異次元収集家アルド 三章12
ガバレボ4
ガンリュウは強かった、個人的な能力もさることながら、仲間が一流揃いで自分の手下では相手にすらならなかった。
冒険者十数人、対俺の盗賊軍百人の戦いだったにも関わらず俺は敗北した。詳細を言えば、ガンリュウの仲間は数人の軽傷者が出ただけであり、逆にこちらは俺以外の幹部が死亡、降伏した手下がある程度いただけであった。
捕らわれバルバロス王国の死刑囚となった俺はずっと考えていた。自由を得る方法、そしてどうすれば自分の願望を満たし続ける事ができるのかを。
数年後忠誠心が高かった手下の計らいで牢屋を脱出し、バルバロス王国から離れ数年は様子見のつもりで小さな村に身を隠すことになった。
村の名前はガーデンブルグ、寂れた村だったが幸運にもそれがバルバロス王国と戦えるだけの力を得るためのきっかけだった。
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惑星ガルンセルの中央大陸のほぼ中央に位置する平原。肥沃な土地が広がるその大地にバルバロス王国は存在していた。
バルバロス王国軍アンタレッタ将軍は作戦開始丁度に、敵の宇宙船から人造人間のドール達とゴーレムが数台宇宙船から、王宮方面へ移動する報告を受ける。
「相手方が空からの攻撃を開始すればチャンスかも知れん、ファイヤーショットを推進装置に当てると誘爆の可能性があると老子が、、いや今は子供か。まぁいいとにかく、ゴーレム以外の兵士には魔石を温存して事に当たるのだ!」
「しかし一時間丁度に相手が動き出すとは、、相手もこちらに気付いたのか、只の偶然なのか、、」
モロゾフの言葉にアンタレッタ将軍は苦笑する。
戦いにおいて相手の事を考えるのは重要だが、あくまでも自身の脳内の推測の域を出ることはない。アンタレッタとしては今現在のこの状況を如何に利用するかに重点を置いていた。
「市街戦になればゴーレムの動きが制限される。強力な儀式魔法の準備はどうだ?」
儀式魔法は一人から数百人単位までの魔術師を利用して、高度な魔術を使用する。基本としては魔術構成図を床に描き、囲うように円陣を組んでワンドを利用する。
利点は魔術強度が上がり、同じ魔術でも威力の上昇が見込める事、低レベルの魔術師でも巨大な魔術装置の一部として利用できるために魔石の消費をある程度抑える事が可能になる。
「魔術を当てるためにはゴーレムの動きを鈍くする必要があるが兵士達には巨獣捕縛用の丈夫なネットを渡してある。それで動きを封じるのだ」
「現れた直後のゴーレムの数は20未満で比較的少ないようだった。これならば何とかなるだろう。問題は、、」
高台からアンタレッタ将軍は西門付近に見える<宇宙船>を睨む、あれがが問題だった。
「どちらにせよ戦端は開かれた。」
「将軍!!」
アンタレッタ将軍の元に副官が現れる。
「後僅かでゴーレムがこちらに来ます。空を飛ぶゴーレムもいるとのこと、指揮はどちらで?」
見ると数百ものドール達が2台の歩兵戦車を守りながら、中央広場に設置した防御陣に突撃を仕掛けてきていた。
「ここでよい。よし!!弓兵は弓を構えよ!ゴーレム支援のドールを引き付けよ!!」
アンタレッタ将軍から見えるドールと陣との距離がみるみる縮まる。普通の兵士ならば多少は躊躇するであろう、だが白濁色のドールの目には迷いはなく、進行に怯む様子は全くない。
「矢を射よ!!」
同時にドール達が持っていた火器を構える。
アンタレッタ将軍とガバレボの戦いは、弓と爆音から始まった。
中央広場を抜けて150人規模の冒険者や荒くれ者達がそれぞれの道を通り《宇宙船》を目指す。
アルド・ガーデンブルグとミューズとラウラ、アリサ・スターライトとライオットは宇宙船の南側から侵入するため市街地を南側へ移動していく。
「アルド君、歩兵戦車の製造は完了いたしました。これより敵の猛攻が予想されます、動作テストも兼ねて戦車にお乗り頂いた方が安全ですが、、」
ミューズの言葉に首を降る。確かに安全かも知れないが、すぐに乗り込んでしまうとアリサ達に怪しまれるし、敵だと思われて同士討ちになる可能性もある。
