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異次元収集家アルド3章15話

アルドとミューズが宇宙船から飛び降りると、宇宙船は徐々に上空へと高度を上げていく。豆粒程の大きさになったあと、自身の一部である必要の無い下部の拡張部位を切り離す、同時に不可視化しつつシールドを展開する。


ドゴゴーン!


拡張部位は時間通りに爆発し、バラバラと破片を西門周辺に撒き散らし消滅する。アルドはしゃがみ頭部を守りながら落ちてくる破片を確かめる。


「破片の量が少ない気もするが、、」


「見た目ではそこまで不自然では無いはずです。上空ならともかく、地上にいる我々には消えた機体を確認することは出来ませんし、爆発の光と音が良い目眩ましになりました。」


「手品師のマジックみたいなものか、、」


アルドとラウラの作戦である宇宙船の入手は、概ね計画通りに進み成功したといえた。


「残るのは、、ガバレボか、、」


《アルド様よろしいでしょうか?》


ミューズがファクトリーキューブを使い、オーガユニットと装備品を取り出す最中。ハンドリングに先に船を脱出したラウラからの通信が入る。


「どうした?」


《ガバレボの残党、ドルアッシュがガバレボを援護する可能性があります。探しだして無力化したいのですがよろしいでしょうか?》


もしもの時の宇宙船、新型オーガユニットそして敗走し疲労困憊のガバレボのドラグーン。現在の戦力差ならラウラがいなくても何とかなるとアルドは打算する。


「ソイツには予知能力があるんだろ、気を付けて無理をしないのであれば、逆にお願いしたいぐらいだ。」


《それならば問題有りません、少なくとも負けることはありませんので。》


ハンドリンク表示されているラウラの位置がアルドから徐々に遠ざかっていく。アルドはハンドリンクをスリープモードにする。アルドの目の前には新品同様の白銀のオーガユニットが仰向けに横たわっていた。


「奴等の防御陣を利用してここで戦おう。」


「上空からの対地用武器があるのであまりおすすめは致しません。?!、、いえ、、良い考えかもしれません。この場から狙撃しましょう。」


「狙撃?」


「時間がありませんので説明は省きやらせて頂きます」


カチャカチャカチャ。


ファクトリーキューブに素早く簡潔にデータを入力して、再度物体を出願させる。それはアルドの機体を覆う。


「これは、、」


「周囲に破壊された一般のオーガユニットの腕などの残骸をばらまき、また我々のオーガユニットを地面の色の板で隠しました。何処に何があるのかを直ぐに見分けるのは肉眼では難しく、完璧なカモフラージュかと、、」


といいつつ、良く見れば荒さが目立った。特に横から見ると完全に丸見えで、まるで板と地面に挟まれた人であり。アルドの目には若干不安が残る完成度であった。


「アルド君はそのまま操縦席へ。私は破壊されていない防御陣へ向かいダミーを作ります。」


「、、わかった。」


タッタッタッ。


ミューズを信頼しているため、彼女に任せる事にしたアルドは上空からのジェットエンジンの音に気が付いて慌てて白銀のオーガユニットへ乗り込んだ。


ゴウウゥ。


ガバレボのドラグーンが見えるとミューズは数体の白銀のオーガユニットモドキをアルドから離れている防御陣に出現させる。ドラグーンは一旦宇宙船が無くなった広場を通り過ぎた後、速度と高度を下げながら再び旋回して広場に戻ってくる。


ミューズは急いでアルドのオーガユニットに乗り込むとコックピットを閉じる。


「お待たせいたしました。」


「よし行くぞ!」


しかしミューズは機体を直ぐに起動できる状態にしただけで、アルドに告げる。


「アルド君、ガバレボのドラグーンは飛行能力が備わっています。それを最大限に利用されれば苦戦するでしょう。ですから、ガバレボが対地攻撃をした瞬間にオーガユニットが握っている《ブラストカノン改》で攻撃を行って下さい。弾は三発、連射も可能です。」


「、、ジェットエンジンだっけ、あのスピードだと当てるのはいくらなんでも無茶だと思うぞ、、」


ミューズは自分をオーガユニットに接続しながらアルドに話す。


「ガバレボが攻撃する際はホバリングに切り替えて攻撃すると愚考します。飛行しながらの狙撃は命中率も悪いですし、反撃されても大した攻撃ではないと考えるからです。自身の安全が確保され余裕があるのなら、補給の無い現状では確実に当てたいと考えるのは当然の流れでは無いでしょうか。」


