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異次元収集家アルド 三章3

2018/1214。ハンドリンク位置情報変更。


アリサ1

魔術とは魔法に至る術であり、最終的な目標は魔法を使う事である。


魔法とは人智を超えた現象をいい、奇跡の別称といっても過言ではない。しかし奇跡が極低確率の現象を示すのならば、魔法が自然的に発生する事は絶対にない。不可逆的な要素を含んでいるからである。



魔法に関するレポートを書いている途中、改めて思う。


アリサ・スターライトは子供が嫌いである。自由を求めながら、保護を必要とする。正しい道に行かなければならないのに他者の言うことを聞かない。


ーそう、自分だと。


「レポートが終わったので提出させていただきます」


「アリサか、、本当に冒険者になるのだな?」


「はい。所で学校主席の件は?」


目の前の初老の男性は首を振り苦笑いをする。


「たった一人しかいない、この学校の主席など意味がないのではないのか?」


「この学校を有名にするのはコレが一番良い方法だと思います。私がこの学校を存続させます。有名になればこの学校も、、」


「ここで養っている戦争孤児達の事を考えてくれているのは分かっているよ。だがお前一人が辛い思いをするのは、、」


「私はこの学校で育ててもらった義理と恩義があります。同時に自分ならば可能だと思っています」


初老の男性は溜め息をつく。


「アリサ、お前は優秀な生徒だ。世界に名だたる魔術アカデミーに行っても、主席になれる実力と才能があった。冒険者の道はそれすらもをドブに捨てる事だぞ」


アリサは笑う。


「私は研究者よりも経営者になりたいのです」


校長室を退出すると、ドアの前には数十人の10歳程度の子供達が並んで待っていた。


「アリサお姉ちゃん、行っちゃうの?」


「やだヤダやだヤダ!」


「うぁ~ん」


アリサはハァと溜め息をついて、怒声を放つ。


「五月蠅いぞ餓鬼共!私は清々しているわ。むしろ嬉しい。何たって今日から広いベッドで寝れるし、アンタらのウンチが付いたパンツを洗わなくて済むし、何より質素なご飯が冒険者になれば豪華なご飯になるのよ!」


それを聞いた子供達は不満の声を挙げる。


「ズルい~ズルいよ~」


「ブスブス!性格歪んでるよアリサお姉ちゃんは!」


「最低~、心配してたのに~」


アリサはカッカッカッと笑う。


「良い子に校長先生の言うことを聞いていたら、多少おこぼれをあげるわ。良い子に出来るわね?」


皆不承不承ながら頷く。アリサは頷くと一番年長の少女に声を掛ける。


「リン、コレからはアナタが年長者なのだから小さい子の面倒をお願いね。アナタが人一倍皆を気に掛けている事は分かっている、頑張らなくて良い。今のまま皆を見守ってあげて。金銭面で問題があったら冒険者ギルドに手紙を頂戴私の名前を出せば届くはずだから、、」


