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異次元収集家アルド3章14話

ガンリュウ2

結局、ガーデンブルグの村を3日程くまなく探してもガバレボの行方は全く分からなかった。ガバレボを倒すために集まった仲間たちは今回は空振りだとの結論に達し、ガーデンブルグを離れる事になった。


「村長の話だとこの家にあるものは、生きていた息子さんが引き継ぐみたいだが、《ナガレモノ》の可能性がある強力な装備やアイテムの類いかもしれないから仲間が欲しがっているんだが、、どうしたもんか、、」


仲間の言葉に耳を傾けながらベッドの上で半ば放心している子供をガンリュウは眺める。悲劇に襲われ精神が壊れてしまう人間がいるが、まさしくそれであった。


「どうした?」


「俺にはアレぐらいの娘がいてな、、嫁が死んでからは娘もあんな感じだった、、今は少し良くなっているがそれを思い出してな」


俺は子供に近付くと屈み込んで質問する。これはガンリュウの気まぐれであり、もし首を横に振ればその時点で子供への関心は失われたであろう。


「おい。このままこの村で暮らすか?それとも俺の家で一緒に住むか?勿論これは気まぐれでな、一度しか言わん。」


少年は俺に初めて目を向けて全身を見る。何かを推し測り訊ねる。


「オジサン、、ハ強イ?」


かたごとの質問に俺より先に隣にいた仲間の冒険者が答える。


「大陸随一の槍術の使い手のガンリュウだぞ。強くなりたいなら、付いていった方が良い。」


少年は強くなるという言葉に関心があったのか首を縦に振る。


「今日中に荷物をまとめろ。出来るか?」


「、、ワカッタ。」


少年は光を失っている瞳で答えると着替えを袋に詰めこみ始める。


「それでここのナガレモノとかはどうするんだ?」


「出来るだけ保存してもらえるように村長に頼んでおこう。」


俺は無造作に家の中に置いてある槍のような形状の杖を手に取ると材質を確かめた後、自分の背中に背負う。少年には大きすぎるが材質もしっかりしているし、成長すれば練習用の槍にはなるとの判断だった。


「何個かかさばらないナガレモノを遺品として持っていこう。指輪と、、この箱、、後は、、それらしいものは後は柩と変わった棍棒、、いらないか、、」


ガンリュウは指輪と箱を服にしまうと、村長と話をするために家を出た。そして二日後には村を離れる。暫くしてアルドの家が火事になり、遺品が消失したことを俺が知るのは更に年月が経ってからだった。


残された死体の遺物、家の遺物、そして近くの森に置かれた遺物はそれぞれの手によってガーデンブルグの村を離れる。遂にそれを知ることは俺には出来なかった。




**************************



バルバロス王国西門、その近くの宇宙船の入り口には傭兵、そしてバルバロス軍が集まっていた。中でも目を引いたのは高い戦闘能力を秘めたゴーレム、その近くにいるチームだった。


「じゃあ、行ってくる。」


冒険者風の男アルド、戦闘能力の高い美人アンドロイドのラウラ、魔術学校首席のアリサ、そして特徴がない男魔術師のライオットは船内の動力部に向けて移動していった。


入り口に残された美しいアンドロイドのミューズはファクトリーキューブを操作する。ファクトリーキューブの固有次元容量には限界があり、素材を除いた容量では4メートル四方のオーガユニットを二体入れるだけのスペースは確保できない。


結論はひとつ。アルドのオーガユニットを直すためにはコウモリのオーガユニットを解体し、スペースを確保。素材はコウモリの素材を流用すれば良い。


「固有次元内にいるコウモリは隔離。オーガユニットの解体を開始。」


ファクトリーキューブに分解処理の文字が表示される。ミューズはバルバロス軍の兵が宇宙船内のオーガユニットの部品を鹵獲するのを横目に見ながら自分の主人の無事を祈るのだった。




宇宙船内の中央通路は広く成人男性が二人通れるほどで、白銀色の床や壁が時々脈打つように点滅していた。材質は硬いの一言で、通常の攻撃であれば傷すら付かないと思われるが、ラウラの話では内部で爆薬等を使えば流石に破損はするらしい。だが宇宙船の凄いところはそこではなく壊れても《再生》することである。勿論それだけのエネルギーが必要であるが。


