異次元収集家アルド 四章9話 グレッグの長い1日編
多分問題ないはず、、問題ない!多分。
ガントレットと腕輪を入手する順番を変更。直すの忘れてた。
いつもの様に誤字脱字は気付いたら修正します。
途中グルッグとグレッグがごちゃ混ぜなので修正、グレッグの方が何かシックリくる。
後護衛の数を減らしました。二人、、まぁ二人でも三人でも関係ないけど戦闘シーンを短くするために。
十数年前ー
バルバス王国辺境にはガーデンブルグの村がある。平凡で豊かではなく、だが貧しくもない村。そんな村に冒険者達がやって来た。
ガバレボ討伐の冒険者集団である。
リーダーはガンリュウ・ムソウ。大陸一の槍術の使い手であり、過去にもガバレボを捕らえた功績がある大男である。その仲間の大半は能力は優れ、性格もどちらかといえば秩序を重んじた。
しかし中には、悪、、いや手癖が悪い人間が混じる。
グレッグ・バーマン。
彼は若い魔術師であり、魔術の中でも珍しい死隷魔術を操る事が出来た。死隷魔術は生き物などの死骸を操る魔術で、人間や動物の死骸に核となる複雑な魔術構成図描かれた※死隷核を埋め込むことで発動する。
※死隷核はスタッフやワンドの様な長寿の木を利用して作られた木片が材料。長寿であるほどに回復・貯蔵量が増大する為に高級品のスタッフなどを加工する際の廃材で作られる場合が多い。大きければ魔術構成図を多く描けるため優れた死隷を作れるが、材料の質が悪いと供給されるマナの量が足りず動作に問題が起こる。
死隷は死骸の損傷が少なく、死んでから時間が短ければ短いほどに身体能力が高いものが生まる。損傷がなく一週間以内であれば生前通りの強さ、それから徐々に能力は低下して1ヶ月ほどで本来の能力の3割まで低下する。勿論死隷は魔術が使えないし、骨だけで動かせる事も出来ない。
しかし核は大体一月にひとつ作れるし、魔術を使えば死骸の劣化は抑える事が出来、死骸が破壊されても核さえ無事であれば再度別の死骸に使用できるメリットもある。材料が戦場なら手に入りやすく安価、何より核を作った人物に忠実であるところと、死を恐れない事がいいと彼は考えていた。
レイアというアダ名の最高の死隷核を埋め込んだ美しい女性の死隷と二体の熊(大型で全長3メートル弱)の死隷を従えてこの戦いに参加したのだが、結局ガバレボは見付からず作戦は空振りに終わった。
「、、、。」
彼が見付けたのは女と男の死体だ。基本的に死体があると眺め使えるかを考える癖がある彼は他の死体と違うことに気が付いた。特に死体の骨格がこのガルンセルでは見掛けない非常に珍しいタイプだと感じた。彼の着けた白銀に輝くガントレットが気になって触る。
「、、今は不味いか、、。」
周りには良い子だらけで、そんなことをすれば自分の立場が悪くなる。奪うのは皆が寝静まった時か、皆が死体から離れたときが良い。そう考えるグレッグ。
遺体が焼かれる前に時間がない状態だったので腕ごと死隷熊に食べさせると、死体を再度布で包み分からないように細工をした。
その後、討伐隊パーティー解散の間際にあることを聞き付けた。
ガバレボに殺された住民は〈ナガレモノ〉で多数のアイテムをこの世界に持ち込んだということをこの時に知ったのだ。余計な情報を流した人物を非難すると共に自分の目に間違いが無かったことを痛感するグルッグ。
「これは奪い合いになるぞ。」
しかし蓋を開けてみると、皆そそくさとガーデンブルグの村からいなくなる。グレッグもいなくなる振りをして違う道から村へと戻った。
夜中村人が寝静まった頃を見計らい、彼は目的の家に侵入する。
「鍵が掛かっているな。」
大きな錠が掛かるドアを死隷熊の前肢で壊すと暗い室内へ侵入する。レイアと死隷熊を入り口に立たせると携帯カンテラに火を灯して部屋の中を物色し始める。
「銀色の棺、、材質がガントレットと似ているな、、これは重くて持ち上がらないし繋ぎめもない、、入れ物ではない?。他に似たものは銀色の棒位か、、」
材質は似ているが見た目は只の銀色の棒だ。大した価値があるとは思えなかった。ガンリュウも長い杖と指輪、四角い箱を親の形見として持っていった事を考えると、これで打ち止めかもしれないと考えたグレッグは銀の棒を懐にしまいバレないように村を出ようとする。
ヒュン、ガッ!
