異次元収集家アルド 四章2話
アルド・ガーデンブルグの日記2
全ての物事にはタイミングがある。それを逃せば調子が良くても失敗するし、調子が悪ければ悪化する。
今はたまたまタイミングが良いだけではないかと不安になってしまう、その不安を拭うために前に進み続けなければならないのだ。
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中央大陸最東の港ラークの町のふ頭にまで足を伸ばしていたアルド・ガーデンブルグは混雑する桟橋を渡りながら一人呟く。
「まさか、出資者がこっちに来てるとは、、式典の準備か、、上役が口を出すと場が混乱するってのに、、」
アルドは大きな帆船の前で出航の準備をする一団を見つける。普通の水夫もいるが、中に高価な服装をした男と警備兵らしい集団を見つけそちらの方へ足を向ける。
アルドに初めに気が付いたのは警備兵だった。
「何の用だ。今ライフェルト様は明日の式典の下見で忙しい、用があるならばライフェルト商会の窓口でアポイントメントを取れ。それともー」
「じゃあ伝えてくれ。《東海洋》の地図を持っていると。もし信じられないのなら、無視しても構わないとな。」
その言葉に少し驚きながら自分で判断できないと思ったのか、警備の男はアルドに待つように伝え、ライフェルトへアルドの事を伝えた。
ライフェルトは望遠鏡で出航準備をする帆船の進捗状況を確認していたが、話に興味を持ったのか望遠鏡を外し、アルドを確認する。
ライフェルトは40代の190程の身長。しっかりとした体格の黒髪黒い瞳の男である。全体は白く統一され帽子と厚手の服を着用していた。鋭い眼光がアルドを見据える。
「いいぞ。来い、冒険者。」
低く響く声を受けてアルドはライフェルトの隣へ移動する。
「君は我々が《東海洋》を踏破出来ると思うかな?」
「俺が持つ地図では島が殆どないように見える。全体からみてかなり広いな。」
「成功できるとは言わないのだな。見せてくれないか地図を?」
アルドは懐からか世界地図を取り出すとそれをライフェルトに手渡す。ライフェルトはそれを受け取ると食い入るように見つめた。
「これは、、?」
「世界地図だが?」
「値段は、、いくらだ?」
紙の値段やここら辺で売られている地図の値段を考慮すると銀貨2枚~5枚程度だが、一個人に成功報酬金貨千枚を支払うほどであるのならば同じ千枚を要求しても《本物の地図であれば》買う余裕はあるはずだ。
しかしアルドの事を信じていない人物に確実に《地図》を売るにはそれは高いような気がする。ならば一人分と言えないまでも半分つまり金貨500枚はの価値はあるのではないか。
アルドは考えていた数字を口にする。
「五百だ。」
「、、、500だと?!」
ライフェルトの顔が苦悶に歪む。欲しいが手が届かないそんな表情だった。それを見たアルドは高すぎたと後悔する。確かに出所も分からない地図である、しかも信用できない相手にすぐさま金貨500枚を払う事は出来ないだろう。
「、、と言いたいところだが俺がこれを持っていても宝の持ち腐れだ。金貨100枚でいい。」
するとライフェルトはアルドを見つめ、真意を探る。そしてニヤリと笑うと切り出す。
「、、どうやって手に入れたのか分からないが、この地図にそんな価値があると思わないがな。それにこの地図は《他》では売れないぞ。」
アルドはライフェルトに、自分の懐事情を看破されたと内心を舌打ちする。元々一番高値で買いそうなライフェルトに売るしかないのだ。
「いくらなら買う?金貨20枚なら買おう。何分手持ちがなくてね。」
「20枚?手持ちがないか、、」
ライフェルトの身なりを考えるのに金貨20枚位なら持っていそうだと思う。しかもアルドが下手になったとたん豹変した。それは初めに500と言い出した時とは別人だった。
別人?