動力部に向かうアルド達の先には、もうすでに爆弾やガバレボ私兵の残党を探す傭兵達が溢れていた。


ラウラは無表情を装おっていたがアルドは彼女の苛立ちを感じ取る。例え大切なものが他に保管されているとしても、土足で自分の縄張りに侵入されればラウラであっても抵抗があるのだろう。アルドはあまり感じなかったが。


「あった。この塊はどうだ?」


「怪しいな。魔術で覆って、外の集積地に持っていこう。」


「こっちにもあるぞ!」


次々に発見される怪しげなモノを船外へ運び出す傭兵を横目に先頭のラウラは足を止めることなく、エレベーターに乗り込む。


「、、上手すぎる、、わね。」


「それは作戦が予定通りだという意味なのか?」


「ダミーをあえて分かりやすい所に置いておき、本当の爆発物は発見が難しい所に設置する場合もあるでしょう。これから向かう動力部が本命だと考えますが。」


ウィーン。扉が閉まり浮遊感と共に直ぐに扉が開く。


先程までいたところよりも若干薄暗く広い通路。アルドは周囲を確認するが人気は無い。


「この先に動力部があります。念のためー」


ラウラ、アリサ、アルド、ライオットの順にエレベーターを降りた時、ライオットはアルドの背後から魔術を放つ。


「ショックボルト」


ビリリとアルドが突然の不意打ちに対応できずに前のめりに倒れる。瞬間に反応したラウラは敵と見なしたライオットを視覚に捉えるがライオットはアルドを盾に距離を取る。


「貴様!!」


「動かないでください。怪しい、怪し過ぎます。貴方達の目的は何ですか?いや、答える必要などありません。もうだいたいわかりました。」


まるで今までが演技だったかのようにライオットは語る。


「貴方達の目的は《宇宙船》の強奪。話の流れだと以前の所有者が彼だったのでしょう。我々バルバロス王国は貴方達に利用されてまんまと罠に掛かってしまった。」


「ちょっどうゆうこと?」


「動力部に行けば彼等が船の所有者になるという事です。私も貴方も騙されてしまいましたね。、、あぁ私ですか情報局の者で主に潜入捜査していまして、今回彼等の監視役についていました。貴方はいいカモフラージュになってくれました。」


ラウラは考えるこの場で二人を倒すか、説得するのか。監視役の男はアリサと同等かそれ以上の魔術師であると直感する。アルドが人質に取られている状態で二人同時に戦うのは流石に分が悪い。


「この場で我々を始末すれば、事は終わったのに残念でしたね。流石に両手が塞がったままでは魔術は放てない。アリサ・スターライト、彼女を倒して下さい。」


「ちょっと、訳がわからないわ。考えさせてよ。」


ハッキリしないアリサの態度に苛立つライオット。


「貴方も彼等の監視役なのでしょう。裏切りの意思があればそれは反逆の罪に問われるのは当然。それとも貴方も彼等に付くのですか?」


「それは言ってないでしょ。でも所有者って彼等が元々の所有者なのでしょう、ならあげれば良くない?」


ライオットは首を振る。


「何を馬鹿な。この宇宙船の価値を分かっていないのですか?!それに元々宇宙船をバルバロス軍が制圧する作戦。制圧するそれはつまり我々のものになるという事です。」


アリサは考える。


「《あんたの家》が強盗に占領されて、助けにやって来た奴等が強盗を叩き出したら《あんたの家》は助けた奴等の家になるってこと?ちょっと変じゃない?」


「確かに宇宙船の所有権の有無は彼等との契約に含まれていない。しかし、奪取のために我々は莫大な費用を掛けた、勿論彼等のよりも。これでは大損だ。」


「ガバレボを倒すために、共同で事にあたった。勝利しただけでは不満だと?」


ライオットはもういいとアリサに強い口調で命令する。


「、、彼女を倒せ、そうすれば魔術学校を復興させるように進言してあげますよ。」


「?!」


アリサの顔色が変わる。アリサはラウラと向き合う。勝ち誇るライオットは成り行きを見守る。


「聞くわ。あんた達は私達を殺そうとしたの?」


ラウラは最早嘘をついても意味がないと本心を話す。


「いえ、ただ宇宙船からは退避してもらうつもりでした。ガバレボの私兵以外の命を奪うのは主人が許可を出しませんし、なによりこの船は私達の家の様なものになる、そこで血が流れるのは本意ではなかった。」