俺を庇うため自動で判断して動いた死隷のレイアの肩に、矢が突き刺さった。暗闇、遠距離からのピンポイントショット。それを感じたグレッグはカンテラの明かりを消して、死隷熊を矢が打ち出された方向に向かわせる。
「間接的に殺しにかかったのは、接近戦よりも遠距離の戦いに馴れているからか、それとも簡単に俺を倒せると思ったからか。俺の死隷熊は鼻が良い、逃げ切れると思うなよ。」
逃げても追撃するだけだと考えるグレッグ。
叫び声が聞こえ、木からなにかが落ちる音の方向へと駆ける。
反撃や狙いやすさから木上からの狙撃したのだろう。だが熊は木登りが上手く引き摺り落とされた時に、首の骨が折れたと思われる敵の死体を発見する。冒険者風の男でガバレボ討伐隊で多少見掛けた記憶がグルッグにはあった。
グルッグは躊躇なく男の体を探ると同じ様な材質の懐中時計と死体が身に付けている白銀の腕輪を発見する。グルックは同類だと結論付けて、死体の首に簡易用の安価な死隷核を巻き付ける。本来は外れないように頭にドリルで小さな穴を開けてそこに死隷核を埋め込むのだが、そんな事をしている時間はなかった。
「モタモタしていると他の冒険者に気が付かれるな、、いや近場の村も危険か、、只でさえ俺の死隷は奇異の目で見られるからな、となると少し離れた森の中に暫く身を潜めた方がいいか、、そうすれば、、」
グレッグはそう考えガーデンブルグの村の外れの洞窟に一時的に身を隠したのだった。
*
「駄目か、、」
ガントレットがついた腕を死隷熊から慎重に取り出し、戦利品であるガントレット・腕輪・時計・棒に特別な力がないかを色々と試すが特に反応はなく。2日を無為に過ごしていた。懐中時計は針すら動かず壊れているし、その他のモノもただの装飾品に近かった。
「魔術による反応ではないのか?それとも只のガラクタか?」
だが素材がとても優れていて、どんなことをしても傷一つ付かない事を考えるととてもそれだけとは思えなかった。仮に持ち主が使え、自分が使えないとしたら何が問題なのだろうか?
、、そういえば、、一昔前に持ち主だけに反応する魔術道具が流行った、使用には鍵となる魔術構成図が必要で使う度に使用しなければならない不便さと、魔術道具が高額になってしまうために、現在はあまり流通していないタイプの魔術道具。それに近いものなのでは無いかと考えた。
「だとしたら持ち主は、、あの男か、、。」
洞窟の隅に無造作に投げ捨てていたナガレモノの腕に死隷核を埋め込んで、何とか腕だけを動かせる様に細工をする。グレッグにも上手くいくという考えはなく、もし何らかの反応があれば儲けものと考えていただけであった。
そのまま起動。
先ずは試しと腕だけの死隷にガントレットを装着させる。
「やはり反応は、、??」
気のせいかも知れないがガントレットが少し光った気がした。気になって触れても何の反応もない。棒と腕輪は何も変化は無かったが、懐中時計には大きな変化があった。
腕に持たせると懐中時計が光り、様々な文字とエネルギー量と思われる表示が浮き出て4つの突起が懐中時計からせり上がる。光輝く姿に神々しい何かを感じグレッグは感動する。しかし、触れてもかたくて反応はない。
「本人ではないと使えないのなら、、加工してみるか。」
グレッグは腕を手首から切り離し、その中の骨などを取り除く。皮になったものの中に木製の型を入れ皮を伸ばしながら加工すると、外側に防腐材入り強度補強用の糊を塗っていく。数度糊を塗った跡に魔術構成図を満遍なく描いていく。それは〈手が生きている状態に近くする魔術〉である。
その作業を数日続け、ようやく〈ナガレモノの左手袋〉が完成した。魔力を手袋に流すことで作動し、持ち主に成り済ますことができる魔術道具。グレッグは手袋を付けると懐中時計を手に持った。
ヴィーン。
死隷の腕と同様に懐中時計は反応して、4つの突起がせりあがった。グレッグは一番押しやすい左の突起に恐る恐る触れる。が押し込めない。真ん中の上下二つも同様で押せなかった。最後に残った一番右端の突起を押し込む。
カチリ。
音がしたー
「、、反応がない?」
懐中時計を見ると光ながら、表示されてある文字が進んでいるように見えた。
「成功だ!」
一番右端をもう一度押すと秒針と文字表示が無くなり動きが止まるため。起動用の突起であると結論付ける。
続いて、中央の上の突起に触れる。起動しているからかカチリと今度は反応があった、しかし押された突起は直ぐにまた元の位置に戻る。グレッグは何度も押して確認するとどうやら〈針と表示が元に戻る〉だけ様だ。もうひとつの下の中央のボタンは変わらずに動かない。
最後に左の突起を押すー
「??なにも起きない?」
〈一瞬立ち眩みがして〉針と表示が元に戻ったが、それだけだった。
グレッグは懐中時計への興味を無くし携帯用の時間計測道具にしようとポケットにしまう。
そして他のナガレモノに興味を移す。腕だけの死霊の腕に腕輪を嵌めて撫でた。
ビリ!