「確かにな、、」


その説明に頷くアルド。普通に考えればそうであろう。


考えをまとめ時、ガバレボのドラグーンが速度を落として広場を見下ろす。息を飲むアルドは軽くオーガユニットの操作レバーを握り直し動向を見守る。


ドルルルルル。ドルル。


ダミーである、オーガユニットモドキはセンサーに反応したドラグーンにプログラム通りの単調な攻撃(ハンドバルカン)を仕掛ける。三体のオーガユニットモドキの攻撃は軽く、ドラグーンは避けようともしなかった。


「コスト重視で装甲や射撃や弾にも意味はありません、ただガバレボの注意を引けるはずです。」


ガバレボは緩やかな動作で《ハンドバルカン》をモドキに放った。まだ1体目のモドキを破壊されただけであるのにミューズは焦りながらアルドに伝える。


「まさか!?気が付かれています!アルド君すぐに撃ってください!」


「くそ!!」


ミューズに落ち度があるとすれば、攻撃を軽くし過ぎてしまったこと、それによりガバレボに考える時間を与え、更に単調な攻撃を無人であるからと看破されたことが大きい。


捨て石のオーガユニットの存在。ガバレボの射撃は別方向から敵は奇襲をしてくる事を想定していた為に、ミューズが急かしたのも無理もない。アルドの正確な位置はガバレボには知られていない、それならば先制攻撃出来る可能性は高いと賭けに出た。


同時に隠れ続けず、作戦続行を強行した事がアルドたちに不利に働いてしまう。


発見したのはアルドが先であったが。始めにトリガーを引いたのはガバレボであった。ガバレボが囮のオーガユニットのいない広場に無秩序に対地ミサイルを放った為である。


「うぉっ!!」


ドゴゴーン!!ドゴウウゥ!ゴゴゥ。


爆風で広場の近くにいたバルバロス王国軍や傭兵達にも多少の被害が出る。


地面が爆風に震える為、アルドも流石に照準もつけられない。無秩序だとしても広範囲に飛ばされたミサイルの威力は強力で、隠れるための板が盾の役目を果たしてくれなければ、中規模の損傷をオーガユニットに与えていた。


土埃が舞う中壊れた板の隙間から、ブラストカノンの引き金を引く。


「だりゃ!!」


ブオン。


攻撃を予期していたドラグーンが後ろへ回避する。そして大きな笑い声と共にドラグーンが攻撃してきた場所へ更に対地ミサイルを放った。


「はっはっはーっ。ばか野郎が!バレバレだ!!」


何故かドラグーンのスピーカーを使うガバレボ。その声にアルドは舌打ちをして、その場から離れる。


「ガバレボの奴は自己顕示欲の塊だな。いや、、その方がいいのか、、場所も分かる、、」


「ミサイル来ます!」


ドゴゴーン!


爆風がアルドのオーガユニットを吹き飛ばすが、ミューズの操作で態勢を立て直したお陰でほぼ無傷で乗り切り、さらに反撃のチャンスとブラストカノンの引き金を引く。


ビュン。


ドラグーンがまたしても回避したと思われた瞬間。


ドゴン。


空中で見えない何がぶつかったようにドラグーンの高度が下がった。


《アーちゃん大丈夫ですか?糞ガバレボを早くぶっ殺して下さいね。》


ハンドリンクからルル・ルリの声がする。アルドはガバレボの機体に体当たりしたらしいルル・ルリに感謝する。絶妙なタイミングだったため周りからは先程の攻撃が当たったと見えるはずである。


