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異次元収集家アルド 三章6 アリサ視点2

アリサ2

記憶にあるのは戦争の光景。燃える避難所で殺される男達、そして蹂躙される女。それから子供は商品として売られる。


その国では奴隷は違法であった、私アリサは5歳の時、変態趣味の貴族に出荷される前に国に保護された。国で魔力の審査を受け才能ありの判定を受けた後、バルバロス王国の魔術学校に強制的に所属させられた。


この頃の自分は生きるために必死であった。特に強者に対する恐怖から身を護る術をしりたがった。自分は死にたくなかった生きたかった、理由は無い只皆と同じ様になすすべなく殺されるのが怖かった。


魔術は自分を護る術であると考え、魔術を盲信した。


必死だった為か、はたまた元々才能が有ったのかは分からない。自分は魔術学校の生徒の中ではトップ、そして王国でも20人程しかいない上級魔術師に10歳という若さで到達する、コレはこの五十年の間では異例の早さであった。


講師老師ガランドロスはいう、魔術師とは探求者であると、、魔術自体に善悪はなく、使う者が感情を制御し、有効に活用すべしと。


学園長はいう、誰であろうと弱者を護る。それが魔術師の生きる道であり、また一般の人々との協栄こそ生き残る為の唯一の方法であると。


その頃の自分は強者である自覚があった、周りは低能で劣った人間で卑下していたのかも知れない。そんな考えであるから周りには友人らしいものはなく、子供の私は少しずつゆっくりと歪んでいったのかもしれない。


自分から悪事を働くことこそ無かったが、周りには魔術至上主義の魔術師が沢山いて、彼等は魔術学校や魔術アカデミーを抜け出しスラム街にいる人間を玩具にしていた、それを傍観し内心面白がってもいた。


学園長はそんな私を窘める。弱者を助けろと。


仮に助けたとしよう、しかしその行為を邪魔された魔術師は私を標的に変えるだろう、何故他人の負債をワザワザ背負い込まなければならないのか?


講師の老師ガランドロスはいう、力を求め、その力があり行わなければならないのなら、行うのは当然である。もし仮にその事で負債を追ったとしても、その経験こそ魔術師に必要な知識や経験の源泉であり、力の探求者たる魔術師アリサちゃんに必要な行為である。ヒョヒョと。


魔術アカデミーとは違い、魔術学校に魔術師の生徒は少なかった自分を含めて五人男の子2人と女の子3人、残りは只の孤児である。私以外の魔術学校の生徒は正義感溢れる子供達で私と初めの頃は衝突したが、次第に距離を置くようになった。


ある時、魔術師がスラム街で暴れていると魔法学校に情報が入った。魔術アカデミーの関係者が基本的に人権がないスラム街の人間を魔法実験によって多数殺しているというものだった。


魔術学校の生徒四人はいそいそスタッフを持つと学校を抜け出し悪い魔術師を倒そうとしているようだった、勿論生徒などが勝てる筈がない。しかし正義感が強かった彼等はスラム街へと向かっていった。


自分には関係ないと思っていた自分も、一応は同じ学校の生徒でもあり、又魔術学校には孤児の自分を保護してくれているという気持ちも合ったので助けなくても教師陣に場所だけでも教えてやろうと後を付けた。


スラムで人々殺していた魔術師を魔術学校の生徒は直ぐに発見した。そして同時に捕まった。


自分も魔術師が複数いるとは思わずに捕まった。上級魔術師だとはいえ、実際の戦闘経験は殆どなかった為だ、なすすべなくやられた事と私服であったことで相手も只の学生と思ったようだ。