「安心してください。アンタレッタ将軍に話は致しました。私しか動かせないゴーレムを使う旨をー」
ラウラは通信水晶を取り出すと、本部に報告する。
「こちら21班ラウラ隊です。」
<どうした?>
「報告した通り、宇宙船間際には敵の猛反撃が予想されます。報告書の通り宇宙船近くでの使用の許可をお願いします。」
<ーーー暫く待て。>
たったったっ。
走りながら、待つこと数十秒遊撃部隊の隊長のエリーザの許可が下りたのか、偉そうに許可を告げる。
<ー問題ない、味方のゴーレムである旨は遊撃部隊全体に伝えておこう。色は報告通り青色で宜しいか?>
「変更はない、作戦を続行する」
<健闘をー>
そこで通信は途切れた、ラウラの情報を他に送らなければならないためもあるだろうが、遊撃隊本部でもにガバレボとの戦いが始まったのかもしれないとアルドは考えた。
「は!!」
ラウラは手持ちの鉄製ナイフを高速で投げると、ドールの眉間に突き刺さり襲いかかる直前にドールはもがきながら、地面に倒れる。。
「数が多くなって来たわね。」
「このままこの通りを抜けましょう、近くの半壊した店に私のオーガユニットがあります。それがあれば宇宙船の防御陣も突破可能になります」
アリサはその言葉に、眉をひそめる。敵だったラウラをこのまま信じて良いのか頭をよぎったのだろうとアルドは考える。
「ラウラは俺の命令でガバレボ、相手の情報を探っていてもらっていた。裏切った訳ではないさ。」
アルドは横から飛び出して来たドールを横に凪ぎ払って、二つにするとアリサに説明する。
「はっきり言って、ラウラが敵方で嵌めるつもりなら。わざわざこんな回りくどい事なんてせずにオーガユニットで王国軍と戦った方が早いし、危険も少ないだろ」
「、、まあね。でも、、なんか、、」
「?」
「何か他にも隠していること有るんじゃないの?《ナガレモノ》の道具を持っているみたいだし」
このまま無視しても良かったが、アリサには本心から話した方が方がいいとアルドは考える。基本的に似たタイプの性格だと感じたからでもあったが、疑問を大きくして更に警戒させるのは今後の計画にも支障をきたすと思ったからだ。
「俺達3人は《ナガレモノ》なんだ。あの船も実際のところ俺達の船でね。ガバレボに奪われたったのが本当のところだ。」
「、、、う~ん。ハッ!!」
グサグサグサ。
シルバーエッジを頭と胸に三本、ドールに突き刺すとアリサの作った魔術回路によってシルバーエッジが自動的にアリサの手に戻る。シルバーエッジには今回の戦いにおいて、《撃ち出し》《対応した指輪に戻る》そして、特殊な魔術一つを回路として組み込んである。
レイレインとの謁見の間での戦いの後、寝ずに作った三本。そしてそれに対応する、三つの指輪。アリサの技量をもってしても魔術回路は複雑でシルバーエッジに魔術回路三つを付与するのが精一杯である。
「信じるか信じないかは任せる」
「私は、、迷ってるわ。でもアンタの今の言葉に嘘が無いことは分かる。でももし何かあれば、皆のために貴方たちに魔術を撃つわ。」
「構わない。」
タッタッタッ。
大通りを暫く進むと半壊した店にアルドたちは侵入する。
「ここです。シートをどけるとオーガユニットがあります。」
少し埃っぽい店の中は四メートル程のゴーレムが仰向けに横たわっていた。ミューズとラウラがシートをどける。
ピピピ。
ラウラが操縦席の横に付いている暗証番号と指紋の認証を済ませると胸の部分がせりあがる。ラウラはアルドの方を向く。
「いきなり試作機に乗り込むのはお奨めしません。まずはこのオーガユニットで練習を、中は外よりは安全です。」
「では私もー」
ミューズも乗り込もうとするがラウラに止められる。
「MUZこれは一人乗りだ。空きスペースがギリギリあるが敵に囲まれて危機的な状態になった時、お前より私の方が上手く扱える。つまりは私が補佐する理解したか?」
少し険悪な雰囲気。
「、、MUZ。ぼっ、、アルド様の命が第一であることを忘れるなよ。安心しろ、試作機の方はお前が乗る事になる。」
「分かりました。アルド君の事を宜しく御願いします。」
「さぁアルド様。」
ラウラの誘導でアルドは操縦席に入る。中は棺桶のようになっていたがこれは機体が横になっているためで、実際には立った状態で操縦をすると思われた。