そして。


アルドは考える時間を与えずにブラストカノンの引き金を引く。


ブオン、ドゴ。


ドラグーンは回避が間に合わず左側の翼に辺りに命中。更に誘爆するドラグーン。


ドカジャン。


大きな音をたてながら地面に落下する。ドラグーンが飛行するためには両翼が必要不可欠である。失われれば流石に落下するしかなかった。


「糞が!!てめぇのお陰で全てが台無しだぜ!!」


機体を立ち上がらせると、アルドとガバレボは向かい合う。


「てめぇはアレだよな。夫婦の餓鬼。そうじゃなきゃ理屈にあわねぇ。まさか心臓にナイフ刺されて生きてるとは、、流石はナガレモノってところか、、」


ミューズに通信しないように無言で制されるが、アルドは我慢できずにスピーカーの電源を入れる。


「親の敵だお前はな。」


「十年以上前の事だろう。ったく執念深い、女々しい奴だなぁ。」


血が逆流するような苛立ちがアルドを襲うが、大きく息を吐き出すと呼吸を整える。


「それだけじゃねえ。育ててもらったガンリュウまでテメぇに殺されれば、誰だって俺のようになるさ。」


「ガンリュウ、、アイツの養子になったってのか?なんだよ、、くくっそりぁ皮肉だな、、つまりは何かしらの方法で俺が殺したと分かったわけだ、、世の中狭いねぇ。いや、運命か?」


いつでも機体を動かせるように用意する両者。アルドはミューズが差し出したガンリュウの遺留品である、赤い布を腕に巻き付ける。


「俺の名前はアルド・ガーデンブルグ。ガーデンブルグで両親に育てられ、ガンリュウに鍛えられた。そしてテメぇを倒すのはその復讐のために作った機体ー」


「ガン・ブルグだ!」


「やってみろや!!」


両者は互いに駆け出し、衝突した。





「どうしたぁどうしたぁ!ラウラぁ」


ドルアッシュの機体から銃弾が放たれたのをラウラは回避する。そして反撃。


バビィン。


しかし、ドルアッシュは予め予想していたかのように、それを回避する。


場所は西門近くの廃墟が建ち並ぶ区画、そこへラウラは逃げ込んだ。廃墟は未だガバレボの勢力下にあり、時々はぐれたドールがラウラを襲うこともあった。


ドゴン。


ドルアッシュとの戦いは長引いた。時間にして9分。ラウラの技量とドルアッシュの予知能力や罠が戦いを長引かせているのが原因だった。しかし突然ラウラはスピーカーを使用する。


「ドルアッシュ、もう諦めてバルバロス王国へ投降しろ。貴様に勝ち目はない。」


バシュンバシュン。


「互角だろうが、まだ勝負は決まってねぇ!!」


「そう、まだ勝負は決まっていない、、が結果は決まっている。お前は負けることはもう決まっているからだ。」


「ガバレボが負けても俺は負けねぇ。」


「、、ドルアッシュ、、お前の能力は予知だ。私はずっと観察をしていた、、そして分かったことがある。」


ドルアッシュの攻撃をかわし、足場を崩すようにランチャーで建物を破壊するラウラ。


「俺の能力に使用回数なんてねぇ、そして殺される未来もいく通りも見える、、それさえ回避できれば俺は無敵なんだよ。」


「そう、、しかし、、全ての未来を見通せる事が本当に可能かどうか考えなかったのか?、、つまりどのぐらい先までの未来を見通せるのかを、、」


「?!」


「我々アンドロイドにも同じ様な機能があるぞ、試してみたか?どのぐらい先が見通せるのかを、、どうやって?それは秘密だが。あえて質問しよう。何故ここに来たのか、、だ、理由はあるか?」


「、、」


「結果はたった10分、、つまり10分以内のあらゆる可能性の死がお前には見えることが判明した。」


「何を言っているんだ?ラウラ、、」


「答え合わせといこう。お前がこの場所を選んだのは、この場所が一番長生きできる場所だったからだ。そうでなければ《宇宙船に狙い撃ち》するように言ってあるからだ。お前は複雑な迷路で間近にあった死という通路を先延ばし、ただ選ばなかっただけに過ぎない。」


「何を言っているんだぁ!!」


ラウラはいきなり、全ての武器を捨てて全力で廃墟を離れる。


背後では立ち尽くすドルアッシュの姿があった。


「何も見えねぇぞ、真っ暗だ。、、つまりこれはラウラのブラフかなにかだな!ざんねー」


カッ。ドゴゴーン。


しかし、ドルアッシュのいた場所。廃墟があった区画は更地になった。


「、、数時間前にセットした爆弾が作動することも分からない不完全な能力。ドルアッシュ、、お前の能力は《未来予知》ではない、《自分の力で回避できる死の予知》に過ぎない。」


