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異次元収集家アルド 三章8 アリサ視点4

アリサ4

アリサ・スターライトは変わった。


昔のような他人を見下す刺々しさが抜け、砕けた感じになった。勿論それは簡単な事ではなかった。


年少の孤児達に勇気を振り絞って声を掛けて、それを無視され邪険にされたこと、何かを隠されたり食事を食べられなくさせる事だってあった。


諦めず声を掛け、謝罪を続けた。


謝って済む問題なのか?


自分は彼らを殺した免罪符が欲しかったのか?


それすら整理できないまま。


ただ必死に一人一人に謝罪をしていった。


精神的肉体的にもボロボロで立っているのもやっとの状態の時ー


一週間後に1人が分かってくれた。


何故謝り続けたと質問された。


その時分かったのだー


人は目的を欲する、希望を欲する。


自分は魔術の勉強で強くなった。例えれば身体を鍛えに鍛えた戦士である。しかし心のより所たる【地面】がなければ立つことも出来ず、使い道たる【剣】がなければまともに戦うことすら出来い。


つまりは自分には【魔術師】に一番大切な事が欠けていたのだ。


それを彼等に教えられたと。そして恩人たる彼等を殺してしまった事への謝罪だと。


彼等が思うアリサ・スターライトは凄腕の魔術師なのだ。


彼等の死を無駄にしない為。


彼等が守り抜いた自分、アリサ・スターライトという凄い魔術師になるためにー


アリサ・スターライトは戦って行くことになる。



**************************


バルバロス王国の街の一角で二人の魔術師が向かい合っていた。妖艶な美女と老人である。


ガランドロスは溜め息をつきながら、やれやれとレイレインに呟く。


「お主の行動は分かっておるよ、ワシには勝てないとふんで自分自身を分散し、ワシの見えないところでそれぞれ別々に行動をしておるのだろうよ」


「さぁて、私にはサッパリ分からないわ」


ガランドロスの杖から放たれた不可視の衝撃波がレイレインを直撃して、レイレインの体がマナとなりそれをガランドロスが吸収する。


跡形も無くなった空間を見つめ、感知の魔術を使用するが反応は無かったため逃げられたと推察。もともとが捨て駒だったのかもしれない。


「【魔術溶液体】めが、、」


魔術構成図を描くことができるのはこの世の物質ならすべて可能である。つまりは固体ではなく液体そのものに魔術構成図を描く事も可能である。


手間さえ惜しまなければ一滴の水滴の中に数種類の魔術を組み込むことが可能で、そしてそれ自体単独で魔術を使用できる利点がある。


しかしこの技術には欠点があった。一つは使用すれば魔術構成図が破壊される消耗品である点、魔術構成図とマナとの二つの一セットのパッケージ化が必要でありどちらかが欠ければ効果を発揮しない点である。


「今回のゴーレムの件を考えるに仲間か、、目的があるのならば本体は魔石のある場所で肉体となる魔術溶液体の複製を生産しておるのだろうが、、」


ガランドロスは杖を持っていない手で印を切ると仄かな球体が何もない空間から現れる。


「接続型の送信タイプか、、魔術電波の送信元を逆に辿れば本体を断てるか、、それすら罠であればいよいよ時間と魔力を天秤に掛けて全力にならなければならんて」


ガランドロスはフワリと飛び上がると球体を追って街中に消えたのだった。





バルバロス王宮謁見の間へ続く待合室でアリサ・スターライトは目を覚ました。体が怠くゆっくりとしか動かない。


「、、さっきの噴水に毒でも、、とにかく、、」


両手を鳩尾に軽く当てる。心臓を潰さないように外部から圧迫するような魔術構成図を描く。


「プレス!」


魔石を使用して魔術が発動するとアリサは胃の内容物を全て吐き出し、涙目になる。


続いてポケットから毒草や鉱石を浄化する解毒薬を口に含んで飲み干す。プラシーボ効果なのか、多少気分が楽になったアリサは瓦礫の間から抜け出し、待合室であった場所を見渡す。


