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異次元収集家アルド 四章11話

ロウマール帝国に仕官して十五年。朝、グレッグは普段通りにレイアが横で眠るベッドで目覚める。そして日課となった〈廻点時計〉を起動する。


ー起動、そしてー


寝ぼけた頭を苦いお茶でスッキリさせると、朝食を軽く取って玄関にやって来た弟子と服を着たレイアと共にガリアス宮殿に向かう。ガリアス宮殿は政治の中心であるが、その地下内部には国家機密のプロジェクトを推進する研究者が集まっていた。サウザウトタワーにはこうした人物が数多く住んでいる。


これは他国への技術・技術者流出を防ぐための措置で軽い軟禁に当たるが、行動に制限を掛けられている訳ではない。只護衛兼監視員が監視しやすいようにしているだけである。


グレッグも戦車の魔術を軽減させるアンチマジック装甲や砲身をスムーズに移動する装置、目標捕捉機能の機械部分に魔術回路を組み込んだ複合装置を開発させていた。


そして現在、成功が認められ新たなプロジェクトを進めている。


〈強化兵計画〉ー死体を操る死隷魔術を、生きている人間に適合させ※強化魔術同様の身体能力を高めようとする計画である。


※違うのは全身に強化魔術を使用するストレングス・アップなどの魔術に比べ魔力コストが低く、制限時間時間が長い、繰り返して使える事が利点。但し初期費用は魔石のみには及ばない。


問題となるのは非人道的な事だろうか。


だがグレッグはその事を気にはしなかった。グレッグの今回の目的は人間の脳に関する部分であり、このプロジェクトはグレッグ自身がいずれ手を出さなければいけない部分でもあったからだ。


「現在30番の補助死隷核の位置を位置を変えたところ、やはり感情面に問題が生じました。脳の部位にはやはり各々の機能を司る部位があるようです。」


「罪人も無限にいる訳じゃない。出来るだけ記録をまとめ、同じ部位の使用は避けるようにしろ。」


「続いて、使用時間における肉体の劣化速度です。生きている人間の方が、死体より劣化速度が早いようです。治癒で上限までは回復可能ですが繰り返し死隷核を使用すると人体の治癒能力の低下が始まり、約20回ほどで肉体の限界に達するようです。年に数度であれば問題は無い範囲でしょう。」


死隷魔術使用における肉体の劣化。これは生者・死体も同様である。物質であるモノ、ありとあらゆるものは、〈生じた瞬間〉から存在できる時間が大体決まっている。


この惑星ガルンゼルですら例外ではない。虫は1年、動物は十数年、人は百年、木は千年、石は万年、惑星は数十億たてばその存在は無くなり、その間に新しいモノが誕生する。これは人が生きていく上で体感し知る事であった。


彼、グレッグの考えでも【自ら命を絶って死隷核によって復活】そして〈不老不死〉となるという事は不可能である。死んでもやはり物質である以上、いくら補強してもこの理を変えることは出来ないのだ。彼の愛するレイアも非常にゆっくりではあるが劣化していた、いずれ彼女も肉塊になり土に帰るだろう。


「神に唾を吐き、その理から外れた死隷魔術で一泡と思ったが、、何の事はない、理から外れていると考えていたのは俺だけで、これすらも理の中か。神というのはどれほど広く深いのか。」


グレッグが呟いていると、周りの護衛の弟子に軽い緊張が走った。


道の中央に黒い服装の麗人が立ち止まってグレッグの進行を妨げ様としていたからだ。グレッグは命知らずだと思いながら、二人の護衛とレイアを見渡す。


自分や護衛兼弟子には死隷核を埋め込んであるので、いざ生命の危機となれば単純な戦闘能力は一人で兵士十名に相当する。レイアですら剣を使わせれば、そこら辺の兵士より強い。そして最新式の銃、本来銃は火薬を詰め込んで弾となるものを撃ち出すのだが、薬莢が開発されてから弾の中に火薬が入っているため携帯が非常に便利になった。


弟子は麗人の顔を見て少し赤らめたが、杖より少し太い銃をいつでも使えるように構えると麗人に向かう。


「おい、邪魔だ道を開けろ。」


「、、フム。そこの魔術師、お前が持っている時計を私に見せてくれないか?何、【使用しているのか】を知りたいだけなのだ。意味が分からないのなら良い。勝手に見るだけだ。」