全ての未来予知は脳の負担が大きすぎて、人間では堪えること出来ない。能力でそれが行えるのは《人間》を越えた何かだけである。


「もしも完璧な未来予知能力があるのならば、ドルアッシュお前は正しい選択をして今尚生きていたはずだ、、」


ラウラは赤く染まった大地を背にして、その場を去ったのだった。




ガン・ブルグとドラグーンの戦いは激闘であった。


ガバレボの操縦技術は一般的であったが、それでもドラグーンの機体性能は高く、ハンドバルカンを除く全ての武器がガン・ブルグの装甲では防げない破壊力があった。今の瞬間までギリギリ優勢に持ち込めたのは単にミューズのサポートがあったからだろう。


ドラグーンの高周波ブレードを回避するアルドは、その右肩のプラズマガンがガン・ブルグへ向けられるのを事前に察知して、右へ更に移動する。


ブオン!


地面をプラズマガンが削ると同時にアルドはレーザーナイフでドラグーンの装甲を切りつける。


ガギィィ。


一瞬の反発の後、レーザーナイフはガバレボの右手を切断する。


「っ硬い!」


「プラズマガンとハンドバルカンではドラグーンに損傷を与えることは出来ません。レーザーナイフを活用してこのまま押しきりましょう。」


ドラグーンはオーガユニットと比較するとスピードは同程度、装甲はドラグーンが一段上であった。アルドはドラグーンに距離を取られないように至近距離を維持する。


「ナガレモノの小僧、俺はお前がムカついて堪らねえんだよ。只優れた家に生まれたってだけで、何もかも手に入れやがって。テメェを見てると吐き気がするぜぇ。」


ドラグーンの尻尾が唸りを上げて、ガン・ブルグに襲いかかるが間一髪後方へジャンプしてかわす。そこにすかさずドラグーンが左ハンドバルカンを放つ。


ドドドドド。


ガン・ブルグは手をクロスさせ、関節部を保護しながらやり過ごす。次の瞬間、ドラグーンが再度プラズマガンでガン・ブルグを狙う。


「離れすぎると危険です。」


「分かってる!」


アルドは転がるようにプラズマガンを避けつつ前方へ、距離を詰める。


「俺は、普通に生きることも出来なかったぜ。テメぇと違ってな。」


「だからって好き勝手に他人に八つ当たりする道理もない!」


「八つ当たりだと?!」


ドラグーンの尾っぽが振り上げられる。それを伏せることで回避する。


「ドラグーンの尾撃は危険です。事前のデータより威力が上がっていて、直撃すれば装甲を貫通します。予備動作に気を配れば回避は容易ですので、予知システムを更新します。」


「違うね、俺は八つ当たりなんかしちゃいねぇ。別だぜ。」


ドラグーンはガバレボの動作そのままに空を見上げ大笑いする。


「楽しいからだよ!幸せをぶち壊すのがよぉ!!」


「?!」


「幸せな奴等を、あの時の俺よりも更に不幸になったそんな奴等を眺めているとき、その時だけぉ~俺は最高に楽しいからだよ!」


ハハハ、乾いた苦笑を顔に張り付けると、沸点に達したアルド。


「ありがとうよ、ガバレボ!これで心置無くお前を地獄へ送れるぜ」


「アルド君、冷静にー」


「分かってる!!」




*****************************



《超越者》は過去現在未来をも見通す、しかしながら全知全能という訳でもない、過去に行くことは出来なくはない。しかしながら、全ての現象を記憶して再構築した過去には歪みが生じるため《強制執行》したとしても歪みから綻び、破綻する事もある。


《未来》はほぼ確定している。《人間》はいつか死ぬし、自分超越者は《神》が存在するまで死ぬことはない。変化するのは途中の過程に過ぎない。これもその一端に過ぎない。


その瞬間が特異点であることを理解していた《超越者》はその瞬間を記憶する。その次元内の全て《宇宙の果てまでの、全ての科学的配列、魔法的要素、超能力的要素その他》を。