少し涙ぐんだリンと呼ばれた少女とアリサは軽い抱擁を交わす。次にアリサは明後日の方向を見ている少年に近付く。


「俺はアリサが冒険者になるのは反対だから」


そんな少年の耳を引っ張りアリサは凄む。


「いつもいつもイタズラばかりして、皆に迷惑を掛けるな馬鹿タレのカンタ!」


口を尖らせる少年の頭に掌を乗せ優しい口調でいう。


「でも皆が明るいのはアンタがいるからだと思っているよ。それにアンタの一番良いところは仲間外れを絶対に作らない所、私はそこを評価しているわ」


少し照れた様子のカンタだったが、また明後日の方向を見る。アリサはヤレヤレと思いながら、そこから順に皆に声を掛けていく。


全員にそれぞれ声を掛けると、アリサは別れを告げて校門から外へ出る。


熱い何かがこみ上げてくる、視線を感じるのだ、多分子供達の皆が後ろで何かをしているのだろう。


だが振り返らない、自分は魔術学校主席アリサ・スターライトなのだから。強力な魔術を操り、強靭な精神を持ち、歴史に名を残す魔術師なのだから。


「ね、、ちゃんー、、ばれ、、」


「おねえち、、がんば、、」


《お姉ちゃん頑張れ》と言っているのだろう、だが振り返らずに拳を挙げると直ぐに歩き出した。


「う、、ひぐぅ、、」


大泣きしていた。


それがアリサ・スターライトの冒険者としての第一歩だった。




「アルドこれ返すね」


朝食の前、ミオリから渡されたのはコピーズリングだった。アルドは呆けた顔をしてミオリを見る。


「勝っても負けても指輪は返すつもりだったから、あの時ミューズさんと試合をしたのはもっと別の事だし」


「そうだったのか、、とにかく礼を言う。ありがとう」


アルドは小指に指輪を填めるとミオリに礼を言った。


「使い方は知っていると思うけど、説明しておく。それは小さな小物を複製する指輪なの。今の設定は魔石になっていて1日三回好きなときに手元に魔石を出現させることが出来るの」


「何かファクトリーキューブと似ているな」


「似てはいませんよ。ファクトリーキューブは細かい調整も利きますし設計図からの複製など万能ですが、コレは全くの同一のモノを材料無しに造ることに特化しているだけですから。それに造れるのもアクセサリーや物質そのものに限られますし、、」


「弾薬とかも無理か、、」


「弾薬よりは魔石の方が良いと思います。魔石は下位の万能物質でして、ファクトリーキューブで使用する時には基礎以外の部品やエネルギー源としても活用できます。また弾薬も魔石を材料にすれば遜色のないものが出来ますから、、」


アルドはなる程とそのまま設定を変えず魔石を複製する事を決めた。材料としなくても魔石であれば、そのまま使用も出来るし、いよいよとなれば通貨の代わりとする事も出来るので利便性は良い。


朝食を食べているとガンリュウが口を開く。


「それでいつまでここにいるのだ?明日か、明後日ぐらいか?」


「昼には出ようと思う。妙な夢も見て胸騒ぎもするしな」


ガンリュウは昨日の話を思い出し、それでろうと考える。アルドの性格上、考えるよりも行動する方を選ぶだろう、まして行く先が分かっているのだから。


「1日位ゆっくりしていけば良いのに、ほら近所のバクザンさんとかも顔を見せてあげれば喜ぶよ」


「すまないが、止めておく。あと3つあるから全部集まったら、またここに戻る。その時だな」


ミオリは少し複雑そうな顔をする。しかし、アルドを引き留めたところでどちらにせよ遺物集めを再開させることが容易に想像できたので、強くは引き止めなかった。


「今生の別れというわけではないのだ。ミオリ、なにか途中食べられるモノを作ってやれ」


「おむすびと、簡単な炒め物を作って渡すから道中食べて」


「応、頼んだ」


その後、アルドとミューズは部屋に戻り準備を始める。アルドが荷物を持とうとするとミューズに止められる。


「ファクトリーキューブに収納するので貴重品以外はそのままで。スキャン開始、トラクタービームを放射します」


ファクトリーキューブからの七色の光線が荷物に当たる。数秒後荷物も輝きだし、徐々に存在を失い消える。


「、、荷物が消えたが、、大丈夫か?」


「ファクトリーキューブの固有次元に収納しただけですので安心して下さい」


「、、それって、俺も中に入れるのか?」


少し興味がありそうに尋ねるアルドにミューズは苦笑する。


「もしもファクトリーキューブが故障した場合、出れなくなる可能性を考慮すると、やめておいた方が宜しいでしょう。それに旅の醍醐味は道中にあると云います。勿論入りたいのであれば止めませんが、、」


ミューズとしては道中ずっと隣にいて欲しいが命令であれば仕方がない。アルドはミューズの言葉を聞き入れて自分が入ることは諦めた(興味はあったが)