魔術学校の生徒全員はスラムの街の地下の一室に監禁され、邪魔をした自分達の処遇を決めていた。そして簡単に決まる。魔術の発展のために実験材料として殺すとー


最悪の結果だった。


魔術師は言う。


「一日に1人だけ殺して材料にする。候補はお前等が選べ、多数決でも構わん」


魔術師達は面白がっていた。


私は愕然とした。多数決ならば圧倒的に仲間外れである私が初めての生贄にされることは明白だった。しかも監禁され、装備品がない自分は誰よりも弱く格好の獲物だろう。


そう死ぬのは自分だった。


彼等は私を仲間外れにして何やら話し合い、何事もなく生贄を選んだようであった。


魔術師は言う。


「誰が生贄になるのか?」


自分だと思ったのが、それは見当はずれであった。最初の生贄は魔術学校の男の子であった。正義感が強く彼ならば、死を恐れずに自ら犠牲にするだろう。


良かった、自分では無かったと安堵する。


魔術師に連れて行かれる彼は勇敢に部屋を出て行き。部屋のピリピリした空気が幾分和らいだ。


がー


「ひぃ!!助けて!!イタィいたぁ誰か!たしゅげぇひげぇ、ひいぃあぁぁぁひぎぁ!!!」


壁が薄いのを知らなかったのか、その男の子の声は監禁場所から良く聞こえた、どれだけ痛いのかどれだけ悲惨なのかを泣き叫ぶ。


魔術学校の皆は私を含め耳を塞ぐ、何故壁が薄いのかそんなことは決まっている。魔術の発展の為と良いながら、魔術師で実験して楽しんでいるに過ぎない。最早枷の外れた魔術師達がいるだけだった。


しかし、あの叫びを聞いたのなら、次は間違いなく自分が生贄になるだろう。


翌日ー


私は死を覚悟した。


そうだ死んだのなら彼等の前に立って拷問中の彼等をあざ笑ってやろうと思った。


だがー


魔術師が入って来るなり、一人になった男の子が立ち上がり、自分が生贄であると言った。


恐怖しているのだろう、微かに震えていた。昨日アレだけの悲鳴や叫びを聞いたのなら、自分がどうなるのかは考えなくても分かったであろう。しかし、彼は何かを守るために魔術師に連れて行かれた。


叫び声を聞きながら、私達三人は嗚咽をもらす。それは助かった事への安堵ではなく彼に対する申し訳なさと、感謝の涙だった。


そうだ死にたくなかったのは彼等も同じなのだ。同じ生命なのだから、生贄の選び方は平等にしなければいけない、私も彼等もそれを分かっていなかった。


私は2人に話し掛ける。私を多数決で選んでもいいが、コレからは平等に生贄を選ばないかと。


2人は私の提案に驚き、そしてこんな状況下でその提案を受け入れてくれた。


私と彼女達は話し始めた。死んだ男の子・生きている彼女達の話、歩んできた人生を。


結論からいえば皆同じだった、両親が戦争で殺されて、魔術学校へ引き取られてる。強者に対する恐怖、魔術を習う姿勢、いわば自分と少し違うだけの存在。


違うのは彼等は魔術学校に感謝し、そして生徒を家族として扱っていたのに対して、自分は魔術学校を利用し、生徒を見下していたという決定的な違いだけであった。


私は自分の生き方を恥じた。


多分これは最後の最後、人智が及ばない超越的な存在が、私の頭の悪さを嘆いて死に際にこの事を教えてくれたのではないだろうか。


皆に謝罪をして、2人の女の子と友達になった。


この時に私は決めた。例え死んだとしても魔術学校の生徒であるアリサ・スターライトとして、誇り高く死にたいと思った。


この頃になると、食べ物と水分も与えられなくなったせいで、意識が朦朧としていた。鋭かった感覚も徐々に鈍くなる。時間の感覚も鈍る。


眠るー


私が眠りから覚めると、2人いるはずのひとりが居なくなっていた。


どこに言ったのかと質問すると、生贄になったと答えた。


前日に決めたことを反故にされて私は怒った。だが怒られている彼女はありがとうと泣いていた、彼女が浮かばれると泣いていた。


私が寝ているときに生贄にされた女の子は私に憧れていたと聞かされた。何十年にひとりの天才の上級魔術、魔術学校の期待の魔術師。私の話題が出る度に誇らしげだったらしい。


