第2号 俺と彼女の殴れペン(PC)
某日。
「ちいとまてやゴララアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「大人に逆らったらどうなるかその身に教えてヤロウかああああああああああああああ!」
「やべっ!ジジババが切れた!逃げるぞタカシー!」
「イエッサー隊長!」
夕日が輝き、茜色に染まる風景。町も茜色に輝き一日を終えようとしている。
歩道には恋人つなぎのイチャコラ大学生らしきカップルや、おそらく新婚の愛称で呼び合っているバカップルや、さらに初々しい中学生のマセガキカップルや、さらにさらに甘ったるいクレープを二人交代で食べて「初めての・・・共同作業だね」「きゃ!恥ずかしぃ――!」と言い合ってそうな撲殺対象の高校生カップルなどが公園の前を・・・おいなんでこんなにリア充の頻度高いんだよ。ここちまたで有名なの?デートスポットで、桜の木の下で告ると永遠に結ばれますとかそんな噂広がってんの?
そういうロマンチックなの、個人的には嫌いじゃないけど、そういうことやってる奴らほど理想と現実のギャップがデカすぎてわりとあっさり別れちゃうもんなんだよなぁ・・・。決してソースは俺ではない。
てか今気づいたけどさっきの高校生カップルの男の方ってうちの制服、ってか同じクラスの田中じゃねぇか!あの野郎、いつの間に裏切りやがってぇ・・・・!これからは夜道と教室での集団リンチには気をつけろよ!
「明日は異端審問会決定ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
「うわっ!急に大声出さないでよ!」
「いやすまん、ちょっと見てはいけない奴を見てしまった。・・・目標、射程距離まであと約3m!全力で捕らえぞ!」
「はいよ!そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!」
そうだ。今、俺たちの心は一つだ!もう何も怖くない!
「「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」
「オニさんこちらの手のなる方へ~~~~~♪」
「子供に追いつけないとかマジねーわ(笑)」
ガキ共が後ろ向き走りで俺たちを挑発してくる。そしてそのまま先にある分かれ道へと二手に分かれてしまった。
「な!しまっ・・・!」
迂闊だった。盲点だった。ここは去年、町の近くにあった山のふもとを開いて出来た公園。若干引きこもり気味でなおかつこの公園にも初めて来た俺たちよりずっと、奴らの方がずっと此処の敷地を熟知しているッッ!
くっ・・・。此処が奴らのホームグラウドならば、闇雲に追い回しても絶対に捕まえることは出来ないッ――――――――――!
「どうすれば・・・いったい、どうすればいいの・・・」
中原が血走った瞳で呟いている。俺の背中に乗っかりながら。
「・・・・・・・・・・」
どうしてこんな時にも、コイツは無能ポンコツから脱却してくれないのだろう。
さっきだってさあ、
「はひぃ・・・。も、もうムリでふう・・コポゥ」
走り出してわずか3分でコレだからね。作家にしたってもうちょっと体力つけてくださいよ・・・。
心配しますよ?ファン(オレ)の方々も。
「ねぇ・・・。そろそろ降りてもらってもいいかなぁ?」
「あいいたたたたた・・・。困ったなー足痛いなー間接外れてるかもー」
「そうか。じゃあ元に戻してやるよ」
「あんぎいいいいいい!足が曲がってはいけない方向に曲がろうとしてるううううう!!」
「大丈夫。両足とも折れちゃったらさ、ちゃーんとここに置いてけぼりにしていくから」
「何が大丈夫なのかな!?ねぇ、本当に何が大丈夫なの!?今サラっととんでもないこと口走ったよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「あーもう面倒だし、そこの小川にブン投げておくか」
「ファーストキスが川の水なんていやああああああああああああ見捨てないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「ホントうっさっ・・・・・・ぐっ!?」
本当に突然だった。
急に猛烈な痛みに襲われた。
胃が意思と関係なく伸び縮みして暴れまくり、腹の脂肪にダイレクトに重みが乗っかり強烈なSOSを発信している。尻にくる違和感はさながら出産時の母親のようだった。
――――――――――そう、これは・・・・
ウ〇〇のサインだ。
(嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼場ああああああああああああああああああああああああああああああ)
そして、さまざまな出来事が脳裏に浮かんでいく。幼稚園の頃、小学校の頃、中学校の頃アレに付きまとわれ続けた時代・・・・・。え、死んじゃうの俺?ウ〇〇ぐらいで?