「後ろに私がそこに手を入れてください。足はそのまま。」
ラウラの胸を背中に感じながら、アルドはラウラの流れるようなコントロールパネル操作を眺める。
「早いな。」
「馴れですよ。」
パシュン。
操縦席の扉が閉ざされ。アルドの体に機具が当てられる。腕、胸と背中、足の太股と足の脛と甲。頭以外は機体に大半が飲み込まれているような格好だった。
微笑むラウラは優しくアルド手に自分の手を添えて起動を開始する。明かりがついて店の天井の映像がモニターに写し出される。若干の駆動音。
「基本的に普段通りの体の動かし方と変わりません。立ってください。」
「おおっ。」
アルドの体の変化を機具が感じとり機体が同じように動く。まるで水中のような抵抗感を機具から感じるが気になるほどではない。
アルドが驚いたのは動いた時に体に掛かる振動等の負荷だったが、それでも操縦席の保護機能が働いているので混乱することなくラウラのオーガユニットが立ち上がる。
店の天井のすれすれの機体の大きさは大体三メートル程。色は青色を基調としていて、骨が太い男性の様なフォルムをしている。右肩には備え付けの小型の大砲が付いており、腰に筒型の武器、太股にナイフがついている。
「若干、動作が遅れて動くのか。」
「重い鎧を付けていると思われた方が良いです。頭の反応に体が付いていけていないだけで、直に違和感は無くなります。」
「武器は?」
「ナイフとハンドバルカン、後グレネードランチャーとカノン砲とですね。」
「ハンドバルカン、、グレ、、カノンか、、」
よく分からない名前に少し戸惑うアルドだが、それを察したラウラは補足する。
「掌の窪みに付いているのがハンドバルカンで対人用になります。腰のグレネードランチャーは対物・戦車用で弾が当たると爆発しますが直撃しないと戦車の破壊は難しいです。肩のカノンには徹甲弾が装填されています。遠距離砲撃支援用の為命中率は多少低いですが幹部やドラグーンの機体でも命中すれば貫通させるかとが可能です。ナイフも有りますがあまり使い勝手は良くありません。」
アルドは呪文の様なラウラに言葉に首を振る。ラウラは少し拗ねた可愛い主人に甘く耳元で囁く。
「大丈夫ですよ。初めてなのですから、覚えるより馴れろ。アルド様、とにかく動いてまずは馴れましょう。」
「わかった。」
ラウラはコントロールパネルを操作して、外部音声のスイッチを入れる。
「多少の攻撃ならこのオーガユニットの装甲で防げる、機体を盾にしながら前に進め。ここから先は敵が多数待ち構えて来ると思う、魔術師の方はなるべく魔石を温存しつつ、広範囲の攻撃魔術を敵集団に撃ち込んで欲しい。MUZはオーガユニットが死角から攻撃されないように警戒、援護。」
巨大な機体が目の前で立ち上がった事に驚いていたアリサとライオットだったが、ラウラの言葉に頷いた。
「それでは北に移動しつつ、宇宙船まで進む。」
ガッガッグワシャ。ガッガッ。
機体の大きさが把握出来ず、店の壁に新たに穴を開けてしまって振り返るアルドだが、直している暇はないと諦めて前に進む。
ガシュン、ガシュン、ガシュン。
アルドはスピードを押さえつつ、少し早めに歩く。オーガユニットは早い。全速力であれば馬等よりはるかに早かった。
「結構周りに気を遣うな。」
「歩兵を踏んでしまうのは頂けません。それは注意してください。我々は敵を捕捉して、なるべく先手をとって攻撃することです。」
アルドが頷くと、前方のモニター越しにドールが現れる、それを囲うように青いマークも表示される。
「青の表示はロックが掛かってます。セーフティ解除をして赤いマークに変更してください。右の赤ボタンを押して、、そうです。」
「くッ、うおおっ!!」
バララララ。
ハンドバルカンがドールに当たる。一発では構わず向かってくるが急所の頭に当たった瞬間機能が停止し、後方に倒れる。
「弾が止まったんだが、弾切れか?」
「五点バースト制限していますので、連続では撃てなくなっています。一回指を離してから、もう一度グリップを握れば弾が出ます。」
バラバ。
