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異次元収集家アルド 四章3話

アルドの日記3

他人を助ける、援助する場合。気を付けなければならないことがある。手伝わなくても苦労なく成功する、援助しても状態がほとんど変わらないそんな場合。


意味がない所か、悪化する場合もある事を。


ジュースを作るのならばオレンジを強く絞ってはいけない、とはよく言ったものである。


**************************


出航から2日目の夜、オーツク・カイドー は船長室に人気を感じてゆっくりと身を起こした。相手からの殺気はなく、危害を加えようとする者ではないと感じたからだった。


「2日ぶりだな。」


「君は、、確かパーティーであった。アルド・ガーデンブルグ、、だったか。はて、出航時にはいなかった筈だが、、」


薄暗くてはっきりとは確認出来ないが、立ち居振舞いと言動でそうであると確信するカイドー。


「コレを使ってくれ。勿論強制はしない。」


アルド・ガーデンブルグは備え付けの卓上に小さなコンパスを置く。それは羅針盤や他のコンパスとは違う方向を指し示しているのが分かった。


「これは西大陸の一番先端の岬の灯台、その方角距離を指し示している。それだけといえばそれだけだが。」


「、、有り難くいただくとしよう。」


「頑張ってくれ、、」


アルド・ガーデンブルグはそういうと、ドアを開けて部屋を出た。閃光のような光が辺りを包んだあとカイドーは後を追ったが、その姿は幻のように消えていた。




半日前ー


「東海洋へ出発する。」


《到着したよ。》


「、、、速いな。」


アリサから手紙を受け取った翌日、アルドはライフェルト商会の大きな倉庫での取引をする。鉱物の量は小型の家ほどもあり、それをファクトリーキューブで収納した出来事はライフェルトを瞠目させたが取引自体は上手くいき、手紙の件も伝えラークの町で準備も整えた、残るは《東海洋海底》である。


「、、東海洋踏破の商船はどうだ?」


《北東へ向かっているよ。多分中央を出来るだけ避けて航海する計画かな。》


「上手く行くのか?」


《可能性は低いかな。そもそもその位で踏破できるのなら、とっくに踏破されているから。中央部は必ず通らなければならないし。》


「海流や風向きの変更は難しそうだが、妨げになる生物などはなんとか排除出来るだろう。影響が少ない範囲で踏破できるようにサポート出来るか?」


アルドの想像では流石に海流を変化させたり、船を動かすような風をその地に発生させ続ける装置は流石にないだろうという判断だった。


《船の進路上のクジラを威嚇し分散させて、海鳥の寝床である難破船を破壊回収。西大陸への最短ルートの岬に灯台と電波装置を設置、受信装置を踏破船に設置かなぁ。材料も少なくて済むし。》


アルドは頷くとサポートに向けた作戦を実行に移したのだった。




現在ー



目前にそびえ立つオーガユニットを確認する。大きさは五メートル四方で覆い被さるようにバックパックが取り付けられている。背中の肩甲骨等辺に二つ、ふくらはぎに一つずつスクリューが備え付けられていてとても歩きにくい印象を受ける。そしてお腹には有線で繋がった小型のアームが一本折り畳まれていて、オーガユニット単体でも細かな作業が出来るようになっていた。


背中のパックパックは作業ユニット。ラウラが搭乗する切り離し可能な一人用の水中用クレーンの様なもので、戦闘用ではなくオーガユニットでは行えないような細やかな作業をするために急造したものだ。


「このオーガユニットで海底4000メートル以下に沈んだ船のサルベージを行います。細かな作業が必要な作業ユニットは私が、オーガユニットはアルド様が操縦し作業ユニットの警護です。特殊な魔物や巨大生物の反応もあるのですが、武装は威力があまりない水中銃と大型ナイフですので気を付けて下さい。」


「分かった。俺も細かな作業よりはこっちの方が合っていると思う。」



モニターで映像を指し示しながらラウラは尚続ける。


「移動は錘を使用した簡易移動装置で海底まで移動して、遺物回収後に簡易移動装置の錘を外し、空気の浮力によって海上まで戻るという方法をとります。スクリューによる移動を長時間行うと行き帰りのエネルギー等が不足する場合や、音や振動で魔物や巨大生物に襲われるリスクが高くなる可能性もあるので。」


「ハンドリンクにより、遺物の位置は確認できますが海底情報は不足しているので、何が起こっても対応できるようにしてください。いざとなれば撤退も視野にいれ柔軟に対応することが求められる作戦でもあります。」


