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異次元収集家アルド 四章10話

気が付いた修正箇所あれば訂正します。

その後グレッグは白銀のガントレットと白銀の棒を探したが、結局見付からなかった。


「棺のナガレモノも無くなっている事を考えるに、大人数で馬車の様なものを手配したのかもしれない。轍〈わだち〉を追うにしても離れすぎて、奪い返すのは難しいか、、」


それから2つ分かった事がある。懐中時計の左に付いている突起を押すと〈立ち眩み〉がするが、これは【強制リスタート】するためのボタンの様だ。つまり〈死ななくても起点の時間〉まで時間を戻せるということ。


そしてもうひとつは時計の針が一周(約24時間経過)するとエネルギー切れになるのか、〈起動が強制終了して起点時間に戻り〉エネルギーが自然回復されるまで、丸1日使えなくなるという欠点だった。エネルギーに関しては起点時間から経過する毎に残量バーの消費量が増大していく、特に20時間を経過した辺りからはエネルギーの消費が凄まじく8割以上はこの時間帯に消費される様だ。


俺は懐中時計を使用するに当たり条件をつけた。


一つは、寝ている時は充電を兼ねて使用しない(寝ているときに襲われて、使う間もなく殺されるなら仕方ない、それに痛みも無いだろう。拐われるのは勘弁だが。)


2つ目は、起点時間を無闇に変更しない(起点時間の変更はエネルギー効率が恐ろしく良くなる。反面、障害に対応出来るまでの準備時間が短くなる+遅効性の毒による暗殺を回避出来ないため。その他色々。)


3つ目は、人前で使わないこと。(ナガレモノだとバレると盗まれる可能性も出てくる。)


4つ目は、博打等で使用しないこと、これは3に当てはまるが人は欲深いものだ。これをしてしまうと使用頻度が増える、そして〈勝ちに勝ち続け〉マフィアや裏の住民達に恨みを買われ、目を付けられる可能性が出てくる。



序でに懐中時計は止めて《廻点時計かいてんどけい》と命名する。長い螺旋を廻るには丁度良い。


「魔術師と相性の悪い、腕輪の宝石はあのガントレットがないと戻せない。捨てるよりも高額で売る方がいいな。」


だとすると高額で売れる場所ー


「パラマイト連合国か、、確かゴールドラッシュで好景気だと聞いた。せめて金貨500枚は欲しい所だが。」


俺はレイアと距離を開けて行動しながら謎の多いパラマイト連合国へと向かった。





グレッグはブリジャーノックで大量のノック金貨を手に入れると同時に半分を使って、持ち運びやすい宝石と死隷の材料となる長寿の木片を大量に購入した。オークション手数料が1割だと考えても金貨20万枚あれば一生遊んで暮らせるがそんな事に興味はなかった。持てるだけノック金貨を持って、残りの金貨はブリジャーノックの銀行に携帯に便利な引換紙幣ではなく、現物のノック金貨のまま預ける、グレッグとしては〈紙が金の価値と同等〉と言われても全く信じられなかったからである。


「これだけ材料があれば軍隊が作れるな、、死隷核の加工に時間が掛かるのが残念だが。」


勿論彼の目的は魔術師が誰もが考える魔法の一つ〈死者蘇生〉〈不老不死〉である。その為に死隷核研究をしてきたが彼にもやはり能力の限界が存在する。人数と優秀な助手が必要だった。


「だが排他的なバルバロスでは俺の研究は異端、、普通に魔術が一般的な国で研究をしても排除されるのなら、逆に魔術を使用しない、、魔術が制限されている国がいいか。」


魔石や長寿の木の埋蔵・所有量が多いのは間違いなく魔法国家たるバルバロス王国である。輸出品は鉱石が多いが、魔術に関係するモノはそれに次いで多い。その輸出先は近隣諸国だが除外される国がある。険悪な関係のロウマール帝国。