「奪うことは認めるわけだ。さぁアリサ・スターライト、弟、妹の様な存在。かつての友の思いが集まる魔術学校を復興させるために彼女を倒せ。」


アリサの前にまたしても四人の子供達が現れる。アリサ・スターライトは凄い魔術師である、凄い魔術師で無ければならない。魔術師とは探求者である。


例え何かを犠牲にしても、欲しいものを得るために何かを犠牲にし続けるのが探求者である。そのためには躊躇してはならない。


「魔術学校があれば皆はもとに戻る。分かってる。答えは初めから決まってた。」


アリサは魔術構成図を仮想空間に描く。


「はっ!!」


バリバリ!


回避が難しい電流が空間に発生する。


「くぅ?!」


攻撃を受けたライオットは攻撃してきたアリサを睨み付ける。もはやラウラを牽制しながら場を支配するのは無理だと判断して、舌打ちをしたあとアルドから手を離す。


「ちょっとだけ気絶してもらおうと思ったんだけど、、失敗したか、、」


「、、理解に苦しむ。これで魔術学校の話は無くなった。それどころか貴様は国家反逆者になった。」


「理解ね、、私はアリサ・スターライト。目指すは最高の魔術師。偽りの《経営者》ではない、優しい皆のお姉さんでもない。私の友の願いは私が、最高の魔術師になること、、、力を欲する、知識を欲する、だけど彼等に顔向け出来ない魔術師にはならない。」


ライオットが魔術構成図を描く。


アリサ・スターライトが魔術構成図を描く。


魔術師同士の戦いは早さがすべてである。元々脆弱な人間の体では魔術に耐えられないし、当たった瞬間魔術構成図が消える為である。さながらガンマンの様に互いの思考を読み、体に当てることを最優先で考える両者。


「ウインド・ショット!」


「ウォーター・バレット!」


パンパン。


ライオットのウインド・ショットはアリサのウォーター・バレットを消滅させ更にアリサに向かう。


「がっ!!」


グサッ。


アリサお手製のシルバーエッジがライオットの肩に突き刺さっていた。アリサが放ったウォーター・バレットのその死覚からの不意の一撃を食らう。弱体化したウインド・ショットをマントでなんとか防ぐとアリサは笑う。


「最高の魔術師なら、国の支援なんかなくても魔術学校の一つや2つポポンと建ててやるわ。それにー」


「他人の弱味に漬け込むのは大体が悪人だしね。あんたの顔、あの時の魔術師の顔にそっくりだった。」


満面の笑顔。


しかしー


勝ちを確信したであろうアリサにライオットはフォトンを放とうと魔術構成図を描く。通常では痛みで描けない魔術構成図をライオットは予め用意しておいた《ドメイン》から引き出した魔術によって麻痺させたのだ。


