0で、それを見越して俺に戦いを挑んだと、、ふざけるな。」


「そうだ。勝てないのなら戦略的撤退を図るべきだ。現状の損害を少なくする、未来への投資、そして再度戦いを挑めるのなら、その戦いを見据えての準備。私ならば残された時間をいかに未来に繋げられるかにかけるだろう。」


「、、。」


「思い違いをするな魔術師よ【幻の時間帯の勝利】のみが勝利ではない。さぁ、次の私を失望させるなよ。」


黒騎士の一撃はグレッグの首を両断した。




立ち眩みがする。朝ベットで廻点時計を持った状態で覚醒する。


酔いはない、只の黒騎士に言われた言葉がいまも残っていた。


「、、片道切符、、か、、しかし、未来と過去を行き来出来るのなら、、いやまさかな、、それよりも、、」


グレッグはこれからの事を考えた。


もし〈敵〉の言葉を信じるのならグレッグは確実に負ける戦いを挑んでいる事になる。〈廻点時計〉はグレッグに必要だろうか?確かに必要だった、しかし自分が必要とする研究にはそれほど役に立たない事が分かっていた。


ではロウマール帝国でこのまま研究を続けるのにはどうすればいいのか〈メビウス〉がいれば多分このまま研究が続けられる可能性が高いだろう。


次にメビウスだが〈北方教会〉に狙われている事が分かっている。その種を出来るだけ取り除く事が出来るのかを考えた方が良いのではないだろうか?


「奴等との戦いにも飽きてきた所だ。〈教会〉なら敵としては悪くないな。」


グレッグは情報収集のためメビウスの部屋に行くことにした。




「どうした朝食時に北方教会の事が聞きたいなどと。珍しいを通り越して不気味だぞ。」


「お前の奴等に対する見解を聞きたい。」


真面目な表情のグレッグに、メビウスは何かを感じたのだろう。人払いを命じて、グレッグと二人だけで話すことになった。


「北方教会は遥か昔、このロウマール帝国建国以前この地に存在した複数の宗教を一つに融合した宗教だ。〈バルバロス王国〉が広めたとされるが詳しくは分からない。魔法を崇拝し、科学に対しては表向きは無関心。しかし複数人いる司祭の中には排他的な連中もいて快く思っていないのも確かだ。」


「、、。」


「皇帝が即位する前は絶対的な権力を持っていた法王や司祭だが、帝国建国時の戦いで穏健派と強硬派に分かれ対立、強硬派が敗れ帝国内での発言権を削られる。国内では皇帝に次いで地位が高いのが法王で現在でも帝国の即位などの裏には北方教会の影があると言われている。実際、いまでも国民の教会に対する信頼は厚いと言わざるをえない。」


「奴等がお前を暗殺する可能性は?」


「ある。俺が死ねば次男のゼロだ。ゼロは教会に入り浸っていて骨抜き状態だからな。綺麗なシスターが多い教会でどんな幸せな時間を過ごしているのか、少し興味があるな。アハハハッ。」


何故こんなに呑気なのかグレッグは頭を軽く押さえた。


バン!


机を叩く。


「このままでは暗殺されるぞお前は!何らかの手を今すぐうった方が良い。」


「確かに、だが尻尾を掴めるほど尾が長くない、、下っ端すら暗殺する時、無作為に選んだ浮浪者を間接的に雇い入れる位の頭はあるだろう。上にいる奴なら絶対に自分の手は汚さん。」


「、、怪しいと思う奴はいないのか?」


「教会の鷹派と接触している人物は分かるが、、どのような関係なのかまでは分からないぞ。」


グレッグはメビウスに怪しい人物のリストを作ってもらい記憶する。


「今のところ確実なのは五人か、、」


「ああっ、一番の大物はペナント伯爵か、、傲慢な人物でかなりの権力と財力がある。正面切って戦いたくはない相手だな、、ん?どうした。」


「これからの時間、こいつらに少し時間を割いてみようと思ってな、何すぐに終わる。瞬く間だ。」


「??」


意味が分からないメビウスは首を傾げた。



セルツェ・スターリ郊外、貴族が多く住む住宅街その屋敷の中。


バキッ。ドコッ。チャキン。


屋敷に侵入したグレッグは部屋で政治家に刃物を突きつける。


「ごんなごどをしてタダシャすまないぞ。」


「いや、俺は大丈夫だ〈情報を手にいれれば何もなかった事に出来るからな〉。さてアンタ〈メビウス〉暗殺に関わっているって話だけど本当か?」


「、、知らん!この薄汚いドブネズミめ!貴様のような禁忌を犯す魔術師が国を滅ぼすのだ。絶対に殺してやるぞ!」


「、、どういう意味だ。」


「安らかなる眠りについた死者の眠りを妨げ、死者を甦らせる。これが禁忌と言わずして何が禁忌だ!そして死隷核などというおぞましい魔術道具を作り出す邪悪なる魔術師ではないか貴様は。」