初めライフェルトは欲しくても手が出せない表情を見せた。それが気にかかった。ライフェルトは資産家である、アルドにとって金貨500枚は大金だが、ライフェルトにとってはそこまで大金だったのだろうかと疑問に思う。だとしたら自分は大きな勘違いをしていたことになる。
アルドは賭けに出る。
「、、やめだ。」
「やめ?」
「売らないということだ。」
アルドはすばやい身のこなしでライフェルトから地図を奪うと再び、懐に地図を入れる。
「話を聞いていなかったのか?その地図は他では誰も。」
「売れると、アンタを見て確信した。欲をかいたなライフェルトさん。」
「待て。分かった。金貨100枚払おう。」
アルドは無視し、振り向かずにライフェルトから離れる。
「待て、おいその男を止めろ!」
警備兵は動いてアルドを取り囲もうとするがアルドは警備兵にレーザーグレイブを打ち付け気絶させていく。ライフェルトの護衛全員が気絶するとアルドは背を向ける。
「分かった金貨500枚だ、コレで良いだろう!地図を寄越せ冒険者!」
「いや違うな。桁が違うだろ、ライフェルトさん。アンタが出せる限界を言え!次が最後だ。」
アルドは確信する。
ライフェルトは金貨500枚に驚いたのではない500と言った事に驚いたのだ。何故かライフェルトは勘違いしたのだ金貨500万枚と。つまりはライフェルトにとって金貨500万枚でも欲しい地図だと言うことになる。
ライフェルトも自分が墓穴を掘ったことを悟ったのか、しばらく考える。
「金貨5万枚出そう。これ以上は出せない。」
「初めからそういえば良かった。だがもう俺はアンタをあまり信用していない、理由は分かるよな。」
「出所も分からない地図に金貨500枚は高いと思っただけだ。」
「まぁ、そういうことにしておいてやる。」
ライフェルトが途中強気になった理由はアルドが《地図》の価値を理解していないことだった。500万枚だと思った地図が500枚という相手ならば、例え相手の言い値であろうと損は無いのだから内心を小躍りしたに違いない。
そして価値の知らない相手に強気の交渉、それは商人にとっては当然の行動だった、アルドはそれを責めはしない。
だがやり手の商人に対して弱気で出れるほど強かな交渉術を備えているわけではないアルドとしては《地図》価値を過大評価していて頭の悪い冒険者を演じた方が交渉が上手く行くと思ってひと芝居うつことにしたのである。
「地図は金と引き換えだ。後、俺に不利益になる行動をした場合、取引はなしだ。」
「まるで犯罪者の様な言い方だな。ヤバい所から盗んだ盗品の類いであろう?」
「違うな。これは俺が作ったんだよ。」
真偽を確かめるようにアルドを観察するライフェルト。
「ナガレモノって知っているか?俺はそれを5つ持っている。そのうちのひとつの力で作ったんだ。」
「ナガレモノ、、5つ?まさか。」
「警告のためだ。《ルル・ルリ》俺が見える範囲で海に砲撃してくれ、人や船や人工物に被害がない状態で、なるべく派手なものを頼む。早めにだ。」
《オッケー、アーちゃん。三秒待って。》
ハンドリンクからの通信。二人の視線は海へ。
三秒後。
ドバシャアアアアア!ゴウゥウウ。
閃光が海に突き刺さり海が爆発した。凄まじい爆風が海から岸へと吹き抜ける、騒然とする周囲。
ザバアァァァァァ、、、サァァァァ。
海水が雨のようにラークの町に降り注ぐ。その後海の水位が急激に下がる。それは海に落ちた何かの破壊力を如実に物語っていた。
「ハッキリ言おう、俺がその気になればこの街を破壊する事は簡単だ。意味がないし、無関係な人を巻き込みたくないのは共通認識だと思うが、俺は身に危険が迫ればやもなしと思うこともあるだろうさ。」
「、、ああ、、」
海に何らかの魔法で細工をしたとしても先程の爆発は異状であり、ライフェルトの創造をこえたものであったらしい。急に大人しくなる。
「安心しろ、《地図》は本物であるし盗品の類いでもない。」
「、、そうなのだろうな、、」
周りが騒がしくなるなか、回復した数名の警備兵とライフェルトの案内でライフェルト商会へ向かうことになる。ライフェルトがのる馬車の中。ますます周りが騒がしくなる。
「何か海に現れたらしい!」
「いや神様が!」
「閃光が走ったのを見た奴がいるらしい!」