その言葉に弟子は危険分子と判断したのか、足に向かって発砲した。


ーが。


キィン。


何が起こったのか理解できない弟子達、しかし少し離れていたグレッグには分かっていた。〈刹那の一瞬で鎧を纏って銃弾を弾いたのだと〉グレッグは言い様のない恐怖を感じた。いつの間にか現れた漆黒の鎧の中から声がする。


「まだ遺物を使用しているのかを確認できてない、確定世界の可能性もあるのなら殺さないでおこうか。」


弟子達は漆黒の鎧を纏った麗人の腕の拳で頭部を強打される。それだけで弟子達は泡を吹いて倒れ失神してしまう。


たったの二度の攻撃で立場が逆転。


だがそれよりも問題があった。もしかしたら〈廻点時計〉の存在を探しているという直感。グレッグはそれを振り払うかのようにファイアーボールを仮想空間に描き、漆黒の麗人に向けて放つ。


ドゴン!


直撃、数百度に及ぶ現代のナパーム弾の様な火球は漆黒の麗人を呑み込んだ。勝利を確信するグレッグであったがその顔がひきつる。燃え盛る炎の中から何事もなかったかのように漆黒の鎧が現れたからだ。


「アンチマジック?!いや、、これはー」


「プロテクション。我が次元ではこの魔術防御が盛んに研究されていてな、、攻撃魔術よりも防御魔術が、、いや止めておこう。もし仮に、繰り返せる敵ならば下手な言葉は命取りになる。情報は与えないーそれを徹底しなければな。」


ザッザッ、タタタッ。グレッグに向けて突撃しようとする麗人。


「ニゲテ。」


レイアが身代わりになるためにグレッグの前に出る。しかし勢いに乗った漆黒の麗人の手にはいつの間にか盾が握られていた。


ドン!ズサー。


レイア共々吹き飛ばされるグレッグ。まるで動力車に跳ねられた様な衝撃を体に受けて一瞬気を失ったのか、いつの間にか漆黒の麗人が自分の体を調べていた。


「光っている、、つまりは〈使用している〉ということだな。ならば、〈今回は〉これまでだな。次の私をもっと楽しませてくれる事を期待しよう。」


廻点時計に漆黒の麗人の手が触れた。



立ち眩みがする。朝ベットで廻点時計を持った状態で覚醒する。


そして先程の体験を時間を掛けて反芻する。


「敵か?目的は〈廻点時計〉?不味いことになったな。動作していることを知っていたということは、、所有者、、?いや、まさか。持ち主は死んだはずだ。」


グレッグは自分の手にはめられている手袋をみる。この時のグレッグは十数年前の記憶からガンリュウが連れていった息子の存在を忘れていた。思い出すのはもう少し先である。


「いつもの通り道で待ち構えていたということは、俺がサウザントタワーに向かっていることぐらいは知っているはず。」


グレッグは部屋にやって来た弟子にサウザントタワーからガリアス宮殿への道に不審者がいると伝え。自分は安全な自室で事が終わるまで待機することにした。


「かなりの人数を向かわせる様に言い含めた。流石にー」


コンコン。


自室ドアをノックする音が聞こえた。


グレッグはレイアにドアを開けさせる。


「ナニカ?」


「、、フム。ここにいる魔術師、彼が持っている時計を私に見せてくれないか?何、【使用しているのか】を知りたいだけなのだ。意味が分からないのなら良い。勝手に見るだけだ。」


グレッグはその声を聞いて、あのときの麗人を思い出す。まさか、とは思いつつドアを死角から覗く。


ーと。麗人と偶然なのか目が合う。


「ーあぁ、いた。目標を捕捉した。どうやら知っている様だ。」


「くそっ!レイア、ソイツを排除しろ!」


グレッグは戦うか迷った。だが麗人の戦闘能力も知っていたので、急いで部屋に隠してある銃保管庫へと向かう。レイアは麗人と戦闘を開始する。


グレッグは口径の一番大きい携帯銃を武器庫から出すと、麗人に向かって発砲。だが麗人はそれを予知していたのか、レイアを捕まえるとそれを盾にして回避。次の瞬間、全身から炎を出現させる。