あ、さっきの出来事が―-―――――――――。
一夜明けて朝。
寝ぼけまなこをこすりながらボケッと通学路を歩いているとスマホが『うー!にゃー!うー!にゃー!』と鳴き始めたのでゴソゴソと取り出して電話に出る。
「やっはろー」
フラットな声の主は中原瞳音。その声の調子からしてああ昨日はぐっすり寝たんだなぁと感じて、心底ムカついたがとりあえず話は聞くことにする。これでもし仕事の話じゃなかったら即効電話切ってアドレス帳から名前消すわ。
「ローション娘のクソ変態おはよう」
「キレ悪いね」
うっせーな。そんなにコロコロ悪口思いつく訳ねーだろ。ガッツな笑いもド迫力も俺にはとても似合わない。あとアニキでもイチバンでもない。
「眠いからな。で、電話ってことは無事全部読み終わったんだな?」
「オケオケオッケー」
・・・妙な肌寒さと静かな怒りが沸々と込み上がってくる。これはあれだ。作品内で余りにも白々しいネタを使われしかもネタが自分の好きな作品のパロネタだった時の怒りそのものだ。
なんでコイツはこうも俺をピンポイントで苛立たせるんだろう。
苛立ちながら歩いているともう校門の前に着いた。さっさと話を切り上げよう。
「人の沸点を上げるより先に話進めてくれない?」
「ハイハイ。とりあえず全部読んで見たし、使えそうな所も見つけたから」
「もう全部読んだのか」
相変わらずの速読だ。本当読むのと書くのだけは早いヤツである。
「じゃあ放課後うちで。お母さん朝ごはん出来たって言ってるから。また後で」
「はいよー」
電話を切って時計を見るとデジタルの数字は遅刻5分前を刺している。学校の玄関前の時計も同じ時刻だった。
「・・・母親まで寝ボケてるとは。遺伝だな」
上靴を履きながら俺は後で八つ当たりが来ないようにそっと『着信拒否』の画面に触れた。
「学校では・・・大丈夫だよな?」
まぁ、気にしてもしゃーなし。よし、今日も一日がんばるぞい。
通常通りの授業を受け、通常営業の放課後を迎え、俺もまた通常通り中原の家に来ていた。
だが仕事場の様子は通常通りではなく、部屋の空気はとんでもなくピリピリしていた。
因みにピリピリの原因の90%は俺だ。
俺がとびっきりの笑顔で相手を見つめ、中原もまた若干視線を泳がせながら俺を見ていた。この光景だけで大体の人は分かってくれるだろう。
「さて、締め切りまであと5日。・・・・わかってんだよなぁ?」
「ハ、ハイ」
「あんた、昨日はあんなこと言ってたけど一応プロでしょ?アニメ化作家だよね?・・・そんなあんたが原稿落とすことがどれだけの編集の給料と仕事と信頼とそれとえーっと、読者の期待を裏切ることになるか本当にわかってんでしょーね!」
「自分の都合だらけだ!何その最後の思い出して付け足したかのような至極まともなセリフは!」
「・・・・・・・」
「無視しないで!」
・・・この作者の戯言は無視するに限る。だって、ほらさぁ色々とね?
