異次元収集家アルド 三章4
ラウラ3
異次元ワープを行い、次元移動をする。
西部劇の様な次元には凶悪な犯罪者がいた。
彼は強力な未来視の持ち主であったがそれまでは陽気で軟派な一般人だった。
ある日、未来視で自分が殺されるのを見た。
そして自分を殺すであろう人物を見つけ。
殺した。
また殺される未来視を見て。
その人間を殺した。
自分を殺した奴を殺す。
正当防衛だと男は言う。
だが人々は言う《殺人鬼》と。
そいつ等に殺される未来視を見て。
また殺す。
見る殺す、見る殺す、見る殺す、見る殺す、見る殺す、見る殺す、見る殺す、見る殺す。
男は気が付く。
自分を皆が殺そうとするのならその前に殺せばいい。何故なら世界中が自分を殺そうとするのだからー
ドルアッシュの行動はそれに集約される。
いずれはブルックリンも殺そうとするだろう。
未来視を見たのなら。
次元移動をする。
魔法世界の次元に最強を目指す男がいた。
それは悪の帝国を倒し、獰猛な魔獣を倒した。
人々は喝采する。
しかし、男は止まらない。
次に正教会を倒した、国の英雄を倒した、聖獣を倒した。
彼は善でもなく悪でもなく、只目の前にいる強者と戦う。
戦って勝ち、勝ち続け、そしてまた戦う。
足りないと、まだ味わい足りないと。
男は思いたいのだ、思い続けたいのだ、最強であると。
だがある日、呆気なく負ける。
それでも死にたくない最強であり続けたいと思う。
そしてその強い思いが魔法となって現れる。
呪われた魔法防具の誕生である。
装備したものは不老になり、強力な戦士となる。
同時に強者を求め戦う、所有者が死ぬと殺した相手に所有権が移動して精神汚染する。魔法の力は絶対であり逃れられない、現在の所有者も乗っ取られて強者を求めてさまよっている。
蝙蝠とはそういう存在である。
ブルックリンは追われているドルアッシュを助け、その見返りに仲間になってもらい。私に蝙蝠と戦わせ引き分けにさせたのち、もっと強い強者と戦いたいかと訪ね仲間にした。
何故彼等が仲間になったのか分からない、しかし内部に潜む毒として機能してくれることを願っている。
ブルックリンの利益など知ったことか。
惑星ガルンセル、バルバロス王国の端にある街に爆音が響き渡る。
初めに気が付いたのはミューズだった。
「ジェットエンジンの音がしますね」
「ジェットエンジ、、何でもない。なる程。」
当たり前のように言われ、一般的な単語だと思い頷くアルド。それは何なのかを説明してくれるように頼んでも良かったがミューズの性格上、訳の分からない難しい説明を延々とされそうだからである。
ゴゴゴゴゥー。
爆音が街に木霊する。そしてミューズの目にはこの次元に存在しないであろうロボットを確認する。
「あれは兵器?!」
「あっちはウチの方向だな」
アルドは妙な胸騒ぎがしてミューズを見る。
「この街には特出するべきものがありません、来る人は大体がお義父の関係者でしょう。あの機体もお義父に用があるのかも知れませんね」
「、、ヤバそうじゃなかったか?!」
「一応警告をさせてもらいます。今の機体はかなり戦闘能力の高い機体だと言わざるをえません、我々の装備では返り討ちに合う可能性が非常に高いです」
アルドは少し声を荒げてミューズを睨む。
「勝てるとか勝てないとかどうでも良い、戻るぞミューズ!!」
走り出すアルドに併走してミューズは提案する。
「では私が先行してあの機体の情報を収集しても宜しいでしょうか?これは勝率をあげるために必要なことだと思いますが、、」
アルドは考える、まだガンリュウが襲われるかは分からない。しかしアルドには何故か、あの機体がガンリュウを襲うと確信していた。
ミューズの足は自分よりも遥かに速い。それにもしガンリュウが襲われた場合、勝率を上げるのは必要なことだと結論付ける。
「無茶はするな、俺が行くまでは攻撃するな。それを約束してくれれば、行っても良い」
「そのつもりです。ではお先に失礼します」
タタタタタッ。
凄まじいスピードで引き返すミューズを見ながらアルドは嫌な予感が消えずに心臓を押さえる。
ドクリ、ドクリ。
心臓が鼓動をする度に気分が悪くなり、心臓に違和感を覚える。前にも同じ様な事が起きた既視感の様なものを覚える。
アルドは首を振り、それを振り払うとガンリュウ邸に向かって走り続けた。
アルド達がいた場所から3キロほど先にガンリュウ邸はあった。ミューズはその道を三分半程で駆け抜けると、発砲音がする方向へ進む。
同時にファクトリーキューブを起動してスキャンモードにする。
バラバババババ!