「成る程な、、」


「最後に、ユニットの装甲はかなりものですがコックピットに損傷を受けると水圧によって大破する恐れがあります。お気をつけ下さい。」


説明を受けたアルドはコックピットに乗り込み、ラウラも背中の作業ユニットに収まる。宇宙船が海面に着水するとそのまま簡易移動装置へと向かう。


移動装置の中はゆったりとしていて、床底に錘の役割の鉄屑がぶら下がっていた。


「レバーを引くと留め具が外れ、海底へ移動します。」


「このモニターは?電源はついてるのにあまり変化ないが。」


アルドは移動装置の中にあるモニターを見つける。


「周囲の状況を把握するために取り付けました。海底は殆ど光が入らず暗闇ですのでこれが周りを知るのに役立つはずです。ただソナーが劣悪なもので大体の位置しか分かりません。大丈夫だと思いますが海底の溝に填まらないようにするための装置でもあります。」


「分かった。」


ガチャン。


バシャン。ゴポポ。


移動装置が沈む。


「、、、」


「、、、暇だな。時間はどれぐらいなんだ。」


「海流や装置の形状から割り出すと大体30分程かと。この時間を利用して、今後の方針を話したいのですが宜しいですか?」


確かに話し合うことは重要だった。じっくりと議論をしたのはミューズが倒れて、超越者が現れたという時だけだったからだ。


ミューズが倒れた直後に話し合った簡単な方針は以下。


ミューズ復活

必要な物質集め

ルル・ルリを助ける

残った遺物集め(残り3個)


アルドは頷くと方針を告げる。



「ラウラたちが言っているようにすぐ他の次元に行くにはこちらの武装が中途半端なのは認める。だからこうして〈次元砲〉を回収するわけだ。だがこれでもう十分だろう、他の次元にー」


「確かに攻撃力という面ではそうでしょう。しかし防御面には不安が残ります。特に今回ミューズを復元することが最終目標ですから、あらゆる場面に対応しなければなりません。」


「だけどなー」


「必要最低限の装備は確実に必要です。装備が足りずに引き返す事態が発生するかもしれません。一番重要なことは準備を十二分にして万全の体制で物事に当たり、かつ戦いにおける損耗を出来るだけ抑える事と考えます。」


ラウラは主人の意向に恭順するが、方向性が決まる前には自分の意見をハッキリと述べる。今回はかなり反対のようで作戦前から全ての遺物を集めるように進言されていた。


「〈次元砲〉〈ワンオブザワールド〉〈片道切符〉残る遺物は他の次元でも役に立つはずです。」


「そう言えば次元砲って強いんだろ。撃ちまくればそれだけで今後は大丈夫じゃないのか?」


「次元砲は時空転移を応用し、そこに概念魔法を合わせた〈神殺し〉の銃です。当たれば超越者すら消滅します。しかし多次元の消去干渉によって、撃つだけでも次元に歪みが生じる危険性があり扱いには注意が必要です。」


次元砲で撃ち抜かれた個体は、その存在を形作る全ての要素に伝播し破壊する。それは他の次元にある〈あり得たかもしれない存在〉存在も含まれる。


仮にラウラが撃ち抜かれたのなら、ラウラに関係する記憶や記録も消去対象となるのだ。


「つまりー」


ラウラはその弱点も説明する。


凄まじい威力であるが欠点も存在する。一つは当たらなければ効果が発揮されない。速度は亜光速、命中補正機能もあるが超人クラスになると当たらない事もあるし、予知能力を持つ敵もいるだろう。


そして当たった対象者がいた次元では数十年程再使用をしてはいけないこと、これは当たった衝撃により空間に次元の歪みの様な穴を空けてしまうためだ。歪み程度なら問題ないが対象者が次元を介して存在する場合、次元同士の干渉により次元断裂が起きる。


次元断裂すなわちそれはその次元の消滅を意味する。


「威力が高い武器とは周囲に被害をもたらすことが多々あります。次元砲は各次元内では一度きり、更に勝てない場合にのみ使用する制限を設けた方が良いでしょう。」


「他の二つ〈ワンオブザワールド〉は魔法に対する防御、〈片道切符〉は、、どちらかといえば特殊な攻撃を仕掛けてきた相手への防御でしょうか。〈片道切符〉を濫用すると生への執着が薄れるかもしれません、戦術の幅が拡がりますし便利ですが。」