最近は魔術ではなく、科学という分野に力を注いでいるらしい事をグレッグは知っていた。


「政治を行う皇帝が病になって、国が分裂すると思ったが、、人材の登用を積極的に行ったいるみたいだし、宰相が優秀なのかも知れない。もし国が研究を認めてくれるのなら、、」


自然とグレッグの足はロウマール帝国へと向いていた。




ブリジャーノックからロウマール帝国首都までは道が舗装され歩きやすく整備されていた。しかし、ロウマール帝国内の情勢は悪い。大きな道に点在する村や町は活気がなく、浮浪者やゴロツキが至るところに存在しているからである。


グレッグはロウマール帝国の腐敗を肌で感じながら、首都セルツェ・スターリへ向かった。


セルツェ・スターリは首都という名に恥じない大きな都市だった。都市を覆う外壁、中の建物は巨大でバルバロス王国と比べても遜色はない程。グレッグは仕官する為に役人を募集している役所に訪れる(レイアは外で待機)。並んでいる人数は5人、戦士が一人と商人風が四人。


「待ち時間にこちらを記入してください。」


受付に言われた通り、簡単な自分の経歴などを共通文字で記入していく。暫くして愛想の良い受付嬢が、こちらだと案内されるまま奥の廊下へとグレッグは進む。


「実はこの面接には裏道がありまして、、この国の現状はご覧になりましたか?」


「、、ああ。」


「この首都でも賄賂が横行していまして、好きな官職に就きたいのならお金を支払えば付くことが出来るんです。私も〈このシステム〉を知ってはいるのですが何分お金がないので、、」


話の途中で廊下の突き当たり、三つの扉の前にたどり着く。


「どのドアでもお好きに。」


グレッグは〈これが試験〉なのだと結論に至った。案内係りは《賄賂》を要求している。金を渡せば良い部屋にでも案内してくれるのか?それとも賄賂をした人間は信用できないとなるのか?


廻点時計の起点を、この時間にしようか迷うがその考えを否定する。これは命の危機ではない、しかもこのちっぽけな試験の結果で人生を左右される訳でもない、嫌ならば〈自分だけ〉で研究をすれば良いのだ。そのための資金も十分だった、表だって研究できない難点があるが、別に構わないのではないか?


〈目標を定めれば目標への道が自ずと見える〉、目の前の複雑な迷路の様な問題に囚われるのは止め、グレッグは晴れ晴れとした気持ちで正面のドアを開けた。


狭い部屋には面接官らしき金髪碧眼の男が一人机に座っていた。服は軍服に近い、テーブルなどの調度品はあれば良いという作り、質素の一言だった。グレッグは入室すると椅子の横へと移動する。それと同時に受付嬢がグレッグの書いた個人情報を面接官に丁寧に渡した。面接官はそれを一別して人懐っこく小さく笑う。


「先程の問に答えがあると思うかな?」


「ないと思う。〈賄賂〉を渡せば別の道が待っていたとは思うが、俺には関係ない。」


「あれは適正ではなく、性質を見るためのものだ。あれによって来たものを拒む事はしない。獅子には獅子の、ガーガー鳥にはガーガー鳥の生き方・考え方が存在する。慣れない環境は毒にしかならない、いや変えさせるのも手だが時間が掛かるのは人材不足を素早く解消するためのやり方ではない、、?フム。君はどちらかと言えば正攻法を好むタイプのようだ。倫理観もある。」


一人自問自答して、結論を導いたのか面接官は再度グレッグに視線を向けた。


「君の考える〈この帝国に足りないもの〉の項目に魔術基礎研究とあるが、君の専門分野は死隷魔術とある。あまり聞いたことがない分野だが、私にそれを推進する利点とその欠点を教えてくれないだろうか?」