「レッ、レイア!!くそっ!!死ねっ。」


炎に包まれたレイアは瞬く間に炭になり、銃弾はいつの間にか現れた鎧によって弾かれる。


麗人がグレッグに向かって突進してくる。それを防ごうと見境なく銃弾を発射するが一発も当たることなく、麗人はグレッグの胸へ無慈悲に剣を突き立てた。


「がはぁ!」


「、、フム。弱者ならば弱者なりに頑張りを期待したのだがな。これでは戦いにすらならん。次の私を失望させるな。」


薄れつつある、グレッグの意識は暗闇にとける。


廻点時計がグレッグから離れる。



立ち眩みがする。朝ベットで廻点時計を持った状態で覚醒する。


そして先程の体験を時間を掛けて反芻する。


「何なんだ、、弟子達と戦わなかった?いや、、まさか、、俺の位置が始めから分かっている?」


外で戦闘したような音はしなかった。あの麗人はグレッグがあの道に来ないことを知っていた可能性が高い。


「位置が知られていることは問題だ。逃げることが難しくなる、、それよりもあの麗人の言葉が気になる。〈次の私〉、、」


これが〈時間を繰り返せる〉という意味合いなのだとしたら、それがグレッグの脳裏に掠める。だとしたら相手は完全に〈繰り返せる自分〉に勝てるということを想定しているのだ。


グレッグはやって来た弟子に自分の護衛をする人数を増やすように言って、今回は10人の弟子・兵士最新式の武器を持ってガリアス宮殿へと向かう。


「どうなされたのですか?今日はやけに厳重ですね。」


「黒ずくめの男の暗殺者がいるとの情報が入ってな。相手は戦いのプロだ、おかしな技で全身鎧を瞬時に出すことが出来る。舐めてかかるな、死ぬぞ。」


「はぃ、、。」


グレッグの剣幕に弟子は態度を改める。


「鎧だろうと口径が大きい銃ならば貫通は可能だろう。これで無理なら倉庫から大砲でも持って相手をしてやるさ。」


明らかに常軌を逸している発言だったが、弟子たちのグレッグへの信頼は厚い。15年もの間弟子達はグレッグの背中を見ていた、確かに善人ではない不器用で口が悪い。しかし弟子となった人間がどんなに能力で劣っていても決して見放さなかったし、目的へ進む〈魔法への信念〉は弟子の目にも眩しく見えた。


道の真ん中に黒い麗人が立っていた。そして呟く。


「いつもより人数が多く武器も過剰、、なるほど。だがまだこの人数で〈勝てる〉と思っているということは、あまり繰り返してはいないようだな。」


「、、おい。名前を聞いておこうか?墓に刻んでやろう。」


グレッグの問いに麗人は暫く考えると、名前位ならばと言葉に出した。


「〈黒騎士〉だ。蝙蝠でもいいが、、あまり良い意味ではないからな。」


「黒ずくめだからか?それとも漆黒の全身鎧からとったからか?まぁいい全員構えろ。」


ジャカカカカ。


横二列に並んだ弟子たちは大きな銃を黒騎士に向けた。


「よし、ドールよ。プランAだ。」


ドゴン。


グレッグ真横で何かが爆発した。最後にグレッグが見た光景は空に何か〈大な鳥の様なモノ〉が宙に浮いている。そんなよく分からない光景だった。


バラバラバラバラ。


鳥の羽ばたきが聞こた。



立ち眩みがする。朝ベットで廻点時計を持った状態で覚醒する。


そして先程の体験を時間を掛けて反芻する。


「プランAだと、、?、、、勝てない、、。情報が不足し過ぎている。」


黒騎士と名乗った麗人だけならまだしも、仲間と思われる空を飛ぶ巨大な鳥をも相手にしなければならないのではグレッグの弟子だけでは戦力が不足していた。


「面倒な事になってきたな、、。」


グレッグは軽く朝食を取って弟子が来るのを待つ。


そして向かったのはサウザントタワーの上層階。王族はガリアス宮殿に住むが例外もある。〈皇太子メビウス〉は堅苦しい宮殿が苦手であった、週の大半はサウザントタワーで過ごす。グレッグとは月に一度程ではあるが一緒に食事を取ることもある。