「まぁいいさ。本題に入ろう。締切まであと5日。さっきも言った通り俺の立場からしてみればあんまり伸ばしていや、絶対に伸ばさないようにしなくてはならない。というわけで使える所っていうのを教えてくれ」
「うん」
そう返事して中原はおもむろに手元のマンガ本をとってパラパラめくり、あるページのあるコマを指差しながらそのまま俺に見せてきた。
「ここここ」
「どれどれ?・・・・・・・なるほど。占いか」
確かに占いというものは女性らしいと言えるかもしれない。
「女性〇身」や「〇性セブン」などでも特集は幾度も繰り返され、朝のニュースの定番としても親しまれている。
星座占い、心理テスト、タロット、血液型占いなど、占い初心者の俺でさえコレくらいは知っている物だしネタとしてはかなりの逸材と言えるだろう。
だが、一つ問題点を挙げるとすれば、
「こんな序盤で、こういうデカいキャラ立てしちゃって大丈夫なのか?後でこのキャラ書きづらくなったりしないか?」
「あ、大丈夫。もうこのキャラ登場予定一切合切ないですから」
「・・・なんでそんなキャラの設定画と顔アップ書かせたの。ムダ仕事・・・・」
ジト眼で睨むと、中原は一瞬ビクッと肩を震わせ、早口でまくしたてる。
「はーいはいはいはいはいはいはいもう準備出来てるから占い試してみよ――!」
俺から全力で眼を逸しながら、部屋のクローゼット(実際はただのタンスなのだが本人が断固として認めずクローゼットと言い張っている)の中を引っ掻き回し中から大量のブツが出現した。
透き通るような水晶球に、タロット、手相占いの入門書、星座占い誌などなどこのセットがあれば3分であなたも占い師!的なのがゴロゴロ床に転がっている。
「・・・用意周到だな・・・」
関心してるのか呆れているのか自分でもよく分からない声を出すと、中原が手を天に高く突き上げ、声高らかに宣言した。
「占い王に、私なる!」
・・・どちらかと言うと、超小説家の方が好都合なんだが。
さて、ここからはダイジェストで進行させてもらおうと思う。
なんで走馬灯なのにダイジェストとかあるんだとか、進行ってお前司会かよとか色々あるけど、世の中には出来れば思い出したくも無い思い出と言うもののあるんですよ・・・。
でもそんなことは置いといて、それでは行きましょうか。
れっつ・むーびーすたーと。
①『タロット』
「よし、さっそく悠里の今月の運勢、占ってみるよー!」
「はいはい早く」
いい作品を描く為に俺たちはさっそく床に座り、タロットをやってみようとしていた。
小説家というものは、経験と妄想が物を言う職業でありそれでいてどちらも欠かせない大事な物。その二つを養うのに一番手っ取り早い方法がある。それが、実際に経験してみること。
日本には「百聞は一見にしかず」という言葉がある。経験は宝なのだ。
だからこれは決して遊んでいる訳じゃない。訳じゃないんだ・・・・・。
俺にさっき見せ付けてきたタロットを床に並べながら中原は、
「タロタロタロットタロロロロロロロロ~~~~♪」
鼻歌を歌い始めた。
いや、これもう鼻歌じゃないかですしおすし。
ルビだけじゃなくこういうセンスもないとなると・・・。あれ、コイツのセンスある物ってマジで話作りしかないんじゃ・・・・考えるのはよそう。これ以上失望してもしきれない。
「ロロロ~~~☆タロッタタ~!タタタタッ★」
語尾に★つけてんじゃねぇよ何蜂さんだよ。
「タタタ~!ロロロ~!タタロロタタタロタロロ~!!タッタロタロロタロタタロ~~!!!」
・・・何の運命?七つの威力なのですか?
「あの~、早く」
「ええいうっさい!集中してるんだから黙ってて!」
・・・・・・・・・もう、ゴール(殴って)してもいいよね・・・?
でも言われたとおりに黙っていると、今度は歌を変えてきた。
「ピースになれ、元気にな」
「アウトォ―――――――――――――!」
俺は瞬時に中原の頭を掴み全力で床に叩き付ける。その衝撃で床に穴があいて中原の頭が完全にめり込んだ。
「ふごごごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・・」
中原の悲鳴が虚空に消えていく。虚空というより床下だけど。
三途の川でも見ないと魔法をかけちゃうぜ!
②『血液型占い』
数分後、何事もなかったかのように復活を果たした中原は元気に手を振り上げてこう言う。
「よーし、次いこうか!」
その笑顔は何故か、とても純粋で、無邪気で、見た者の心を癒す力があるような気がした。
・・・右手に堅く握り締めたカッターが無ければの話だけどな!