※ドメインは仮想領域に任意で魔術構成図を焼き付け何時でも魔術をフィードバックする技術。但し仮想領域内を分割して使用するため、仮想領域への負担が大きい。


圧縮された時間の中、アリサ自分の命が消えるのを感じた。


ーーー。


タトン。ドバン。


瞬間、ラウラはライオットに追撃を掛けていた。


クイックキャスト・コンバイン。《オーバー・ポテンシャル》


ラウラの蹴りで宙に舞うが、手を支点に回転し威力を殺したあと着地する。


「くっまだだ、、」


「成る程、人体強化の魔術。」


咄嗟の判断で魔術を強制終了して、ラウラの攻撃をギリギリで凌いだ事はライオットの戦闘能力の高さを証明していた。


ラウラの高速の手刀を回避したライオットは蹴りを放つ。ラウラはライオットの蹴りを簡単にいなすと裏拳をライオットの胸にめり込ませる。


「化け物が、、!」


「貴方も中々のものですが、、」


片手を極められ、ライオットはラウラに投げ飛ばされる。


ドタン。


そして床に叩き落とされ気絶する。アリサはラウラと向き合う。


「彼を殺すの?」


「殺しません。まぁ宇宙船からは出てもらいますが、、貴方はどうしますか?このままだと国家反逆者として追われる立場ですが。」


「本当にやった後に、後悔してるわ。」


「ならば我々に殺されたことにすれば良い。姿を消せばそれらしくなる。行きたい場所は後で聞きます。」


微妙な顔をしたあと、ため息混じりに頷くアリサ。ラウラはアルドの状態を確認するため、仰向けにする。


「まだビリビリする。不意打ちは駄目だわ、回避できない、、」


直ぐにアルドが話せるまで回復する。元々気絶していたわけでなく、体が麻痺して動けないだけらしい。恥ずかしそうにラウラに担がれて動力部に移動する。


ゴウンゴウンゴウン。


そこには巨大な空間にユッタリとした大きな椅子のようなオブジェが中心にポツリと存在していた。


「もともと《宇宙船》の所有権は宙に浮いたままでした。我々が所有権を主張すれば王国は我々を作戦中宇宙船から遠ざけますし、王国が主張すればこちらも有益な情報は流さなかった。」


「しかし、こちらに有利な点があるとすれば《宇宙船》を所持するキーは我々にあったということでしょう。アルド様がキーであり今は絶対的な所有者です。」


ポタリポタリ。


天上から水が滴る。


始めにおかしいと思ったのはラウラだった。しかし、行動に移す前に液体がアルドの頭めがけて落ちてくる。レイレインは両手が塞がっているラウラを無視し、動けないアルドの口から体内に侵入する。


ニュルル。


「これは!」


「レイレイン!!」


アリサは慌ててシルバーエッジをアルドに飛ばすが、その時には手遅れだった。シルバーエッジはアルドの手に突き刺さっただけでレイレインまで到達しなかった。


アルドの体を乗っ取ったレイレインはニヤリと顔を歪めたまま、あははと笑い得意気に説明をし始める。


「これが我々の起死回生の一撃だ。この男アルド・ガーデンブルグの体を乗っ取れば全てがひっくり返るのだ。宇宙船、二体のアンドロイド、そしてこの私とこの男の不死身の体があれば最早敵はない。」


「まさか!」


ラウラは目を見開き、驚きを隠せないでいる。


「アンドロイドは主人の命令には逆らえないのだ。この体は紛れもなくアルド・ガーデンブルグのもの、つまりは私の命令には逆らえん、ラウラその小娘を始末するのだ!」


ラウラはアルドを見た後頷いて、アルドの手に突き刺さったいまだに淡くかがやくシルバーエッジを抜き取るとそれを構える。


「アンドロイド?わからないけど付き人なんでしょ。彼はレイレインに操られているだけよ、彼の本意では無いわ。」


「そうでしょうが、今はレイレインの命令を聞くしかないのです。では参ります。」


シュタン。


勝ちを確信したレイレインは視界から消えたラウラを確認できないまま、視界が漆黒染まるのを疑問に思った。初めはアリサの魔術かと思ったが自分のアルド・ガーデンブルグの体が宇宙船の床に崩れ落ちた結論を即座に導きだした。


頭と首の境、脊髄に突き刺さったシルバーエッジを感じ取るレイレインは自分の体が消えていくのを感じながら呟く。シルバーエッジに付加されている魔力分解の効力のためだった。


「ラウラ、、暴走か、、」


暗闇から聞こえるラウラの声は冷淡なものであった。


「私は正常ですよ。私は主人の利益に叶うことをしたまで、、《乗っ取られた体はあくまで主人のものであり》操っている人物ではないという事です。貴方の命令は、意味の無い寝言みたいなものだと解釈されました。」


ラウラはアルドが乗り移られた瞬間、電波ソナーでアルドの内部にいるレイレインの本体を探り、シルバーエッジで直接斬りつけたのだ。レイレインは想像していなかった、アルド・ガーデンブルグの体を乗っ取ったレイレイン、その主人の体をラウラが躊躇い無く傷付ける事ができることを。


「私が驚いたのは貴方を主人と認識しなかったこと。《私が主人を主人足らしめる認識》が、主人の肉体ではない事に驚いたのです。つまりは同一のクローンを用いたとしても私は主人を主人と認識する。これは素晴らしい事を経験させてくれました。」