バルバロス王国でも同じ体験をしていたグレッグはそんな雑音を聞き流した。聞きたいのは一つだけだ。


「皇太子暗殺に関わっている人物を知らないか。話さなければ殺すが、、」


「誰が話すものか、、」


つまり〈いる〉ということか。


「楽しくなりそうだ。」



「この異端者め!」


「あんたが皇太子暗殺に一枚噛んでいることは知っている。お前に命令した奴を知りたい。」


刃物を取り出すと急に弱気になったのか貴族は話始める。


「パルメダ司祭だ、あぁヤクト司祭もいた。ひぃ殺さないで。」


「口が滑らかなのは良いことだ。他にもいたら頼む、そうすれば〈今回〉は助けてやる。」


「本当か?本当だな。」


そしてグレッグは皇太子を殺そうと画策する組織の大まかな事を知ることになった。



グレッグの前には一際大きな屋敷が建っていた。


「やはり、ここを攻略しなければならないな。」


グレッグは夕暮れ時伯爵が帰宅時を狙って襲うことにした。拉致しなければ情報は聞き出せないだろう。レイアは逃走用動力車の運転の為待機、グレッグは死隷核の身体能力強化を使い、待ち伏せして護衛を叩きのめすつもりだった。護衛は屈強そうな軍服に身をつつんだ男が一人だけ。簡単に方がつくとグレッグは確信する。



先ずは離れた茂みから牽制のファイヤーボールを放つ。




ドゥ、ドガッ!


「?!」


護衛はそれをいち早く気が付くと自らその間に飛び込んんで伯爵を守った。躊躇のない行動から考えるに、装備品などに魔術防御用の魔術回路がくみこまれているのだろう。


ごうっ。


「、、誰だ。」


流石に完全には相殺できなかったのか片足をついた護衛がグレッグを睨み付ける。その後ろで伯爵はつまらなそうにグレッグを値踏みする。


「んん?なんだこのネズミは?」


「アンタに聞きたいことがある。ちょっと来てもらうぞ。」


「ペナント伯爵お下がりください。」


ザン。


ファイヤーボールの炎を消して煙を立てながら立ち上がる護衛。


「うむ。」


任せたとばかりに伯爵は高みの見物を決め込む。


「死隷核起動!」


「ふん。」


バキィ。ボキィ。


「がはぁ!」


吹き飛ばされたのはグレッグだった。短剣を持ったグレッグの素早い首切りを避けつつカウンター。加速も合間ってグレッグの体は一撃で動けないほどのダメージを負った。地面を転がる、痛みが制限されているのに激痛を感じるほどの重症だった。


「素早いだけの素人が戦闘のプロに勝つつもりか?」


急がず逆襲を警戒しながら近付く護衛、倒れたグレッグの髪を掴むと更に顔面に一撃をくわえる。前歯がベチリと音を立てて地面に転がった。


「がはっ。」


「伯爵、殺しますか?」


「何も知らんドブネズミだと思うが面白そうだ。お前何が目的で私を襲った?私怨か?」


はぁはぁはぁ、呼吸を整え痛みをこらえながら声を搾り出す。


「き、、ま様が皇帝を、、いや皇太子を殺し教会と共にクーデターを図ろうとしていることは知っているぞ、、」


「ほぅ。」


伯爵の目が怪しく光った。


「、、今帝国は、、少しずつだが良くなっている。辺境の餓死者もほとんどいなくなった。このままメビウスが皇帝になればもう少しマシな世の中になるだろう。」


「、、ドブネズミには分からんだろうが、幸福は麻薬だ。一度与えるともっと欲しくなり、与え続ければ費用が掛かる。だから地獄のような場所でこそ管理しやすいのだ、、んん?」