「大魔術師の超大型魔方陣の暴走ではないのか?!」
海の方へ向かう人々。それを何となく見つめるアルド、ライフェルトは先程から一言も発しない。居心地が悪くて堪らなくなる、確かに悪役でも構わないが、これは完全に恐喝ではないか?アルドとしてはお金は欲しいが悪人になるのには抵抗があった。
「止めとくか、やっぱり。」
「、、いや取引はしたい。」
「じゃあ、何故黙る?」
ライフェルトはハンカチで汗を拭うと説明する。
「私は君を侮っていた。凄腕の冒険者と繋がりを持つのは商人としては役に立つのだ。輸送や護衛、金品の購入、その他にも君の様に何かしら不思議な力を持つものもいる。」
アルドは苦笑する。確かに商人にとって《冒険者》は商品などの一種だろう。ライフェルトは多分本心を語っているのだ。
「この地図は本物であろう。だがこの取引を終えて君との繋がりが無くなるのに未練があってね。もっと紳士に対応すれば良かったと思っていたのだ。」
「なるほど。」
「どうだろうお詫びとして、私に手伝えることがあれば協力したいのだが。」
アルドの目的は正確にはお金では無い。食糧は別として、金属の大量購入と魔石などの資材となるものの購入である。その為にお金が必要だった、この提案はアルドには願ってもないものかもしれない。
「大量の金属と魔石が欲しい。報酬はそちらでも構わない程だ。大量購入の手間が掛かるのなら必要経費も払おう。」
「、、変わった注文だな、、だがそれが願いだというのなら協力させてもらおう。」
夕方ー
「それでは金貨五万枚で買う事の出来る純度の高い鉄鉱石と希少金属、なるべく大きく質の良い魔石を用意させよう。安心してくれ相場よりも安いハズだ。」
「面倒事すまない。」
まさか地図が金貨五万枚で売れるとは思わなかった為、機嫌が良くなるアルドだった。取引を終えればこの次元での補給は必要なくなるし、純度の高い大きな魔石が入手出来れば《コピーズリング》で複製して、永久的に魔石を生産出来るようにもなる。
アルドはそういえばと懐にしまっていた鉄鉱石の《地図》を取り出す。今さら金貨30枚は意味が無いとお礼次いでにライフェルトに地図を渡す。
「これは?」
「鉱脈がある所を調べた地図だ。まぁおまけとしてやるよ。してもらってばかりで何だか悪いしな。」
「では遠慮なく頂こう。」
ライフェルトは躊躇なく地図を受け取る。
「これから食事だが一緒にどうだろうか?」
「いや、、」
断ろうとするが今全くの無一文だと思い出す。
「、、そうだな。頼む、あまりマナーは期待しないで欲しい。」
「、、明日の式典を祝う立食パーティーがある。マナーは要らないさ。」
ライフェルトもアルドに食事作法を期待していなかったらしい。
「しかし身なりは少し整えて欲しいので着替えてもらうが構わないか?勿論服はそのままアルド殿が使ってくれて構わない。」
「ああ、頼む。」
「ヤンバー。」
執事らしい中年の男性が現れ、アルドを別室へ連れていった。一人になったライフェルトは使用人を呼ぶ。
「今日の夜までにこの地図の場所を全て調べろ。人数は多少多くても構わん。」
「はい。」
使用人がその場を立ち去ると、ライフェルトはアルドから得た《世界地図》を眺める。
「、、金貨五万枚、、いやそれ以上の価値はあるだろう。いい買い物をした。そしてあの冒険者、、」
アルドは《東海洋》の地図として渡したがライフェルトが驚いたのはそれだけではなかった。世界全体の地形を詳細に描いたこの《世界地図》は、軍事は勿論、商用の街道の開発に役立つ。今まで謎とされていた中央大陸北側の辺境の位置すら網羅されている。
驚くべきはそれだけではなかった、紙の材質は勿論、手書きなのか分からないその絵は恐ろしいまで細かく詳細を写していた。拡大鏡で覗いてもまだ書き込みがある《美術品》としてもかなりの値段になるだろう。ましてや人の手で書き写すなど不可能。
「王に送れば、これ以上ない献上品になるだろう。いやまだ使い道がある、ある程度の写しを量産して売り出す、、いや勿体ないか。」
ライフェルトは今後《世界地図》が生み出すであろう莫大な利益を考えつつ煙草に火をつけた。
ライフェルトは東海洋を横断するにあたり、フルトー王国に海軍の経験豊富な水兵と士官を借り、また商船団から腕利きの水夫と魔術師を雇いいれた。