宇宙船にあった汎用性の高い火器はガバレボが持ち出してしまって消費され、歩兵戦車を除けば実質無い。攻撃力という面から考えると少し不足しているのかも知れない。


「大抵は宇宙船の砲撃で決着がつきますが全ての事を宇宙船で行うのは無理があります。特に回収作業は」


「うーん、、」


煮え切らない態度のアルド、論理的にはラウラに分があるがやはり決定権はアルドが持っている。そこでラウラはアプローチを変えたようで話題を変える。


「それではアルド様はどうなさりたいのですか?」


「ルル・ルリを探してミューズを復活させる。」


「、、ルル・ルリは黒い塊を通って行方知れずになりました。黒い塊を再度出現させることは可能ですが、その先がどのような次元かも分かりません。科学系の次元ではこうした宇宙船が当たり前のようにある場合もあるのです。」


魔法系次元へ極端に片寄りすぎれば超科学兵器は使えないが、それでも90%以上の確率で使用可能である。問題なのは魔法が全く使えない状態で科学系次元へ飛ばされた場合だった。相手が超科学的な武器を持っていた場合、なすすべなく一方的にやられてしまうということも考えられる。


ルル・ルリの消えた黒い塊は小さく、宇宙船はそれを通ることが出来ない。出来ることは黒い塊を通り、どの次元かを探る。次にその次元座標へワープしてその惑星ないし空間に移動する。確かに有効であるが燃料や時間を考えるに現実的ではなかった。


「、、はぁ、、」


「別に行くなと申し上げているわけではありません。準備を十二分にしてほしいのです。長い旅路目標へと駆け足で進むことは悪いこと出はありません。しかし穴が開いた靴ではいずれ足を痛めてしまうでしょう。それに立ち止まっているというわけではありません。遠くにありすぎて進んでいないように感じているだけです。」


「、、やり込められた感じだ、、」


ゴポゴポ。


モニターに写るのは魚群のみで、全く変化は無かったが若干の降下する位置がずれているように感じたアルド。


「海中の水流が思いの外強いようです。外に出てポイント修正する程ではありませんが沈没船から少し離れてしまいますね。」


ラウラから渡された資料では沈没船の中央部にあるらしい。船の大きさは全長50メートル規模でこの世界ではかなり大きい船になった。


ピピッ!


「海底が近い様です。装置から降りる準備をー」


ズウウン。


突然船が揺れる。


「うおっ!なんだ。」


「海底にいた大型の生物にぶつかったようです。損傷無し、移動装置も無事です。しかし、今の衝突で軌道がズレて沈没船から離されています。」


「巨大な生物にぶつかったのに衝撃が少なかった気がするが、、」


その疑問はアルドが移動装置を出た時に判明する。見た目がクラゲのような生物がそこらじゅうに漂っていた。光る核を中央に持つ半透明の生き物。


オーガユニットで移動装置から出たアルドは周りを見渡す。


ライトで照らされる範囲は狭いがそれでも眼に見える範囲だけで10匹以上いた。どれも大きくオーガユニット程もある。


「海底はクラゲみたいな奴等の巣窟なのか。」


「いえ。たぶんこれは。近くにある熱水噴出孔の影響だと思われます。そこから吹き出した大量の鉱物成分をバクテリアや微生物が取り入れ、その小さな生物を捕食するために集まって来ているのでしょう。どちらにせよ詳しく生態調査している時間はありません。彼等の所為で移動装置が大きくポイントからずれたので。」


「酸素やエネルギーも無限じゃないからな、、さっさと回収作業を始めよう。」


アルドはオーガユニットに取り付けられたスクリューの電源を入れて悪戦苦闘しながらハンドリンクに表示された場所へ移動する。


深海4000メートル、周りは光が遮られ暗闇での光源はクラゲの放つ淡い光と自分の持つ僅かな灯りだけ。もしライト故障すれば回収は不可能となるばかりか帰還も危うい。


どれ程進んだのだろうか、目の前には大きな船が横たわっていた。しかし所々大きく破れていたりして今にも崩れそうだった。


「船の中央にある筈です。」


「中央か、、」


破損が酷く船体が大小二つに折れていた。反応があるのは大きい船体の方で暫くすると船体に空いた穴を確認できるまでに近付いた。



「やはり船の底がなにかに当たって、それが原因で沈没した様ですね。」


「岩にぶつかったにしては、位置が気になる、、ルル・ルリが言っていたように生き物に関係あるのかも知れないけど、、今はそれよりも船内を調べたい。オーガユニットじゃ大きすぎて駄目だな。ラウラ行けるか?」