微かな笑い声が聞こえ伯爵は話すのを中断する。


「くくくっ、嘘だよ。帝国の事など知るか。俺は死隷核の研究出来ればいい。〈虐げられている国民〉なんか知るかよ、何処だって同じだ、帝国だろうと、王国だろうと、クソッたれた辺境の村だろうとな。」


「、、皇帝派の犬ではないのか貴様は?」


「知らないのか?魔術師は〈探求者〉だ。魔術師は魔法を使うためなら何だって捧げる、例え皇太子だろうと、友達だろうと。」


「くくっ、卑しい外道が。ならお前に生きるチャンスをやらんでもないぞ。〈メビウス〉を殺せば、お前の命を見逃してやる。先ず毒薬をお前に飲んでもらい、成功後に解毒薬を飲ませてやろう。〈メビウス〉の護衛もお前ならー」


グレッグは伯爵がやはり黒であることを知った。伯爵に向けて唾を吐きニヤリと笑うと、伯爵は躊躇なくグレッグにトドメをさすように命令した。


「次は上手くやろう、、」


廻点時計が光続ける。



メビウス暗殺を阻止する、それは思ったよりも根が深かった。ハッキリいえば〈教会派〉の有力者をまとめて排除しなければならないほどである。それは一日で出来る事ではない、しかも〈メビウス〉には替えがいないのだ。


メビウスにグレッグが持つ情報を流した事もあった。しかし、物的証拠がない証言だけの情報で有力者を検挙できるはずもない。


グレッグは何度もメビウスの説得に当たったが成果のない日常が続く。数百回目となる朝食をメビウス一緒に味わっていた。


「お前雰囲気が前とは別人だな。まるで相談役と話しているようだ。何かあったのか?」


「あった、有りすぎるほどだ。人生を半分位は使ったか、、流石に飽きたよ。もう終わりにしたい。」


「おいおい、物騒だな。」


「俺には覚悟が足りなかった。だが無駄に長く生きているうちに気付いた事があった。足跡は大切なものの側に多く刻まれるものということを。」


遺言めいた言葉にメビウスはグレッグが何かを覚悟したと感じ取った。だが、何をしようとしているのかに気が付ける筈がなかった。


「友よ。多分これがお前と一緒にとる最後の食事だろう。いや、そう決めた。これ以上は無意味な只の先延ばしだ。」


「はははっ、なんだいきなり〈友〉などと、皮肉屋のお前らしくない。」


「礼を言わせてほしい、〈ありがとう〉と。このロウマール帝国でも死隷魔術は禁忌の魔術だった。だがまがりなりにも研究が出来たのは〈メビウスの友人〉という肩書きがあったからだ。お前が教会から今まで俺を守ってくれていたことを俺は今まで考えもしなかった。」


ガタリ。


食事を終えたグレッグは立ち上がると出口に向かう。


「おい、グレッグ。」


「ようやく決心が付いた。じゃあなメビウス。」


バタリ。


廊下に出るグレッグ、待機していたレイアが近寄ってくる。


グレッグが見たレイアは何故か誇らしげにグレッグを眺めていた。その髪を軽く撫でるとグレッグは最後になる〈今までで一番永く短い戦い〉を始めたのだった。






**************************


確定時間:グレッグ接触から40分後


セルツェ・スターリ北方教会本部。きらびやかに装飾された教会は大きく壮大であった。その教会に警備兵達が集まる。指揮をとるランドルトは苦悶の表情を浮かべる。


「凶悪犯グレッグは地下から教会に侵入した模様です。逃げてきた一般人の証言によると司祭数人をさらに殺害したとのこと。」


「やはり悪人、、いや狂人の類いだったか、皇太子を助けたのも自作自演という噂だったが真実味を帯びてきたな。、、人の皮を被った悪魔め。」


「どうしますか、突入しますか?まだ包囲は完璧ではありませんが。」


「犯人は地下通路を知っている可能性が高い、地上で待ち構えるのは悪手だろう。それに中にいる法王が襲われればどうするのだ。人数が集まり次第突入するぞ。」


「はい!」


区画警備兵部隊は一斉に教会本部に突入を開始した。



タタタッ。


教会内部にも隠し通路は無数に存在する。グレッグが追っている丸々と太った法王はひたすら目的の部屋目指して移動していく。


「ひぃひぃひぃ。」


「無駄な事は止めないか、法王。」


部屋に到着した教王は部屋の中央で向きを変えてグレッグと対峙する。両手を上げて笑った。部屋は金銀財宝で埋め尽くされ輝いていた、一般人が見たら欲の無い人間ですら魔が差してしまう。そんな財宝の数々を誇らしげに披露する法王。