メビウスが朝、朝食をとっている時にグレッグはリビングに案内される。メビウスはホットミルクとバターの染み込んだパンケーキを口に運びつつ、グレッグを確認する。


「珍しいな、、なんだ?その表情からだとかなり緊急性が高い案件なのだろうが、、。」


「ああ、、暗殺されそうでな。助けてほしい。」


「暗殺?それは穏やかじゃないな。しかし、命の有無をあまり気にかけない、お前がな、、いやはや。」


「今回は保険が効きそうにないんでな、、。」


メビウスはホットミルクを流し込むとナプキンで口を拭い、立ち上がる。


「敵の規模は?どんな勢力だ?背後関係は?心当たりは?」


「わからない。」


勿論心当たりはあるが、もし盗品を回収に来たので助けてくれ等といえば【盗品を返せば良い】と言われるのは目に見える。ここはしらを切ることにする。


「、、暗殺の糸を残すほど馬鹿ではないか。」


「暗殺者の一人は黒騎士と名乗っている、、正体は分からない。仲間がいるらしいが、分からないことだらけで何がなんだか、、」


「兎に角ガリアス宮殿に向かおう。ここでは何もできない。」


その提案をグレッグは拒絶する。


「待ってくれ、外に出るのは不味い。戦闘能力の高い巨大な鳥がいるんだ、ソイツに襲われる。」


メビウスは分からないと言いつつ〈何かを知っているグレッグ〉に薄く笑う。


「安心しろ、サウザントタワーとガリアス宮殿は地下で繋がっている。セルツェ・スターリは戦争を想定して作られた新しい都市だ、名の通り血管のように地下通路が張り巡らされている。」


執事らしき初老の男性に案内されて最新式のエレベーターに乗るグレッグとメビウス、そしてレイアと護衛達。


少しカビ臭い通路を抜けてガリアス宮殿に到着した。


「パルメイニア!いるか?!」


「はい!こちらに。」


メビウスの声に反応したのは書記官風の男だった。だが秘書風の男は焦っているのかメビウスの話を聞かずに、メビウスに耳打ちをする。


「きたの、、ま、、、ひが、、、か、、ヒ、イ、、」


「、、悪い出来事とは重なるものか、、。」


「どうした?」


「各地で魔物が暴れ、山火事の発生・河川が氾濫したそうだ。忙しくなるぞ。」


メビウスは廊下で移動中でも時間がほしいのか、部下に次々に書類や命令を出す。処理する量が多くなるにつれ、天を仰ぐ。


「各地の村人や常駐警備兵だけでは足りないぞ、輸送には城から兵を護衛として貸し出すしかない。勿論相応の金は貰うが、、そちらは首都の大工、、いや鳶職を向かわせろ。あと商人を集めろ、値上がりする前に木材・鉄を買い集めるんだ。」


会議室前、忘れられているのでは?と考えていたグレッグだったがメビウスはドアを開けるとグレッグに向き合う。


「ロウマール帝国、セルツェ・スターリ、ガリアス宮殿で一番安全なのは何処か?謁見の間じゃない。そうこの国会議室さ、そこの端で置物にでもなっていろ。敵情報が入り次第、対応してやる。」


「、、すまない。恩に着る。」


そういったグレッグの肩をメビウスは叩く。


「公私混同は避けるべきだが、俺はこうも思う。大事なときに数少ない友を死なせる為に俺は国に尽くしているのではない。大切なものを守るために〈国を守っている〉この目的を違えてはならない。」


メビウスはグレッグを友と言った、グレッグはどうなのだろうか?メビウスのために何かをしたことがあったのか?自問自答する。思えばメビウスのお陰で現在の地位で不自由なく研究が行えている。それは一種の奇跡だった。


メビウス・ロウマールは病で倒れた皇帝に代わり、ロウマール帝国に最早無くてはならない存在である。人心掌握、封建制度の維持、外敵要因の対策、経済、北方教会、現在帝国は絶妙なバランスの上でなりたっている。メビウスがいなくなればバランスが乱れ帝国は内部から分裂し崩壊するだろう。


〈メビウス・ロウマール〉は帝国の希望だった。


そんな男に〈友〉と言われたことを少しだけ誇らしく思うグレッグであったが、ひねくれた性格のせいで素直に喜べなかった。


「どうせならベッドを置いてくれると助かるがな。」


「この区画内にいるならベッドを要する程、時間は掛からないと思うが。まぁいい会議を始めよう!」


会議は数時間続く。


広場ほどの大きさ三階ほどあるかという吹き抜けの部屋で淡々と会議が続いていた。


だが。


ドゴン!!