「ギリギリ行けます。暫く離れますので周りにご注意を。」


「おう。場所はこのまま真っ直ぐ12メートルだ。」


「承知しました。」


背中からラウラの乗る作業ユニットが切り離される。ギリギリの隙間を縫うように移動して船内に消える作業ユニットを見ながら、アルドはラウラの機体を守るために穴を背に気持ちを高める。


「あのロボットだと、大きめの生き物に接触したら即アウトだ。」


ズウウウンズウウウン。


遠くで何が擦れる音がする。アルドは集音装置の出力を最大にする。


「、、、なんだ?」


「(ブォオオオオオ)」


生き物の声がスピーカーから流れる。アルドの背中に冷たい何かが流れた、同時に地響きがだんだん強くなっていくのを感じる。


「おいおい、、」


前方に見えていたクラゲ達が放つ淡い光が一つ、また一つと何かに吹き消されるように消えていくのを確認する。それはまるで〈巨大な質量を持った闇〉が光を飲み込んでいるようだった。


「まさか、、トビクジラか!?」


咄嗟にアルドはオーガユニットの身を低くすると同時に明かりを切った。クジラがここに来る理由は分からないが何の変哲もない岩に擬態するための行為だった。


それがアルドとラウラの命を救った。


オーガユニットの直ぐ隣を高速で何かが横切る。


ズリユュュュュ。


「ぐぁ!!」


凄まじい水流によってオーガユニットは船に叩き付けられ、船も軋み移動する。


「、、、くそっ!派手にやったな、、」


機体の被害状況をチェックする。


「有線アームと左足のスクリューが壊れたか、、ラウラ!!」


ハンドリンクからラウラに急いで連絡を入れる。


「ラウラ無事か?!」


『はい。しかし、困りました。次元砲を回収したまでは良かったのですが、先程の衝撃で機体の動作系が壊れてしまったようです。』


「、、修理は出来そうか?」


『難しいかと。しかし次元砲のある部屋は広いので船体の壁に穴を空け、そこからならオーガユニットでも侵入出来るかもしれません。』


ラウラが動けない以上頼りはアルドだけであった。しかも運転技術は素人に毛が生えた程度であるのが余計に自身の不安を助長させる。


「穴を開ける場所はどうする?」


『船体の左側、五メートル程に木造なので大型ナイフでも破壊できる筈です。しかし補強されていませんので力任せに行うと船全体が崩壊するかもしれません。』


アルドは自らの顔を叩いて気合いを入れて、ラウラと次元砲の回収を開始する。先程の鯨の件もあり、ライトは最小限ゆっくりと移動する。


ガガガガッ。


機体が海底に当たる。


「くそっ、機体が安定しない。」


『どうしましたか?』


「さっき、鯨がぶつかってきて左足のスクリューが壊れた所為なのか機体が思うように動かない。」


『バランスを保つため右足のスクリューの電源を切ってください。中央のモニターにある操作パネル、メイン画面から設定オプションの駆動を、表示されている右足のパネルを押せば、電源をoffに出来ます。そうですね左足の電源も念のためoffにしてください。』


端から見ても素人の手つきのアルド、遅いが確実に両足のスクリューの電源を切る。一仕事やり遂げた感じのアルドだが、まだ作業は始まったばかりである。


操作したことにより、オーガユニットの速度は完全な状態より遅いが、それでも片足よりはマシだったので目的の場所へは簡単にたどり着く。


「あまり大きすぎる穴は作らない方がいいか。」


大型ナイフを船体に突き立てる、思ったよりも切れ味は悪くないが時間が掛かりそうだと覚悟する。五分ほど船体にナイフを突き立て続けると、ようやく通れそうな穴が出来上がる。