「ハンドバルカンの残弾数は150。グレネードランチャーは12発とカノンは3発残っています。グレネードランチャー以外は装填の必要はありません。」
「、、よく分からないが、、足りるのか?」
「全弾薬を使いきるまでの時間は最短で1分45秒となっています。本来は補給をしながら戦うので、これでも弾は標準より多目になっているのですが、、。」
「、、成程。グレネードランチャーってのは、、」
機体にを動かし筒状の武器を腰から外すと、ランチャーを構えつつ走る。次のドールの姿は見当たらない。
「、、いないな。いやいない方が良いのか。」
「もうそろそろ宇宙船の近くですので、残りは、、。ーアルド様左後方!!」
「?!」
とっさだった為振り向いた瞬間、爆音と共に機体が震える。少し高めの建物の屋根にいたドールが遠距離から攻撃してきたのだ。
「損傷は軽微、問題ありません。」
「くらえ!!」
ドウン!バンガラガラ。
「ちょっ、きゃ!」
「おおぃ!」
慌てて撃ったアルドのグレネードランチャーは狙いが外れる。至近距離の屋根に当たり、誤爆する。拳程の破片が青色の機体とその近くにいたアリサ、ライオットの近くに落下する。
「下手くそ!!何やってるの、殺す気。」
「すまない、反動が凄くて失敗した。大丈夫か?!」
ライオットは片手を上げ、無事をアピール。口を尖らせるアリサだったが、新人の魔術師でも暴発は意外と多い失敗なので、それ以上の追及はしなかった。
「ちょっとした誤差があるんだよな、、こんなに難しいとは。相手も屋根からいなくなってるし。」
「下手というほどではありませんよ、やはり馴れるまでには時間が掛かります。馴れれば生身と同じ様な動きも可能です。」
宇宙船に近付くにつれて、銃声や爆音が近くなり傭兵達の姿が見えるようになってきた。傭兵達はアルドの機体を見ると少し驚いたのは表情を見せるが、宇宙船の突破における切り札との連絡を受けているため、道を開ける傭兵もいた。
店が建ち並ぶの大通りを少し進むと、瓦礫の広野が広がり、その先には全長百メートルは有ろうかという巨大な宇宙船が存在していた。ゴツい顔の傭兵がアルド達に妙に親しげに話しかける。
「奴らが西門をぶち壊したから、西門から攻撃できない。んで遮蔽物がないこの荒れ地を行こうとすると、、」
パン、ドゴン!!
先に進んだ傭兵達が爆風に吹き飛ばされ、バラバラになる光景を目の当たりにする。足場が悪く、防御側にとっは理想的な地形となっている。しかもドールや歩兵戦車は鋼鉄製の簡易的な盾を自分達の前に設置して防御を固めている。
「スチールスキンでも直撃や爆風で失神して、魔術が解けた瞬間死んじまう。しかもゴーレムが十台位いて、遠距離からの魔術じゃ効果が薄い」
「アルド様、、どうやら練習はここまでの様ですね。見てください。」
ラウラがモニターを操作すると、形が違うゴーレムが二体いた。
「ドルアッシュとコウモリが防御陣にいます。ここの突破はかなり困難と考えます。」
「どうするんだ?」
「私がゴーレムと幹部の機体を出来るだけ引き付けます。安心してください、注意を引きつけながら防御に徹すれば持ちこたえられますので。」
コントロールパネルをラウラが操作すると、アルドを拘束していた機具が解除され、操縦席を守る扉が開く。急だったので勢いよく扉まで移動してしまうアルド。
「アルド様、連絡用の水晶をお持ちください。」
ゴウン。
オーガユニットの振動とラウラに促され、有無を言わさずアルドはオーガユニットから落ちる。不安定な体勢で落ちたアルドが見上げると、扉は閉ざされ機体は背を向けていた。
「ゴーレムに乗っているのは人間です。魔術で目眩まし出来ますか?飛び出した直後に援護お願いします。」
アリサとライオットは頷くとスタッフを構える。
「いつでもどうぞ。」
「わっわかった。」
「ゴーレムを引き付けている間に俺達も乗り込むぞ。スチールスキン!!ドール用にファイヤーボールの準備だ。」
アルドはミューズに支えられ、立ち上がった直後。近くの爆風と共にラウラが乗るオーガユニットが宇宙船目掛けて突進する。
「フラッシュボール!!」
アリサとライオットが掲げたスタッフの先から、光の玉が現れオーガユニットを追跡した。
数秒後。
「フラッシュボールだ!!目を瞑れ!!」