「・・・その手に持ってるカッターを今すぐに離してくれるなら考えてもいい訳だが」
「いやいや、だって血液型占いってさ、血が必要じゃん」
「理解すらしてねぇぇ!」
危険だ。無垢な子供って一番危険だって今知った。
「ま、待て。それは違うんだ。とにかく話を・・・」
ラノベ主人公みたいな言い訳をしながら中原を止めようとして、
「よいしょ」
・・・・・彼女は話を聞いてなどくれなかった。
刃のひんやりとした冷たさが神経にほとばしり、崩れた皮膚からは命の液体があふれ出す。
そして――――――ゆっくりと意識が飛んだ。
中原の意識が俺のジョイパットアタックによって。
③『星座占い』
注;ただいま中継が通じません。
④『手相占い』
注;今電波が最悪の状況です。
⑤『コックリさん』
やっと目覚めた中原は今度は、
「コックリさん、コックリさん、おいでやすおいでやす~」
こんなことを始めた。
コックリさん、このうすら寒いエセ舞妓さんのことを怒らないであげて下さい・・・。
てかさっきから紙が擦り切れるくらいこすってる奴の所に来るのかなぁ・・・。
「いや、もう占いですらねぇよこれ」
「もう思いついたものは片っ端からやってくしか道はないのよ・・・」
完全に目的と手段が入れ替わっていることにいつ気づいてくれるのだろう。
「コックリさん、コックリさん・・・」
「・・・・・」
「コックリさん、コックリさん・・・」
「・・・・・」
「コ、コックリさん・・・・・」
「・・・」
「・・・・・来ないね」
「・・・当たり前じゃん」
「うん・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・」」
⑥コーヒー占い
この世には本当に物で満ちている。
例えば、この世にコーヒーの種類はいくつあるか知っている人はいくついるのだろうか?
実は種類はカフェオレ、エスプレッソ、アメリカン、ウィンナーコーヒーなどの定番から、エスプレッソを加工したカフェモカ、カプチーノや某メーカーで有名なマウンテンシリーズや、ドマイナーなカフェ・マリア・デジレア、アインシュペンナー、エトセトラエトセトラなどの約200種類を超えると言われている。
また、コーヒーの起源も紀元前から存在したと通説があり、その歴史は現代に至るまで脈々と受け継がれている。
つまりこれはもう現代の文明はコーヒーが支えていると言っても過言ではないのではないだろうか。いや過言か。
それはそれとして、きっと現代人は一人一人コーヒーに特別な思いを心に秘めているに違いない。
かくいう私もコーヒーには思い入れがある。
私にとってのコーヒーとは「大人の象徴」だった。
父親が仕事を終え、帰宅してくつろぐ時は常に片手にマグカップを抱えていた。
今からいく何十年か前の日、父親のマグカップを覗いてみて、
「おとーしゃん!この黒いのなーに?タコさんのスミ?おしょうゆ?ママの血?」
「ハハハ、これはコーヒーと言ってね、パパが世界で2番目に好きな物さ」
「じゃーあ、1番なのは?」
「ハハハ、それはもちろん豚そ、ママさ。あ、悠里も3番目くらいには好きだぞ。多分」
「ボク、3ばんめなの・・・?」
「ハハハ、もちろん冗談さ。悠里が一番に決ま「わぁい!ベスト3に入った―――!!!」
「ハハハ、喜んでくれて良かったよ」
「ソレはそうとおとーしゃん!このママの血飲んでみていい?」
「ハハハ、もちろん。でもそれはママの血じゃなくてブラッ「いただきまーす!」
幼い私はこの時のことを思い出すと、
「ヴェッ!カハッ!?ゴチャ、ガッ、ブベェ!ヴビャァ、エボッ、ラネ・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ハハハ、ダメじゃないか悠里。お前猫舌なんだから」
―――――親父の心配するポイントは少しズレていたなぁと言う事を、真っ先に思い出す。
さて、なぜこんな事を急に思い出したかと言うと、
ただいま俺の目の前にはコーヒーがなみなみに注がれたマグカップが、床を埋め尽くす勢いで置かれているからだ。