ガンリュウを追いかける竜戦車を確認するとファクトリーキューブを竜戦車に向けてスキャンを開始する。
今ガンリュウを助けに割り込んでも、無駄死にするだけである。またアルドには攻撃しないように命令されているために状況を更に悪化させかねない。
ミューズとしては初志貫徹、情報収集を行うだけである。距離は五十メートル程で岩場に隠れると機体を確認する。
「、、文明としてはかなり高度なようですがまだ未熟な部分もある機体ですね、、作るとなるとかなりの材料とレベルダウンした機体になりそうです」
ファクトリーキューブの竜戦車解析率が80%を超える。機体の強度はかなり高く、自分の持つプラズマガンは無効化され、ブラストカノンの直撃にも数回耐えられる可能性が高かった。
竜戦車とのシュミュレーション戦闘でミューズの勝率はゼロ。もし人が乗っているのならば人そのものを狙撃した方が良いだろうと算出した。
「正面からでなく絡め手を使って、乗り込む前に倒す事を心がけた方がいいですね。戦場で無防備になってくれるような相手なら戦いやすいのですが、、」
ピピピ。
データリンクで頭に直接、アルドの声が聞こえる。ハンドリンクの通信機能である。
《っと、コレか。大丈夫か?》
「現状報告致します。現在ガンリュウ氏が敵と交戦中です。敵側は実力を出さずミオリさんを抱えたガンリュウ氏を追い回すだけとなっておりますが、本気になれば戦いは直ぐに終わる程の実力差です」
《お前はなんで!っ、、》
助けないのか?と言おうとしたのを堪えたのであろう。もしミューズに助けろと命じたならば助けには行くだろう。しかしそれは同時にミューズに死ねと命じているのと同じ事だとアルドは理解した。
「当初の予想通り、相手は我々の装備では太刀打ち出来ないものです。如何致しますか?」
それは撤退、もしくは傍観しろと告げていたがアルドは却下する。
《直ぐに行く。とにかく助けられるのなら助けてやってくれ、それまではそのまま情報収集をしてくれ》
「了解致しました」
ミューズに未来予知などできないがコレだけはいえた、ガンリュウは死ぬであろうと。武器を捨てミオリを抱えている時点で本人もそれを覚悟していることが分かる。
ファクトリーキューブの竜戦車解析率が終わり。ファクトリーキューブをしまうと、ミューズはプラズマガンの射程圏まで移動する。狙撃する場所は段差のある階段の脇で、足下には用水路が流れていて水の音で服のこすれる音などを消すことも出来た。
丁度その時ガンリュウは抱えていたミオリを下ろす。その動作からミオリが死んだことが伺えた。ミューズは少し強張った指を再び握り直すと竜戦車のコクピットに向けてプラズマガンを構える。
もしもこの時ブルックリンが調子にのりガンリュウに姿を見せていたのなら瞬時にプラズマガンがブルックリンの命を奪ったのだろう。
しかし竜戦車はコクピットを開けることなく、ガンリュウと正面から向き合う。
ーそしてー
ガンリュウの身体が後ろに吹き飛び、竜戦車に乗る人物が大笑いをしながら東の空に消えていった。
竜戦車を追うかどうか迷ったが、流石に追い付くことは出来ないと暫く次の行動を迷った後、丁度アルドがやってきた。
「、、はぁはぁ、ガンリュウはどこだ?!あのオヤジの事だ生きてるんだろ。直ぐに助けるぞ」
ミューズは目を伏せてアルドに向かい首を振る。
「、、、」
それで全てを悟ったアルドは弱々しく呟く。
「オヤジはどこだ?」
ミューズが手のひらで方向を指し示す。そこには地面に横たわったガンリュウが拳を空に上げて死んでいた。
アルドはヨロヨロとそれに近付く。
「、、マジか?冗談だろ?!殺しても死なねえ奴だろ?凄腕の冒険者何だろ?もっと頑張れよ、、」
泣く様なことはなかったが脱力した様子のアルドを見るミューズは胸が裂ける思いがした。自分の育ての親が死んだのだ、悲しみはあるのだろう。自分とガンリュウは短い付き合いだったが、アルドとガンリュウの会話は端々から好意が滲み出ていた。
それでもアルドが泣けないのは、現実のものとして受け止められずにいるのか、それともそれを超える怒りがあるのかもしれない。
「、、ミューズ、あの機体の奴と戦おう」
「再度進言します。あの機体には現在の装備では勝てません」
「そんな事、どうだって良い!!」
ミューズは考えを巡らす、どうすればアルドが考えを改めるのか。こうなることはガンリュウにも分かったはずである、もしそうならガンリュウが何か手を打っていてもおかしくない。
ガンリュウの倒れている方向を見て、ミューズは疑問に思う。手に巻き付けた赤いハンカチの事である。基本的に手を痛めない為に巻き付けたのかと思ったが死の間際、ミオリが死んだ直後に右腕から手に巻き付けるほど重要だったのか?