「わたし、、きえる、、の、、、か、、」


「貴女が今後、船に近付かなければ本体を追ったりはしません。、、それともストックも無い状態でしたら、それはそれで、、とても助かります。」


グチリ。


更に奥深くにシルバーエッジを差し込むラウラ。


「うがぁぁぁあ。」


千年以上生きたレイレインの最後の言葉は断末魔であった。


ラウラは再度電波ソナーを放ち、アルドの内部にいるレイレインの完全消滅を確認した後、シルバーエッジを引き抜いた。


「ったく、、なにがなんだか、、」


ラウラにシルバーエッジ渡されたアリサは頭を抱える。


「船内の事は全て終わりました。後は仕上げをします。」


ラウラはアルドを動力部の椅子に座らせるとモニターを操作して、あるプログラムを起動する。宇宙船内の灯りが白から赤になり、ブーブーと警告音が鳴り響く。


「ちょっと何したの?!」


「ガバレボ配下と王国傭兵達には宇宙船から出てもらいます。爆弾の事で傭兵達は船の入り口付近から遠くない距離にいますし、脱出させるには都合が良い。貴方もなるべく誰にも発見されない方が良いでしょう?」


更にパネルを操作してガバレボの残党が船内に残っていない事を確認してから、マイクで船内に放送する。


《動力部にて自爆プログラムが作動しました。船内にいる乗組員は直ちに船外へ脱出してください。繰り返します動力部にて自爆プログラムが作動しました。船内にいる乗組員は直ちに船外へ脱出してください。残り時間は8分となります。》


船内通路至るところにタイマーが現れて時間が表示される。


「私はライオットと残った傭兵達を船外へ誘導します。貴方はこのままここに残ってください。勿論我々を信用してくれるならですが。」


「はぁ、こうなることならアンタ達を撃っていれば良かったかしら。直感に従うとろくなことがないわ。」


ラウラは苦笑すると、気絶しているライオットを抱え上げる。


「インターフェースオン。《ルル・ルリ》」


「うわっ。」


アリサが声をあげたのも無理はない。いつの間にか隣に人が立っていたからだ。だが良く見るとそれはうっすらと透けて見えて映像であることを理解する。


背丈は150センチ程で水色の髪で目が大きな可愛らしい美少女であり、服装は黒と灰色を基調としたピッタリとしたボディースーツを着用している。


《、、ラウラ、、連れてきたの?》


「目を覚ましたら、坊っちゃんを脱出させてくれ倉庫にMUZ-2500がいる。オーガユニットでガバレボに止めをさす。」


《ガバレボの機体はバルバロス王国軍と戦っている。でも劣勢で撤退は時間の問題。本当にこの船に戻る?そのまま逃げれば命は確実に助かるのに、、》


「人間の心はそんなものだ。逃げれば我々が宇宙船を完全に掌握して、追ってくると考えると次に戦うときは勝ち目は全く無い。それに逃げて《いつ現れる》かわからない我々を恐怖に怯えながら待つのは奴の性質にそぐわない。玉砕、自爆で盛大に最後を遂げたがるだろう。」


映像のルル・ルリは沈黙する。インターフェースのルル・ルリでは流石に心を理解するのは難しい。彼女がいるのはあくまでも宇宙船の運用サポートの為である。


「頼んだ。」


ラウラはライオットを抱え直すと、エレベーターに乗って動力部からいなくなった。アリサは暇なのかルル・ルリを横目で見ると尋ねた。


「貴方は、、何、それにこの船は?」


「私は疑似人格のルル・ルリ。船の所有者のサポートをしている。この船は次元を飛び越える機能を持った方舟。」


答えるとは思っていなかったアリサは答えてくれた、ルル・ルリに更に質問する。


「この船皆が欲しがっているんだけど、貴方は誰が船の所有者だと思う?」


《この船の所有者は現在では一名のみ。そこにいるアルド・ガーデンブルグと呼ばれている人物だけになります。所有権を持つためには一定水準以上の知的生命体でかつ所有者の権限においての契約が必要になります。》


「貴方の話が本当なら王国軍はどちらにせよ、船の所有者にはなり得なかったわけか、、無駄足ね。」


《私は所有者以外には従いませんのでそうなります。最も簡単な操縦程度ならラウラやアンドロイドになら可能ですが、、そろそろ覚醒します。》


アルドの覚醒が早かったのはラウラによる刺傷はレイレインのみを狙ったもので肉体そのものの損傷は軽度の為である。


「いつつ、、宇宙船に入ってから二回も不意を突かれるって周囲への警戒が足りないってことか、、まだまだだな。」


立ち上がり全身の状態を確認するアルドであったが途中、インターフェースの少女に気が付く。


「、、えーあー、、何だっけ、、そう言えば昔、、ちょっとだけ会った様な、、いや気のせいか、、」


《いえ、、それは<本体>の支援型アンドロイドのルル・ルリです。私は奥様が寂しくないようにコピーされた疑似人格プログラム。ベースや記憶は引き継いでいますが、アンドロイドの肉体がない以上、感情や心を持っているわけでは有りません。》