「・・・・・・・」
くろくろなみなみまっくろけ、といった擬音が当てはまるほどの圧倒的量。
よせばいいのにマグカップまで全部黒。
もう遠目で見たら見分けつかないじゃないかな、と思うくらい、
比が0・01:99・9と表せそうなくらいザ★黒であった。
「・・・・・で、コレ何?どゆこと?」
わた、俺はこの光景の製作者、中原瞳音に疑惑の視線をぶつけてみる。
「ミルクコーヒー占いですっ!」
ぱんぱかぱーんと両手を広げて中原はそう言って笑った。
「いやこれ全部ブラックじゃねぇか。純度MAXじゃねぇか」
「あはははー。今牛乳切らしててー。砂糖も見当たんないし、もう全部コレでいいかなーって」
「ならどこにこんなに用意する必要があったぁ・・・・?」
「痛いィィィィ!は、話は最後までぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ聞いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!こ、こめかみがっ、頭割れちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
いっそ割れてしまわないだろうか。そしたら頭の中解剖できるし」
「人をカエルと同レベルに扱うなぁぁぁぁ!」
「あ、すまん。口に出してた?」
「ワザとのクセにぃ!」
わんわん喚いて反論する中原わん。そんなにわんわん暴れるとコーヒーがドミノみたいに零れるんでやめてくれませんかねえ・・・。
「で、なんで?」
「うーん・・・」
「考えるフリしないで」
「・・・心ぴょんぴょんしてこない?」
「・・・何仕事さぼってニ〇生見てんだよ」
「BDだよ!全巻買ったんだから!」
買ったのか。一体いくつ揃えてるのか。
「いや、それさぁ、実在してんの?」
「してるしてるよ。ちゃーんと調べたんだから。トルコが起源でね・・・」
中原は立ち上がって机の裏から白フリップを出してきた。
【コーヒー占い♪】
・トルコの伝統的文化の一つで、イスタンプールのベイオール地区はコーヒー占いカフェの激戦区として有名。
(注)トルコ式珈琲は飲むと、カップのそこに粉が沈殿します。飲み終わった後、カップに残った粉をソーサーに落とします。
方法
①飲み終わったら受け皿をコーヒカップに被せて、カップを逆さまにしてテーブルにおきます♪
それから、液体と粉が乾くまで待ちます。
②乾いたらカップの底に残っている粉の模様から占いまーす。
③カップの下半分の形は過去、
上半分は将来(未来)を表すと言われています。
④また、取っ手に形が近ければ近いほど、自分により近い出来事とされています。遠ければ遠い出来事だが自分に縁があるともあります。
(インスタントコーヒーや普通のコーヒーでもぜひ、模様を見て占ってみてください☆)
運勢
・満月・・・とってもラッキーな日。
・半月・・・特に何も無い普通の日。
・三日月・・・あまり物事がうまくいかない日。
・新月 (ほぼない)・・・最悪の一日?
・人型・・・人恋しくなっていて心が弱気になっている。
・花・・・息抜きが足りていない。
・鳥・・・やる気が遠くに。気分転換!
・三角形・・・日常に変化が訪れる!
(取っ手が左側の方から見て逆三角だと悪い変化・・・)
・犬・・・親友からのSOSかも?
・鍵・・・夢、目標、願いの実現が近い。周囲からも応援もらえるよ!
・?・・・感情が不安定。公私はきっちりつけましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はいこれで大体全部」
「・・・おお、説明詳しい」
どうして最初からそうやって調べてからやらなかったのかと問い詰めたくなったがここはぐっとこらえる。
「でもやっぱ多すぎない?」
「あ、後に引けなくなって・・・」
「・・・・はあ」
ティータイムは大事にしないとネー!って言われなかったのかな?