「今度操作方法教えてくれ、便利そうだ」


「保管できる容量が決まっていて、あくまでも一時的に保管するだけなので倉庫の代わりにはなりませんよ、アルド君」


「分かってる分かってる。」


心ここに有らずという感じで返事をしながら、アルドはハンドリンクを起動して他の遺物の場所を確認する。


「ここから西にあるのはミューズのメディカルマシーンだから、、バルバロス王国から更に東と北の国に一つずつ、大陸から出て一つという感じか、、」


「その様ですね。」


ムニムニ。肘に胸を当てながら画面を見るミューズ、柔らかい感覚に驚いたアルドは慌てて画面を閉じ、ミューズと距離をとる。


「、、最近、近いぞミューズ」


「スマイセン、私が近くにいるとお嫌ですか?」


「、、ビックリするから、嫌と言うわけではないが」


「安心いたしました(ニコリ)」


嫌ではないと言ってしまったので、今後強くは言えないなと頭を抱えるアルド。しかも近くてもいいと自ら認めてしまった為、今後のスキンシップは更に激しくなりそうだ。


「最近、俺は腑抜けだと思うときがあるよ、、」


「それも美徳と思います」


「そうかい、素直に喜んでおく」




ガンリュウ邸の前で四人は最後の別れを交わす。


「じゃあ、残りの3つ頑張って探してね」


そういって渡されたのは今朝話していたおむすび等の食べ物だった。アルドはそれを受け取るとガンリュウ邸から離れる。ミューズはミオリが手招きしているのを見て近付く。


「アルドって、もしかしたら異性に対して負い目というか、接触を拒否している感じがしない?多分子供の時の事が関係していると思うんだよね、私も結構スキンシップ多めだったし、、もし嫌になってもゆっくり時間を掛けて付き合ってあげて」


「分かりました、アドバイスありがとうございます」


ミューズはそれを聞いて走り、直ぐにアルドの隣の定位置に納まる。アルドは再度ガンリュウ達の方向を振り返り手を振り別れを惜しんでいるようだった。


「私、お見合いしてみようと思う」


「諦めるのか?」


「正直かなわないなぁって。美人なだけなら勝つ気でいたけど、あそこまで完璧でアルドに献身的だと逆に怖いぐらい。このままライバル関係を続けるとアルドも困るだろうし、孫抱きたいんでしょ?」


仁王立ちをしているガンリュウは顎を撫でた。


「アルドとの子供が見てみたかったがな、、まぁ難しいなら仕方がない。真面目ないい男を見繕うか」


ミオリのアルドとミューズ二人を見る目は優しかった。




惑星ガルンゼルを見下ろすかたちで突如現れた宇宙船は惑星軌道上で停止した。操縦席に座るラウラは甲板中央でふんぞり返っているブルックリンに確認する


「次元ワープ成功しました。現在地は惑星ガルンセル衛生軌道上になります、降下地点はいかが致しますか?」


「目的地は同じだ、バルバロス王国へ向かう。知り合いがいるから顔を見ておきたくてな」


「了解、目的地から降下予測地点を算出。落下開始、大気圏に突入します」


──────。


巨大な宇宙船はそのまま地表へと向かい停止する。


「ここだ出るぞ、竜戦車(ドラグーン)を準備しろ。ドールは必要が有れば無線で連絡する」


「今戦われるのならば反撃の可能性の少ない宇宙船からの長距離攻撃が有効です。またここで戦闘を行うと王国との戦いでの奇襲成功率が低下しますが宜しいのですか?」


「馬鹿やろうが、圧倒的な力を持っている俺が何故コソコソしなければならない。それに淡白な戦いじゃ興醒めしちまう。なぁそうだろう?」


ドルアッシュと蝙蝠も賛同する。


「その通りだぜ旦那。俺も行かせてもらう、地上の女の味を楽しみたいんでね。クハハハ」


「強敵の出現こそ、望むところ。私も行こう」


ラウラの淀みない操作でハンガーに人が乗り込めるように竜戦車と歩兵戦車が跪く。


竜戦車はカラーリングは黒、全長3・5メートルで格納された翼とジェットエンジンが付いていて飛行できる。重量は飛ぶということを前提に作られているため縦に細くスマートで軽い、それでいて装甲は脆い訳ではなく開発者の努力が十分に見て取れる。