グレッグは出来るだけ丁寧に死隷魔術の利点と欠点を説いた。


「なるほど、しかし知っているとは思うが我が国は〈魔術先進国〉ではない。予算は少なく、研究よりは魔術構成図の複写・基礎維持・技術保存をしているだけだ。それは今後、より鮮明になると私は考えている。君は軍事利用できるという考えの様だが、今バルバロス帝国で大規模な軍事行動をする予定はない。勿論他国に対する防衛手段としては一考に値するが傭兵を雇う方が安上がりだと考えるし、予算的には厳しいものになるだろう。」


グレッグは頷いたが、内心は面接官が仕官を断る理由を並べていると感じていた。


「獅子皇帝と呼ばれていたロウマール5世は周辺諸国を次々に平らげた。巨大に膨れた腹では身動きが取れず、下手をすれば動けない体で強敵と戦わなくてはならないのだ。領土は十分、後は土地を開墾し、産業を発展させ、治安を回復させ、国民の人心を掌握し、痩せ細った体を元気にすることが急務。今侵略し戦うことは愚策なのだ。国は内政にこそ力を入れたい。」


「つまり、俺はいらないと?」


「いや。君は勘違いをしているな。無理もない、死体を使役するのが死隷魔術だと決めつけているのだからな。いや、専門家だからこそ、思考の範囲外なのかも知れないが、、」


よく分からない反応、どうやら面接官の中でグレッグはなかなか評価が高いらしい。


「ロウマール帝国では戦争負傷者・狂暴な獣に襲われたりして体の四肢を欠損している国民が多い。死隷魔術は〈命令して自動で死体を動かせる〉特性がある、つまり手や足を自動で動かせるということ。〈義手・義足〉としての研究をしてくれないか?国民の心と体の治療といったところだ。」


「、、死隷魔術は死隷核を脳の替わりとなるように使役する。〈考える事などの複雑な考えは死骸の脳が補助して行っている〉が、死隷核に魔術回路を組み込めば、、単純な動作なら出来なくはない、、。」


本来の義足などは木や鉄製のものを一から作るが、死隷魔術なら死んでしまった死体の腕を使えばいいので簡単に材料は調達できる、問題は死隷核の生産コストだった。質の良い長寿の木は最低金貨10枚はする、しかもそれに加工時間を入れると最短で2日~3日は掛かる。


「金額は一般的な家庭でも購入できるように最高で金貨20枚。引き受けるのなら、毎年金貨100枚の研究費と月に給料金貨3枚。監察官つきになるが、空いた時間は他の研究に回しても構わない。魔術師の〈夢〉は魔法を最終目標としているらしいからな。君の死隷魔術だと〈死者蘇生〉といったところかな。」


給料はグレッグの手持ちから考えると雀の涙だが、国の後押しがあれば助手を雇いいれる事も可能だろう。だが死隷核の核心部分をロウマール帝国に無料に近い値段で渡してもいいのか?価格帯の設定額が安いなどの不安が頭をかすめる。


だが最終的にグレッグはその提案を受け入れた。


これは面接官の説得が大きかった。後で知ることになるのだがその面接官こそ皇太子の〈メビウス〉であり、それがグレッグとメビウスとの初めての出会いだった。



ロウマール帝国に仕官して3年、グレッグは研究を続けていた。研究は順調で死隷魔術の弟子兼技術者の育成にも力を注ぎ、ある問題を防ぎながら日々を積み上げていった。


問題とは〈メビウス〉の極限なまでの不運体質である。事故、不注意で〈死ぬ〉。グレッグがよく今まで生きてこれたなと思うほどだ。始め雇ってくれて多少の恩があるからと、助けたのだが、〈10回〉を越えてくると暗殺を疑い始める。原因は今だ分からない。


度々その場に居合わせて助けるので〈グレッグ〉が犯人だと、囁かれたほどである。


そんなある日。


「死隷核の研究は順調か?」


メビウスは時々、グレッグの研究室に顔を見せるようになっていった。助けられるうちに〈友情〉近いものを感じたのかも知れないし、年齢が二十代で近いということも関係しているかもしれない。