「取引だ、取引をしないか?皇帝や皇太子の生死などお前には関係あるまい。この財宝を好きなだけ持って行け。だから私を見逃してほしい。」


「これをか?」


「研究所で燻っている貴様が一生手にすることのない金が手に入るのだ、悪いことではあるまい。私にはこのロウマール帝国を正しい姿にする責務がある。あと半年あれば確実にそれが実現するのだ。その為に今死ぬことは許されんのだ。」


「要らないな、〈金なら掃いて捨てるほど沢山〉持っている。それにお前の近くに移動すると罠が作動するからこれ以上は進まない。」


脂汗が流れる法王の額。その時だった。上層部から沢山の足音が聞こえてくる〈警備兵〉が突入した音だった。


「バカめ!」


グレッグがそれに気を取られた瞬間、法王は油断したと思ったのかグレッグに拳銃を向けて放つ。


パン。パン。


数発がグレッグの腹に命中する。


「、、??」


しかし倒れないグレッグを不思議そうに眺める法王。


「死ね、死ぬのだ、何故死なんのだ!!」


グレッグはファイヤーボールを教王に放つ。法王はまとっている聖衣の魔術回路を起動させる。


ドゴン!


「があぁ!神にぃ選ばれたぁぁこの私に!!!」


執念と言うべきか軽減された魔術の炎に焼かれながら法王は何も考えず、グレッグに突進する。手には大きな槍が握られていた。


がー。


シュンシュン、ズブリ。


「ガハァ!」


太い弓が法王に無数に突き刺さる。自ら仕掛けた罠を忘れていた法王はバタリと床に倒れた。グレッグは法王を見下ろして死んだことを確認する。そして懐から上の階で盗んだ貴族や有力者の賄賂などが記載された裏帳簿を取り出すと部屋の中に投げ入れた。教会派の勢いを弱めることを期待しての事だったが、発見者に握り潰されるかもしれない可能性もあるため、成功すれば良い程度の事だった。


「そろそろ隠れないと不味い頃か。」


グレッグは腹に差し込んでいた凹んだ鉄板を投げ捨てると、隠し通路を引き返していった。




セルツェ・スターリの地下迷路は外壁より外にはほとんど存在していない。つまり地上から外壁を突破して国外へ逃走しなければならなかった。グレッグの凶行は狼煙によってすぐさま伝えられ首都の外へと繋がる外壁の門は厳重に警備されていた。


セルツェ・スターリの警備兵や治安維持部隊はそれこそ血眼になってグレッグを探したが見付からない。地下に逃げ込んだ可能性も考慮して捜索隊も編成されたが広すぎるという理由で地下の捜索は断念された。