その憧れの存在が友達になってくれた、そしてその存在を守るべく彼女は恐怖しながらも生贄になったのだ。


全くの無意味だ、自分には何の価値も無いのに何故こんなことをするのか理解に苦しんだ。私は最後の生贄を今すぐに決めることを提案する。


彼女は頷き公平にジャンケンで決めようと提案する。私は同意してジャンケンをする。


結果は私が負けた。


不思議と恐怖は無かった。


翌日、魔術師が部屋にやってきて質問する。


生贄はどちらだと。


私だと言う前に、隣にいた彼女が自分が生贄だと勝手に答える。私は違うと言ったが魔術師は始めに生贄だと言った彼女を生贄に選んだ。


侮辱だと思う。多分彼等は皆で私を最後にする話を始めにしていたのだ。そして最後に彼女が身を呈して私を一日だけ生き残らせた。


私にはそんな価値など無い、彼等の誰かが生き残るべきだったのだ。


しかし、どちらにせよ私も明日死ぬ運命だ。


そう思っていた。


しかし魔術学校の生徒の失踪を受けて組織された捜索隊が私を発見して、私だけが助かる事になる。


それは私が自分自身を鍛える日々の始まりだったといえた。




バルバロス王国の王宮、謁見の間にはバルバロス国王が鎮座していた。そしてその周りには近衛兵や王宮魔術師が警備に当たっていた。


近衛兵50人魔術師は20人。通常よりもかなり厳重な警備である。勿論それには理由があった。


「本当なのか?」


バルバロス国王の問いに、宮廷魔術師が答える。


「未知の物体、予想するにナガレモノがバルバロス王国の結界を破壊し、この王国に向かっております。もしかするとこの王国に害をなすおそれが有るため、安全が確認出来るまでこのままお待ち下さい」


バルバロス王国において王は象徴であり、戦いには基本的には参加せず、軍の指揮は将軍が代理で行っている。今回の騒動では緊急の警備体制がひかれ、その指揮はアンタレッタ将軍が行っている。


アンタレッタ将軍は基本的に受け身の戦いをする将軍で失策が少なく、手堅く軍を動かす事に長けていた。アンタレッタ将軍は宮廷と重要施設の警備を増員し、また西側の城門にも多数の兵士と魔術師と配置、バルバロス王国の中央に兵士を待機させ、どんな敵が来ても万全の状態で対応できるようにした。



ゴウウ、ガコンガコンガコン。


ー西側の城門に奇妙なゴーレムが現れるのを、警戒に当たっていた兵士が発見する。


奇妙なゴーレムの正体は竜戦車ドラグーン歩兵戦車オーガユニット


竜戦車に乗るブルックリンは部下が集まるのを確認する。幹部のドルアッシュと蝙蝠、人間の部下が操縦する歩兵戦車10台、戦闘用のドール30体。


それぞれにそれぞれの武器を持ち、準備が整ったとブルックリンが竜戦車に取り付けてある拡声器で告げる。


「昨日の町を襲って《鋭気》は養えた!やる気満々だろう!!お前達!!」


下衆びた笑い声があがるのを確認して更に続ける。


「準備はできた、このまま門をぶっ壊して王宮に突っ込む、バルバロス王をぶっ殺せば。俺達大勝利、その後は自由にヤりたい放題ヤレ、だ!!」


ガンガンガンガン。


機体の胸を手です軽く叩く音が響く。コレは同意、そして戦いの合図でもあった。


ブルックリンは満足そうに頷くと、竜戦車を集団の先頭に立たせ飛ばずに地上を駆けるように前進させる。陣形は横列陣形で歩兵戦車一台に護衛のドール三体を左右に配置して死角を補いつ進むオーソドックスな形。コレは門を完全破壊する事が目的であるため攻撃力が高いこの陣形を採用した結果である。


ブルックリンは時に大胆な行動をする。しかし裏には今まで培ってきた集団戦闘の実戦経験や相手の力量を正確に分析した結果そうした行動をするのである。楽しむ行為は勝利しなければ味わえないのだから当然といえば当然であるが。


ブルックリンは左肩に付いているプラズマガン。それを大きな城門に向けて発射する。


ドゴン!