午後を回った頃だろうか。


ガリアス宮殿が激しく振動した。


「何事だ!!」


メビウスの問いに答えたのは、丁度報告をしに来た衛兵であった。


「何者かがゴーレムを操り、このガリアス宮殿を襲撃した模様です。通常の火器では破壊できない程の装甲を有しており、敵は正面入り口よりこちらに真っ直ぐ進んできております、退避を!!」


「分かった!全員座席に近いゲートから待避!そのまま訓練通りに脱出しろ。慌てるなよ。」


ワーワー。慌てるなと言われても命が掛かっているのなら、なおのこと急ぐのが人間である。我先にと思うあまりゲートがつまり、そのゲートを諦めた人間が他のゲートに群がる始末だった。


「、、くっ!グレッグは先に脱出しろ、俺は全員をー」


その言葉をグレッグは遮った。


「いやーこれは俺の客だ。〈情報収集〉もある、、。」


グレッグを暗殺する敵の大きさを垣間見て呆れるメビウスだったが、それでも諦めの表情を見せない友の顔を見て何故か納得もするのだった。


「ははっ、これがお前の客か?大概にしておけよ、厄介事を国に持ち混むんじゃない。全く、最高級のミルクとパンケーキを奢って貰うからな。」


甘党のメビウスらしい言葉だった。


ドガシャン!


人が殆んど残っていない会議室の壁が爆発する。


ドシンドシン。


地響きと共に現れたのは巨大な像の様な灰色のゴーレムだった。三メートル程はあり、手には大砲のような物を持っていた。


『会議中失礼する。確認する必要も無くなったので今回はこれで訪問した。魔術師よ、さぁ戦おう貴様の戦術を見せてほしい。』


「黒騎士め!」


周りを少し確認したあとグレッグを発見した黒騎士。ガチャリ、大砲をグレッグの方向へ向ける。


「逃げるぞ!」


「くそ!何なんだあのゴーレムは!!」


ドゴン!


後方で大きな爆発。身代わりとなったレイアとメビウスの近衛兵が爆散する。爆風に巻き込まれ吹き飛ばされる二人。グレッグは足を負傷して動くことが出来ない。


「レイア!!くそっくそぉ!」


「走れ追い付かれるぞ!」


メビウスに抱えられながら小さいゲートをなんとか潜るグレッグ。


カチカチ。


『フム弾切れか、、やほりこの類いの武器は性に合わんな。レフト・ライト追うぞ。』


「「リョウカイ。」」


新たに現れた巨大な、ゴーレムの胸部から焦げ茶色をした人ほどのゴーレムが出てくる。動きはかなり素早く、負傷しているグレッグ達だと数分もしないうちに追い付かれてしまうだろう。


「ふん。」


ガチャン。


メビウスは通路に設置されたで鉄製の柵のスイッチを下ろし、会議室と通路の道を塞ぐ。黒騎士達の武装に対しては心もと無いが無いよりはましだろう。


「行くぞ!この通路は教会に続いている。」


「ああっ。」


レイアがいない時点で廻点時計の使用は決定しているが、黒騎士の出方を最後まで知りたいのでグレッグはメビウスに付いていくことにした。


コンコンコン。


二人の暗闇の先に見えたのは十人ほどの人影。


「?誰だ?教会の者か。」


「はい、皇太子殿下。賊はどちらに?」


「通路の向こうだ。だが十人程度の人数では奴等には敵わない、この場より撤退しろ。」


、、無言。動かない人影、それだけでその意味がメビウスには理解できた。


「成る程、、賊に乗じるか、、」


「これも教会のため。このロウマールの希望は教会こそ相応しいのです。」


ガチャリ。


パンパンパン。


廻点時計が宙に舞った。


**************************




確定時間:グレッグ接触10分後



「皇太子、あの者が会議の前に少し話があると。」


メビウスが視線を向けるとそこにはグレッグの姿があった。その姿は昨日とは別人で、まるで齢100歳を越えるのでは無いかと思われるほど掠れて見えた。


「分かった。今行く。」


メビウスはグレッグのもとへ向かい挨拶をかわす。


「すまない、今日は挨拶に来たのではない。〈終わらせに来た〉だけだ。」


「何を言っているのだ?」


「二人で【神の様な敵と戦っていたとき】を思い出すと今でも胸が高鳴る。惨敗だったがそれも悪くなかった。」


メビウスが過去を思い出しても二人で戦った記憶は思い出せない。時間を気にしているのかグレッグは急に話題を変えた。


「もうすぐか、、これをお前に届けたくてな。」


「、、辞表?なんだこれは?」


「今よりこの日、この時間をもってロウマール帝国科学兵器開発部の魔術動力系課の課長の任を降りたいと思う。」


「、、何を言っているんだ。お前に任せたプロジェクトはお前の発案で、しかもお前が求める死者蘇生と永遠の命の研究に必要不可欠な研究だと、お前も認めていたじゃないか。」