装備は左肩にプラズマガン(チャージ式)、手首内側左右のハンドバルカン(備え付け)、高周波ナイフ(左足内蔵式で取り外し可能)、アサルトガン、対地ミサイル(翼の内側)が装備されている。また右肩の対空ミサイルポットをプラズマガンと交換することも出来る。


またレーザーなどを屈折させるミラーコーティング、緊急回避用のデコイが2つ付いている。


またお供である幹部二人の歩兵戦車は三メートル程、標準的なタイプであるがかなりカスタマイズされていた。


ドルアッシュの戦車は黄色、余計な装甲を極力省いてスピードを重視しており、ハンドガンが二丁(腰装着、取り外し可能)とショットガンが一丁装備されている。


蝙蝠の戦車は灰色で逆に前の装甲を増やし、多少の攻撃でも駆動系に影響がでないようにチューンアップされている。武器は高周波ブレードとハイシールド(かなり重いが頑丈)のみである。


3体を簡単に表すのなら、飛竜と豹と象で有ろうか。


ブルックリンとその幹部はそれぞれの戦車に乗り込む。ブルックリンと違い戦闘能力が高い二人が歩兵戦車に乗ったのはブルックリンについて行くためらしい。


内部抗争を狙っているラウラとしては意外に気の合う仲間を得ているブルックリンを嫌悪しながらもある程度のカリスマ性の持ち主であることを否定はできなかった。


「私は宇宙船に残り帰還を待ちます。終わり次第連絡を下さい。船員とレイレインには召集を掛けますか?」


「要らない。さぁ出るぞ!」


ラウラはブルックリンの命令であれば無抵抗な人も殺すしかない、また疑われる事が出来ないため、虐殺が起きそうな場面は基本的に宇宙船に留まることが多かった。


地表が近くなり、竜戦車と歩兵戦車は宇宙船後部にある貨物積み降し口であるカーゴドアから降下する。


歩兵戦車は足の裏から高圧エアで衝撃を緩和させ、着地する。竜戦車はそのまま無線で2人に告げる。


「先に行く、追ってこい。ジャミングは掛けないからレーダーに映るはずだ」


「分かった」


「承知」


歩兵戦車は言葉と共にハンドシグナルで了解を告げる。基本的に無線の混乱をさせるため重要な情報を告げる以外は通信をオフにしていることが多い為の癖である。


竜戦車のスピードは音速(マッハ)前後。基本的に標準装備では空気抵抗の関係上秒速333メートルを少し越えるあたりがスピード限界である。


基本的に飛ぶよりも地上での戦闘、拮抗した状態での上空からの航空爆撃、航空機を対空ミサイルで撃ち落とす等竜戦車同士の戦い以外の戦闘は想定されてはいない。コレは護衛の航空機等とチームを組むからで現代戦における戦闘とあまり変わりがない。


ババババッ!


爆音を響かせながら飛行する竜戦車は近くの民家を衝撃波で破壊しながら疾走。直ぐに目的の場所まで到着する。



ガンリュウ邸ー


「ガンリュウ、出てこい!!ガバレボ様が御礼参りに来てやったぞ!!!」


バラバババババ!!!!


ハンドバルカンをガンリュウ邸に撃ち込むブルックリン。センサーを変更して建物内部を簡易スキャンする、生体反応は2人。続いて話を更に続ける。


「出て来ないと御近所さんの家を破壊することにする。早く出てきな!!いるのは分かっているぞ!!」


地面に降り立つ竜戦車は圧倒的な存在感を放ちガンリュウ邸の正門の前に移動して、ガンリュウが現れるのを待つ。


「3秒待ってやる、過ぎたらドデカいのを食らわせてやるよ!!」


「3ー2ー1ー」


ガンリュウ邸の方向から霧が立ちこめる。その中の玄関前にガンリュウらしき人影が現れる。


「何のようだ、ガバレボ」


「礼参りでお前の命を貰おうと思ってな、楽しませてくれや。言っておくが後から仲間がここに来る予定だ、今ならば生き残れる可能性が有るかもしれないぞ」


ブルックリンは人影がガンリュウで無いことが分かった。ガンリュウの得意魔術《濃霧》《ストーンシールド》これらを駆使し、接近《風陣》でトドメをさすのがいつものやり方。