まあいい。さっさと済ませてしまおう。
「で、これ誰が飲むの?俺ブラックダメなんだけど」
「・・・・え」
中原の表情が固まった。コイツもダメなのかよ。
「・・・我慢して飲むよ。飲まないとダメなんだろ」
「さすが私の相棒!愛してるぜ!」
「こんな苦い愛なんていらない・・・」
ホント苦い。吐きそう。
そしてこの時、俺は後悔した。
「ククク・・・」
俺はこの時、中原がこの占いを選んだ理由をちゃんと聞いておくべきだったんだ。
⑦『めざ〇しテレビ』
「ちくしょう!なんで失敗ばっかりですの!?こうりゃならばら、かの有名な朝の番組でっ――――――――!」
失敗続きにとうとうブチ切れた中原は、ヤケクソ気味に足元にあったリモコンを拾ってテレビを付けた。
しかしやっているのはお馴染みのタ〇・・・ではなくライオンの〇〇〇〇〇〇の他にならなかった。
「落ち着け。キャラが迷走してる。てか今は午後1時――――――――――」
「―――――――――ちくしょう!」
本気で悔しそうなうめき声が漏れてしまっていた。
あの数々の無駄な時間の1時間後、俺と中原は近所のグラウンドだけ広い公園に来ていた。
秋を感じる、八割の葉が地に落ちた緑のみの字もない木々(二割真紅)と、肌にこびりつく省エネ状態の冷蔵庫のような寒さの風が吹く普通の公園。
ガキ共の耳障りな笑い声が響き、DQOがベンチに座ってスマホいじってる姿がある普通の公園。ふむ、実に腹立たしい。
黒パーカー一枚しか上着がなくその場で縮こまって鼻水を垂らしまくっている俺とは対照的に、中原は手袋&コートにマフラーおまけにファーまで完全装備。うん、腹立つ。
「・・・今日気温何度よ?」
「9度」
「・・・ホント、なんでこんなところに・・・」
とびっきりの嫌味をこめて口答えする。すると
「占いに決まってるよ。もしかしてバカ?」
「・・・次元覇王流・疾風突きィィィィぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「フゴおっ!」
立ちあがって体をひねりながら後ろにいた中原に恨みをこめた拳で渾身の一撃を腹にぶち当てる。
「ゴホッ・・・!ぐへえええええぇぇぇぇぇぇぇ」
中原はそのまま膝から崩れ落ち、負け惜しみとばかりに口を開く。
「SD・・・ガンダムは・・こ、今度こそ出演するんだよ、ね?」
「ああ。だから安心して逝け」
そう言うと猛烈な勢いで中原は立ち上がった。
「それを聞いて生きる希望が沸いてキタ――――!」
「単純なヤツ」
一通り話して心だけは暖まってきたので、聞いてみる。
「でさ、もっかい言うけどなんで?」
「ふふーん、よくぞ聞いてくれました!」
腰に手を当ててむふーとドヤ顔をし、くるりと一回転して胸を揺らしながらこのセリフを言う中原の姿はとっても卑猥だとお兄さん思いました。
「今から」
「いまから?」
「今から、二人で魔方陣を書くのだー!」
「占いじゃなねぇの!?どこまで話飛んだらそうなるんだよ!」
駄目だこいつ。さっきから何したいのか全然わからん。早くなんとかしないと・・・。
「まあまあ。とにかくこの本見てよ」
そう言って取り出したのは、赤くてとっても分厚い
「いつから持ってた?そんな分厚い本」
「最初から」
え、嘘だろ・・・?お前何にも荷物持ってきてなかったよな・・・?まさか、それがお前の過負荷・・・!?
「というのは冗談で、普通にそっちのカバンに入れてただけだけどね」
「許可とれやボケ」
「だってどうせそんな許可もらえあいたっ!痛い痛い!無言で足ゲシゲシしないで!」
仕方なく足を離して話を振ってみる。
「でさ。何すりゃいいワケ?」
「ふふふ、そんな単純なコトも―――――――――」
「・・・リアルア〇パンマンの気分でも味わってみるか?」
ライダーキックのポージングをとると、中原は顔を引きつらせながら答える。
「ふ、普通に描くの手伝ってくれるだけでいいから・・・」
「まあそんくらいなら」
俺はその辺に落ちてた木の棒を拾い上げて聞く。
「どれくらいの大きさなんだよ?」
中原は少し考え込んでからこう答えた。
「うんとね――、このグラウンドの半分くらい?」
「けっこう広いな。どんな感じの魔方陣?」
「なんかヒーリングで適当に!」
「絶対使い方間違ってる・・・」
それってフィーリングとちゃうやろか。
「ま、早く描こ」
「そだな」
1時間後。
なんとか魔方陣は完成し、俺たちは儀式を行っていた。
「はあああああ・・・・・」
我が作家中原はと言うと魔方陣の中央にしゃがんで気合を貯めていた。精神と時の部屋じゃなんいだぞ。
「まあ、これで原稿が上がってくれるなら――――――――――」
「「ヒィヤッハァァァァァァァアアアアアアァァァァァァァァァ!!」」
「!?」
驚いたのもつかの間。突然小学生らしき二人が魔方陣を蹴散らし、中原にWキックをかましたのだ。
「アゴォ!?」
意味不明な叫びを上げて倒れる中原を踏み倒し小学生二人はきびすを返した。
「なんだこの女!幼稚園児みたいなことしやがって!」
「マサキ知ってる!これ『ちゅーにびょー』って言う人だよ!」
「バカみてーだな!きっと一緒に居た男も変な奴だぜ!」
「うんうん!」
―――――うん。やっていいこと(中原をバカにすること)と、悪いことを教えるのが年長者の役目だよなぁ。
「・・・中原」
「・・・うん」
そして声を揃えて俺たちは叫んだ。
「「生まれてきたことを後悔させてやるっ!!!」」
そして冒頭に戻る。
「ふごっ・・・・っ!ぶぎぎぃぃぉぉぃ・・・・。てて、てめ何をっ・・・!」
「え。え!?い、今なの!!計算間違えた!」
「計算って何だぐえっ!」
「ゆ、悠理!」
何か言おうとしても、痛くて声が出ない。早く、トイレに行きたいのに・・・!万策尽きたか・・・!?