「いや、、言葉で動作をさせようと思ったが〈検体〉にいちいち発声するのが面倒だと指摘されてな。ならばと完全自動化にしたら、死隷核の大きさ・質に問題が出た。改善には価格を5倍にしなければならない。簡易版は作動しない不具合が出るし、、」


「全ての条件をクリアさせようとするとコストが、簡単ものだと動かないか、、全てお前一人で?」


「ああ、全ての動きを含んだ魔術構成図は難しくてな、助手だと失敗する。任せているのは今のところ健康体との接続部分だけだな。」


問題が山積みの研究だった。


「一人で全てをやろうとするのは困難だろう。価格を下げるのなら、造るまでの工程を減らし単純な魔術構成図にするべきだ。」


「、、だ~か~ら~それでは全ての人間の求める水準に達しないんだ、それでは意味がないだろう。毎回毎回何度も亡者の様に同じ事を!その口に死隷核を大量にぶち込んで、操ってやろうか?そうすれば多少は俺もお前もましな精神常態になるだろうさ。」


その返答が面白いのか、メビウスは笑いを噛み殺す。死隷核に生きている人間を操る力はない〈死んでいる頭〉でなければ、これはグレッグ流の皮肉だ。


「くっくっ、いやスマン。皇太子の俺にそんな減らず口を叩くのは世界でお前だけだよグレッグ。まるで死を恐れてない。」


「俺は〈今日死なない〉と確信してるからな。」


メビウスはその言葉の意味を考えたが、彼は作業を続けるだけだった。彼の性格なのだろうと結論に達して、再度アドバイスをする。


「宮殿の植木係が新人に言っていた言葉がある。植木に肥料を〈なるべく与えるな〉と。酒場の店主はビールをジョッキ注ぐとき新人に忠告をする〈たくさん入れるな〉と。あるパン屋は生地をー。」


グレッグはメビウスに振り向く。


「これはそれらとは違う。人が使うものだ。」


「同じだよ、商品と商売の考え方は常にな。〈満たして満足するのは作った本人と心卑しい客だけだ〉」


ギロリとグレッグが睨むのでメビウスはわざとらしく、怖がる素振りをして笑いながら研究室を出ていった。


「、、」


グレッグは分かっていた、だが完璧を求めたい気持ちもある。試作段階で手を抜いてしまえば、結局粗悪品が出回る事になるからだ。これは魔術師として、グレッグ本人の矜持が許さなかった。


しかし、グレッグは最終的に彼の意見を半分採用する事になる。



「死隷核には全ての構成図を組み込む必要はなかった。日常生活には様々な指向性機能は必要だが、瞬発性能と筋力はそこまで必要ではない。逆に農作業には指向性を減らし力を、狩りには持続性を減らすことで構成図を簡易化する。それによってコストを抑えることに成功した。」


「ではその方向で進めてくれ。あと魔術道具ではなく、※1魔導具という呼び名になる。量産化については今後、※2北方ほっぽう教会とも話をつけなければならないな。」


※1、魔導とは魔術を人の道、つまり人の生活に役立てる為の魔術の事をいう。数百年前にはロウマール地方にも沢山のシャーマンや導師がいたが現在ではその人数は非常に少ない。バルバロス王国ですら魔術師は多いが魔導師は少ない。


※2北方教会はロウマールに根付いた宗教〈ロウマール教〉の教義を説く。


そうしてメビウスに許可を貰い、更に数年を費やしてようやく魔導具を完成させたのだった。



「グレッグ導師有難うございます。」


グレッグは今日三人目となる、利用者の魔導具の調整を行った。魔導具は基礎となる単純な魔術回路のみ組み込まれていて、魔術回路の細かい調整を数回行うだけというものだった。利用者はそれぞれ自分に合った魔導具を選んで購入するので、利用客の不満はそこまでない様に彼は感じていた。