「痛っぅ!」
電流のような反応があり、腕輪の中から弾みで何かが飛び出した。それは七色に輝くスフィアだった。動力源なのか一瞬だけ開いた腕輪にもう先程の反応はない。
「宝石か、、かなり綺麗だ。」
宝石を懐にしまい。先程の痛みを忘れるために腕輪も懐にいれる。残るは白銀の棒、、
「、、死隷核が反応しない?」
どうやら、死隷核の魔力を使いすぎたのだろうと、他の死隷核に変えても全ての死隷核の魔力が無くなっていた。
「バカな、、!」
良くわからなくなったグレッグは混乱状態で沸騰した頭を冷やす為に洞窟の近くの川で顔を洗う。勿論護衛の死隷すら動かないために、洞窟の入り口に倒れたまま放置してきた。
「最悪の状況だな、、何が起こったんだ。」
考えられるのは先程の腕輪である。
しかしどうすれば良いのか水辺に腰を置き暫く考えていると。
村の方で煙が上がっているのが見えた。
、、??あの方向はナガレモノがあった例の小屋の方向、、
「まさか!!?」
グレッグは一抹の不安を抱え洞窟に戻る。
洞窟は燃えていた、死隷も同様である。しかし死隷のレイアは自動行動が上手くいったのか無傷だった。片手に剣を携えていたところを見ると何者かが洞窟に入ったが〈勝てないと判断〉して一時的に後退したようだ。
「これはファイヤーボールだな。」
物凄い熱量で死隷熊が燃えているがグレックはたいして気にはしなかった、大事な死隷のレイアは無事、さらに再起動したということは死隷核に問題が残っているわけではないということだからだ。
だがグレッグがレイアに近付くとまたレイアはバタリとその場に倒れた。
「、、、私が近付くと、、動作が阻害されるのか?成る程。」
問題はどちらのナガレモノ性質かだ。グレッグは腕輪をファイヤーボールの炎に放る。パチリパチリと炎の状態は変わらない。
「、、やはり本体はこっちか。」
グレッグは七色のスフィアをファイヤーボールの炎の方向に軽く転がした。
スー。まるで幻のように炎が消える。
「、、凄い。アンチマジックが組み込まれたスフィア、、」
だが、自分の死隷魔術と恐ろしく相性が悪い。特に持っていると大事な作品のレイアと〈夜の営み〉が出来ないのはハッキリ言って最悪の部類に入る。
これだけ凄いナガレモノなら、他のナガレモノにも特殊な効果があるかも知れないな、と懐中時計を懐から取り出していじる。
カチリ。動き出す秒針と表示。思わず触って起動させてしまったようだ、だがグレッグは気にせずに懐中時計を見る。
「ふふっ、これも特殊なー」
タタタッ!
ザシュ!
「がはぁ!!」
奇襲。グレッグは炎に気をとられ、背後からの敵に気が付かなかった。倒れたグレッグが最後に見たのは冒険者風の男、片手に剣を持つ戦士だった。
「へへへっ、やっぱり持ってやがったか。」
グルッグの手に持った懐中時計に触れるー
*
〈立ち眩み〉がする。先程まで襲われ地面に倒れていたのにいつの間にか立っている事、そして傷が治っている事にパニックになる。
「何だ!俺は、何が起こった?!」
タタタッ!
ザシュ!
「がはっ!」
先程と同じ痛みがグレッグに刻まれ、再度地面に転がる。
「へへへっ、やっぱり持ってやがったか。」
そして男の手が懐中時計に触れたー
*
【立ち眩み】がする、そして同じ状況。これでグレッグも確信する。
「繰り返している?!」
それしか考えられない。となるとー
タタタッ!