「アルド君、お義父はアルド君に仇をとって欲しいのですよ」
「何でー」
「分かります、お義父が手に巻き付けた赤いハンカチはアルド君へのメッセージです。ミオリさんから聞きましたガンリュウ家ではおまじないとして勝たなければならない勝負をする時に赤いものを右腕に巻き付ける行為をすると、、」
アルドはガンリュウを右手を見て確かにそうかも知れないと考える。こじつけかも知れないが、アルドを止める為にミューズは必死に答えの方向性を探る。
「コレはアルド君に【確実な勝利】をして欲しいとのお義父からの最後の頼みなのでは無いのですか?空に掲げているのはアルド君に託したかったからではないのですか?」
「、、、」
「復讐心ではなく、アルド君が倒さなければならない存在として戦って下さい。一時の感情ではなく、その信念によって戦って勝利して下さい。前者にはその後の展望が無いのですから、、」
その言葉がミューズの本心であり、アルドを慈しむ気持ちが溢れていた。
アルドはそれに気が付き空を見上げる。
今回もまたミューズに助けられたと思うアルド。自分にはまだこんな凄い相棒がいたのだと再認識する。
「いつも迷惑をかけるな本当に」
「??」
「いや、、ミューズ勝つ算段はあるんだよな?」
話題をそらすために質問するアルド。
「、、絶対ではありませんが。ファクトリーキューブに例の機体のデータが入っています。機体の構造等ですが、1から全てを造るのは時間がかかりますがコレを元に改変すればある程度のロボットを急造する事が出来ると思います」
「それで勝てるのか?ちゃっちゃっと造ってくれ」
「兵器というものはそう簡単には造れません。簡単な基礎プログラムに2日とその他の大雑把なプログラムに1日、調整に1日その後に動作等を実際に行って機体とプログラムのリンクに不備が無いかを調べる。武器などは私の持つプラズマガンやブラストカノンを改造するとして、、最低でも5日掛かります。しかもそれはあくまでも造ったに過ぎず、戦闘をするには不十分です」
「直ぐに出来ないのか?ファクトリーキューブって大したこと無いんだな、、」
「アルド君今の言葉を技術者に言ったのなら彼等は激怒するでしょうね。コレを1から造る身としてはコレでも自画自賛ながら凄いと思ってしまいます」
滅多にアルドを諫めないミューズからの言葉に少し怯むアルド、もしかしたらロボットを造るのにはファクトリーキューブがなければ1ヶ月位掛かるのかも知れないと先程の失言を取り消す。
「ロボットの話は後にしよう。今はオヤジを埋めて供養しなけりゃな。ミオリの死体もあるし、、早く埋めてやらないと」
ミューズは少し考えた後、顔を少し赤らめながらアルドに切り出した。
「ガンリュウ家の血筋を、、いえ。欲しがっていましたし、、あの、、、、違います。ミオリさんも喜ぶと思うのですがミオリさんの臓器の一部を保管させてもらえないでしょうか?」
「臓器?何で?」
更に顔を赤らめ複雑な表情でミューズは続ける。
「私も、、アルド君との、、いえ、、っとそのですね、変な意味ではなく、私にはそうぃう、、機能がですね、、あぅう、、駄目ですか?」
「良いんじゃないか。ミューズなら変なことには使わないだろうし、、」
「はぃ、、あの、、ですね。も、、つかう、、、言って下さい、、、嫌なら、、設備を用意すれば、、でも、、今は直接的に、、しないといけないので、あーあー失礼します!!」
キャーワーイッチャッタイッチャッタ!と言いながら冷静なミューズには珍しく真っ赤になった顔を両手で押さえながらその辺を暫く駆け回り、その後冷静になったのかキリリとした表情で戻ってきた。
「不謹慎でした。申し訳ありません。では施術を行います、死者に対する慣例はございますか?」
「何かするとき一礼して手を合わせるぐらいで良い。埋めるときは棺に入れて地域によっては燃やすけどな、人口密集地だけだ」
「了解致しました。直ぐに実行して、その後手伝いますので」
アルドは頷くと近所の人々にこの事を伝えるためにミューズと暫く別々に行動することになった。