「、、全員殺したと思ってバルバロス王を倒しに行ったのが妥当な線だけど、、アレからどれぐらい時間が経っているのか、、毒がまだ完全に作用していないから数分であってほしいけど、、」


息苦しくなり、胸を押さえる。寒いのに汗が大量に出てくる。


「魔術系の毒か、、」


人体組織に直接ダメージを与えるモノになると、酸より効力が劣るが30分程で人体をドロドロにする魔術毒も存在する。


アリサはグラグラ揺れる視界の中、助かる道を模索する。


気にくわないがガランドロスの爺に助けてもらう?


どこに行ったのか解らない。


衛兵に助けてもらう?


間に合うか解らないし、高位の魔術師でも解毒できるか不明。


もしかした気のせいで時間経過で治るかも?


有り得ない程の汗と動機、間違いなくこのままじゃ死ぬ。


残る手はー


「マジックキャンセルか」


魔術の要素(魔術構成図の回路)が残っているのならばマジックキャンセルは全ての魔術に有効である。


しかし欠点もある。


「魔術構成図が曖昧だと効果が無いばかりか、新しい毒を魔術毒を体内に造っちゃうかも、、」


こんな事ならクイックキャストやコンバインなどの技術よりも多種多様な魔術構成図を勉強した方が良かったかもと後悔しながら、先程の噴水の水の魔術構成図を魔術〈スキャン〉で読み取る。


「くそ複雑!!そんな事、、いやこれは、、」


焦りながら複雑な魔術構成図を読み解き、肝心の魔術毒の構成図の部分を発見して歓喜する。


「よし!間に合う!!」


マジックキャンセルを唱えようとした瞬間。


カランカラン、、


待合室に響く瓦礫の音。レイレインが行使した魔術規模を改めて霞む目で見渡す。悪寒が走りマジックキャンセルを止める。


そうー


レイレインは自分からしてみれば一流の魔術師である、それがこうもあっさりと見つかるような魔術毒を作り出すのだろうか?


「毒に犯され時間がない状況で目の前に分かりやすい魔術構成図、誰だってコレだと思って飛び付く、、私がレイレインなら、、」


ダミーの線を考えてアリサは吐き出しそうな不安の中、再度魔術構成図を読み取る。


確かに発現している魔術毒だけであるのならば、それだけをマジックキャンセルをすれば終わりであるのだが、それ以外にも魔術構成図に何か仕掛けがあるかも知れない。


マジックキャンセルが魔術構成図を消す過程には順番がある。一度に総ての魔術構成図を消そうとするのは基本的に出来ない、魔術構成図が複雑という事もあるし、仮想領域の負担が莫大なものになるからだ。特に慣れ親しんでいない魔術構成図を一度に全てキャンセル出来るのは伝説的な人物のガランドロス位である。


魔術毒ー逆流変更回路ー精神プログラムー強制回路ー魔術毒2。


精神プログラム?


「、、これは?!」


魔術毒隅の隠された非常に判りづらい所にある魔術回路、その奥に精神プログラムつまり仮想領域を浸食する魔術が施されていた。


魔術を行使するためには仮想領域に魔術構成図を描かなければならない、幾度も精神防御が施されている場所であるのだが無防備になる瞬間がある。それは魔術を発動する直前直後、この非常に短い時間の間。


「初めの魔術毒をマジックキャンセルした直後に発動する逆進型の魔術〈マイン〉、、えげつないわ。仮想領域を浸食した直後強制発動、今度は更に強力な魔術毒を《回復役》に発動させる魔術が編み込まれてる、性格歪みすぎよ」


初めの遅効性魔術毒は集団戦においてサポート役の魔術師の負担を増やすためであろう、しかも回復した瞬間、マジックキャンセルされた者とマジックキャンセルした者共々死に至る罠。