強固に作られた城門も数千度に達する高熱の雷撃には意味を成さず、吹き飛ばされる。


「突撃だぁ、行くぞ!!援護!!!」


バルバロス王国の城門は幾度と無く破壊されてきた、しかし突破を許さなかったのは硬く壊れなかったからではなく、その《魔術による再生能力》からである。


破壊された直後、魔術構成図に魔力が流れ込み城門を修復していく。徐々にであるが逆再生するかのように修復していく門にブルックリンは舌打ちをしながら、ハンドバルカンを城壁にいる兵士に向けて発砲する。


バラバラバラ。


「敵襲!!ゴーレム部隊が西門を攻撃されたり!!至急増援を!!」


西門の上段にいる兵士達は武器を弓に持ち替え、ブルックリン達のゴーレム軍団に弓を放つが堅い装甲に弾かれる。


「今だ弓を使う原始人共が!!門が邪魔だ。歩兵戦車を盾にして近付いて、ドール共は隙間からランチャーを城壁に叩き込め!!」


ブルックリンはスピーカーで指示を出しつつ、宇宙船にいるラウラに航空支援を無線で要求する。


「ラウラ聞こえるか?宇宙船から西の城門を攻撃しろ、民間人の被害?知るかよ。出来れば王宮までの道を通りやすく整理しろ、エネルギー?できる限り出良い。直ぐに魔石でエネルギーを補充してやるさ」


通信が終わると同時に竜戦車が爆音と共に微かに揺れる。今までの弓などではない攻撃力の高い一撃である。コレぐらいでは竜戦車は壊れることが無いが、当たり続ければ装甲が剥がれ故障の原因にもなるし、歩兵戦車であれば弱い間接部を破壊する事も可能だと思われた。


「、、何だ?そうか、、魔術か。魔術とかは気を付けないといけないってラウラの作戦レポートに書いてあったか、、」


ブルックリンは城壁に身を潜めながらファイヤーボールを放つ魔術師にハンドバルカンを放つ。


バララララッ。


「くそっ、あの石弓はストーンシールドを砕くぞ。メタルシールドを使える奴は城門の強化に当たれ!!」


下士官は城門を守る魔術師に指示をとばすが、移動しようとした魔術師の動きが途中で止まる。それは巨大な飛行物体が雲を割り上空に突然現れたからだった。


「な、、何だあれは、、」


ゴウンゴウンゴウン、、


最後の言葉を告げるまもなく、魔術師と警備に当たっていた兵士の身体は高熱のエネルギー弾に当たり蒸発する。


ドンドンドンドンドンドン!!


数十発の宇宙船の主砲《大型プラズマカノン》が西門を完全に破壊し、王宮までの防衛施設を次々と破壊する。


「マズい!撤退せよ撤退!!王宮まで退却せよ」


今だ軍として機能していたのは、バルバロス王国の兵士達の練度の高さを証明するものであったが、それでも圧倒的な力の前に為すすべもなく崩れ去る。


「ヒャッハッハッ!追え追え!王国まで追撃だぁ!!」


縦列陣形で市街を疾走する竜戦車と歩兵戦車は、やはり性能の差か竜戦車が先行する形となる。


「このゴーレムがぁ!!」


竜戦車の左側にある建物の死角から、待ち伏せしていた魔術師が飛び出し魔術を唱えようとする。魔術師はゴーレムの形からブルックリンが指揮をしていると見破り、ブルックリン暗殺に絞った伏兵であった。完全に意表を突かれたブルックリン。


バシュン!