シュンー
光が集束すると共に白い光が辺りを包み込む。
《フラッシュボール》は初歩魔術の《ライト》の出力を高めた魔術であり。比較的習得が容易である中級魔術である。問題となるのは光量が多く、周りや本人の目すら眩ませる為、逃走目的か目に頼らない戦いを考案する必要がある点である。
そんなフラッシュボールの効果は、使うと分かっていた傭兵達の目すら眩ませたが、敵側のゴーレム達の目を眩ませるのには成功した。ドールにはあまり効果は無いようであるがフラッシュボールの当初の目的は達成される。
目が眩み棒立ちになったゴーレム目掛けて、距離を詰めながらカノン砲を放つ青い機体は疾走。砲弾がゴーレムを貫く時点で宇宙船までの距離を半分につめる。
仲間のゴーレムが1体破壊さるがガバレボの仲間の盗賊達は、目が眩み対応出来る状態ではない、みるみる距離を縮めるラウラは急速に方向転換する。
バシュン。
先程ラウラのいた地面を砲弾が削る。
「来たか。」
「裏切るって思ってたぜラウラぁ!!」
コウモリとドルアッシュが青い機体に反撃をくわえる。
バンバンバン。
ドルアッシュの銃弾は横移動しながら疾走するラウラの間近を掠めるがラウラには当たらない、ラウラがランチャーを放つ。
カコン、ドウン。
防御用の盾が吹き飛び、ゴーレムの姿が露になる。
「くそが、近くに来さえすればー」
ラウラの攻撃しようとしたドルアッシュは何かに気が付きラウラから目を離す。
「ちっ、傭兵達も突撃してくる気だ。コウモリはラウラを任せたぜ。」
「承知。武器はこちらの方が良い。」
象のような巨大なオーガユニットが銃を捨て、剣を手にし防御陣からラウラの機体へと移動する。
「以前より、再戦の機会を願っていた。勝負!!」
ドゴン。
ランチャーがコウモリの歩兵戦車の盾に直撃するがそのままの速度で突撃してくる。盾の無い部分に数発かつ至近距離でない限りランチャーでは倒せないと、ランチャーをしまいナイフを構えるラウラ。
「コウモリ!ガバレボと組んでも最早意味はないぞ!」
「フン!!」
コウモリの盾がラウラの機体に当たる寸前にラウラは右に飛び退くと同時にコウモリに切りかかる。
「ガバレボが何故破滅を望むのか。それは《己の死期が近い》と確信しているからだ!肉体的なものではない、精神的なものがだ」
「それがどうした」
「ガバレボがこの戦いに破れれば、お前も同じ道を辿るぞ」
コウモリの剣を回避しながら、ラウラはナイフを巧みに操るとコウモリの腕の隙間や膝の辺りに、逆手から突然ハンドバルカンを撃つ。
バラバララカンカン。
「ヌウ!!」
ガシャン。
コウモリがナイフは囮でハンドバルカンが本命だと気が付いたのは、足の間接部が壊れて膝をついてからだった。コウモリの機体の装甲であればハンドバルカンを受けたとしても問題は殆どない。コウモリも先程まではそう思っていた。
コウモリの機体の弱点は重量であり間接部の縦からの強度は強いのだが横からの衝撃に弱い、また補うために滑らかな動きを制限されていたのである。その歪な動作や強度面の脆弱な部分をラウラが狙ったのだ。
一般的な戦車乗りなら狙うことすら難しい装甲の間を戦闘用のアンドロイドたるラウラは針に糸を通すように簡単にやってのた。
《この程度では壊れない戦車》と信用していたコウモリと、《この程度では壊れない戦車》と信用させていたラウラ。戦えばどちらが勝つかは明確であった。
ラウラがコウモリの背後に回ろうとした瞬間。
ゴウウウゥ。
コウモリの乗るオーガユニットの体から炎が巻き上がる。
「まだだ!!フン!」
ラウラの機体を掴もうとしたがコウモリの機体を掻い潜り、ラウラはその場を離れようとする。
「待て、まだ終わっていないぞ」
「終わりです。ヒートボディを使った瞬間私はあなたに、貴方の機体に勝利しました。」
そう言い残すとラウラはドルアッシュに向けて、走り去る。
「?!」
カラン。
それはナイフで傷が付いているグレネードランチャーの弾であった。ラウラが背後に回ろうとした瞬間落としたものだろう。普通では爆発すらしないものである。
それが爆発するためには、条件がある。
先端付近に一定の衝撃を与えること。
そしてー
ドコン!!