ブルックリンは再度簡易スキャンを掛ける。家の反対側に移動した1人と玄関前の人影の少し左に生体反応がある。


「なる程、なる程」


ブルックリンは獲物を前にした肉食獣のように唇を舌で舐めた。


「さぁ、狩りの始まりだ!!」



時間は少し戻るー


「なっなに!!」


「コレは、、」


爆音に驚くミオリ、ガンリュウが外を確認するとナガレモノらしき機械人形がこちらに向かってきているのが見える。


「、、まさかな、ミオリ逃げる準備をしておけ」


「何なの?」


「昔捕まえた犯罪者だ、多分な」


《ガンリュウ出て来い!!ガバレボ様がお礼参りに来てやったぞ!!!》


ガンリュウは無言で広間に飾ってある槍を持つとミオリに告げる。


「ワシが玄関で奴を引き付ける、お前は裏口から逃げろ。捕まるな、もし捕まったのなら死ぬよりも酷い目に合わされるからな」


「でも」


「奴が正面から来たということは勝てる可能性は殆ど無い、奴は勝てる勝負しかしないからな。ワシに出来ることは、お前を逃がして自分も逃げる事だけだ」


ミオリは不満そうだったが、右腕に赤いハンカチを縛り、裏口に移動する。ガンリュウはついでに机にある数個の魔石を懐にしまう。


「奴の攻撃が始まったら、急いで裏手の林に逃げ込め。ワシも後でそちらに向かう」


「《濃霧》」


ガンリュウの周りから濃い霧が発生してあっという間に、歩くのも困難なほど視界が悪くなる。


「《ストーンシールド》」


ガンリュウは簡易的に作った盾と居間にあった槍を持って玄関に向かう。ミオリも指示通り、裏口に回り相手の攻撃を待った。


《さぁ、狩りの始まりだ!!》


バラバババババ!!


小さな破裂音が続く中、ムソウの無事を願いながら裏口を出るミオリ。裏手にある林までは五十メートル程で周りには死角となる遮蔽物もあるため簡単に逃げられるー


ー筈なのだが。


バラバララ!


「つぅ!!」


足に激痛が走り転倒するミオリ。足を見ると太ももに穴が空き大量に出血していた。


ドスン!!


目の前に巨大な飛竜が降り立つ、先程門にいた機械人形のナガレモノである。霧が少し弱まりその竜戦車が姿を現す。


「ガンリュウの奴が一番嫌な方法でアイツを殺そうと思っていてな、利用させてもらうぜ」


ミオリは懐の短刀を取り出し自決しようと右腕を動かそうとした直後。


バラバ!