彼は彼なりにこの仕事にやりがいを見つけていた。〈蔑まれる死隷魔術〉が他人から認められ、行為に感謝される。彼の荒れた心は徐々にではあるが癒されていった。


午後に差し掛かろうとするときにメビウスが彼の元に訪れる。


「はあ!軍の開発部に移動しろだと!なんだ、何でそうなった!」


「最近は〈死者の体〉を冒涜しているという教会の考えが巷に蔓延していてな。確かに〈教会が清めた手足〉はその考えから外れるが、清めた手足はかなり高額になるし処理されていないモノが出回る事は覚悟していたが、、。考えを無理矢理広めたのは教会だろう、管理を徹底しろと無言の圧力を仕掛けてくるとは考えていた、小銭稼ぎが趣味の奴等らしいやり方だ。」


「それと今回の人事移動になんの関係がある。」


「ハッキリいえばあまり利益の出ない〈福祉魔導具〉の開発から離れてもらい、今後ロウマール帝国に必要な科学兵器開発を手伝って欲しい。もうグレッグがいなくても工房にいる弟子でも技術的に十分なはずだ。銃もそうだが武器や兵器は金になる。金を手に出来れば国が潤い国民が豊かになる。一人を救う金で未来の10人を救えるんだ。」


「なら更に〈魔導具〉利用者が増えるな。嬉しい限りだね。」


グレッグにもわかっていた。これでは教会を肥えさせる為に〈魔導具〉開発した様なものだった。


「やることは機械に魔術要素を取り入れられるのか、という革新的な魔導研究だ。昔から行われていたが魔導師の数も徐々に増えてきた今が絶好の機会。これからこの科学分野は更に成長するだろう、それに魔術を取り入れられるか知りたい。」


「、、、。」


会話に気まずい雰囲気を感じたのかメビウスは近くに控える死隷のレイアに目を向けた。レイアはそれを感じメビウスに話し掛けた。


「ナニカ、、ゴヨウデ?」


「?!」


死隷が喋ったことに驚くメビウスの問に答えるようにグレッグは話す。


「俺の弟子の技術の応用だ。本来他の死隷核との同調は上手くいかないことが多いが。この同調技術で死隷核の連結、複雑化か可能になった。話す機能は医者を目指していた男が発見した技術で、最近では感情の付与も可能になりつつある。」


「、、凄いな。もう普通の人間と変わらないんじゃないか。」


「、、駄目だ、、これは〈レイア〉じゃない。だがいずれ、、」


その言葉にメビウスはグレッグの目的を理解した。しかしその事をグレッグ自身が話すまでは胸に秘めようと心に決めた。


後日、グレッグは科学兵器開発部の魔術動力系課の課長就任。これにより半年を経てガルンセル初となる〈戦車〉の試作機が完成する。これはバルバロス王国〈歩兵戦車〉よりも二十年以上も先であり、歩兵戦車が流通するまで陸上においてロウマール主力兵器であった。



**************************




確定時間:グレッグ接触四時間前。


日が登る夜明け前、宇宙船はロウマール帝国セルツェ・スターリ東の山脈上空で待機していた。


「宇宙船の外部スピーカーを調整。」


『いつでもいいよ、アーちゃん。』


「発射。」


アルドはブリッジで時計を確認する。時間にして数分、それぞれの場所で同じ行為を繰り返す。


「変化は無いが、、変化はあるのか?」


「問題ないと思います。人の聴覚では拾えない超音波ですので。次にドール量産で更に四体のドールを追加します。今後の作戦と所持する武器のリストはあれでよろしかったでしょうか。」


アルドは目を通しただけの作戦書類を思い出す。


「改めて思い返すと、ちょっと破壊活動をやり過ぎな気がするが、、治安が悪化するぞ。」


「少ない兵員で作戦を遂行するためには、この方法が最短かつ確実だと思われます。もしロウマール帝国指導者がこれ等を無視するのであれば作戦を改め、接触を遅らせる必要があります。」


遅らせるという言葉はアルドに作戦を受け入れさせる為のマジックワードである。効果は絶大でラウラはアルドに納得させたい場面に最近よく使用する。勿論これはアルドの身を案じているからであり、貶める意味はないが。