足音が後ろから向かってくるのを感じ、グルッグは後ろを見ずに反射的に前転する。
ブン。
回避する。
そして、相手と向かい合う。
「へっ、只の魔術師かと思ったがかなり出来るじゃないか。俺に気が付いて咄嗟に回避するなんてよ、やはり魔術以外にも何か心得があると思って、川原で殺らなかったのは正解だったな。」
やはり姿は先程襲ってきた戦士風の男、片手に剣を持っている。
「いきなり襲ってくるとはな、何のようだ?」
「ナガレモノを寄越せ。じゃないと殺す。」
「殺す前に言え。」
「??」
グレッグは魔石をポケットから取り出すと、仮想領域に魔術構成図を描く。
がー。
ドズ!
戦士風の男が予備動作無しで投げたナイフが手に当たり、魔術構成図が霧散する。そして戦士が一瞬にして距離を詰める。
「がぁ!」
ドサリ。
グレッグは戦士の袈裟斬りの一撃を受けて地面に倒れる。傷口から大量の出血。男はグレッグの手に持った懐中時計に触れた。
*
*
*
奇襲を仕掛けてきた戦士の攻撃をグレッグは前転で回避すると同時に、懐から魔石を取り出しながら〈事前に考えていた〉魔術構成図を使用する。
ズドン。
ストーンバレットを下腹部に食らった戦士は地面にそのまま前屈みに倒れた。貫通したのか、出血はかなりのものだ。
「がっ、、」
グレッグは戦士を足で乱暴に仰向けにする。
「、、やるな、、この俺が手も足もでないとは、、。」
「お前は強いよ、30回に一度、、いや初見では勝てなかったし様々な技術もある、正直に戦闘能力は俺よりも上だろう。俺が倒せるチャンスは〈奇襲が成功した〉と気が抜けたこの時しか無かった位だ。」
「何のことだ、、まぁいい、、お前も俺達の事を知っていた、、それだけのこと、、か。」
「一応聞いておく。お前の仲間はガントレットと白銀の棒を持ってこの村から、すでにいなくなったという事で良いんだよな。」
その言葉に少し驚いて、何かを納得したのか戦士は薄く笑う。
「ああ一人一つずつ。俺は回収役も兼ねて頂く筈だったが、、な、、これ以上はしゃ、、らない、、。」
「分かっているさ。楽な方がいいなら、介錯するが。」
目を閉じた戦士に止めをさすとグレッグは洞窟へと目を向けた。
「ブラフの可能性もあるが一応洞窟の中を探してみるか、、」
グルッグが炎が消えた洞窟で、ナガレモノの有無を確かめる。
「、、、見当たらないな、、。結局この時計とあの腕輪だけになったか。」
グレッグは懐中時計を取り出すと、懐中時計の上部分にある突起を押す。そしてカウントが初期化される。グレッグの考えが間違っていなければ、多分これが過去の遡る起点となるスイッチだ。ここを死んだときの起点とした理由は、何度も戦士と命を賭けた戦いなどしたくはないからだ。
「まだ、分からない部分があるが、、時間を遡る事が出来るアイテムか。魔法、、無敵に近い。」
こんなナガレモノを多数所有しておいて死ぬとは持ち主は相当な馬鹿か、人を警戒する事を知らないお人好しだったのだろう。
グレッグは奪われたナガレモノの行方を追うために村に向かう準備を整えるのだが、次元砲とハンドリンクはその時点で回収不可能な場所に存在していた。グレッグがその事に気が付くのはもう少し先となるのだった。
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確定時間:作戦開始前日
「最後の遺物はロウマール帝国にあります。」
「ロウマール帝国か、、。」
アルドですら知っている中央大陸で最も国土が広い国、それがロウマール帝国である。バルバロス王国から北に高い山脈を越えた場所に存在し、数百年前バルバロス王国の従属国であった。国土は大陸の四分の一、横に広がる圧倒的な国土を保有する国とは裏腹に土地が貧しく、獰猛な獣や異生態、ゴブリンなどの亜人が多数住み着き、未だに裸で暮らす部族や道すらない場所が多数存在する未開の地。
又貧富の差も激しく、都市部と地方との収入の差は100倍にも及ぶ。治安や地方政治も腐敗していて、貴族達が私利私欲のために民を虐げる事が日常茶飯事だった。だがそんなロウマール帝国にも希望があった。若き皇太子メビウスである。