銃弾が魔術師の頭に大穴を開けて、魔術構成図に流れ込む魔力を霧散させる。竜戦車が顔を傾けた先には幹部のドルアッシュの歩兵戦車が拳銃を構えていた。


「旦那、先行するのは良いですがね。未来視出来ないんだから油断はしないでくれよ」


緊急無線を使って苦言を呈するドルアッシュにブルックリンはおどけながらもきちんと謝罪する。


「すまねえ、楽勝ムードだったんで気が緩んだ。蝙蝠!!」


「此処に、、」


「手間をとらせるが護衛を頼む。街中じゃ死角だらけだ、その盾と装甲ならエクスプロージョンの魔術でも耐えられるだろうからな」


ブルックリンの命令に盾に剣を当てて了解する蝙蝠。盾を構えつつ王宮に向けての先頭に立つ。さながら波に飲まれた砂浜の城の様に、全てを破壊するその軍団は王宮を目指し慎重にゆっくりと進んで行った。




アリサ・スターライトが目覚めたのはそのしばらく前で、場所は魔術アカデミーにある、医療施設の個室であった。


「、、ここは?、、爺に負けたのか、、ったく最悪。あんな化け物どうやって相手すればいいのよ」


文句を言いつつ、体の状態と装備品の確認をする。どうやら服以外の装備品は隠していたモノを含めて全て取り上げられているらしく丸腰の状態であることがわかった。


「ヒヒョ。起きたかのアリサちゃん」


「、、?!ドアぐらいノックしてよ。私も一応女なんだけど」


「ふむう。この転移魔術はどんな場所にも自由に行き来出来る訳では無いのでな。時間節約、効率重視じゃな」


青筋を浮かべるアリサをガランドロスが外へ出るように促す。ガランドロスの後に付いていくアリサ。


「どこに行くの?っても一つしかないか、、」


魔術アカデミー本部長のラズリ・スナイプの所であろうとアリサは考える。結果が分かりきっている簡易的の裁判をされて殺されるか、衛兵に引き渡された後獄中で毒殺か打ち首か、やった事が事だけに多分無期懲役の確立は低いと思われた。


ガランドロスは杖で本部長室の扉を叩くと中から扉が開く、開けたのはスナイプ本人であった。


「入れ」


簡潔にそれだけ言うと、そのまま椅子に座る。アリサが部屋の中を確認しても中にはスナイプと後方で作業をする書記官しか居ないようで少し拍子抜けする。


「警備も置かないなんてちょっと迂闊じゃない?」


その言葉にスナイプは眉間に皺を寄せる。


「私の護衛は君が倒してしまったのでね。今までの護衛は彼等で十分だったしコレからもそうだろう、更に護衛を雇う経費など無駄なだけだ」


「、、、」


どう言えばいいのか躊躇するアリサにスナイプは言う。


「今回君を呼んだのは、愚痴を言うためではない。君の処遇についてだ。何故私を襲った?」


「それは魔術学校を王国に要らないとアナタが申請をしたから、それに皆をバラバラに、、アナタさえがやったことでしょ!」


スナイプは顎を撫でるとなるほどと頷き、老子はヒヒョッと笑う。


「アリサちゃん、勘違いをしておるよ。今回の決定は魔術アカデミーの決定で《議長》である本部長殿には決定権はなかった。それに本部長殿は魔術学校保護派で魔術学校を守ろうとさえしておった」


よくよく考えてみれば、魔術アカデミーのトップのスナイプが独断でそんな事をすれば波風が立つのは目に見えている。アリサは渋面を作り、何故深く考えなかったのかと後悔する。