動けないからすぐそこのトイレに連れて行ってくれと伝えたいのに・・・・・!
「なんでこんな時に占いの飲み物に仕込んでおいた下剤がぁ~~~~~~~!」
・・・犯人テメェかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
そんなに恨んでたのかよチキチョウ!こんなことならもう少し関節技緩めにしとくべきだったぁ~~~!
「と、とにかくそこの公衆トイレに・・・」
おおそうだ!早く!早く~!俺の生涯が幕を閉じないうちに!
「放り込んで早く追わないと!」
「やっぱりめっちゃ恨んでるだろテメメメメメメメヴェ!?」
「うるさい!せっかく逆襲のチャンスが来たのに優しくしてたまるもんか!」
そして中原が俺に近づいてきた直後、信じられないことが起こった。
「ヒヤシンス~~~~~~~~~~~~~~~っ!」
足元の壮大に濡れた落ち葉で滑ったのだ。そしたら
俺の腹に体重を全乗せした足が振り下ろされた。
「ユニバァ――――――――――――――――ス!!!」
俺はこの後に待つ最悪の出来事を直感した。
お父さん、お母さん、今まで
――――――――――育ててくれてありがとう。
ブリッ!ブボッ!ブリリリリィィ!ブブブブフブブリリリリィィィィィィィィィッ!ビチャアァァァァァァァァァァァァァァ!!ベチョ!ブホォ!!
下半身から俺の人としての尊厳が失われていく音が聞こえてくる。さながら人生終了のチャイムのようだ。
ああ・・・もう嫌・・・・。死に・・・たい・・・・。
ガキ共は既に逃げ去ってしまっているし、残されたのはそのまま地面に頭をうって気を失った中原と犠牲者の公衆トイレの前で二人して倒れている情けない姿だけだということを確認してから、そのまま俺は意識を手放した。
「被告人。言い残すことは?」
「ごめんなさいゆるしてください」
「即答してんじゃねぇコラ」
薄暗い密室。
「許してくれるとでも一瞬でも思った?甘すぎるわ。今のお前は何一つ出来やしないのに」
「う~~~~~!」
「おいおいそんなに睨むな。ここには俺たち二人しか居ないんだからさ」
二人だけの秘密の会話。
「こ、こ、こんなことに私はくっし」
「強がってんじゃねーよ。口はそんな事言ってても体はお前と違って正直者だぜ?」
「ひゃっ!しょ、しょんなこと・・・・」
「黙れよ。媚び媚びの声出しやがって。ヘドが出るぜ。そんなマネしてもお前の罪は消えないのになぁ!」
「ひ、ひどいよ・・・」
繋がれ動けない少女。
「この悪魔!鬼ババア!怪物ー!!」
「誰がババアだ殺すぞ。大体俺はそんなチャチなもんじゃねーよ。今の俺は・・・・・・・そうだな、お前に合わせてこう名乗ろう。我は、堕魔王と呼ばれる存在よ!」
「なにそれかっこよすぎる」
「・・・真顔で言うな・・・。嘘なのか本音なのかはっきり分からん。さ、そろそろ」
「おお願いお願い!頼むからホントにやめてください!!にゃ、な、何でもしますからぁ~~~~~~~!」
「ん?んん?ん~~~~~!?」
「あ」
「・・何でもするって言ったな?今何でもするって言ったよね!?」
「い今のは言葉のアヤでぇ!う、うあ、うああああぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
叫びわたる泣き声。
「誰か、だれかぁ、たすけてぇ・・・・・・」
「無駄無駄。二次元じゃないんだから助けなんて来ない来ない。そんなヒーローなんぞこの世にゃいねぇーんだよ」
「うぇぇぇぇぇん・・・・・」
そして地獄の幕が開く。
「ひ、ひっく、えぐ、うえぇ・・」