メビウスの言葉を予期していたかのように、グレッグは横に首を振った。


「もうこれ以上ロウマールで死隷核の研究は進まない〈教会〉は異端なこの研究を目の敵にしているからな、、いずれ俺も不慮の事故で死亡するか、〈皇太子〉を暗殺した罪で処罰されるだろう。もう奴等の手札は十分揃っている。後は時を待つだけだ。」


「、、なら俺が教会を説得してー」


その言葉をグレッグは遮る。


「そんな穏健なやり方じゃ駄目だ。もう無理なんだ今までのような〈幸運〉はやってこない。〈皇太子が事故で死ぬだけだ〉この未来を変えるのはそれこそ〈時を戻せる〉ような魔法が必要だった。」


何を考えているのかはメビウスには分かったが何故急に今日なのか、今解決しなければならないのかメビウスには分からなかった。


「下らない問答は必要ない。俺は今からロウマール帝国に関係ない一般人だと明言する。」


「落ち付けグレッグ。乱暴なやり方じゃ解決しない、二人で話し合おう。待て!」


近付こうとするメビウスを拒絶するかのように、距離を取るグレッグ。


グレッグは知っていた、話し合おうとすれば時間が無駄になると同時に、メビウスはグレッグを拘束する。教会に一般人が歯向かえば罪状は重く死刑は確実だった、それを阻止するためだがこの場合は逆効果だった。


「、、さらばだ友よ。死隷核起動!」


グレッグの体に埋め込まれていた死隷核が作動してグレッグを捕らえようとする衛兵から逃げる。予めこの事を知っていたかのような行動にメビウスは混乱した。


タッタッタ。


「くっ!あの男を追え!!宮殿の出入り口を閉鎖しろ。何を考えているグレッグ。」


タッタッタッ。


グレッグは廊下を進みながら目的の人物を見つける。


護衛は二人、大物政治家と伯爵が廊下で談笑していた。


「この瞬間が唯一無二。同時に狙える瞬間。」


グレッグは死隷核に偽装した魔石を取り出すと握り、仮想領域にファイアーボールを描く。


成功。


ファイアーボールが放たれる。


「なっ!」


「?!」


ドバン。


二人を呑み込んだファイアーボールは護衛を混乱させるには十分だった。攻撃を放ったグレッグを足止めして捕まえるか、護衛対象者を助けるのかの二択を選ぶ間に護衛二人の間をすり抜ける。


「なっ、なんだ!くそ!」


「おのれ!止まれ撃つぞ!」


護衛対象者は助からないと考えた護衛は冷静さをとり戻し、グレッグを追うが流石に死隷核によって強化された脚力は伊達ではなく、みるみる離される護衛。


バンバン!


チュン!


グレッグに銃弾が掠めるがそれだけだった。


次にグレッグのとった行動は再度会議室に向かうことだった。


二番ゲートからグレッグは侵入すると更に貴族数名と政治家をファイヤーボールで攻撃する。そして教会へと続く隠し通路からガリアス宮殿を脱出、律儀に追跡出来ないように柵も使用する手際のよさだった。


グレッグの凶行によって死亡した貴族や政治家は14人。グレッグは殺人の犯罪者として、この時からロウマール帝国から指名手配される事になる。




宇宙船のブリッジ、座るアルドにエレベーターから降りたラウラが報告する。


「グレッグという魔術師が持ち主で、使用しているとの報告が黒騎士から入りました。彼の要求は時間の先延ばしと我々が行った破壊活動の処理となります。引き渡し時間は2100時ロウマール帝国、セルツェ・スターリ南門となります。交渉いたしますか?」


「引き渡しに際して、何らかの罠を仕掛けてくる可能性は?」


「十分憂慮した方がよろしいかと。」


「どちらにせよ会わなければならないな。聞きたいこともある。」


その言葉は予想していたとはいえラウラにとっては頭痛の種だった。出来ればアルドには安全が完全に確認できるまで〈片道切符〉の使用者に近付いて欲しくはない。


「交渉か、、違うよ。これは脅迫だ、俺は筋を通したい。」


「はい。」


9割は何もしないと考えているが、残りの1割でグレッグが自暴自棄になり、アルドに襲い掛かるとも限らない。その代償はグレッグの死ではあるがー


ラウラは考え続けているアルドに頭を下げ、再度エレベーターに乗り込んだのだった。

これ後一話で完結できるか、、。


自信なし。


修正箇所気付けば訂正します。




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