コウモリの機体は爆発に飲まれる。立ちこめる熱気と煙、ガバレボ幹部コウモリの歩兵戦車は完全に破壊されたのだった。
ドルアッシュは爆発の方へと意識を向ける。
「やっぱり負けたか。仕方ねえ。おい!あの機体は俺が引き受ける。てめぇらはここを死守しろよ」
ようやく混乱から立ち直りつつある盗賊はジェスチャーで返事を返す。ドルアッシュは後方の宇宙船に逃げるか目を向ける。
やめた方がいい。
宇宙船の中はラウラのテリトリーといってもいい、しかも簡単に撃破される映像が見える。逃げ場のない、敵に有利な船内に逃げるのは危険である。
「ーとすると。」
最早正面しかない。
「いくぜぇラウラ!!」
仲間の邪魔にならないように、ドルアッシュは傭兵達の方向へ走り出す。
バルバロス王国軍は今回の戦いでは陣形を組んで戦っていた。それは相手のゴーレム数が少ないからであった。しかし宇宙船を守るのは現在ゴーレム8台、傭兵達数百人が密集していては直ぐに全滅させられてしまう。
傭兵達は考え、密集しないように散開しながら宇宙船に向かっていたがドルアッシュの機体が近付くのを確認し傭兵達はそれぞれが火力の高い魔術を放とうとする。乱戦になれば魔術も放てなくなるという焦りから魔術の成功率は若干低い。
ドルアッシュは反撃してくる傭兵のみに銃弾を放つ。慈悲ではなく、長引くであろうラウラとの戦いで無駄弾の節約が目的であった。
「うぉら」
乱戦になり火器の使用が出来なくなったラウラは、ドルアッシュ動向に注意する。主人にもしものことがない限りは傭兵達を巻き込む攻撃は避けなくてはならない。
しかし、その心配は杞憂に終わる。ドルアッシュはそのまま宇宙船を離れ先程アルド達が来た道である商業区に向かったのだ。
ドルアッシュの未来視による予知で自身が不利なことを悟り場所を変えたのだ、と考えるラウラ。ドルアッシュがラウラに勝つ確率がもっとも高いのはラウラを高低差があり隠れる場所が多数ある、入り組んだ地形で罠に掛ける事。つまりは不意討ちしかないからだ。
ラウラは挑発して誘引しようとするドルアッシュを追わずに宇宙船を守る盗賊に向けてオーガユニットを移動させる。ラウラにとってドルアッシュとの一騎討ちは意味がない処か有害でしかない。
今宇宙船を手に入れれはアルド達は強いカードを得る。
ラウラは宇宙船にいる盗賊を撃破するべく、再度宇宙船に進路を向け盗賊達を攻撃するのだった。
ラウラの去った後。
ゴウウウゥ。
「まだ、だ。」
燃える機体内部のコウモリは今だ健在だった。確かに機体は破壊されたが本体の肉体部分は無事である。それは現在のコウモリの肉体には炎に対する耐性が備わっているからである。
また外部の直接攻撃はコウモリの強固な黒い全身鎧によって宿主に損傷を与えることは非常に少ない。仮に宿主が死ねば《魔法の力》によって宿主に致命傷を与えた生命体、または半径五メートル以内にいる新たな存在の意識を乗っ取り己の肉体にすることができる。
宿主の条件は自立可能な生命体であれば可能であるから、アンドロイドであるラウラであってもその肉体に乗り移る事は可能であろう。
コウモリが求める最強の存在、更なる強者と戦える存在となる。強固な鎧、最高峰の防御魔術、最強の肉体。全てが揃えば次元内でも最強の存在になれることは疑いがない事実であろう。
ニヤリ。
コウモリは鎧の中で笑うと壊れた機体から脱出するため緊急脱出操作をするのだった。