超人であってさえも記憶しきれない膨大な情報を処理したあと、今後決まってしまった、結果を見守った。



*****************************


プラズマガンを左腕で防ぐガン・ブルグ。最短でドラグーンに肉薄する。


「損傷軽微。」


レーザーナイフでドラグーンの胸部を切りつけようとするが、ドラグーンの右腕を盾にされて防御される。


ギィィィ。


「俺はもう小僧テメェの死に様を見て死ねれば、思い残しも無くいけるぜ!」


ドラグーンの頭をハンマーの様に振り上げると、ガン・ブルグの右上腕を強打する。ドラグーンの操縦席は胸部に存在するため、こういった攻撃も可能であり、カメラなどの損害を無視すれば手などよりもずっと威力は高かった。


ガシャン。


「おぉ!!」


「右上腕を中破、可動域に制限が掛かります。」


「おぉぁ!」


ギィィィ!!ブシュギュアア!


ドラグーンの右腕を抜け胸部にレーザーナイフが到達する。凄まじい轟音が辺りに響く。ガバレボもこれには流石に距離を取ろうとするがアルドがそれを逃さない。


「ドラグーン操縦席、到達まであと7秒!」


「おぉ!」


ゴウンゴウウゥ!


暴れるドラグーンが壊れた腕でガン・ブルグの胸部を叩く。激しい振動をアルドとミューズは堪える。


ブオン。


ドラグーンの最後の抵抗か尻尾が動き警告表示が画面に現れる。予備動作から攻撃まで誤差があるだからこそギリギリまで踏み留まる、アルドがモニターに捉えたのはそれだけではなかった。


ニヤリ。


笑ったガバレボの顔がモニターに写し出させる。


瞬間。


迷い。


回避して再度ガバレボの操縦席を狙うチャンスはまだある。


しかし、指先にまで届いたガバレボを倒すという使命と執念。


腕に巻かれた赤い布。


それらを天秤に乗せ。


アルドはガン・ブルグをドラグーンに激突させながら最後の一撃を放つ。


ドガジャン。


ガン・ブルグは突撃でドラグーンの態勢を崩し、尾撃の威力を軽減させ、ガバレボの操縦席にレーザーナイフを突き立てた。もつれるまま倒れる二体は地面に崩れ落ちる。


「はあ、、はぁ、、やった、、」


目の前には動かずにつぶれた胸部を晒すドラグーンがいた。


ガン・ブルグも酷い状態であった。流石に尾撃を全て受け流す事は出来ずに所々亀裂が見られる。特にアルドより上の部分ー


アルドの背筋に一瞬悪寒が走る。


「、、、?!」


そこ。


つまりミューズのいた場所が潰れて無くなっていた。


「あぁ、、アアアアアアアアアー!!」



***************************


ミューズはドラグーンの尾撃が開始される前に、この攻撃が当たることを直感する。軌道はコクピットの直撃、最早前傾姿勢になってしまったため回避しても間に合わず、操縦者はかなりの確率で死亡する未来を弾き出す。


(回避が無理ならば!)


二人とも死ぬのならば、せめてアルド君だけでもー


ガン・ブルグ制御に緊急介入して攻撃を逸らす、時間が恐ろしくゆっくりと流れると同時にミューズとガン・ブルグの同調によってドラグーンの直撃を回避する。


黒い二枚貝の一枚がコクピットへ打ち出される。


壁に亀裂が入り、光が差し込む。


《アルド君ー》


《どうかー》


****************************





「ガン・ブルグ内で発見したファクトリーキューブで、機体を回収しました。詳しくは宇宙船内のドックでルル・ルリと共にミューズのー」


ラウラは次の言葉を濁すように、発言した後締めくくる。


「詳細が分かり次第報告します。」


しかし、アルドは放心し座ったまま反応せず、ラウラは首をふる。アルド達はガバレボを倒した後、西門からバルバロス王国を脱出し、街道近くの山で休憩していた。上空には宇宙船が待機しているのでいつでも国といわず行けるのだが、アルドの精神状態が安定しない限り、待機を続けるしかなかった。


ラウラは短距離ワープ装置で宇宙船ドッグに移動して、大破したガン・ブルグを調べる。


《ミューズはペチャンコ。多分メモリーも。救いがあるのはミューズが作ったガン・ブルグのデータが無事で、遺作のガン・ブルグを修復か復元出来ること。現状で修復は不可能だと考える。》