その日の内に葬儀は行われた。基本的にアルドが喪主だったが分からないことが多く、近所のバクザンに手伝ってもらう形になり無事葬儀は終わる。
ガンリュウ邸以外にも破壊された家は数軒あって、その費用等により、資金も殆どない状態となった。
「家にある魔石を売るしかないか、、ミオリがコピーしたものも確か合ったはずだし」
「蔵に鎧がありましたがあれを売れば。かなり固い素材でしたし業物なのでは?」
「あれは二束三文でしか売れない。ボロボロだしあの鎧は特別な鉱石で造られたもので、加工が難しくて補修が出来ないんだ。たしかアダマンタイトとか何とか、、持っていけないし捨てるしかない鎧だな」
ミューズは少し考えた後アルドに告げる。
「魔石と呼ばれる万能物質で変換できる物質は、基本的に不安定で長時間の物質化にはあまり向いてません、時間経過と共に劣化したり、喪失する可能性もあります。また万能物質の量にも問題があり、優れた物質であればあるほど変換の際の多くの万能物質を使用しなければなりません。ですのであの物質をコレから造るロボットのフレームにしたいのですが他にもあるでしょうか?」
「もう一つ合ったはずだが、、」
「2セットですか、。変換ロスや予備パーツを考えるのに充分とはいえませんが何とかなるかも知れませんね」
ミューズはアルドの記憶を頼りに蔵を調べるともう一つ鎧を見つけ、ファクトリーキューブに収納・変換した。
葬儀が終わり翌日、手伝ってもらった近所に住むバクザンに墓の手入れと家の管理を時々お願いするかたちでアルドはガンリュウ邸を後にする。
バルバロス王国に向かう途中ミューズはアルドにロボットの製造に取り掛かることを説明する。
「ロボットの機体改変やプログラムの作成を行います。多くの情報処理能力を割きます。基本的な動作等は問題ないと思いますが、危険予知や動作精度、会話や思考等の機能は著しく低下するので予め伝えておきます。何かあれば元に戻るとは思いますが戻らなかった場合は肩を大きく揺するなどの衝撃を与えて下さい」
「分かった、要するに頭の中で違うこと考えるから空返事になるってことだろ。了解だ」
「、、少し違いますが、概ねその通りです。それでは道中はお気をつけ下さい」
と言うとミューズは暫く停止する。アルドはミューズの顔の前で手を左右に振ると、少し反応する。
「大丈夫か?」
「だいじょうぶです、ごしゅじん」
「、、じゃあ王国へ行くか、、」
「わかりました、ごしゅじん」
道中は会話などはなかったが、アルドとミューズはバルバロス王国に向けて歩き出す。目的は王国の東にある遺物の捜索である。
コレは何もしないよりは遺物を探し、役に立つ遺物ならばそれを利用しようというアルドの考えだった。
しかし。
ニコニコニコニコ。
何故かご機嫌なミューズをアルドは不思議に思う。
ミューズが笑うのは、無表情よりは《笑う》方が人間社会にとっては軋轢が生じにくく、危険回避をし易いためである。しかし、小さな問題の発生が生じやすい側面もあるため、条件反射的に謝るプログラムが設定されている。基本的なオートモードであった。
「ごしゅじんは、みゅーずのことすきですか?」
ニコニコ。
「好きじゃなければ、一緒に旅なんか出来ないだろ」
ミューズはその言葉を聞くとニコニコしながら身体をアルドの腕に巻き付けて一緒に歩く。少し戸惑うアルドだったが、怒る事でもないし歩く妨げにならなかったので放っておく。
「みゅーずもごしゅじんのことすきです。あったときもすきでしたがいまはもっとすきです、だいすきです。ごしゅじんにとって、みゅーずはどうでもいいそんざいだとおもっていました。だからとてもうれしいです、はしりまわりたいぐらいです。はしりまわっていいですか?」
「腕組んでるから外してくれたらな」
「ならやめておきます。うでをくんでいるほうがたのしいので。ごしゅじんにきすしてもいいですか?」
アルドは会話の脈絡のなさに頭を抱えたが、多分少ない思考力で会話を弾ませようとしているのだろうと思うことにする。