メビウス皇太子は36歳、20の頃に政治の世界に足を踏み入れた。〈能力のない世襲を廃し、新しき秩序を〉それが彼の目指す帝国であり。父親、ロウマール5世が病に伏し政治の片翼を担うことになってからは益々強肩を振るって貴族の改革へと乗り出していた。反発は相当なものであったが【反乱者】は全て彼に無能の烙印を押されたもので、更にそれを証明するかのように彼の指揮する※同等の兵力に完膚までに粉砕されている。
※同等なのは人数が多ければ税収が少ない国庫に負担が掛かる、少なければ余計な兵が死ぬから。立地が優位な場合ならメビウスは同等ではなく少数精鋭を率いて戦って勝利する戦法を好んだ。
〈反乱は罪ではない、私を倒せなかった事が罪なのだ。〉彼はこう語り、自分を倒したのならその人物が皇帝の器であると主張もしている。勿論主人を殺した反逆者に付いていく配下はいないがー
そんなロウマールは彼の方針により、魔法よりも科学を遇してきた。〈魔術を用いるには才能がいる、だが科学を用いるのに才能はいらない。科学の使用に必要なのは使う知恵と経験さえあればいい〉との言であるが、実際は魔術の資源となる長寿の木や魔石が発掘される鉱山が無かった為である。敵対するバルバロス王国と貿易し、土下座外交の末、貿易赤字を垂れ流す事を良しとしたならば彼の人気はそこまで高く無かっただろう。
「確か、最近じゃあ液体で動く馬車みたいなゴーレムを作ったとか聞いたことがあるな。戦車の様だが、、歩兵戦車とは違うらしい。」
「はい。軽油を原料としたディーゼルエンジンを開発したようですね。軍も初期の小型戦車を大量に所有しています。流石にブリジャーノックの様にドールだけでは厳しいかもしれません。」
ブリッジにてアルドとラウラの話を聞いていたアリサは恐る恐る手を上げる。
「あのさ、、全く関係ないけど、一つ良い?」
「??なんだ?」
「誰こいつ?」
ブリッジにはアルド、ラウラ、アリサの他にもう一人長い金髪を後ろにまとめ女性のような美丈夫が腕を組んで座っていた。骨格は仕立屋など見る人間が見れば男に見えるが、顔は女性のように整っていて高い鼻と大きく横長の目をした美青年、肌も極めが細かく絹のように輝いている。アリサは眩しいものを見るように「うっ眩し」と手で目を遮る。
「「蝙蝠だ。」」
「??あの全身黒ずくめの鎧男?!、、オッサンじゃ無かったの?」
「、、娘よ、私はオッサンではないぞ。私には最早決まった性別はない、思考する魔法的存在の鎧それが私だ。本体である〈鎧〉は魔法のモノでいつでも魔法で呼び出しが可能だ。この船で平時に鎧で行動するのは色々と問題が多いのでな、、、フム。」
「今回の回収には彼に使者として手伝ってもらおうと思います。アリサさんは生身ですから流石に殺されるかもしれない使者や、大多数を相手に乱戦となると些か、、」
単純に言えば足手まといと聞こえたのか、渋い顔で肩を竦めるアリサ。
「今回はロウマールの首都セルツェ・スターリ、高級官舎サウザントタワー及び政治の中枢ガリアス宮殿にハンドリングの反応がありました。ここは一般人が立ち入る事が出来ず、軍事や政治を担う皇帝一族、貴族又は元老院つまり政治家のみとなります。しかし元老院は民衆から選出される一般人なので、会議終了後には一般市民の住む区画に移動します。遺物を持つ人物の行動パターンはそれとは違います。」
「成る程、だから今回の作戦には時間が掛かったのか、、」
旅人の一般人であるアルド達では入れない区画での行動。なるべくなら一度の接触で持ち主と話し合う、それが目的ということだ。情報収集で今後相手の行動をある程度予想できたからこそ今回の召集と作戦会議ということかと推測する。
「遺物を持つ人物は夜サウザントタワーの内部のここで過ごし、昼間をガリアス宮殿で、又夜にサウザントタワーに戻るという行動を繰り返しています。ホログラフィーをご覧下さい。」
アルド、蝙蝠、アリサの前に空中投影された3D画像が表示される。中央に映るのはローブを身にまとった男性、年は30代だろうか。美しい女性騎士と護衛の兵士二人を率いている。
「所有者は中央の〈彼〉でしょう。」
「魔術師みたいね。」