「泣いてもダメだ。さぁ、始めるか」
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああぁぁぁああああああああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!お願いだから今すぐその手に持った今にもシュレッターに落ちそうな私の個人通帳を離してぇぇ!!!」
・・・なんで言っちゃうかなー。せっかく脳内で盛り上がってたのにー。だけどこれはチャンス。
「え、離しちゃっていいんですか?いいんですね!じゃあえん」
「ちょちょちょ――――――!まっまっまって!今のナシ!それこっちに返してよ!!」
おお。すごい必死だな。そんな顔されて言われると・・・・・
「シュレッダースイッチON☆」
ますます歪ませたくなってくるわぁ!
死刑台の悪魔の音が部屋に鳴り響き、中原が狂ったようにアヘ顔(推測)で鳴き叫ぶ。
「ああ、ああああっ。あ、は!そ、そうそう!そ、そっちの給料もそんなことしちゃったらもう支払えないよ・・・!」
『勝った』と言わんばかりのドヤ顔で地べたに這い蹲ったまま中原が言う。
「あ、それなら大丈夫です。ちゃーんと自分の給料半年分は先にATMで下ろしときましたからー」
「・・・・・おうふ」
ドヤ顔がみるみる青ざめていき、やがて薄汚く変貌していく。やがて眼から瞳孔が失われ、あるはずも無い未来を求めていた。
半年分も。半年分も。半年分も。と呪詛を唱え続けてるし。このスキにやってしまおうか。
「死刑執行だゾ☆」
「はっ!いつの間に気を・・・」
「もう何も怖くない。血だまりスケッチ開幕だぜ!」
「何を血だまりにする気だテメェェェ!今すぐ私と契約して死にやがれぇぇぇぇぇ!・・・あ、はいすいません!もう逆らいませんから!締め切りきちっと守りますから!あ!あ!!あ~~~~~~~~~~~~~~っ!」
―――ストリ。
とシュレッダーに通帳が落ちる。そして、
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
見事な手際であっという間に通帳は細切れになった。
「しびびびびびぃぃぃぃぃぃぃぃぃあぶうううううううううう・・・・・・・・・ぐふっ」
ついに中原の顔から生気が消え去り、ぐらりと頭から床に倒れそのまま動かなくなった。
作家、灯油光電享年16歳ここに眠る。合唱。
・・・最後にお前のファンとして一つ、冥土の土産に言ってやるけど、ペンネーム・・・。いえ、なんでもありません。やがて緋弾のAAちゃってるあの人よりヒデェ・・・。
とりあえずもう暗いしそろそろ帰るとするか。
タブレットの横に常備してある付箋から一枚千切って、サインペンを滑らせ、死んだ魚の眼をして倒れている中原のおでこにべちゃりと貼り付けた。
『おばさんに新しい通帳の作り方教えてもらえ。PS・給料は別に引き出してないから。』
これで後になって責められることは無いだろう。そう思いたい。
外に出ると、久しぶりの満月が夜道を明るく照らしていた。
さて、今夜はいい酒が飲めそうだ。
後日、こんなメールが迷惑メールとして送られてきた。
『母さんも知らないの。お父さんまだ出張中なの。なんとかしと』
・・・方言がバカさを増大させてる気がする。
・登場人物紹介①
「織舟悠里」
主人公。
しかしその実態は特定の相手にのみ暴力を振るい、特定の相手(の書く小説)にのみデレを見せる清く正しい暴力系ヒロインだと思う。
2015・2・1(修正)
伏線シーン入れるの忘れてた・・・。
(さらに修正)
途中で投稿した・・・。