「、、、はぁ。デリカシーが無いな。そんな事を言ったら発狂するかもしれない。ガン・ブルグは修復が良いだろう。」


《大体、ドラグーン相手に一対一の勝率は8割だったなら、私に援護させてくれれば良かったの、ラウラが一騎討ちに拘るから。》


ラウラとしてはアルド単身でガバレボを撃破して、今後の糧にしてほしかったのが裏目に出てしまった形だ。勿論手伝うと言ったところでアルドは拒絶しただろうが。ルル・ルリが介入しなかったのもそのところが大きい。


「《あの次元》で修復は出来るのか、、いや。同じ様なアンドロイドMUZ-2500を手に入れれば、、」


しかし、ラウラの問は、自分自身で無駄だとあっさり否定する。それはミューズではない、外側が似ているだけで全くの別物である。それではアルドは納得しないだろう。


「全くの無理難題だ。それこそ《超越的存在》にすがるしか無いほどの、、《超越者》か、、」


《超越的存在が次元内で確認されたケースはごく稀だよ。我々の次元では《次元砲》を創ったとされる《超越者》が一般的だけどデータとしては存在を確認していないもの。そもそも巨大な宇宙領域で遭遇できる確率はー》


パチパチ。


宇宙船内に拍手が鳴る。


「いや~運が良いね~。こんな惑星に偶然通り掛かったのも何かの縁かな?」


それは奇妙な男だった。いきなり宇宙船内のドッグにいたことではない。人間のようで人間では無く、アンドロイドのようでアンドロイドではない、全てを内包した小宇宙のようなエネルギーの塊のような男だった。少なくともラウラにはそう思えた。


《誰あなた?話から察するにー》


何処にでもいそうなスーツ姿の男はわざとらしい動作で挨拶をする。


「僕はそう《超越者》だよ。本来ならば何もせずにただ、そこにいるだけの存在だけど今回はこうして君達と忠告?をしに来た。彼女の復活についてー、ね。」


ラウラは無表情のまま質問しようとするが、超越者は指を上げる。


「話が上手過ぎる。その通り。だけどここで《君達を皆殺し》にするのは、僕の《只そこにいる存在》としてのポリシーに反する、君達はこの次元に置いて危険な存在何だよ、理解してるかい?《次元砲》といい、宇宙船といい、まだ《あの死んだ男》の方が扱いやすいよ。」


「おっと、何故、彼の所に行かないか?それは僕の未来ではそうすると彼が死ぬからだよ、未来と過去は極性があって、、ん?分からない?分からないくてもいいや。」


男は服の内ポケットから、メモリーを取り出す。しかしラウラに渡さずに只手で玩ぶ。


「彼女が復活する条件は整っている。ファクトリーキューブ、貝殻、白銀のロボット、宇宙船。だが、遺物が足りない。そして何より人手が足りない、、いやこの場合、人手というかな?」


「、、、」


「このままなら長い旅になるだろう、彼何故は気付かなかったのか《大事なものは側にあるのに》。彼は心変わりするのかな?それとも無事に彼女を戻せるのかな。《あの次元》には行かない方がいい、近道ではなく無駄なだけだ、敵も増える。」


ラウラには何となく理解したこともある。しかし殆どが断片でよく分からない。


「それでは最後に彼女へのプレゼントだ。《この次元》では役に立たないから、意味もないし。解読には半年掛かるけどね。いや二週間かな?極意が書かれているから、捨てるの勿体無いじゃない?標は彼女に聞くがいい」


男はメモリーカードをラウラに投げる。


「ー」


そして、男は忽然と姿を消した。


《船内にはもういない。この星にも、ね。》


「録画は?」


《問題ないけど、、駄目みたい。写ってない。音声も、、》


「超越者という奴なのか、、?彼とか彼女とか、、固有名詞がないと分からないぞ、、」


《多分彼にとっては牛は牛、馬は馬、人は人という認識しかないンじゃないかな?ラウラは《蟻》の区別つく?》


肩を竦めると溜め息を吐く。


「あれから見たら、我々は虫けらということか、、であるなら嘘を付く理由はないか?そもそも何故接触してきた?」


しかし《超越者》の会話には収穫があった。少なくとも希望はあるということなのだから。ラウラはこの事を話すためにアルドの元へと向かうのだった。

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