「はぁ、分かった解ったよ。」


「では、第一班をワープさせ作戦行動を開始してもらいます。第二班も同様です。レフト・ライトは歩兵戦車で待機し、何時でも作戦可能になります。」


「レフト・ライトは操縦が出来るのか?」


「ある程度の学習機能があるので、一般兵士並みですが操縦は可能です。高火力広範囲の武器は念のためで使うのは交渉が決裂し事態が進行してからになります。」


ラウラの作戦は段階を踏んで過激になっていく、グレッグとの接触から12時間が経過すると同時にセルツェ・スターリは火の海、、いや文字通り消滅する。


「なるべくなら話し合いで決着をつけたい。」


「私もそのつもりです。しかし、この相手の出方や遺物が使用できるのかを確認できない以上〈油断〉は出来ません。」


先程賽は投げられたのだ、どんな目が出ても〈引き分け〉か〈勝つ〉、問題なのは納得できるか出来ないかだけである。


「では坊っ、、いえ、アルド様に一つだけ言葉を送りましょう。もし仮に相手が遺物を使用できるのなら〈ご家族〉の肉体を利用・コピーしている可能性が高いです。つまりー」


「使用しているのなら敵の可能性が高いってことか、、」


「少なくとも〈善人〉ではないですね。ですから、躊躇することは死を意味する事を覚えておいてください。」


「ああ、、わかった。忠告有難う。」


敵意はないが何かを含んだ表情でアルドは只座ってモニターを眺めていた。





朝、グレッグは普段通りにレイアが横で眠るベッドで目覚める。日課となった〈廻点時計〉を起動する。


ー覚醒・そしてー


先程の寝ぼけた三十代ではなく、いつの間にか年を経た老戦士が覚悟を決めた様な雰囲気を身にまとっていた。しかし彼は何時ものように朝食を取り、弟子を従えレイアと共にガリアス宮殿に向かう。


サウザントタワーからガリアス宮殿へまでの道は800メートル程。途中は庭園や小さな綺麗なガラス張りの小部屋が建っている。そこを通るのは政治家や貴族が殆んどであるが、その中に黒を基調とした服装の美しい麗人がいた。


グレッグの弟子は女性かと思ったのか顔を赤らめて、麗人が近付いてくるのを眺めていたが、麗人が道の中央で立ち止まりグレッグの道を塞いだ事に疑問を持つ。通行の邪魔になると注意しようとした弟子の言葉をグレッグは遮る。


「、、、止めておけ、お前達では勝てん。〈黒騎士〉話がある、そこの部屋までいいか?」


ガラス張りの展望台を指差すグレッグに頷くコウモリ。


「なるほど会ったのはコレが初めてではないか、、不思議なものだ、〈私〉は初めてなのだがな。これが〈片道切符〉の力か。」


「お前に対して敵対行動をした瞬間から作戦が開始されるのは分かっている。ルート変更も無意味ならこれしか手がないだろう。」


「、、なるほど、それで話とはなんだ?取引に応じるのか。」


グレッグは〈廻点時計〉をいじりながら、コウモリに提案をする。


「、、協力してくれ。そうすれば今日午後21時にこの〈廻点時計〉をお前達に返そう。成功すればだが、、」


「、、協力か、、フム。」


それはコウモリには返答しかねる問題だった。罠の可能性はある、ラウラの作戦ではこうした場合話を聞いて指示を仰げと命令されていた。


「分かった。話を聞こう。」


瞬時に鎧を着こんだコウモリはグレッグに近付く、ラウラが盗聴機から話を聞きやすいようにである。そしてもし自分に何かをしたとコウモリが判断すれば戦いの先端が開かれる。


予想に反しグレッグは内容を話すとコウモリと別れ、目的地に向かう。今日という一日を終わらせるために。




後二話で終わるのか?

終わりが見えているのに遠い、、。


というかこりゃ、仲間の加入は章の最後だな。

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