「はい、科学を推進するといっても完全に魔術を排除することは、魔術技術の可能性の放棄にもなります。また科学と魔術という相反する二つの技術を組み合わせることへの否定にも繋がりかねません、その道はとても厳しいでしょうが、、。兎に角、彼は魔術分野の顧問と見た方が良いでしょう。」
ラウラは続けて考えを述べた。
「ブリジャーノックではワンオブザワールドの回収に成功しましたが、ある想定外の出来事に直面しました。【使用されている】という事実です。」
「確か遺物にはプロテクトが掛かっていて、承認されないと他人には使用出来ない事になっているんだよな。」
「、、この点において考えが及ばなかった事申し訳ありません。盲点つまりは〈科学〉ではなく〈魔術〉によるプロテクト解除方法も考慮するべきでした。プロテクトには3通りあります。一つは生体認証、二つ目は生体認証とハンドリンク、最後はそれを組み合わせ、更に強固な魔法のプロテクトを使ったものです。」
一段階目の生体認証とは同じDNAと生きている時に発生されるパルスに反応するプロテクト。そして二段階にはハンドリンクとの電子シグナルと組み合わせる事で更に強固なプロテクトを作り出している。最後のプロテクトは一種の魔法の類いであるために詳しくは分からないが魂の形を記憶してそれに反応するらしいとのこと。
「〈次元砲〉以外は全て第一段階と第ニ段階のプロテクトなので、今回の遺物を相手が使用する事も視野に入れて回収を行った方が良いでしょう。」
「片道切符のプロテクトはどうなっている?」
「使用に第一プロテクト、細かい操作には第二プロテクトが必要になります。簡単にいえば使用すると最大出力で片道切符を使用し続ける状態でしょうか。もし仮に相手と戦い・奪い合いになるのでしたら、相手に片道切符を使用させながらエネルギー切れを誘い、精神的に揺さぶる。且つ相手に座標固定を誤らせる様に確実な手で追い詰めることが重要になると考えます。」
「確定世界の話か、難しい話は苦手なんだが、、。」
「この〈確定世界〉で先制攻撃をされる事はそのまま、相手に必勝の策があることを【こちらが負ける事】を意味します。我々は鉄壁の布陣を敷き、相手の兵糧切れを待てば良いだけの事。奇襲、奇策は相手に反撃のチャンスを与える愚策となります。」
作戦案に目を通しながらアルドは頭を捻る。確かに確実ではありそうだが作戦開始までの下準備が長過ぎる感じだ、まるで蝸牛の歩みだった。
「ふふふ【本当に呆れるのはこれから】ですよ。言うなれば互いの手札が全て分かっている〈ポーカー〉ですから、こちらが試合放棄しなければ先ず負けません。手札の強さはこちらが上ですのでこれを有効に使わせていただきましょう。」
得意満面の笑みを見せるラウラに一同は悪魔の微笑みを見て、凍りつく。それからラウラは別資料の情報に切り替えた。ドールの増員計画とドール用の※簡易戦車・戦闘用ヘリのファクトリーキューブによる製造についてである。
※これら一般兵器の基本的ソフトは船内に存在するので、製造使用可能。
「対象の生活リズムは把握しています。片道切符を使用する・セーブするのならば、まず始めに起床後に使用するはずです。作戦開始時間を0600時に設定して、0800蝙蝠には使者としてサウザントタワーとガリアス宮殿の間で彼と接触をしてもらいます。片道切符と交換もしくは金銭などの取引ですが、相手が拒否した場合は別資料のマニュアルで対応してください。」
次に資料を捲る。
「アリサ様、もし生体認証の解除方法があるとしたらなんだと思われますか?」
「魔術による姿変えは効率が悪くて持続力がないからあり得ないわね。同じ素体を使ったホムンクルスとか、、魔術道具かな。魔術道具関係なら装飾品にプロテクトを解く魔術を組み込んでるヤツもあるし、、」
「なるほど、では作戦は上手くいきますね。」
ラウラが考えたのは〈第三の可能性〉だったがそれも無さそうだった。ラウラもはじめからそこまで期待はしてはいなかったが。
「〈彼の事〉を私は存じません。それに装飾品からナガレモノの可能性も少ないと思われます。第一の科学的な解除では無く、第二の魔術を使い解除している可能性でしたら、対応出来る手はいくらでもあります。」
問題は始めに【決定打】を打つのか否か。
ここは慎重に慎重を重ねた方が良いだろう。
アルド陣営は着々と準備を進めるのだった。