夜開かれた盛大なパーティーは彼等同士の顔見せと士気向上を図ったものである。人数は船員関係者含めて数百人であろうか、かなりの人数であった。
アルドは音楽隊の楽器を聞きながらテーブルに並べられた料理を眺める。皿に小分けされたミートパイを頬張りながら、アルドはライフェルトに渡されたライフェルト商会のコインを思い出す。
このコインには番号が付けられていて、商会のポストに伝言や手紙を高速で相手に届けるシステムが確立されていて、ライフェルトへの伝言などは直ぐ様本人に届く様になっているらしい。またライフェルトからの言伝ても商会や贔屓の宿屋で訊けるらしい。
「まぁ、これがあれば連絡には困らないか。」
ライフェルトとアルドは会場についた時点で別れたため、彼が何処に行ったのか分からなくなったこういう時の計らいだろうと納得するアルド。
「結構食べたし、そろそろ宇宙船に戻るか。俺にはあまり関係ないパーティーだしな。」
アルドはお皿を給仕に渡すと帰り支度を始める。
「おや、もうお帰りかなアルド殿。」
「?」
それはライフェルトと初老の入った軍人だった。初老の軍人の身のこなしと警備に付く兵士の力量からも高い地位にいる人物だと容易に想像できた。
「取引のことは、明日以降連絡すればいいし、もう結構食べたから帰ることにした。えーっと俺はアルド・ガーデンブルグだ。アンタは?」
周りの人間は顔をしかめるが当人である初老の軍人は気にした様子はなく、名乗る。
「私はオーツク・カイドーだ。まぁ明日出航する《東海洋踏破船団》の提督になった只の爺さ。」
「んで、何か用事でもあるのか?」
「ライフェルト殿から簡単な海図はもらったのだ、そしてその出所が貴殿だという。話してみたいと願っただけだ。」
アルドはカイドーに好感を持った。真っ直ぐな性格と大きな身体が、どちらかというとガンリュウに似ているからかもしれない。
「東海洋を踏破した者は今だいない、公になっていないだけかもしれないが、今回ソレに終止符をうちたい。何かアドバイスがあれば聞きたかったのだ。」
「、、まぁいいか、別に隠しているわけではないしな。」
アルドは腕を曲げハンドリンクをカイドーの前に見えるように固定する。
「《ルル・ルリ》ここから東海洋を横断する為のアドバイスが有れば教えてくれ。ちなみに現地の帆船だ。」
《東海洋?ああっそこから東側の海の事?だとしたら難しいかな。》
突然声がして驚いた周囲だったが、通信水晶の類いだと考えた様でアルドの白銀の籠手に向かって、その真意を問うカイドー。
「こほん、何故かな?、、、」
《、、、》
「《ルル・ルリ》答えてあげてくれ。彼の質問は俺の問だ。」
《東海洋の海流は渦を巻くように中央に向かって流れている。そして帆船の命である風が東海洋中央部では全く吹かないのが問の答え。》
カイドーはなるほどと直ぐに納得した。元々踏破する船が無いということがそれを物語っているし、また内心その可能性もあると考えていたからだった。
「つまり海流とは逆方向にオール等の人力や魔術で進むしかないと、、」
《あと、そこ特有の生物かな、、》
「まだあるのか、、」
《哺乳類で大きな体のトビクジラは体の掃除や呼吸のために海面から急にジャンプしてくる。当たったら木造船はバラバラになる。あと壊れた船の廃材や浮き石を寝床にする鳥は人間に移る奇病を保有している。それは糞や羽に直接触れると感染する。最後に海中には皮膚を食い破り、柔らかい内蔵が好物の細長い魚類がいる。海に生身で潜ったら駄目。》
カイドーは最後まで聞き終わると、夜空を見上げる。ルル・ルリの話を聞いていた全員の表情は曇っていた。
「、、成る程な。」
「、、提督?」
「面白い!!」
腕を掲げ、ガハハと笑うカイドー。
「流石前人未到、だが同時に納得もした。相手にとって不足なしとな!クジラ?病気?魚?なにするものぞ。我々は事前にこれを知った、これぞ啓示ではないか!」
「しかし本当か、どうかも、、」
「そう本当かどうかも分からん!だが可能性はある、そして如何なることも起こり得るのが《東海洋》よ!!」
カイドーはアルドに向けて手を差し出す。
「アドバイス感謝する。」
「平凡な言葉ですまないが、航海頑張ってくれ。」
「ああ、大丈夫だ。」