サポート役は戦闘中に魔術師のレイレインの攻撃に注意を向けながら、魔術構成図のこんな仕掛けを発見できる精神的な余裕はないだろう。


息を呑み。アリサは即効性魔術毒からマジックキャンセルを試みる。


「これすら罠なら時間的に間に合わない、ここは覚悟を決めて、、」


ピクリと反応するのはアリサの指だけだった。


「ーー」


不安、死の予感。


恐怖が心を支配する。先刻ガランドロスとの戦いで使用したマジックキャンセルはほぼ自分の技、魔術構成図もほぼ同じ、しかもガランドロスは手加減していた。


それに比べてー


視界がぼやける、仮想領域に描く魔術構成図も心なしか少し違う感じがする、、



、、、


ぼんやりとした視界の中、アリサは崩壊した待合室に立ち自分を眺める子供達を見つける。幻影なのはわかっている。


当然それは【あの時のクラスメイト達】だった。


正義感の強い男の子が何かを言っている。


優しい男の子が拳を突き出して叫んでいる。


自分に憧れている女の子は両手を抱え祈っている。


クラスのまとめ役だった女の子は微笑みながら頷く。


そうだー



もしこの試練を乗り越えたならまた夢に一歩近付く事が出来るかも知れない。


自分はアリサ・スターライトなのだから。


完璧な魔術構成図を仮想領域に投影して、魔石の魔力を送る。マジックキャンセルするのは先ず一番厄介な即効性の魔術毒。


レイレインの魔術構成図になる程と思う、思った通りレイレインは〈非常に優れた魔術師〉だ。魔術構成図に無駄がない、無駄がなく更に基礎と応用を無駄なく組み込んでいる。勿論無駄なものは基本的に削ぎ落とすモノであるが、レイレインの性格ならばワザと無意味な構成図にすると思っていた。


違うー


あのレイレインは無駄なことをする性格ではない。


魔術構成図からレイレインの思考を読み取り、流れるようにそして慎重に内側から魔術構成図を消していく。強力な魔術毒を消去して、強制回路を切断、自分の内部に作用している遅効性の魔術毒を消す反魔術を作成展開する。


時間にしては数十秒であろう攻防の末、アリサ・スターライトは残滓が残る仮想領域に舌打ちしながらヨロヨロと勝利の余韻と共に立ち上がった。


霞がかかる少年と少女達を背にアリサ・スターライトはレイレインが向かった先謁見の間に足を踏み入れるのだった。





謁見の間には緊急用の脱出通路が存在している。横幅一メートル弱の細長い通路は人が一人通れる程度である。


その通路に十名ほどの者が出口に早足で向かっていた。


「先程の女魔術師はやはり、王国を攻撃した組織の一員だと思われます。大事をとりこのまま魔術アカデミーに向かいましょう」


スナイプの提案に少し強面のバルバロス王は頷くが不安そうな表情は隠せなかったようで仕切りにスナイプに質問を投げ掛ける。


「謁見の間に侵入してきた先程の賊か、、しかし逃げる必要があったのか?数の上では我々の方が多かったぞ?」


「魔術師の力量を見るに手練れだと思われます。それにあの男の目的が偵察だった場合、仲間を呼び寄せ逃げることも困難になる可能性も有ります。魔術アカデミーが東門に配置した魔術師からの報告でも、門を破壊した強力なゴーレムが王宮を目指しているとの報告を受けておりますので」


「しかし、逃げた先にも敵がいるかも知れないのだぞ、やはり近衛兵はもう少し多めにつれてきた方が良かったのではないか?」


顔に似合わず小心者の王は身の上は安全だという言質が欲しいらしく、スナイプは無表情を崩さず淡々と話す。


「ご安心をついて来た近衛の方々はいずれも腕に覚えのある戦士の方々です。魔術アカデミーでも予め屈強な衛兵を配備し、又籠城するために食料を備蓄してあります。一ヶ月は無傷で持ちこたえられます」