アルドは本体の部分に引っ掛かりを感じたが、まだ作戦は終っていないことを思い出す。


「んで俺は何をすれば良いんだ?この船の認証がどうとかがあるんだろ。」


《本来であれば再認証は必要ないのですが、十年以上もの間宇宙船への搭乗記録が無かったため再度データを更新します。そちらの装置の前に立って、ハンドリングを掲げてください。》


キャイン。


床から変な装置がせり上がり、奇妙な突起がアルドの前に出現する。例えるならば体重計だろうか。足の形のマークに合わせて床に乗るとアルドの体が光に覆われる。


《声紋の登録を行います。私の言葉を真似して続けて下さい。ルル・ルリは最高のアンドロイド、可愛いよ可愛い。》


「、、、ルル・ルリは最高のアンドロイド、、可愛いよ可愛い、、ちょっと待て、、可笑しくないか?」


疑うアルドは訝しげにルル・ルリを見るが、しかしルル・ルリは真顔で返答する。


《いえ、私のデータではコレが最も認証に適した言葉と判断されました。感情の無い私には良くわかりませんが、、可笑しいですか?》


「、、いや、、まぁ良い続けてくれ、、」


《ママは好きだけどパパは大嫌い。》


「、、ママは好きだけど、、ちょっと待て本当に感情無いんだよな。」


ルル・ルリのホログラム映像は真顔のまま首を縦に振る。アリサは気付いたことを思わず口にする。


「声紋認証って凄くきちんとするのね。今まであなたと私達普通に会話していたし、その言葉も使えないなんて面倒ね。」


《チィ》


アルドは確かに何処かからか舌打ちが聞こえたように感じたが、周囲に変化はない。


《、、声紋認証は終わりました。以後お呼びする時何とお呼びすれば良いですか?お兄ちゃん?旦那様?アルド様?坊っちゃん?おすすめはアーちゃんです。》


「、、アルドで頼む、、」


《分かりました、それではアーちゃん外へ案内致します。貴女はここで、、》


「えっ?ああっアレ?」


アルドは本当に感情が無いのか疑問に思いながら、動力部をルル・ルリの案内で出た。通路に出ていた自爆の予定時間は2分を切る。


《ガバレボのドラグーンがバルバロス軍から離れこちらに向かってきます。船内に残っているのは動力部にいる女性とアーちゃん、そして傭兵を誘導しているラウラ・MUZ-2500のみとなりました。》


「船への入庫を制限出来るか?」


「可能です。ドラグーン対策としてハンガーへの入口を閉じましょう。アーちゃんとMUZ-2500にはその近くの扉から船外へ脱出してください。」


エレベーターを降りて大きな通路を進むアルドはハンドリングを操作してラウラとミューズに連絡をとる。


「ミューズ・ラウラ聞こえるか?ガバレボがこの船に向かってきている。作戦は計画通りに進んでいる、これもみんなのお陰だ。本当にありがとう。これが奴との最後の戦いになる、最後まで気油断せずに戦い、、そして勝とう。」


「ラウラは先にオーガユニットで外へ。ハンガーの入口が閉じるぞ。」


《はい。》《了解しました。》


ガチャン。


《疑似自爆のプログラムに伴い地域の被害を抑える為、宇宙船は離陸し高度を上げます。よろしいですか?》


「構わない。あまり派手に爆発すると破片が小さすぎて回収が難しくなる程々で頼む。」


《証拠を残すようにしますよ。彼等からはガバレボの手によって破壊されたように映るでしょう。破片位は仕方がありません。》


タッタッタッ。


「アルド君!」


「とにかく外へ出よう。」


ハンガーに入ると直ぐにミューズに声を掛けられるアルド。辺りには物が散乱していたが人の気配はなく、宇宙船を手に入れたことを実感させた。近くの扉に近付くと外には脱出した傭兵達が宇宙船から走りながら離れる様子が見てとれた。


《現在船は2メートル程浮いています。二人が脱出すると同時に高度を更に上昇させます。急いでください。》


「行こう」


「はい」


二人は宇宙船から脱出する、それはアルド運命との戦いの最終段階の合図であった。

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