「キスは恋人同士じゃないとな」
「ごしゅじんにこいびとはいますか?」
「、、いると思うか?」
ミューズは首を傾げる、その後今までの期間に恋人がいないことを導き出したようだった。
「ごしゅじんのれんあいかんをおききします。やはりどうしゅぞくでのれんあいをのぞみますか?」
「?同種族?人間同士って事か?」
惑星ガンンゼルには人間種族の他、エルフ、ドアーフや精霊などが存在している。勿論別種族でも互いに愛し合う人々がいて、種族間の問題は多少あるもの戦争まではいたっていない為比較的良好だともいえた。
「好きになってしまったら関係ないだろうな」
「あんしんしました」
ニコニコ。
段々と不味い方向に会話が進んできてしまい、アルドとしては仕切り直したかったがミューズは更に踏み込む。
「ごしゅじんのこいびとになりたいです」
アルドの予想通りの質問だったが、予想外にドキリとしてしまう。今の状態のミューズは本心から言っているのか、本心からでは無いのかは分からない。
しかし。仮に本来のミューズに同じ事を言われたのならどうするのか考える。
考えるまでもなかった。
ーたぶん、いや、、絶対に、、
アルド・ガーデンブルグは彼女の事が好きなのだから。
「今は保留でいいか?」
「ほりゅう?ものすごくふあんがのこります、、さきほどはすきだと、、ごしゅじんのこころはふくざつです、しゅん」
悲壮感漂う表情を作ったミューズはそれ以降は恋愛の話をせずに、バルバロス王国の情報などをアルドに伝える。
「しらべたところ、おうこくには《まじゅつあかでみー》があり、このせかいでいちばんえいきょうりょくのあるくみあいの《ぼうけんしゃぎるど》をしたからささたり、ばるばろすおうこくのこくおうにじょげんをする、きゅうていまじゅつしをおおくはいしゅつしています」
「それが?」
「さきほどまでみゅーずがかんがえていたのは、まじゅつあかてみーやぼうけんしゃぎるどから、まじゅつしをこんかいのたたかいでかつようできないか?ということです」
確かに今回の戦いでは勝率を上げるために考え得る事は全て行なわなければならないとアルドも考えていた。ミューズが魔術師の事を切り出したのは、あの機体にダメージを多少与えられそうなのがこの次元では魔術が一番効率がよいと考えた結果だろうと考える。
「良い考えだ。、、しかし一番の問題は慢性的な金欠の俺にその金額が工面出来ないことだな」
「はい。だからみゅーずはなにも、あどばいすをせずにろぼっとのぷろぐらむにとりかかりました」
「何だか申し訳ない」
それを聞いてミューズはプルプルと顔を横に振る。
「ごしゅじんがおかねにこまっているのをたすけるのも、みゅーずのしごとですから。それにごしゅじんをたすけるとじぶんはうれしいですよ。いきがいです、もっとこまってください、めいれいしてください」
「、、そんなにアグレッシブに命令を求めるなよ。大体相棒なんだから命令じゃなくて《お願い》の方が良い」
「おねがい、、きょひすることもできる?」
アルドは頷く。
「人同士では命令は関係を明確にして不和を生み出す事が多い。お願いは関係を緊密にする行為だな。それが良い事かは分からないが、、」
アルドは少し疑問に思っていた事を口にする。
「ミューズは何か俺にお願いはあるか?」
「みゅーずのねがいは一つです」
ニコニコ。
「ごしゅじんとずっといっしょにいることです」
アルドは思う。このミューズは多分言葉を選んで会話をしていない、直接的に考えたことをすぐさま口に出す。
これから戦いの準備をして、もう死を覚悟しているアルドにはこの言葉は《死なないで下さい》と言っている様に聞こえた。
いつものミューズが言うようにー
結局どの様な状態であってもミューズはミューズということらしいな、と眩しいモノを見るような目でミューズを見るアルド。
そして戦う前に少し疑問に思う。
「そういえばあの機体、、どこにいけば戦えるんだ?」
アルド・ガーデンブルグとその宿敵との戦いはまだ時間が掛かりそうであった。