「つまり、悪く言えば一ヶ月しか持たないということなのか?」


スナイプは出来の悪い生徒を諭すように言い放つ。


「そうです。しかし皆全力で事に対処しております、皆を信じ朗報を待つそれもまた王の役目だと考えます」


スナイプの物言いに少し棘を感じながら、渋々頷くバルバロス王。


ドコン、ガコン。


後に続く衛兵達は不規則に振動する通路の落盤に怯え歩調は更に速くなり、暫くして先方にある光源を見付ける。


「、、、王、魔術アカデミーに付いたようです。段取りは私にお任せを」


「、、うむ。任せたぞ、スナイプ」


通路の光源は十数人の人影を飲み込んだ後、落盤と共に消えたのだった。






「、、、王は逃げたみたいね」


謁見ので衛兵に囲まれながらレイレインは呟く。衛兵のほとんどは魔石によってスチームスキンを使用していてウォーターウィップは表皮を削るだけになっている。


「目的は達成したわけだし、後は好きにやらせてもらおうかしら」


スナイプの護衛としてやってきた髭面の大男モロゾフはレイレインの呟きを身体強化の魔術により、ハッキリと聞き取った。


「、、王を魔術アカデミーに閉じ込めるのが狙いか、、しかし敵側としては王を捕虜にした方が利点が有るように思えるが、、いや相手はそれ以上の考えが、、いやブラフの件もあるか」


モロゾフはアンタレッタ将軍をレイレインから守り、衛兵達と連携を取りながらレイレインを追いつめていく。


「、、あの姿を見る限り、相手に乗り移る事も出来、魔術は水系全般、かなりの量の魔力を失っているらしく、大規模な魔術行使は出来ないか制限をしている、、」


アンタレッタ将軍はモロゾフの説明に同意する。


「苦し紛れに擬態している可能性もあるがその通りだ。遠方からストーンバレット、ファイヤーボールと弓などで攻撃してすり潰せ、もう1人も犠牲者を出すことは許さん」


レイレインはなるべく冷静を装っていたがこの勝負の結果は分かっていた。


レイレインが始めに謁見の間に現れてから直後はやはりレイレインが圧倒していたが王直属の衛兵達は初めから予想されていた襲撃に完全に対応した。特に髭面の魔術師がレイレインの力を殺いでいた。


攻撃能力は高くないのだが他者を支援することに優れ、魔力消費が高いアースフィールドを使うばかりでなく、毒や使い魔による攻撃に対応するなど機転にも優れていてレイレインが得意とする搦め手が通じないのだ。


【アースフィールド】広範囲に土の吸水体を浮遊させ水系魔術の威力を軽減させ、土系魔術の威力を高める魔術。


レイレインはならば一人でも多くの兵士を道ずれにするべく魔術を行使するため、残り少ない自分の体を使用する。


「アクアボディ」


身体の表面から絶縁性の溶液が溢れ出し体を覆う。衛兵達は三メートル程になった水の巨人を包囲する。狙うのは巨人の中央にいる男。


「ストーンバレット!」


「ストーンバレット」


数名の衛兵がくすんだ色の魔石でストーンバレットをレイレインに向けて放つ。拳程のストーンバレット数発は大きくなりつつレイレインに激突するが巨人の肉体に当たると巨人の体内に飲み込まれてしまう。


「、、返すわよ」


まるでゴムの反動の様に飛び出したストーンバレットは放った衛兵のもとに返される。


ドゴン。


スチールスキンを使用しているため、流石に死ぬことは無いが気絶する衛兵。衛兵達はその光景を見ると弓からファイヤーボールに切り換える。


だがー


ドンドンドン。


ファイヤーボールは巨人の外面を少し削るだけに留まる。


「魔石も無限にあるわけではない。極力使用は避けろ!どうするモロゾフ殿」


「あの魔術は魔力を消費する事で形状を保っていると考えると、持久戦に持ち込んだ方が良さそうですが、、」


レイレインはモロゾフ目掛けて巨体を突撃させてくる。モロゾフは回避しつつクイックキャストで魔術を使う。


「ショック・ウェーブ」


魔術の振動波は水の巨人の体内に飲み込まれるがレイレインに向けて伝播していく、しかしゴポという音と共にかき消えてしまう。


「空気、いや真空ー」


水の巨人の体から生えてきた三本目の手がモロゾフの身体を吹き飛ばし、壁に激突させる。


モロゾフはスチールスキンを使用しても身体に残る痛みに意識を乱され、魔術を使えないことを悟る。


「死ぬぇぇ!!」


再度、今度こそ命を取ろうと水の巨人はモロゾフに肉迫するー


ーが。


ドゴン!