「ここまでくればアリサちゃんでも孤児の子供の処遇も分かるじゃろう?仲の良いグループをなるべく一緒に同じ施設に入れたことがのぅ」


「、、、」


頭に血が昇り、恩人であるハズのスナイプに襲うという愚行、アリサは溜め息を吐き出し覚悟を決める。


「分かったわ。スナイプ本部長、私が全面的に悪かったと謝罪をします。煮るなり焼くなり好きにしてください」


スナイプは素直に非を認めた際に苦虫を顔を作る。


「、、本当の魔術師は探求者だ」


「??」


首を傾げるアリサにスナイプは付け加える。


「私の護衛2人は君に負けたことを怨んではいない、逆に自分達は未熟だと気付かせてくれたことに感謝していた。処罰は私に一任してくれると言っていた」


「、、それって?」


「このまま無罪放免でも構わんといっている。あの戦いも老子とお前との実演練習だと報告もした。では下がれ」


アリサは良く理解ず、ポカンとその場に立ったままであった。仕方がないとガランドロスはスナイプに提案する。


「アリサちゃんも罪の意識があるじゃろう。何か罰を与えなければ、借りを作られたようで嫌じゃろうしのぅ。そうじゃ、護衛が治療から戻るまでの期間アリサちゃんにお主の護衛を頼んだらどうじゃ?」


スナイプは首を振る。


「私に護衛は要らない、魔術アカデミー組織のシステムを作ったことで、誰が後任になっても問題がないように組織を改革した、後は一般的な素養の人物であっても魔術アカデミーは機能する。もし罰が必要であるのなら社会奉仕の手続きの書類を書記に頼むが、、」


アリサはスナイプが自分の命に執着しないことに少し苛立つ。


「あんたが死んで悲しむ人はいないの?いるなら護衛ぐらい付けた方が良いと思うわよ」


「残念だが、私が死んでもその様な者はいない。逆に喜ぶ輩の方が多いだろう。それだけの事をしてきたし、そうしなければならなかった」


スナイプはアカデミーの中核をなすためにあらゆる事をしてきたのであろう、勿論人には言えない闇の部分もあったと思われた。


だがそれはスナイプの【理想】を現実とするために必要な行為であったと、アリサはスナイプの目に宿るそんな意志を感じ取った。


「、、、アナタの護衛やるわ」


「必要ないが、、」


見かねた老子はアリサに小声でアドバイスする。


「アリサちゃん、その男は自分に必要ないことは基本的に断る男であるが、人が成長するのを阻害させるのを嫌う男でもあるのじゃよ。つまりー分かるじゃろ?」


嫌そうな顔を作ったアリサは、次の瞬間には普通の表情に戻り、恭しく頭を下げる。


「スナイプ本部長。この護衛の任務は今後自分の大きな財産、経験になると思います。何故ならー」


スナイプは片手を挙げてアリサの言葉を制止させると。こめかみを押さえつつヤレヤレとため息をはいた。


「老子、、困ります、妙な入れ知恵をされてはアリサ・スターライト茶番は止めろ」


「茶番じゃ無いわ、本気でそう思っているもの。護衛をして他のアカデミーのお偉い方々と繋がりを持つことが財産や経験にならないとでも?スナイプ本部長の為ではありません、私自身の為に行うことです。スナイプ本部長は随分と御自身を買い被っておられる様でーくくくっ」


「、、、」


暫く沈黙した後、スナイプは渋々アリサ・スターライトの護衛を認めることになった。


「半刻後に王宮に行くので準備をー」


ゴゴゴゥゥゥ、、


スナイプが口を開き掛けたその時、王国の西門あたりの方角から何やら爆音が響いた。


アリサと老子はスナイプを見て、スナイプはしかめ面を更にしかめる。


「爆音よね、訓練にしては音がデカかったけど、、」


「魔術訓練には我々魔術アカデミーに王宮から連絡が入る、コレは別物だ。何かあれば西門に配置した上級魔術師が緊急帰還呪文エスケープでこちらに報告に来るはずだ。暫く待て」


西門に配置された上級魔術師がその場に着いたのはそれから三十秒ほど後の事だった。

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