だが一つグレッグを知るものは知っていた。


グレッグの側には付き従う〈レイア〉という存在がいる。〈レイア〉とグレッグは必ず接触を図るはずだと。


しかしー


〈レイア〉の姿は朝の時点で煙のように消えていたのだった。




確定時間:2050時。セルツェ・スターリ南側ヌベール山。


歩兵戦車で待機する蝙蝠の耳に無線が入る。


『蝙蝠聞こえますか?』


「ああ。聞こえる、目標の姿はセルツェ・スターリ南側には無い。追われている身でいかにここまで到着するのか少し興味がある。」


セルツェ・スターリから少し離れた見晴らしのよい山の上、歩兵戦車に搭載される望遠カメラの映像を見ても検問に写るのは商人の馬車だ。


「やはり。蝙蝠、どうやら貴方はグレッグに図られた様ですね。」


「何の事だ?」


「目標はまだ町の中に存在しています。しかしこの短時間単独であの外壁の門を突破出来るとは到底考えられません。」


「相手が約束を〈破った〉ということか?」


蝙蝠はラウラからの返信を待ったが、ラウラからの答えはない。多分これは正解ではないのだろう。つまり約束は守られているという事だった。


答えは簡単だった。あまりにも単純な思い違い。


蝙蝠は人目があまりない首都の外の〈南門〉だと思っていたが、実際グレッグは雑多な首都の中の〈南門〉で待ち合わせを指定していたということ。


「檻を破るために我々を利用したか!」


あははははっ。


「蝙蝠、約束は約束です。相手が首都内部の南門で待ち合わせという罠に気が付けなかった我々にも落ち度はあるでしょう。いえ、相手は何度か交渉を行ってこういう誘導なら勘違いするというパターンを割り出したのかもしれませんが〈流石に追われている犯罪者が街中でユッタリ交渉する仮定は思い付きませんでした〉、、失敗を認め目標と接触、その後安全な場所まで移動して交渉を再開してください。ルートと場所は送ります。」


「分かった。では発進する。」




確定時間:2055時。セルツェ・スターリ南区画商業地。


グレッグは最後の難関である南門側に到着。


グレッグはゆったりとしたローブを頭に目深にかぶって警備兵をやり過ごす。南門は厳戒体勢のせいで人で溢れていた。その人混みの中をグレッグは南門に向けて壁に沿い一直線に歩く。


それに気が付いた。警備兵はグレッグに銃を向けて威嚇する。


「おい!割り込むなお前。列に並べ。」


「そんな暇はない。」


騒ぎを聞き付けた仲間の警備兵が一人駆けつける、そして何かを感じたのかフードの中を恐る恐る覗きこむ。


「貴様!グレッグ!!」


顔を見た警備兵の顔色が変わる。凶悪犯を見付けた驚きで直ぐ様発砲する事もあるが、今回はグレッグが何もせずに南門の側で微動だにしないため。銃を構えつつ上司を呼ぶように仲間に指示を出す。


南門のゲートを背後に警備兵は壁際のグレッグに警告する。


「動くな、動くなよグレッグ。腕も動かすな。動けば撃つぞ。」


「ああ、分かっている。動かないさ、お前に撃たれるのは御免だ。ああ、そうだ一つ忠告してやろう。」


「、、なんだ。」


「お前も動かない方がいい。死ぬぞ。」


「??」


ドゴゴン!!


突如壁が爆発する。


壁に使用してある大きな石や砂利が爆発により飛び散り、空いた穴から大量の煙が立ち込めてくる。爆発の衝撃で瞬間的に身を屈め壁を方を見てしまった警備兵を誰が責められるだろう。次の瞬間にはグレッグは穴から現れた大きな手に掴まれ煙のなかに消えた。


「グレッグ!!消えた!何が起こった!!ゲホゲホ。」


煙りが収まるまで状況は把握できず。セルツェ・スターリ警備兵達はグレッグ・バーマンを首都から逃がしてしまった。のちにこれが様々な憶測を呼び、グレッグ・バーマンはバルバレス王国のスパイだったとの噂が流れるきっかけにもなった。