途中で突然現れた巨大な手とレイレインがぶつかり合う。


「くっ、なに!?」


レイレインは何が起きたのか瞬間理解出来ずに巨大な手に掴まれる。モロゾフはその魔術を使用した女の名前を呼ぶ。


「アリサ・スターライト、生きていたのか、、」


かなりダメージを負っているため為、アリサは鉛のように重い体を引きずりながら謁見の間に現れた。


「フリージング・ウォーターの射程は短いし、多分あれは不凍液、レイレインの性格上ならーやはり」


「アカデミーの護衛の(ビゲ)、フリージング・ウォーター使える?使えるのなら、床を凍らせて欲しいのだけど」


「相手は水系を得意とする魔術師、水系には【アイス・コントロール】があるので利用されかねない。今までの戦いを見るにアレが他の属性も得意だという可能性は低い。他の魔術を使うのはどうだ?」


アリサは確かにと納得するが、前の戦いで不用意に使用したときレイレインが回避行動をとったことが気に掛かる。もしかしたらレイレインはアイス・コントロールを知らないか、それとも使えないのかも知れない。


レイレイン程の魔術師なら百は水系に関係する魔術を使えそうなのに魔力消費を抑えるためだろうか?違和感が残るアリサは髭顔の護衛に話し掛ける。


「オーケー、アレが追い詰めたときに逃げられ無くする事魔術であれば」


「【マジック・アラーム】と【ロックプリズン】をコンバインして置こう、但一面のみだな、、床か天井か、、」


「任せるわ、髭顔だけど頭良さそうだし」


モロゾフは顔をしかめると、丁寧に異なる魔術構成図を組み合わせていく。アリサも集中して、自分の手持ちで最高の魔術構成図を仮想領域に描く。


レイレインは拘束を強引に抜け出そうと、足掻くと流石にピシピシと音を立てアースハンドは崩れてしまう。


アンタレッタ将軍は舌打ちをすると、仕方がないと激を飛ばす。


「魔術師達が強力な魔術を使うまで時間を稼ぐのだ!スチールスキンを使用した者は突撃し、他はストーンシールドを使用して壁になるのだ!!」


衛兵は恐怖心を何とか捨てレイレインに突撃するが、丸太のような腕を振ると衛兵が玩具のように吹き飛び気絶していく、その穴を今度はストーンシールドを構えた衛兵が塞いでいく。


「邪魔だ!邪魔だ!!」


レイレインの目標はあくまでも、モロゾフであるし先程現れたアリサであるがなかなか辿り着けない。


そしてー



「伏せなさい!!」


女の声を聞いた瞬間に衛兵達は皆レイレインから離れ伏せる、レイレインとアリサが互いに姿を確認した瞬間、レイレインは跳躍しアリサに肉迫ー


「【オーバーレイ】!」


ババ!ドンドン!


超高温のレーザーが三メートルはあるレイレインの体を弾き飛ばし、さらに床を抉りながら再度起き上がりそうなレイレインを追撃する。


「ががぁァ!こんなぁ、、」


レイレインはレーザーが当たる前面に水を集中させてレーザーを防ぐが次第に水の先端は真っ赤になりブクブクと蒸発していく。


数千度に達する超高温のレーザーは見ている衛兵達も影響を少なからず与えたがアンタレッタ将軍はレイレインへの包囲を解き、直ぐに後退避難をさせて安全を確保していく。


グガガ、、ジャリジャリ。


レイレインはオーバーレイの衝撃を逃がそうと考えるが、ウォーター・ボディを作成し続けて辛うじて均衡を保っている状態で態勢を変えればどうなるのか考える、瞬間で蒸発するだろうと結論を導き出し考えを改める。