中は藻が覆うテーブルが散乱していた。ライトの出力をあげると部屋の隅にテーブルの下敷きになった作業ユニットを発見する。


『申し訳ありません。次元砲は機体の下です。』


「いや大丈夫だ。天井が低い、這って進むから少し待っててくれ。」


そこからが少し大変だった。部屋がギリギリ通れる程だったので椅子やテーブルを退かしながら移動する。そしてラウラの機体にたどり着く。だが着くだけでは終わりではない。


「機体を引っ張り出して、次元砲を回収か、、作業ユニットは軽そうだが、、くそっ引っ掛かってる。」


作業ユニットのアーム部分が衝撃で船体に突き刺さっていた。これでは抜くことは出来そうにない。


『アーム部分を大型ナイフで切断してください。本体には影響ありません。』


「オーケー。ふんっ。」


パキュン。


作業ユニットのアーム部分の手首にあたるところを、力一杯ナイフで両断する。


ズルルルル。


ラウラの作業ユニットを船外へと引っ張り出す。アルドの集中力も限界に近付いていた。


「仕上げだ。ハンドリンクの情報だとーここか?」


テーブルの下には仄かな光を放つ銀色の棒があった。材質はレーザーグレイブと似ているし、間違いは無さそうだ。


「よし。」


オーガユニットにとっては、小枝のような次元砲を指でつまむ。摘まんだのは掌で握り締めるほどの太さが無いためだ。通常オーガユニットの火器は大きく少し丸みを帯びているため、掌もそれに合わせて若干歪んでいる。


「人間サイズ用の武器を持つようには出来ないのは分かっていたが、、こりゃ、大変だぞ。」


今更ながら、ラウラの作業ユニットが壊れた事が悔やまれた。


『背中に作業ユニットを取り付けられますか?差し込むだけで合体出来るはずですが。』


流石に作業ユニットを担ぎながら次元砲を摘まみ、移動装置に帰還することは難しそうだった。


「やってみる。」


作業ユニットを船に立て掛けると背中で作業ユニットを押す。


ゴンゴンゴン。


『もう少し下です。そう、、』


ゴンゴンガチャン。


『大丈夫です、合体しました。』


「後は次元砲か、、指が疲れるな、、」


マスタースレイブによって指先をつまんだままの状態を維持するのは、少し大変だった。ラウラはそれを聞いて助け船を出す。


『小さなものを固定しながら運搬するために、部位を固定させるプログラムがあったような、、えっと。カスタムプログラムをーえーシステムボタンを押してもらえますか?』


ラウラの指示に従いながらボタンを操作すると指先だけを固定するプログラムが見つかり使用する。格段に操作が簡単になってアルドはこの作戦の成功を確信する。


「移動装置へ戻ろう。」


スクリューの故障によって移動速度は遅いがそれでも移動装置までの距離は300メートル程である。時間にして10分も掛からないがー


「(ブオオオオオ)」


トビクジラの声がまたしても聞こえる。勘弁してくれとアルドは考える。


トビクジラは何のために海底にきた?踏破船団のために威嚇したトビクジラが海底へ逃げてきたからか?いやそれは海底のクラゲを食べるためじゃないか?だとしたらクラゲが食べられている事に納得が出来る。どうやって奴等はクラゲの位置を特定した?そんなのは決まっている、光だ。海底に存在する光はこれだけであり、見付けることは容易だろう。


右手から光を消しながら近付いてくる黒い大きな物体。オーガユニットのライトを切り衝撃をやり過ごそうと屈む。


ならばー


右手にあるのは次元砲である、ここまで来てやっと回収した。だが次元砲は光っている。それも〈クラゲの様〉に仄かにだ、これをクラゲだと思ってしまうのも仕方がない。多少何かで被った所でこれを遮るのは難しいだろう。


腰の水中銃や大型ナイフ、、これで巨大なトビクジラと戦えるのか?ましてや次元砲を落とさずに、、無理だ。


それともクジラが次元砲をクラゲに勘違いしない可能性に賭けるか、、いや、、もっと確実な方法がいい。



「こうなりゃ!」


アルドは大型ナイフをオーガユニットの右手に突き立てた。ぐらついた右手を左手で引き抜くと機体の上方へと放り投げる。


ズウウンズウウン。


機体を固定する。トビクジラが上方の光を食べて通り過ぎていく。


ドウウ。ズズン。


機体が揺れる。


「くっそ!」


今回は距離が離れていたためか衝撃は少なくやり過ごす事に成功する。アルドは消えた右手を確認して呟く。


「これで良かった、、これがあの時考えた最善、、」


『アルド様。エコーロケーションはご存知でしょうか?』


「エコ?いや、、それがなんだ?」


『いえ、特には。光に反応する生物だった可能性も否定できません。さぁ、宇宙船へ戻りましょう。』


「おう。」


二人はその後、無事に移動装置にたどり着き宇宙船へ帰還したのだった。

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