ミオリの右腕が吹き飛ぶ。


「ー、ぁあ!!痛ぁ!!」


「安心しな動かなければ殺さねーよ。長生き出来るぜ、、まぁ出血量からいって30分ってところだろうがな、カハハハ」


ブルックリンは竜戦車の右手でミオリの胴を掴むと空中に舞い上がりスピーカーでガンリュウに告げる。


「ガンリュウ、裏口から逃げようとした素朴な女はテメーの娘か?悪いがかくれんぼに付き合う気はない。俺のルールでヤらせてもらうぜ」


ブルックリンは少し開けた道に降り立つと、ミオリをそこに乱暴に投げ落とす。


「出て来なければ女を殺す。すぐには殺さねー、分かってんだろ楽しみたいんだよ、お前でな」


沈黙が続くと思われた時、霧が晴れてガンリュウが姿を現す。ガバレボならば言っているとおり直ぐには殺さないだろう、只いたぶって殺すだけだとガンリュウは考える。


ブルックリンはガンリュウが来やすいように、ミオリから五メートル程の距離をあけて、ガンリュウが通りやすいように道をつくる。


「ごめん、忠告されたのに捕まっちゃった」


「コレはワシの責任だ。奴は探索系の何かを使用している。コレではワシ等の手の内が始めから分かっているようなものだ」


2人の会話を聞いて、ブルックリンはガンリュウに告げる。


「さてと、じゃあガンリュウ逃げろ。自分1人でもよし、女を抱えて逃げるのも良い。逃げないのは、、まぁそれはそれで面白そうだ」


ガンリュウは槍を放りミオリを前に抱えると、嫌がるミオリを無視して林の方向へと走り出す。


「駄目!降ろして!!」


「娘のお前を置いてはいけん。何とかする!だから頼む抱えさせてくれ」


林に逃げ込めると思った瞬間、目の前が爆発した。ガンリュウが急停止して、脇道へと方向を変え走る。


「いいぞ!いいぞ!!ガンリュウ。ヤバい、逃げられるぅ~!!カハハハはははハハハ」


ガンリュウには分かっていた殺さないようにいたぶっていることが、しかし打開策は全く浮かばない。走るしかない、それでも結果が分かり切っている事を続けなければならない。


バラバラ!


「民家に逃げないのか?新兵器を試したいんだがな、、いやはや真面目ですな~ガンリュウはクヒクヒクヒクヒ、そうだ娘さんは元気ですか?」


ミオリの出血は酷く、顔色はみるみる悪くなっていった。失った右腕よりも太股からの出血が酷い、応急処置も出来ないため助かる見込みはなかった。


息が荒い娘が弱い声で呟く。


「私達を見たらアルドはヤッパリ戦おうとするのかな、、勝てることが出来なくても、、」


「そうだな、アイツは向こう見ずな奴だからな、、」


「死んで欲しくないな、、アルドには、、だってさ、、、」


ガンリュウは自分の負債をアルドに押し付る形となることを悔やんだがもはや勝負は終わっていた。ならアルドに託すかたちとなっても、アルドが生き残る選択をしたかった。


ミオリはそれ以降話さなくなっていた。


出血多量によるショック死だとガンリュウは結論付け、無言のままミオリを優しく道に降ろすと野花を添えて冥福を祈った。


ブルックリンも遊びが終わったと追い回すのを止める。


「あれれ、娘さん眠っちゃったんですか?どうして退屈だったかな、クヘハハハ」


ガンリュウは右腕に巻き付けた赤いハンカチを拳に巻き付けると竜戦車に乗るブルックリンに相対する。


「まさかまさか、武器が無いからって竜戦車(ドラグーン)に素手で立ち向かうってのか?、、別次元には《頸》とかっていう、内部にダメージを与える能力者がいるって話だが、、ガンリュウ、、オメーまさか?!」


ザッザッザッ。


近付く両者。


ガンリュウは間髪入れず、右手で竜戦車を殴った。


コン。


思い切り殴ったガンリュウの拳は砕ける。


若干遅れて竜戦車が拳を突き出す。


ベキョ!


ガンリュウの胴体に穴が空いて、数メートル下がった地面にガンリュウはドサリと落下する。


「うぁ~やられたぁコレが《頸》ってやつか~?んん何だ、何ともねぇプッ!ダセェなガンリュウ、無策かよ。正直失望したぜ、さてと用事もすんだな」


壊れた玩具に興味を無くしたブルックリンは幹部と共にバルバロス王国へ向かうため再度宙に浮き上がりガンリュウの生死を確認することなく飛び去った。


ガンリュウはまもなく迎えるであろう死よりも、アルドを思う。


赤いハンカチを巻いた手を空に突き上げる。


「、、運命というやつがあるとすれば、、アルド、、アレがお前にとっての、、死ぬなよ、、、」


名を馳せた冒険者ガンリュウの生涯はそこで終了した。

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