カイドーはそのままの調子で大股にその場を離れ部下もそれに付き従い、残されたのはアルドとライフェルトだけになった。
「鉱脈の件は全て確認した。あの山は我々も一枚噛んでいてね、かなりの収入が今後期待できるだろう。」
「そうか、、」
「、、ますます、君が分からなくなった。もしかしたら神様が人の姿になっているのかもと疑うよ。」
「何を言っているんだ?」
「君に依頼がある。」
アルドを真っ直ぐに見つめる。
「今回の東海洋横断、可能であるのならば参加して欲しい。」
「、、、時間がない。俺は明後日には場所を移して、目的を果たさないとならない。」
「、、ここに寄ったのはたまたまだったか、、ならば仕方がないな。」
アルドの目的は東海洋の海底にある遺物の回収で、それが終われば他の次元にいくための準備に入らなければならない。1ヶ月掛かる航海はアルドにとっては致命的なタイムロスだった。
「だが、ここまで関わったんだ。時間が許せば援護はする。」
「、、、頼んだ。」
どの様な方法でとは聞かないライフェルト、聞いてしまえばそれはあまり信頼をしていないことを表す事であるし、強要に聞こえるからだ。
そして先程のやり取りを聞いてライフェルトはある確信を持った。このアルド・ガーデンブルグは《東海洋》ですら脅威と思わない力を持っていることを。
「ごちそーさん。明日の夜に商会の窓口へ行くから、その時までに約束の品頼んだ。」
「ああ、約束は違えない。」
そう言ってアルドは人混みに紛れ、ライフェルトが気が付いたときには姿は消えていた。
宇宙船に戻るとドックは綺麗に清掃され命令を実行してくれた事が直ぐに分かった。ラウラは今だオーガユニットを改装していて全体的に丸く大きくなった印象を受ける。
「結構大掛かりだったんだな。」
《水圧って結構強力で10メートル深くなる毎に大体一気圧のー》
「ああっ詳しい話はいい。つまりは完成すれば海底に行けるんだろ。それだけで十分だよ。」
ドールの製造装置に行くと全ての製造を終了しているようで、電源を落として、居住区の自室へ向かう。
「アルド・ガーデンブルグ。」
「アリサか、、」
アリサはいつもの魔術師の服装ではなく、ゆったりとした大きめの服を着ながら電子本を読みつつ廊下を歩いていた。
「結局、どうするんだ。もうそろそろ他の次元に行くんだが、降りる場所を決めないと困るんだがな。」
「んー、実際私がこの次元にいたとしても知識や技術的な面ではもう限界に近いのよね。うちの爺、、アレだって他の次元から来たナガレモノだし、《魔法寄りの次元》に行った方が私も成長できると思うの。」
アリサの願いは最高の魔術師になること。この次元において最高の魔術師ガランドロスを抱えるバルバロス王国と敵対行動をとってしまった出前、この次元に従事出来る魔術師が居ないと考えた。結果他の次元に師を求めるのは自然な流れだろう。
「勿論、船を降りるまでは食客として手伝いぐらいはするわ。必要分の材料は提供してもらうけどね。」
ラウラの話では《魔法寄りの次元》では《科学》の力が弱められ。また《科学寄りの次元》では《魔法》の力が弱められる。今後魔法寄りの次元でアリサの力が必要になるかもしれないとアルドは考える。
「やり残しと言えば家族に別れの手紙ぐらい届けたかったなと、ただそれだけ。皆今何処にいるか分からないし。」
「一応、書いとけ。今回協力してくれる商人が色々手を回してくれるかも知れない。」
「ふーん、分かった。じゃこれお願いしま~す。」
何処から出したのか茶色い封筒に入った手紙をアルドに渡す。予め書いてあったのかよとツッコむアルドを尻目にエレベーターに乗る。
「、、がと、、」
「?」
「届いてなかったら呪うからね。」
エレベーターの扉が閉じてその場からいなくなるアリサ。
「バルバロス王国魔術学校育成組リン様他8名宛てか、、結構大変そうだな、、ん?魔術アカデミー本部長、ラズリ・スナイプ。」
封筒が二つあるということはセットなのだろうか?その可能性もあるかもしれないと一緒にライフェルトへ渡そうと糸で縛り、懐へ入れる。
「俺も次元に行く前に墓参りでも行くか、、」
それはガーデンブルグの村にある両親に会いに行くためである。墓があるかも分からないが、もしかしたらラウラが何か知っているだろうと再び自室に向けて歩きだした。