これがグレッグ・バーマン事件である。




ガコン、ガコン。


巨大な象のような歩兵戦車の肩に乗り、グレッグは色々な事を思い出していた。弟子の事、治療を行った人々、そしてー


次第に小さくなる首都をちらりと眺める。


「さらばだ。今までの借りは返したぞ。」


ロウマール帝国ヌベール山山頂付近、グレッグを丁寧に地面に下ろす歩兵戦車。


プシュー。タトン。


歩兵戦車から飛び降りた黒騎士と対峙する。


「では、それの確定ボタンを押して〈片道切符〉を渡してもらおうか。嫌なら分かっているな。」


「ああ。わかっている。」


グレッグはあっさり光輝く〈廻点時計〉のスイッチ押し、機転時間を変更してスイッチを解除した。そして黒騎士に軽く〈廻点時計〉を投げる。


パシッ。


「フム、材質は本物のようだな。精巧に出来た偽物の可能性も考えたが違うようだ。ああ、大丈夫だハンドリングの反応は?では契約成立だな。」


誰かに向かって話し合う黒騎士。その言葉に苦笑するグレッグ、経験があるのかもしれない。


「では返してもらおう。」


「良いだろう、レフト・ライト。もう約束を破った時の人質は必要ない解放しろ。」


近くに隠れていたのか焦げ茶色のゴーレム二体も現れる。捕らえられているのは〈レイア〉だった。拘束を解かれたレイアはグレッグに駆け寄る。


「さて、これで終わりではないのだろう?」


グレッグからの質問であった。


「その通りだ。一人お前に会いたいという人物がいる。その人物の機嫌次第でお前の運命は変わるだろう。ココから先の経験は?」


「無い。だが、何となく分かっている。」


「戦うとしても正々堂々正式な決闘を行う男だ。勝てる確率は非常に低くてもな、その点は安心しろ。」


ザッザッ。


空からの光、その中から男が現れた。


「アルド・ガーデンブルグだ。魔術師のグレッグ・バーマンだな。」


「いや、俺はもう魔術師ですらない。只のグレッグ・バーマンだ。」


「、、返すのはそれだけなのか?」


アルドは手を前に出して何かを要求する。


グレッグは自分の〈手袋〉を外し丁寧にアルドに渡した。


「、、ガバレボとの関係を聞きたい。弁明もな。」


「俺はガンリュウ率いるガバレボ討伐隊の一員の冒険者だった。〈ナガレモノ〉に関しては出来心だった、いや〈力〉が欲しかっただけた。その過程で〈手袋〉が必要になった。」


「最後の質問だ。何度死んだ?」


「数え切れないほどだ。」


「分かった。グレッグ・バーマン、研究上手く行くことを願っている。ルル・ルリ頼む。」


闇を照らす光が再度立ち上がる。殺される事を覚悟していたグレッグだったがアルド・ガーデンブルグは自分を殺さないと知り疑問に思う。それに答えるようにアルドは口を開いた。


「〈うちの魔術師〉の話では隣にいる彼女は死者蘇生を意識した魔導具を埋め込まれている死体だと聞いた。それは〈作品〉としてではなく愛情を注がれ丁寧に作られていると。」


アルドは宇宙船にいるミューズを思う。


「最後の回収でお前の様な奴に会えたのも何かの縁だろう。もう一度自分が向かう先の険しさを教えてくれた授業料と〈何度も死に至った苦痛〉で相殺することにした。」


ピィーン。


グレッグは近くにいるレイアの手を握ると上空に存在し光輝く宇宙船をその目で見て肩を竦める。


「、、授業料か、、あんな存在でも死者蘇生は難しいか。魔術師ではないグレッグ・バーマンがどこまで魔法に近付けるのか、、」


「、、ダイ、、ジョブ、、」


「??」


レイアの方を咄嗟に見るが上を見上げるレイアに変化はない。プログラムされていない言葉を発したと感じたが気のせいだと、その事は忘れグレッグ・バーマンはセルツェ・スターリを後にしたのだった。





**************************




ここから下は本編とはあまり関係ありません。読みたい人用。




**************************



その後帝国のロウマール五世は半年を待たず病死する。その後皇帝になったメビウスはロウマール帝国の内政に力を入れた。巨大で開墾され豊かになった土地と産業、圧倒的な人という資源を背景に、メビウスの子孫であるドルチット公爵は宿敵であるバルバロス共和国打倒を果たす。ガルンセルにおいて歴史上一番巨大な国が誕生するに至った。


人々は語る。ドルチェットは偉大である、獅子皇帝も偉大であるがメビウスこそロウマール帝国で一番偉大な人物であると。彼の人気は死後も高く、毎年の命日には誰が広めたのか高級パンケーキと牛乳が墓に供えられるという。



ロウマール帝国においてグレッグ・バーマンに関する正式な記録は極めて少ない、一時期帝国科学兵器開発部にいたとされるが現在その資料は閲覧禁止に指定されている。


当時の凶悪犯罪者であるグレッグが題材の小説も多数存在する。悪の魔術師であるグレッグが皇帝暗殺を企て、その際助けにはいった法王が殺された。スパイであるグレッグはその秘密を知った法王を殺した等の作品が多い。だが異色の作品も存在する。


その小説には現在の魔結晶スフィアの原型を開発した、皇帝の友人であった、死後莫大な大金を貧しい故郷に寄付したということが書かれている。作者はドゥルークというらしいが書籍自体ほとんど教会によって燃やされている為、本当に存在するのかも怪しい禁書である。

終わった。


内容を削り過ぎて駆け足になったけど、上手くまとめられた方かも知れないと自画自賛。


次は一月か、、ニ月か、、死に掛けの彼女の放置が過ぎるな、、


アッチの方は年末の連休もあるしいけるか。こういう機会を利用しないと一生、続き書かないから。


燃えろ俺の創作魂!


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