魔術の効果が切れるまで態勢を維持し続けるのが妥当、女の魔術師が使った魔術は強力だが魔力消費も大量消費する、なら持っているスタッフの魔力ももう限界の筈だとレイレインは考え自分の体をウォーター・ボディの媒介に消費する。


拮抗していると思われたが。


シュウゥゥ、、


アリサのオーバーレイの熱光線が収束し頼りないモノになっていく、それを確認したレイレインは〈今だ!〉と身構える。


「いゃ、本当凄いわね。まさかオーバーレイにこんなに耐える奴がいるなんて、、」


「死ねぇ!!」


「じゃあ二本目行ってみよう☆」


「?!」


通常魔術師が持っているスタッフは一本である。だがレイレインが見たものは四本のスタッフを携えるアリサ・スターライトの姿だった。


スタッフはそう簡単に造れるものではない、高級であるしそれぞれに癖もある。壊れてしまった時買い替える事はあるがそれだけである。勿論足りない時もあるその時は魔石を使用する。


この次元では違うのか?


「馬鹿なぁぁぅぁぁ!!!」


レイレインは閃光の中、アリサの姿が複数の魔術師達に護られているような錯覚を覚えながら意識を消滅されたのだった。


シュウゥゥ。


オゾンの臭いと沈黙が支配する場には次第に勝利した実感を衛兵達が噛み締めていると、


ビービービー。


警告が謁見の間に響き渡る、モロゾフは無言で駆け出すとレイレインが消滅した近くの床の石畳を調べる。


ガコリ。


石畳の一部が欠け落ち黒色のビー玉の様な物をモロゾフは摘まむ。アリサとアンタレッタ将軍は何だとビー玉を覗く。


「消滅する直前一部を床から逃がそうとしたのでしょう、実物は小指の先程です」


「本体かしら?」


「多分レイレインというのは自らの肉体を変化させて、こういった魔法生命体に作り替えたのでしょう。だから魔石無しで魔術を使うことも出来る」


モロゾフはアンタレッタ将軍にビー玉を渡すと、フムゥと顎を撫でて首を捻ってから再度モロゾフに手渡す。


「魔術師のことは分からんだが、モロゾフ殿の役に立つのならばコレは預けよう。敵でもコレでは裁くことも出来んしな」


アンタレッタ将軍が場を離れるとアリサも手を振って近くの壁に寄りかかりながら座る。


アンタレッタ将軍は衛兵達を指揮してまだ戦える衛兵達の編成を行っていく、怪我人はその場で医療班と共に謁見の間で待機せよと命令を出す。


「コレより魔術アカデミーへと向かう。お嬢さんはー」


「アリサよ。魔術学校主席のアリサ・スターライト。魔術アカデミーに行きたいけど、もう仮想領域が滅茶苦茶で暫く魔術は使えなさそうだからここに残るわ、、」


緊張の糸が切れているのかアリサは床に寝そべりながら答えるとアンタレッタ将軍は怒りもせずに了承する。


「そうか、、」


ゴーレムとの戦いで役立って欲しかったがアレだけの上位魔術であるなら、仮想領域の残滓も過剰あろうと納得してモロゾフと共に魔術アカデミーへと足を向けた。





しかしアンタレッタ将軍達とゴーレム達が魔術アカデミーで戦うことはなかった。なぜなら魔術アカデミーはバルバロス王をゴーレム達から護るために、魔術アカデミー全体を魔術防壁によって覆ったためである。


究極魔術【キャッスルガード】は建物への生物無生物の侵入を一切防ぐ。儀式化された数人共同の魔術は非常に強力であり、流石のゴーレム達も引き返すしかなかった。


こうしてバルバロス王国は内部に敵組織を抱えたまま戦線は膠着したのだった。

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